meet again 作:海砂
はああああああああー。
この世界にきてから、もう数え切れないほどのため息をついた。今ので何度目だろう。昔誰かがため息ついた分だけ寿命が縮まるとか言ってたな、縁起でもない。でもつかずにゃいられないだろこの境遇。はああああ。
「何か、よくわかんないけど大変そうだね」
ゴンに慰められた。さっき、キツネグマのコンを紹介してもらい、今は二人で釣りの真っ最中である。ちなみに釣果は、二人で釣っているにしてはかなりの量になった。
「あー……とりあえずなー……どうしたもんかと思ってなー……」
ちなみに俺は円を前方に細長~く伸ばして川のあちこちを探り、魚の群れがいる所にルアーを放っている。それでようやくゴンと同等だ、情けない。
「オレでわかることなら、相談に乗るよ?」
とても相談できることじゃないけれど、ゴンの気遣いに泣けてくる。つーか何10歳のガキに心配されてんだ俺。ヘタレにも程がある。
「あー、気持ちだけ取っとく……あいつらに比べて、お前さんはいい子だなぁ」
もちろん、あいつらとは、あいつらだ。仲間で生意気なクソガキ共。
パームは元々持っていた多量のオーラ総量を生かして、早々に念能力を作り上げてしまった。シュートはそこまでには至らないにしても、着実にオーラ量を高めつつ、持ち前の体力にさらに磨きをかけている。
それに比べて俺ときたら。
……まぁ、パームは最近『自分がネズミになって、地球破壊爆弾を抱えたドラえもんに追いかけられる』という面白悪夢を連日見ているみたいだが。具現化系じゃなくて良かった、俺。
「あ、そうだ。明日、港に商船がくるんだ。この島じゃ売ってない珍しいものもあるから、一緒に見に行かない?」
「あ? ああ、そいつは楽しみだ。何か面白そうなもんが見つかるといいな」
全く別の事を考えながら、虚ろな返事をした。売っている『モノ』なんかどうでもいい。
体は、着実に強くなっていると思う。思いたい。俺なりに頑張ってるんだ。
だけど、オーラが増えない。どんなに頑張っても一日踏ん張っても全身のオーラ搾り取っても、俺のオーラの総量はぴくりとも増えやしないのだ。これはある種の才能か? 才能なのか? 俺はそこまでヘタレの星の元に生まれていたのか?
纏と絶に関してはまあ問題はない。だが、練が、これがもう、どーしょーもない。ぜんっぜん変化しないのだ。一ヶ月以上特訓してるのに。
パームは水見式で、コップから銀の粉を溢れさせた。シュートは、完全に不透明な黄色の液体を作り上げた。
俺は、いまだにちっちゃな葉っぱのクローンを5~6枚増やすだけだ、まるっきりここに来たときと変わってない。
ンなもんだから、円をやったところで俺を中心に直径(半径じゃないぞ)30センチくらいしか広がらないし、硬で岩をぶん殴ってもヒビ入れるのがせいぜいだ(まだ念を知らないゴンには褒められたが、そんなの全然意味がない)
能力の開発? こんな状態でできるわけがない。なので仕方なく、彼らの修行が少しでも進むように雑務を一手に引き受けている。筋力トレーニングをしながら。……といっても、両手両足に常時各4キロの重りをつけて生活してるだけなんだけどな。
「なあゴン……まさか20キロの重さの亀の甲羅とか売ってないよなぁ」
「ヘ?」
「40キロでもいいんだが」
「いや、オレは見たことないけど……」
やっぱりか。いや、ギャグ半分で聞いただけなんだけどさ。ただの牛乳配達じゃ強くなりようもねーしなぁ。この世界のどっかに、ギャルのパンティーで修行つけてくれるスケベな武天老師様とかいねーかなぁ。ネテロ会長あたりがやってくれんだろーか。
あー、そういえば、ドラゴンボールでは手で畑耕すとかやってたなぁ。アレやってみるかな、森で。それと、何か重りの代わりになるよーなもんでも探してみるか。
「ねえ、ウイングたちはやっぱり、元の世界に帰りたいの?」
「ん? ま、そりゃなぁ……俺は正直どっちでもいいんだが、あの二人は帰りたいんじゃないかな」
多分、三人とも100%本気で帰れると思ってはいない。ただ、可能性があるからそこに向かっているだけだ。俺だけ微妙にから回ってるけど。
「そっか、せっかく友達になれたのになー」
「そばにいなくたって、友達は友達だろ? それともゴンは、会えないってだけでもう友達とは認めないのか?」
「そんなことないよっ! ウイングもパームもシュートも、オレの大事な友達だ!」
……ああ、可愛いなぁ。できるならこんな素直な子供たちを相手に教師、やってみたかったなぁ。
「だったら、会える方法を探すんだ。諦めたら、ほんの少し残っている希望も全部ゼロになる。どんなことでも、それは同じだ」
「……うん。そうだねっ」
原作でキルアに会いに行ったゴンのことを思い出す。……こんなこと、言わなくてもきっと本人が一番わかってるんだろうな。というか、むしろゴンの性格上、命が危ない時とかは諦めた方がいいよ、とか教えたほうが良かったか?
「もし三人が遠いところにいても、オレたちは友達だよね!」
「ああ」
ん? 今何かピンと引っかかったぞ。俺のカンは微妙に当たる。6割くらいは勘違いだけど。
キルア、キルア、キルア・ゾルディック、ゾルディック家……。
「これだ!!!!!」
はい、急に叫んだせいで魚が全部逃げてっちゃいました。釣りは静かにやりましょう。
「あーびっくりした。どうしたの? 急に」
「あー、すまん。お前さんと別れるの、ちょっと早くなるかもしれん」
「ええっ!?」
ククルー・マウンテン。ゴン・レオリオ・クラピカがキルアを迎えに行った場所。
あそこの守衛さんとこだったら何かむっちゃくちゃ重いスリッパとかあった気がする。扉開ける修行みたいなの、やってた気がする! ……多分。あとでパームに詳しく聞いてみよう。俺の記憶が正しければ、あそこが一番体を鍛えるのに適した場所だったはずだ。……天空闘技場とか、怖くてまだ行けねーし。
「別にまだ元の世界に帰るわけじゃない。この世界の、別の国に行くだけだ。会おうと思えばすぐに会える場所にな」
行かないでよ! と顔に書いてあるゴンに、そう言って頭をなでる。
「それに、二人にも話してみないとわからないしな。あいつらがここにいるって言えば俺もそうするだろうし」
「じゃあ、島を出るとかそんな話? 船に乗ったら会いにいける、そんな場所?」
「ああ、そうだ。それと、これは約束する。俺たちが元の世界に帰れるようになっても、帰る前に必ずお前さんに会いに行くよ。パームとシュートもきっとそう言うはずだ」
そう言って、小指を出した。ゴンは笑顔で自分の小指を俺の出した指に絡ませる。
「指きりげんまんウソついたら針千本のーますッ!」
ん? ゴンが親指を出してきた? なんかよくわからんが俺も親指を出す。
「誓いのチュー!」
げっ! そういえばそんなのがあった。男同士でもやるのか、誓いのチュー……恐るべし、くじら島。
「ゴン。お前さんの進む道は厳しい。それは、お前さんがハンターになると決めた時からすでに決定されたことだ。辛いことも、悲しいことも、目を逸らしたくなるような出来事もたくさんある。それでもお前さんは、お前さんの道を進め。諦めたら、可能性は0%だ。いいな?」
「うん!」
『諦めたらそこで試合終了ですよ』とか言ってみようと思ったがやめた。ゴンには絶対通じない。シュートのかーちゃんがバスケ選手だったっていうから、あいつには通じるかもな。でも野球馬鹿だから、マンガ知ってるかどうかが疑問だな。
逃げた魚も戻ってこなさそうなので、俺たちは釣った魚を持ってそれぞれの家に帰ることにした。明日は、ゴンと一緒に商船の売り物を見に行こうと約束して別れる。
で、多分そこで売っているだろうと思われる世界地図を手に入れて、……この島とは、一旦おさらばだ。
あー、その前に二人に相談しなきゃなー。多分、俺の戯言に付き合ってくれるはずだ。力を手に入れたいのなら。
しっかし、俺の念能力って一体どーなってんだか。特質すげーとか思いながらジャンプ読んでた頃が懐かしいよ。
赤いコンタクト入れて