混沌の中で選ばれし英雄 ~理不尽な世界を魔法と人型兵器で破壊してやる~   作:氷炎の双剣

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何とか日本編終わった……ちょっと小話は次話入りますけど……

来週は改稿とこれからの展開を詰める為、お休みさせて頂きます。
もし見たい閑話など有りましたら募集してます


13-23 解放

 

 何とか誤解も解けたようで柔らかな雰囲気になる対談。目の前の男も手を差し出して来る。

 

「意地悪な質問をしてしまい申し訳ない。

 申し遅れました、私はタチバナです」

 

 手を握り返し、握手する。

 

「ご存じかと思いますけど、ラインです。

 いえ、何とか誤解が解けたようで良かったです」

 

 だがノエはこの場に現れない。それはどういう意図をなのだろうか。我々を許してはいない、それともこの場に来られないのだろうが。距離的になのか、体調的になのかは分からない。

 

 どちらにしろ聞かないと分からないようだ。

 

「あの、ノエ殿にもお話ししたいのですが……」

 

 “ノエ”という単語を聞いた一瞬、目つきが鋭くなった気がする。だが気のせいだったのか、柔らかな笑みのままだ。

 

「ノエ特佐は今回の件を報告する為に一足先に北京へ。会えなくて残念だと申しておりました」

「では通話とかはーー「ライン殿?」」

 

 今度は明らかに敵意をこちらに向けていた。柔らかな笑みは消え、冷たい視線が見つめている。

 

「確かに貴方の単身でここまで来た勇気と的確な対応にこちらは納得はしましたが、今回の事を許してはいません。そこの所をお間違い無きよう」

 

 ……そうだった。全てが許された訳では無い。ここは引き処だな。

 

「申し訳ありません。失礼が過ぎました。ではノエ殿にもよろしくお伝え下さい」

 

 この話が終わると、タチバナは柔らかな笑みに戻る。これは厄介な奴がノエの部下にいるもんだな。

 

 タチバナは納得しているものの、他の兵士ははい、そうですかと納得出来るはずも無い。

 外に出るとさっきと同じく明らかに敵意を向けてくる。

 

 無数の敵意の中、待たせていたヘリのパイロットにお礼を言う。

 そしてパイロットは愚痴をこぼしながら離陸する。

 

 また今回も攻撃される事無く、無事にトウキョウに戻ってきた。

 

 敵地から味方の領内に降り立つと急に疲れが襲ってくる。死と隣り合わせだった任務をこなしたんだ。

 

 そういえば天幕等の一時期的な物は片付けられていた。何故なら火星独立軍も使っていた宿舎等がある。まあそれも日本国防軍が建設した物だがそこを使うらしい。

 俺もそこを利用させて貰おう。

 

 宿舎に入ると、大勢の兵士でごった返していた。誰もが体中、土や血にまみれていて風呂待ちらしい。

 

 そもそも戦いが終わるまで風呂には中々入れないから今殺到するのも当たり前だろう。長期戦の場合は風呂とか娯楽も有るだろうが今回は短期戦だった。一日も経たずに終わってしまった。

 

 それもノエと師匠の英断のおかげだろう。もしお互いに徹底抗戦ならば、長期戦となり、トウキョウは壊滅的被害を受ける事になる。

 

 さて俺も風呂に入りたいと兵士達の列に並んでると、腕を引っ張られて列を抜けさせられる。

 

 誰かと思って見たら、コウだった。

 

「折角並んでたのに……一体何の用?」

 

 3分の1進んだ辺りで引っ張られたので俺も不満だ。

 するとコウは謝りつつもそんなに悪びれてない。

 

「済みません。でもラインさんにはこっちの風呂では無くて……」

 

 ん? 女風呂にでも入れと言ってるのか? 

 と心の中でボケていると

 

「いえ、ラインさん達高官用の風呂が有りまして……そっちをご利用下さい」

 

 へえ、そんな物が有るのか。

 

「だけど俺は高官でもないし、こっちでも構わんよ。こっち使い慣れてるし」

 

 アカデミーもそんなに贅沢な仕様では無い。メンテはしっかりされてるけどね。

 

 だがそれでは困るようでコウの必死な顔が面白い。

 

「ダメなんです!! 功績の有る人をもてなすのは当たり前です!! でないと日本独立戦線の品格が疑われます!!」

 

 まあ確かにそうだ。功績が大きい者を評価しないと優れた人材は離れていく。

 さて意地悪もここまでにして、従うとするか。

 

「悪い悪い。そっちに従うよ」

 

 俺が承諾すると花が満開のような笑顔を見せるコウ。そんなに嬉しいか。

 

「はい!! それと私が御世話役に任命されたので、何か有りましたらお申し付け下さい」

 

 御世話役なんて何処かの貴族じゃあるまいし……とりあえず風呂場への案内かな。

 

 そしてコウに案内されたのは火星独立軍東京支部の風呂場だった。今は日本独立戦線の本部か。いやもう日本国防軍なのか? まだ政府が無いからまだか?

 

 風呂場は大浴場で、暖房完備だった。寒くなってきた今、お湯に入るまでが寒いので助かる。

 

 やはり高官用の風呂場だからか、中には高そうな絵画が飾られており、無駄に広い。今は俺1人しか居ないから落ち着かない。

 

 体中が汚れているので先に体と頭を洗うこととしよう。

 床は大理石で確かに綺麗なのだが、滑りやすいから注意が必要だ。日本では余り見られないのだが、豪華さを追求した結果、採用したのだろう。

 

 そしてバスチェアはなんと木で出来ていた。これはヒノキだろうか。落ち着く匂いがするな。

 

 と驚きばかりの所に誰か入って来る。見るとコウが入ってきていた。

 バスタオル1枚姿だが、残念ながら男なのだ。

 

「どうしたんだ?」

 

 ここは高官用。俺が言うのもなんだが、誰かに見られるとマズいのでは?

 

 するとコウは苦笑いしながら近付いてくる。

 

「実は誰も居ないので、ラインさんの背中を流す(てい)で、私も入ろうかと」

 

 なるほど。誰か来たらそれで誤魔化して来なかったら楽しむという訳か。コウもやるなぁ

 

「お背中、流しいたします」

 

 檜の椅子を持ってきて、後ろに座るコウ。

 誰かに背中を流して貰うなんて、合宿の時のマナン以来か? あの時はグレンに冷水を掛けられたなぁ。

 

 思い出し笑いにコウが見てくるが、何でも無いと言って背中を向ける。

 

 先に頭をやり、次に石鹸で濡らしたタオルで背中を擦って貰うのは気持ちいい。細かい手つきは整備士のコウだからだろうか。

 

 そして気付いたら背中は終わって前にも来ていた。流石に前は自分でやるよ。

 

 全て洗い終わり、感謝を述べる。

 その時ふと面白い事を考えつく。

 

「そうだ。俺も洗ってやるよ」

 

 マナンで鍛えた(たった1回)腕前を見せてやるよ!!

 

 困惑して断ろうとするコウの背後に回り、問答無用で座らせる。力では俺には勝てない。

 

 諦めたのか力を抜いて身を任せるコウ。バスタオルを取ると、余り筋肉の無い細い体が見える。整備士だから当たり前だが、これではティナの方が有るな。

 

 背中に石鹸で濡らしたタオルで擦ると、変な声を出すコウ。辞めろ、俺がいけない事をしてるみたいじゃないか。

 

 まあ俺はそっちじゃないので構わないが、誰かに見られたらーーガラッ

 

 扉を開けた音がしてそちらを見ると、呆れた目でこちらを見ていた山口が居た。

 

「……邪魔したな」

 

 と言って扉を閉める山口。

 ちょっと待ってぇぇぇ!!

 

 

 

 

 

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 誤解?も解け、その後山口の後ろに続いていた師匠も入れて4人で風呂に浸かっていた。この風呂は4人どころじゃなくて100人でも入れるのでは? 

 

 コウもさっきまでは逃げるように風呂場を出ようとしていたが、山口と師匠は構わないと言っていたので、俺が無理矢理入れた。

 

 俺の目の前に師匠、右前に山口、右にコウという配置だ。

 

 前にああ言った手前、気まずいのだが最初に話を始めたのは師匠だった。

 

「……ライン、済まなかった。俺は覚醒していたにもかかわらず、大事な事をお前にやらしてしまった」

 

 頭を下げる師匠。その様子だと正気に戻ったようですね。

 

「良かった……そのまま落ちぶれるのでは無く、戻ってこられたみたいですね。啖呵を切った甲斐が有りました」

 

 すると山口が憎まれ口を叩く。

 

「ふんっ、何であのような言い方をしたのか……素直に言えば良いじゃないか」

 

「あの時は師匠には生きる意味が見られなかった。ノエとの戦いで全て出し切り、その上将軍を失った。言っちゃ悪いですが、絞りカスでした。だから煽ることで火を付けたかった」

 

 大きく溜息を付く山口と笑う師匠。

 

「今なら分かる。あの時の意味と今のお前の状態が」

 

 山口とコウは頭にハテナが付くが、師匠の鋭い視線の意図を察する。

 

「……そうです。俺はもう1人の自分と折り合いをつけました。共に生きて行くと」

 

「その選択はとても厳しい道のりになるぞ? また暴走するかもしれない。そして自分を見失うかもしれん」

 

 暴走ーーこれが1番恐れる事だ。完全にもう1人の自分に制御を取られる事が恐ろしい。だがもう俺は渡すつもりは無い。存在は認めるつもりだ。紛れもなく俺だから。

 

「もう俺は負けません。強さを求めて、我を忘れるのは愚の骨頂だと理解しました」

 

 俺の目を見つめるじっと師匠。しばらくすると優しく微笑む。

 

「なら俺は師匠として見守ろう。静の気の力を制御出来るまで俺が傍に居てやる」

 

 師匠の優しさに思わず、涙が零れた。

 

 

 

 

 

 -----

 

 トウキョウ解放作戦から1ヶ月後、俺は食客ーー軍事補佐官として師匠の傍に居た。補佐官と言っても役職では無く、居候(いそうろう)だ。主に師匠と気について修業していた。

 

 日本独立戦線は火星独立軍との停戦後、地球連合軍との同盟を締結。

 火星独立軍のハワイ攻略部隊は戻らざるおえなくなり、南シナ海を通って北京に戻った。

 そして地球連合国庇護下(ひごか)の元、日本は独立を宣言。そして同時に中立を宣言した。

 

 そして完全に日本人による日本政府が樹立され、師匠は日本国防軍最高指揮官となった。山口もそこそこの地位に就いたとか。戦力も増強されており、雷鳴が量産される予定だ。

 

 もちろん地球連合国の本音は味方陣営としての参戦を望んでいたが、各戦線が悲鳴を上げてる今、東アジアが安定するのは諸手を挙げて喜んでいるだろう。

 

 そしてもちろん日本は火星独立国とも同盟を締結。またエルス国とも同盟を締結していた。

 

 火星独立国としてはハワイ攻略の前線基地を失ったものの、北京への前線基地には使われない、緩衝地帯として使えるのでそこまで不満は無いようだ。

 元々ハワイ基地は地球連合軍の海軍の本部が有るところで多くの艦艇と兵士が詰めていた。そもそも地球上での海軍の強さは圧倒的に地球連合軍が勝っており、未だ地球連合軍が保たれている理由の1つだ。

 

 勢力図を見ると分かるが、陸続きのユーラシア大陸は全て火星独立軍の手に。アフリカ大陸はお互いにせめぎ合い、太平洋と大西洋によって、北米、南米、オーストラリア大陸は地球連合軍の支配下だった。

 

 海によって守られている地球連合軍。だがちょっとしかない海を越え、アラスカ方面から攻め込まれ苦戦していた。

 

 高性能HAW、セイバーを次々と投入し、大軍の火星独立軍から防衛していた地球連合軍。時間が経つ度に火星独立軍の損失は増えていき、地球連合軍優勢に傾きかけていた時、火星独立軍の打った一手は戦争全体に波紋を広げた。

 

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