meet again   作:海砂

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衝突

「……わかった」

 

「何が?」

 

 ようやく最後のゲームを作り終えて半月ほど放心状態になっていたウイングが、突然わけのわからないことを言い出した。ついに狂ったか?

 

「わかったんだよ」

 

「だから何が?」

 

「俺の、能力」

 

 モノマネじゃなくて?

 

「念総量と引き換えに得た能力。……隠されてた、能力」

 

 それが何なのかは、まだ言おうとしない。聞いても答えない。

 

「悪い、ちょっと考えたいんだ。……理解できたら、お前らにもちゃんと言うから」

 

『お前ら』と、複数形になってるのがウイングらしい。ここにいなくても、ちゃんとシュートのことを考えて、仲間として扱っている。

 

 それ以降、ウイングは部屋から出てこなくなった。食べ物は毎食ドアの前に置いといたら無くなっていたので、生きてはいるだろう。

 思い出した能力のことと何か関係があるのか……、それは、今の私にはわかりようもない。

 なので、私は引き続き9・1に向けてちまちま金を稼ぎながら情報を集めるだけだ。ウイングの占いが出来ない(というか声をかけても返事もないし鍵をかけられてるのでどうしようもない)のだけが心配だけど、下手打たなきゃ少なくとも今月いっぱいは大丈夫だろう。

 

 念のため、の、朝食ドラ焼き5コが、自分で決めておいてなんだけどそろそろ嫌になってきた八月三十一日、返事の無い、まるで一人でいるかのような生活に慣れ始めた頃。明日になればさすがにウイングも出てくるだろう。

 私は一人で買い物に出かけていた。いつもどおり、絶状態で。

 こちらが気をつければ、誰にも知られること無く動ける。前に人ごみで絶で歩いてて踏まれたので、それ以降は人ごみでは垂れ流すようにしてるけど、ぶつからずにいれば本当にラクだ。

 

 ラクだった。

 

「きみ、何者?」

 

 まずは、気をつけていたはずなのに、意図せず誰かにぶつかった。そして相手から声をかけられたんだが、最初、その言葉が誰に向けられた物かわからなかった。絶を使っているときの私に話しかける人なんていなかったから。

 言葉の次に、何かを持った手で殴られそうになった。かろうじて避けると、相手の顔を見る。

 

「シャルナーク!?」

 

 思わず叫んでしまった。しまった……!

 

「あれ? 僕のこと知ってるんだ。やっぱり、旅団が目的なのかな」

 

 たったこれだけの会話の間に、相当の攻撃を加えてくる。とはいえ、彼の目的はおそらく私にアンテナを刺すこと。私は隙を見てポケットとひらりマントを具現化し、アンテナだけを警戒し全力で避けている。ひとまずこれで問題は無い……が、力量に差がありすぎる、このままだと間違いなく操作されなくても殺られる!

 

「割と強いね。何で僕らのこと狙ってるのかな」

 

「狙う? 勘違いもはなはだしい! 私は単に絶で街を歩いていただけです!」

 

 攻撃がやむ。……かわしていただけなのに、体中のあちこちが傷だらけになり、服もところどころ破れてしまった。

 

「じゃあ偶然、絶で歩いているところでこっちも絶を使っていた僕にぶつかったって言うんだ?」

 

「事実そうなんだから仕方ないでしょう! あなたに何かしたわけでもないですし!」

 

 応酬の間に、すでに互いのオーラは纏状態を保っていた。……同じ纏なのにこの差、本当、絶望的になるな。

 

「うーん……でもきみ、僕の名前知ってたよね」

 

「旅団は有名ですし。一応私プロハンターですし、それに……」

 

 言いたくない、言いたくないが背に腹は変えられない。このままだと名前知ってるってだけで殺される。

 

「それに?」

 

「私の恋人が旅団のナンバー4。名前はヒソカ。知ってますよね?」

 

……大爆笑された後、ヒソカは節操ナシ軟派ピエロリ呼ばわりされていた。そこには激しく同意する。

 

「なるほど、それなら僕らの名前や顔を知っててもおかしくないし、念能力が使えるのも納得だな。ヒソカも来てると思うけど、一緒にアジトに来る? 他の仲間も紹介してあげるよ?」

 

 良かった、どうやら身内認定されたようだ。道端で旅団とぶつかってあぼーんなんてそんな情けないバッドエンド絶対嫌だ、ウイングじゃあるまいし。

 

「いや、やめておきます。これも聞いた話ですが、旅団全員集合してなにやら狙っているらしいじゃないですか。そんなところに私が入っても邪魔になるだけですし」

 

「うーん、確かに場合によっちゃ危ないかもね。わかった。ヒソカにきみのことは伝えておくよ。居場所とかも教えた方がいい?」

 

「……いや……ああ、そうだ、スマホ買い換えたんで、この番号だけ伝えておいてくれると助かります」

 

 シャルナークも携帯を取り出したので、番号とアドレスを交換する。

 

「あはは、タメ口でいいよ。それじゃあね、えーと、名前は……」

 

「パームです。それじゃあ、すみませんがよろしくお願いします」

 

 笑顔で手を振って別れる。つい数分前まで(少なくとも私にとっては)死闘を繰り広げた相手なのに、だ。

 

…………死ななくて、良かった。本当に良かった。

 

 帰宅した私は、とりあえずウイングの部屋の扉をカギごとぶち破って、ヒキコモリを叩き起こして無理やり占いをさせた。それにはさも当然であるかのように、こう書かれていた。

 

  街を歩く時には気をつけよう、蜘蛛にぶつからないように

  蜘蛛に刺されることがあれば、貴方はすぐに壊される

  万一衝突したのなら、恋人の名を出せば良い

  偽りの蜘蛛の名が彼らを信用させるから

 

 先に言えや、ボケ! そこのヒキコモリも泣くな!!

 占いに憤慨していると、突然、メールの着信が入った。電話はたまにかかってくるけどウイング以外からのメールは初めてだ。嫌な予感がする。

 

『ヒソカにちゃんと伝えておいたよ。ヨークシンにいるんだって喜んでた』

 

『シャルに食べられなくて良かったね、マイスイートハニー♥』

 

……ああもうどいつもこいつも! カッとなってやったとか言って通り魔やる人間の気持ちをうっかり理解してしまいそうになった。とりあえずヒキコモリに八つ当たりして鬱憤を晴らしておいた。

 

 ふー、こんな時、仲間っていいよね!

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