混沌の中で選ばれし英雄 ~理不尽な世界を魔法と人型兵器で破壊してやる~ 作:氷炎の双剣
今回も専門用語が多いですけど、説明を文章内に書くのは辞めた方が良いかなと思い、書いてません。もし気になるとかよく分からんとか有りましたらおっしゃって下さい。改稿いたします。
用語説明を一応、Twitterの方に乗せておきます。
敵は15機以上。そして味方は0。孤立無援で絶望的な状況の我々に待望の援軍が到着した。IFF(敵味方識別装置)によって、地球連合軍だと分かる。だがたったの3機とはどういう事だろうか?
レーダーを確認しても他には味方は居ない。
敵も察知したらしくこっちへの攻撃を止め、迎撃態勢を取っていく。輸送機なぞ、人を車で追い掛けるのと同じだ。いつでもやれる。
味方が先制攻撃する。ミサイルが複数放たれる。そのミサイルは敵群に真っ直ぐ向かっていく。
もちろん敵も回避運動とチャフやフレア、ECM(電子対抗手段)を使って必死に躱そうとする。
そしてミサイルは敵機を誤認識してハズレるが、そのミサイルは分離する。そして分離したミサイルからは小型のミサイルが四方に放たれる。
突然の事に動揺した敵機は躱せずに撃墜されていく。
なんだ、あれは……
クラスター爆弾ならぬ、クラスターミサイル?
クラスター爆弾とはミサイルの中には大量の爆弾が詰め込まれており、それを敵の上空で爆発させ、広範囲に散った爆弾は威力は低いものの、人を殺すには十分。最も効率的に多くの人を殺せる兵器だ。その残酷的な兵器はかなり昔に条約によって禁止され、現代の戦争にも使われていない。
核兵器、弾道ミサイル、化学兵器と同様に禁止、非人道的兵器は禁止されている。
戦争というものはどれだけ民衆からの支持を受けるのかが大事なポイントだ。国力戦である以上、協力が得られなければ負けは必死。だからそこまで手を出せないのだろう。
初撃が終わり、敵が反撃に移ろうとしたとき、レーダーが突然ホワイトアウトする。ホワイトアウトとはECMなどでレーダーが一時的に真っ白になり、何も見えなくなる事だ。
このタイミングでのECM、味方のか。
もちろん敵味方全員、レーダーでは何も見えなくなる。頼りになるのは目視のみ。方向も高度も不明。それでは取るべき対処は一つ。ドッグファイトだ。
ミサイルが発達した近代戦では遠くからのミサイル攻撃、遠距離戦でほとんどが済むのだが、このようにレーダーが使えない場合はドックファイト、近接戦になる場合もある。
だがドックファイトではどうしても一対一が基本だ。対複数の場合は避けるべきである。挟まれたら負ける。そんな愚行をするというのか。
敵が俺らから目視が出来る距離になる。敵は完全に包囲するつもりで大きく広がっている。このまま真っ直ぐ突っ込むものなら包囲され、後ろから撃たれる。
我々が魔法で援護しようにも距離が離れていて無理だ。結局は無力だ。
目の前に迫る危機に理解しててもする事が無いことに怒りがこみ上げる。HAWでもあれば、一瞬で片がつくというのに!!
味方の戦闘機はそのままコースを変えずに鶴翼陣ーー鶴が羽を広げたようにVの字の陣形ーーに突っ込んでいく。
まさか罠にそのまま突っ込むというのか!!
と困惑した所にパイロットが悲鳴を上げる。
「嘘だろ……速度が……マッハ1……1.5……2……2.5……3……3.5……4……まだまだ加速するぞ!?」
「馬鹿な!?」
「間違いじゃないのか!?」
誰しも計器の故障かと思った。
従来の戦闘機は最速でも3.5。だがそれは機体性能を無視し、速度のみを重視した機体だった。
そしてミサイルの性能が大きく発達した今、速度は必要無くなっている。何故ならどれだけ速度を上げてもミサイルの速さは超えられないのだから。
だが一瞬見えた戦闘機は尋常じゃない速さだった。
その速度を目の当たりにした敵は慌てて包囲しようとするがもう既に通り過ぎている。そして味方は横のブースターを使用し、急転回をしてのける。それで完全に後ろを取った。
こんな戦い方なんて誰も予想だにしていない。高速で突き抜ける事は出来るが、そこから普通に旋回しようとしても高速ゆえ、大回りになる。こちらが180°転回した頃には低速の敵はとっくに転回終えてるだろう。
だが今回は違う。全員が敵に後ろを向けている状態。もはや射撃訓練だろうか。
そしてその通りに次々と敵を落としていく味方。後ろを取られた戦闘機ほど弱いものは無い。
そして3分も経たずに敵を殲滅した味方。その圧倒的な強さに誰もが口を開けていた。唯一グレンだけが、笑い転げていた。
「なんだ……あの強さ!! こんなの……化け物じゃねぇか!!」
笑いながら言うグレンの言葉は我々の気持ちを代弁していた。
規格外の戦闘機達。それを体験したのは味方陣営で良かったとも思った。
その後、その3機はまたマッハ4ぐらいで我々から離れて行った。お礼ぐらい言いたかったが、向こうはさっさと離脱した。やはり特命を帯びてる部隊なのかもしれないな。
そしてやっと普通の援軍が到着し、そこからは何事も無く、カナダへ到着した。
多くの兵士や所狭しと、走り回っている。また重機もフル稼働だ。
連なる山脈の中の一つの山を丸々要塞化したらしい。無数の砲台がアラスカ方面に向いている。
そして我々が輸送機から降りて、案内されたのは絶壁ーーと思ったら、ゆっくりと横にスライドして開く。その扉の大きさはHAWが通れるぐらいだ。山の中に格納庫が有るのか。
中に入ると天井は凄く高く、20mぐらいだろうか、山の中とは思えない広さで開放感に溢れている。日本独立戦線も同じような要塞はあったが、規模が違う。無数のHAWが鎮座していた。流石は天下の地球連合軍。
更に奥に案内される途中に戦闘機の格納庫が有った。そこには先ほど見た3機の戦闘機が補給を受けていた。銀色を基調としており、機体の外側を囲むように赤い線が走っている。普通は有る、翼が無く、三角形に近い形だ。
ちょっとの間、機体を眺めていると声を掛けられる。
「……エルス国……まさか君はさっきの輸送機に乗っていた?」
そこには黒を基調とした、肩や横に赤いラインが入っている全身ピチピチのスーツを着ており、鳶色の髪をした落ち着いた雰囲気を醸し出す若い男が居た。
その落ち着いた瞳からはその年で数多くの戦場を経験している事が伺える。
「はい、先程はお礼も申せず申し訳ありませんでした」
すると男は横に首を振る。
「いや、あれはこちらが悪い。我々は特命を帯びてる部隊なのでな」
「……それでも助かりました。もし来て下さらなかったら我々は死んでました」
感謝しきれない。偶然かどうか分からないが来てくれたのはホント助かった。
その時、後ろからソフィアさんの声が掛かる。
「おい、ライン。寄り道はーーこれは先程助けてくれた方でありましたか。先程は助けて頂きありがとう御座いました」
敬礼をするソフィアさん。そしていきなりソフィアさんが敬語になる。やはり階級が高いのか?
それには小声で教えてくれる。
「この御方は少佐だ。いわゆる左官。この若さで少佐はエリートコースまっしぐらだな」
俺達の話が聞こえていたのか、向こうも敬礼をする。
「こちらこそお会い出来て光栄です。灼熱のソフィア殿」
灼熱のソフィア!? 二つ名を持っていたのか!?
二つ名を与えられる、呼ばれるのはかなりの実力者では無いとあり得ない。俺が知ってるのでも代表や副代表、他数人しかしらない。
そういえば前に戦ったノエも“神の使者”という二つ名を持っていた。まあ、化け物と呼ばれるのが一般的だが。
二つ名を呼ばれたソフィアさんは恥ずかしそうに笑う。
「それはたまたま運が良く、活躍しただけですよ。私はそんなに強くありません」
だが男は横に首を振る。
「ただの運が良い人に、代表直属部隊を率いられると思いますか? それにもし階級を当てはめるとしたらソフィアさんは大佐以上。もちろん私より階級は上です。そもそもそれ以上は将官。方面軍司令官の方々と同じような階級になりますよ?」
エルス国でははっきりとした階級が無い。大体が与えられた役割、役職によって上下が決まる。だから外で階級は? と言われても曖昧な階級を答えるしか無いのだ。そもそもかなり自由なエルス国には上下関係が緩い。
そしてソフィアさんが相当する大佐という階級は普通の部隊なら3000人を率いる隊長、艦艇の艦長など戦局を左右するほどの位だ。
丸々作戦を任せられるなど、その上に立つのはお偉い方しかいない。
ベタ褒めされたソフィアさんは苦笑いで返す。
「そこまで褒められては返す言葉が無いですよ。にしても貴方もこのような新型戦闘機のパイロットという事は中々のお名前では?」
すると男は敬礼をして、自己紹介をする。
「申し遅れました。ロイとも申します。階級は少佐。……ソフィアさんなら大丈夫でしょう。
私が所属してる戦闘機部隊は“エーススカイ”。最近作られた部隊で、各地の遊撃任務を担当しております。ちなみに今回の戦闘は偶然通りかかった時に近くで戦闘が行われてた為、参戦しました。幸いにも近くで良かったです」
エーススカイ。何とも自信満々な名前だ。空の1番か。だがその名の通り、あれだけの力を持っている。一つ残念なのが、今はもうHAWが主力だということ。エーススカイでもHAW相手には分が悪そうだ。
その時、我々の後ろから声が掛けられる。
「なんだぁ? ロイが美人を口説いてるとは珍しいなぁ?」
後ろを振り返るとそこには短髪の金髪のグレンのようにちゃらけた雰囲気を出す男が居た。だがロイと同じピチピチのスーツだ。またグレンは赤髪で、この人は金髪だ。
ソフィアさんの前に立つと片膝を付いて手を差し伸べる。
「麗しきレディよ。私はデレクと申します。以後お見知り置きを……」
デレクの手はソフィアさんの手を掴もうとするが、第三者の手によって払われる。
そこにはカールした栗色の長い髪の隙間からデレクを睨んでいる女が居た。同じくピチピチのスーツを着ていて、グラマーな体を隠しきれてない。
「アンタは初対面の相手に
「はぁ!? 美人に挨拶しただけだろ!! 何でーーぐっ」
反論しようとしたデレクを女は首を腕で絞める。
彼女より大きいデレクは暴れるが、全くビクともしないまま落ちる。
静かになったデレクを床に寝かせ、ソフィアさんに敬礼を返す。
「お騒がせしました。エレナ大尉です。この馬鹿とロイ隊長でエーススカイを組んでいます」
ティナが成長して、グラマーに成ればこんな感じなのだろうか。いや大人の色気はティナには足りないな。クール系のソフィアさんとは違い、ワイルドそうだ。
ソフィアさんは少し困った顔で笑うと敬礼を返す。
「この前は助かりました。エレナ大尉、ロイ少佐、そしてデレク……大尉でしょうか」
エレナがデレクを睨みながら答える。
「一応大尉です」
「……そうですか。そういえばここに居るということは次の作戦に?」
その質問にはロイが答える。
「はい。今回はここの指揮下に入ります。我々は特別部隊の為、バラバラに行動や完全に従うことは無いでしょうが、基本は従うつもりです。ソフィアさんも同様かと思います」
ソフィアさんも同じ考えのようで縦に頷く。
「はい。我々も協力という形で参戦します。命令権限はエルス国代表しか有りません。やはりそちらも?」
「我々もルーカス長官のみです。階級上従う事は有りますが、異動権や編成権などは長官のみです」
同じような境遇のエーススカイ。それが理由からか何だか親しみやすさを感じる。
その時、ソフィアさんが思い付いたように俺に目線を向ける。
「ああ、そういえば、隣に居るのがラインです。ラインの魔法が無かったら間に合わなかった……」
その事を聞いたエレナが目を丸くする。
「まさか……何度も放たれたミサイルが命中しても落ちなかったのはライン君が?」
「ええ、この子がミサイルを魔法で撃ち落としたんですよ」
「嘘でしょ……」
何度も瞬きを繰り返すエレナ。ロイも余り動かさない表情を変化させる。
「……どうやら嘘でも無いようですね。これは人類初だ。おめでとう、ライン君」
突然の褒め言葉に恐縮だが、俺だけの力じゃない。後ろを振り向いて、グレンを探すが何処にもいない。
もう1人居ますと言いたかったが、本人が居ない為、言えなかった。