meet again 作:海砂
俺の人生波乱万丈。高校教師→10歳→某三流大学講師→東大講師なんて経歴はこの世に俺くらいしかいないだろう。ほかにワサワサいても困る。知らないだけでいるのかな?
というか何で東応大に呼ばれたのかが判らん。そんなに俺の論文、出来が良かったのか?
……出身大学ではない大学で教鞭をとるのは、実は結構複雑だ。周りの教授たちが認めてくれているわけでなし、俺を認めてくれているナニガシ教授がいなくなったら俺は追い出されるだろう。
だったらとことん、東大講師というポジションを楽しんでやろうではないか!
……一応、俺の専攻は日本幕末史。受け持っている講義は日本史。けど天下の東大生だ、基本的な日本史なんぞ俺より知ってるに違いない。
だから俺は自分の得意分野だけにしぼって、マイナーかつウケのよさそうな面白歴史について語るのだ! テストは俺の授業の中のどれかの説について感想でも書かせればいいや。
……俺より造詣の深い生徒がいたら、泣くかも知れんなぁ……。
そんなわけで、最初の講義(3クラス目)に、俺は思いっきり遅刻した。すいません、深夜のさくらTV見すぎました。だってあんなキワどいTVが地上波で見れるなんて思わなかったんだもんよ! Eカップがポロポロ転がってるんだぜ!? 男としてこれは見なきゃいかんだろう!
「遅れてごめん!」
……学生が冷ややかーな目で俺を見ている。ううう、世間って冷たい……。
「えー、まず自己紹介な。俺の名前は成瀬拓。ちょっと前まで高校の教師やってたんだが、何でだかこうしてみんなの前に立っている。これも何かの縁だと思って一つ、よろしく頼む。この授業は日本史と銘打ってあるが、ぶっちゃけ全体的な日本史についてはみんなの方がよく把握してると思う。なので、主に近代史、幕末を中心に有名な話から愉快な裏話まで、色々と話していこうと思う。えー、出席はとらないので、休もうが寝てようが自由だ。ただし、最後の試験では授業で出した話のうちのどれかについて、感想なり意見なりをまとめて書いてもらうので、一回は真面目に出席すること」
思ったより人数少ないな……100人もいないだろうこれは。
「最後に、質問なり討論なりしたい奴はかかってこい、俺は全力で逃げるからな! はい、では最初の授業終了! あ、いきなり寝坊してスマンカッタ。じゃ!」
唖然とする学生どもを尻目に、俺は颯爽と教室を後にした。
ちなみに黒板……ここはホワイトボードだな。それは使わないのが俺のポリシーだ。教科書に書いてあることを丸写しにしたところで覚えられる分量は限られてる。それよりも、もっと記憶に残る面白い授業をしたいのだ俺は! そして突っ込まれたら逃げるのだ。
「成瀬先生」
……おお、もう追っかけてきた学生がいるのか、感心感心。だが俺は逃げるぞ。
「待ってください、成瀬先生」
今日び根性のある奴じゃねーか。しゃーない、顔だけは見てやるか……ってLキター!!
「先生の講義、ちょっと面白そうです。……とりあえず、それだけなのですが。ちなみに私は榎本武揚が好きです。では」
……良かった。ホントに先生として見てただけみたいだ。俺は慌てて名簿をチェックする。……よ、よかった。夜神月はこの授業とってない。二人勢ぞろいされたら俺マジで逃げるぞ。一人でも逃げたいがキラ事件と関係なさげにしてりゃいいや。
俺の教師生活、こんなに出来のいい生徒を持つのは初めてかもしれん。せいぜいがっかりされないように俺も予習しとくか!
「成瀬さん、ナニガシ教授がお呼びでしたよ」
「あ、はい」
……どうせ俺はナニガシ教授のパシリだもんな。あーあー、今度はコーヒー牛乳かな、それとも週刊誌かなーっと。
まぁ、絶版になった本探すのに比べりゃラクなもんだけどな。そゆのは何故か命じられない。……実は俺の正体知ってんじゃねーかあの狸爺。どうせこんなとこで教えるような才覚の持ち主じゃないですよーだ。
「……ワタリ、あの成瀬拓とか言う講師のことを、過去まで徹底的に洗ってください。夜神月が何故か東応大学講師陣の中で唯一、気にかけている存在です……」
「了解しました、L」
事態は、成瀬の知らないところで徐々に、しかし確実に、彼にとって見れば悪化の一途を辿っていた。