meet again   作:海砂

66 / 117
前途多難な合流

 っは!

 

「……え?」

 

 手を見た。足を見た。起きた。立ち上がった。鏡を見た。俺だ。

 

……って夢オチかよ!! 最近確かに夢見は良くなかったが、だからといってこれはないだろう!

 底辺SSでだって今どき使わねーぞこんなネタ!!

 全身が冷や汗でびっしょりだ。そりゃそうだ、いくらなんでも最悪すぎるそんな展開。

 夢なのに心臓麻痺で死ねるぞコノヤロウ。嫌だそんな死に方!

 

 ピンポーンと、無機質なチャイムが鳴り響いた……やべっ、今何時だ!?

 時計を見ると、無情に8時をさしている。朝の8時に迎えをもらうように、Lにオネガイしていた。

 パームからのメールの後、車出してくれーってワガママこいて、一緒に高木を迎えにいこうと思ったのだ。

 

「おはようございます、捜査本部の松井と申します。成瀬さんですね?」

 

「はい、すんません寝坊したんで5分待ってください!」

 

 松井さんと名乗る松田さんにカルピスソーダ飲ませながら10分待たせつつ、俺は慌てて準備を終えた。まずは、桂木の家に向かってもらう。それから高木だ。正直どうやって福岡から連れてこようかと悩んでいたので、アイツがこっちに向かっているというのは俺にとって朗報だった。

 

 車の中ではあまり会話をしなかった。……もしかしたら、俺にキラの疑いがあるとでも言っているんだろうか…まぁ、そうじゃなきゃ捜査本部に一般人が入れるなんておかしいもんな。

 

 そして桂木と久々の対面。

 

 背中に何かを隠し持っている。

 

 嫌な予感がする。

 

 一歩退く。

 

 桂木は笑顔で近寄ってくる。

 

 さらに一歩退く。

 

 桂木は高速で俺に駆け寄ってきた!

 

 俺、全力で逃げた! しかし回りこまれてしまった!

 

 結局、ダンボールとプラスチックで出来たハリセンでフルボッコにされた俺は、痛む頬を押さえながら、こうして羽田に向かって(松田さんが)車を走らせている。桂木が助手席で、俺は後ろの座席だ。

 ちくしょうハリセンを縦にしてカドで殴るなんて反則だろう……。

 

「お前さん、親に何つって出てきた?」

 

「そのまんま。キラを追う捜査本部に抜擢されたからしばらく帰らないって。大丈夫、うちの親超放任だから」

 

 いいのか、親御さん……命ヤバいんだぞお宅のお嬢さん。

 

「まぁ……それで納得してるんなら構わないが……」

 

「それよりマッツー、9時半に間に合いそう?」

 

「ええ。この時間なら十分間に合いますよ。っていうかマッツーって……」

 

 相変わらず馴染むのが早いな桂木。ほらマッツーもビビってるじゃないか……って、俺もマッツー呼び定着しちまいそうだな。

 

「えーだって、松井だからマッツー。可愛いじゃん。それより急いで下さいね。待たせるわけにいかないから」

 

 松田さんはブツブツ言いながらひたすら車を走らせている……。この人は高木と気が合うかもしれないなぁ。何かそんな気がする。いや、むしろ俺と気が合うか?

 

 そして空港に到着し、三人揃って到着ロビーで高木を待つ。やがて、カートを引いている彼が姿を現した。

 

「シュート久しぶり!!」

 

 おおっ、桂木が抱きついた! それをベリベリと高木が引き剥がしている……色んな意味で成長したな、二人とも。うんうん、先生家業で一番嬉しい瞬間だぞ、こーゆーの。

 

「えっ、高木さんって、パリーグ新人王の高木投手だったんですか!?」

 

 マッツーが興奮している。そういやこの人ミーハーだった。忘れてた。高木は背の高さもあいまって、かなり周囲の注目を浴びている。……随分と有名になったんだな、お前さん。

 

「はっ、初めまして! 僕は捜査本部のマツダと申します! うわー光栄です、高木選手とこんな間近で会えるなんて。去年のジャイアンツとの日本シリーズ2戦目、見ましたよ! 結局負けちゃったけど高木選手の7回完封、もう興奮して見てました!!」

 

 おいおい、本名名乗っちゃってるよマッツー。いいのかよ。

 

「……捜査本部……?」

 

 ヤバイ! 高木が疑問に思う前に車に乗せてしまわねば!!

 

「さぁ、とりあえず車にいきましょう。話は車の中でも出来ますし! あ、高木、荷物持つぞ」

 

「……アザッス」

 

 なんか高木、根暗になってないか? ……こんなキャラだったっけ?

 

 そして運転席にマッツー。俺が助手席に乗ろうとしたが高木に固辞されて桂木が助手席、後ろの席に俺と高木が乗り込んだ……ナンダコレ。空気重いぞ。重たくてどんよりとしてて相当暗いぞ! 高木のキャラ完全に変わってやがる。

 

「あっあのね、拓ちゃんと私がね、推理力をLに見込まれて捜査本部に呼ばれたんだけど……私がワガママゆってシュートも一緒じゃなきゃやだってゆったの! だから、一緒にキラ対策本部に行ってもらってるんだけど……怒ってる?」

 

「別に……そっか、そういや桂木は成瀬先生の事ずっと拓ちゃんって呼んでるよな……」

 

 何だよこいつら痴話喧嘩中かよ! しかも何か俺ビミョーに当事者? 俺この世界に帰ってきた直後にとっくに桂木にフラれてるよ? おまっ卒業式にわざわざ彼女いない俺にラブラブっぷりを見せ付けやがったの忘れたか!

 あああああ、桂木に殴られた傷が痛いです……高木もさ、ほら『その傷どうしたんスか?』くらい聞いてくれたっていいじゃんよ! 俺の主に顔がフルボッコにされてるんだぞ? 黙ってると痛みに集中しちまうんだよ気持ちが! あああ、俺のハートもフルボッコ……。

 

 そして沈黙のまま、車はホテルウイング東京へと到着した。……これは何かの偶然か? だよな?

 

「竜崎、お連れしました。成瀬さんと桂木さん、それに高木選手です」

 

 椅子の上にあの座り方でPC画面を見ていたLがくるりとこちらを向いた。

 

「桂木さん、高木選手、初めまして。私がLです。竜崎と呼んでください、もちろん偽名ですが」

 

 促されて、ソファに座らせてもらう。うわっこのソファ俺のベッドよりふかふかだ! いいなこんだけふかふかだったら安眠できそうだな。……今朝の夢を思い出してちょっと鬱になった。あんな結末だけは断じて阻止せねば!

 

「竜崎、俺達も偽名を使わせてもらう。不自然と思うかもしれないが、俺はウイング、桂木はパーム、高木のことはシュートと呼んでくれ」

 

「……高木選手、偽名になってませんよ?」

 

 いいんだよコイツの場合は既に全国に顔も名前も知れ渡ってるからな! そう言うと妙に納得された。Lにあっさり引き下がられるとそれはそれで不安だな……。

 

「初めまして。握手してもらってもいいですか? できれば高木投手にはセリーグに行ってもらいたいと思っていました。あのバッティングセンスを使わないのはもったいなさ過ぎます」

 

「……どうも」

 

 そういやシュートは十日間の休養だと言ってたな。このまま捜査本部においといて大丈夫なのか? シュートとLの顔を見比べていた俺の意思が伝わったのか、Lが色々と教えてくれた。

 

「まずウイングさんですが、入院したと言う事にして既に大学講師の地位を抹消してあります。パームさんについては大学を休学という事で……すでに手続きをしてくださったそうで、ありがとうございます」

 

「いえ、キラを捕まえるために微力ながら何かできればと思います」

 

……パームはL寄りか? 正直俺はキラ寄りなんだよな。自分が殺されるのはゴメンだけど、キラの創る世界は小心者の俺には住みよさそうだから。……だからって、無実のFBIやLを殺していいってことじゃないが。

 

「そしてシュートさんについてですが、肩の故障で渡米したという事にしてあります。すでに球団とプロ野球機構の方に手を回しておきました。なので、出来るだけ外出は控えていただけると助かります」

 

「オレはなぜここに来たのか知らされていない。事情を説明してくれないか?」

 

「もっともな質問です。まずウイングさんは私の大学の先生にあたるのですが、その知能と推理力を見込んで、この捜査本部に入ってもらう事にしました。元は警察組織ですが現在は協力してくれる人で有能な人であれば手伝ってもらいたいと考えています。そして、あなたとパームさんは、ウイングさんの推薦で来て頂く事になりました。調べたところ、お二人ともウイングさんの教え子と言う事で、信用しました」

 

……ホントかよ。どうせキラの疑いがある三人、とかとでもいったんだろ。夜神父と相沢がさっきから俺をすさまじい形相で見てるぞ特に父。俺がキラだったら月の潔白が証明されるもんな。

 

「捜査本部というが、ここがキラ対策本部だというのは聞いた。オレは世情に疎いから余り協力できないと思う。それなのに野球をやめさせてまでここに呼んだのか?」

 

……なんか、シュート怒ってる? まぁ半ば無理矢理拉致したようなもんだしな。それにこの野球バカから野球を奪うってそりゃ大変な事だしなぁ……でもほっとくのも危険だと思ったんだよ俺は。

 

「はい、そうです。高木選手は名前も顔も知られていて有名です。そしてこれは極秘ですが、キラの疑いがある者があなた方三名を狙っているという情報もあります。保護を兼ねてこちらにおいでいただくということにしました。もちろん、事件が解決次第すぐにチームに合流できるようにしてあります。申し訳ないのですが、ご自分の命を守るためと考えて、ご協力いただければ幸いです」

 

「………………」

 

 うわーんシュートが鬼の形相で俺を睨んでますよー怖いよー今の俺だったら余裕でシュートに殺されますよマジで。……気付いたのかな、俺の能力が変な方向いっちゃったってコトに。

 

「ひとまず、お三方のために部屋を取ってありますので、数日の間はゆっくりなさってください。何か動きがあれば随時ご報告いたします。ワタリ」

 

「はい、竜崎」

 

 ワタリが俺たち三人にそれぞれ鍵を渡してくれた。同じフロアに三部屋。……ホントリッチだよな、L。俺に車の一台でも買ってくれんだろーか。中古車でいいぞ。

 鍵を受け取り、俺達はそれぞれの部屋に向かう……途中でパームに引っ張られた。

 

「事情説明するから来て」

 

 見ると反対の手でシュートの襟首を掴んでいる。……なんかデジャブ。

 

 まあいい、三人で今後について話し合っておく事も必要だろう。俺達は三人で、パームの部屋へと集まった。

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。