meet again 作:海砂
歌おう、アヴェ・マリア。死神には届かない聖なる音色。マリアの抱く赤子は新世界の神となる。それはキラでもLでもない、新たなる神の存在。
歌おう、アヴェ・マリア。死神には聞こえない聖なる音楽。神を称える民衆の声がほらそこまで迫っているのがわからない?
君には聞こえるか? アヴェ・マリア。主はあなたを選び、あなたの子をも祝福されたのだ。
罪深い人々の為に、死ぬ時まで祈り続ける聖なるマリア。
「キラの世界は狂っていると思いますか?」
「少なくとも正常じゃない。それは、キラが現れる以前の世界であっても同じ事だと思うよ」
「同感です……けれど私はそんな狂った世界を正常に近づけるためにささやかな努力をしているのですよ」
「Lはそう考えて行動してるのね」
「狂っているのは私の方かもしれません。それでも、私は私の信じる正義のために動く」
「私もそれに協力するよ。どれだけの力になれるかはわからないけど」
何か竜崎とパームが語り合ってるとです。雰囲気が怖くて俺様近付けんとです。
あの二人、なんだか意気投合しとるごたるです。変人同士馬が合ってるんだと思うとです。
自分、変人じゃないので二人の会話についていけんとです。だから、こうやって部屋の外から盗み聞きしてるとです。
「そこにいるのはわかってるよ」
「入ってきてください、ウイングさん」
……全部バレとったとです。俺様超危機、神様助けてぇ!!
「何で聞き耳立てるのよ。ウイングだって捜査本部の一員でしょう?」
俺はお前さんと違って神経がデリケートなんですっ! あんなおかしな雰囲気作られたら足が硬直してしまうとですっ! ……とは言ってやれないのが俺の小心者たる所以。ヘコヘコしながら部屋に入ったところで罰は当たるまい。
中に入ると夜神父やマッツー、相沢さんもいた。さぞ居心地悪かっただろうなぁ。
「今のところ、弥から聞けたのは夜神月が彼氏だという事だけです。シュートさんも色々と会話に工夫してくださってるようですが、キラに関しての情報は出てきていません。まぁ、夜神月と接触が在ったということが聞けただけでも収穫といえば収穫ですが……」
「そろそろ夜神月を重要参考人として呼ぶの?」
「そうですね、それも視野に入れています」
……夜神月が召致されてしまったら、かなり筋書きが変わることになる。出来ればそれは阻止したいが……どうすればいいのん?
「もう少し弥から情報を仕入れてからの方がいいだろう。パーム、お前さんもそう思わないか?」
「そうね。現状だと弥の恋人っていうだけでしらを切られる恐れもある。やっぱり最低でも第二のキラであること、或いはその殺し方を知らなければ、夜神くんに対して白状させるだけの効果があると思えない」
「……本当に、お二人の話は参考になります……」
嘘こけ。俺のようなチキン野郎の話なんか半分で聞いてるだろお前さん。勿論そんなことも言いませんがね。わざわざ言葉にする必要もなかとですよ。
『もういい加減にしてよっ!』
おお、今度は画面の中のお姫様が暴れ始めた。いやリアルに暴れてるんだけど。シュートも災難だなぁ。俺の隣にいるお姫様とどっちが恐ろしいだろうか。両方だな。女って怖ぇ。
『ミサちゃん、落ち着いてっ……』
『大体なんで私がこんなところに閉じ込められなきゃならないの? しかも男の人と二人だなんて、ライトに誤解されたらどうするのよっ!!』
『そこは大丈夫だから、とりあえずその壷置いて! 投げないで!』
マジで殺されるかもしれないなシュート。第二のキラじゃなくミサミサに。このままだとリアルな殺人現場見れそうだ。
『何が大丈夫よ!! パームって人がいながら私まで口説こうとするなんてもうシュートなんか信じられないっ! 女の敵!! キラに殺されちゃえばいいのよっ!』
竜崎の目つきが変わる。キラという単語に反応したんだろう。画面の中では引き続きしっちゃかめっちゃかの大騒動が繰り広げられてるわけだが……。
「……松田さん、模木さんに電話」
「あっ……はい……」
Lの後ろに立って画面を覗いていたマッツーが自分の携帯電話で模木さんに電話をかけて、竜崎に手渡す。
「弥海砂を確保する時『第二のキラ容疑で』と言いましたよね?」
会話の内容は聞こえないけど、多分原作と似たような返事が返ってきているんだろうと思う。そう思いたい。……つーことはだ、もう少し時間を稼げば夜神月が自首してくる? よっしゃ時間稼ぎするぜー!
「全くの黙秘を続けていた弥からこれだけの情報を得ることが出来ただけでも、今はよしとするべきだろう。それよりも、このまま放っておいたらシュートの身が危険だ。一旦こちらに戻した方がいいと思うんだが」
「駄目です。……いや、二度とシュートさんと弥を接触させなければOK……ですかね」
竜崎が悩んでいる間にもシュートはミサミサに色んな物を投げつけられている。こりゃ完全に嫌われたな。
「最初の状態に戻すということでしたら、シュートさんを引き上げさせてもいいかと思います。ですがそれは……皆さん、承知しないでしょう?」
俺を含む全員が、はっきりと表情にNOと示している。
「しかしこのままでは本当にシュートさん殺されてしまいそうですね」
『いたいっ! ミサちゃん落ち着いて、せめてモノ投げるのやめて! あいたっ!!』
「シュートさんもやり返せばいいのに。百五十キロの速球投手が何やってんでしょうか」
いや投げ返したら駄目だろ常考。あいつの投げる球は凶器だぞマジで。もちろんシュートがそんなことをするわけもなく、枕を盾にして必死にミサミサの猛攻から逃れ続けている。
「弥一人をあの部屋に現状のままおいておくわけにはいかないのか? 誰も見ていないと思って目の前で誰かを殺して見せるかもしれないぞ、それこそシュートとか」
「駄目だ、断じてそんなことは私が許さん」
言われると思いました、夜神父……。でもね、このままほっといたら少なくとも傷害事件は起こると思うんですよボク。
ここで、竜崎の電話が鳴った。よっしゃきた、自首コール!! ……だといいな。
「映像、音声オフに。……はい、私です……はい…………はい……」
結構長い会話の後、夜神月がここに来ることになった。よし、計画通り! 計画通りだけど……夜神が来るまで耐えられるんだろうか、シュート……。