混沌の中で選ばれし英雄 ~理不尽な世界を魔法と人型兵器で破壊してやる~   作:氷炎の双剣

126 / 147
ちょっと色々示唆したので後戻り出来ない状況です……


14-15 続く脅威

 

 ソフィアさん達、地上部隊を見送った後、HAW隊の我々には待機を命じられる。待機と言っても敵は来ないだろうし、我々の他に地球連合軍が居る。実質さっきの戦闘の疲れを取れという状況だ。

 

 基地内のあちらこちらにHAWのパイロットで溢れかえる。と言っても機体をしまうハンガー、そしてシャワールームが混んでいるだけで他は空いている。

 

 どのパイロットも汗だくで、それほど激しい戦いだったんだと再認識する。そしてそこにはエーススカイのロイさん達も居た。

 

「……無事だったか、二人とも」

 

 俺達を見詰めるロイさん。その表情はほとんど前と変わらない。感情が読めない人だ。

 

「はい、何とかギリギリで生き延びました……」

 

 本当にギリギリだった……

 

 するとエレナさんがデレクさんを蹴っ飛ばしてこっちに向かってくる。

 

「へぇ、ただ運がある坊やじゃなかったのね。良かったらこの馬鹿の代わりにウチに入らない?」

 

 地面に転がるデレクさんを指で差しながら聞いてくる。

 

「いや、私には力不足ですーー」

 

 そう言いかけた俺の頬を両手で挟むエレナさん。その際、ピッチリとしたスーツの大きくはだけた胸元から深い谷間が見えてしまい、慌てて目を逸らす。

 

 そんな動揺も面白そうに、俺の瞳を穴が空きそうなほど見詰める。

 

「……貴方は苦労するわね。今はゆっくり休みなさい」

 

 それだけ言うと手を離し、柔らかな笑みと共にシャワールームに向かっていった。

 

 ロイさんと俺達と床の一人が残される。そして突如床に寝ていたデレクさんは顔を上げて飛び起きる。

 

「全く見た目だけは良いのが罠だな。やっぱりあんなゴリラじゃ無くてクールなソフィアさんが良いな……」

 

 と呟いて何処かに消えるデレクさん。まるでグレンのようだ。

 隣のグレンを見ると、何回も頷いている。やっぱり同類か。

 

 それを特に表情を変えずに見送るロイさん。

 

「賑やかですね。お二方は……」

 

 するとロイさんはほんの少し口角を上げる。

 

「ああ……戦争で彼らとは巡り会ったが、戦争で別れるつもりはない。決っして誰も死なせない」

 

 そう言ったロイさんは目を細め、俺達の方へ向き、また何処かで……という言葉と共に去って行った。

 

 

 

 

 

 -----

 

 シャワーに入って一応身体はすっきりしたが、異様な精神的疲れは取れてなかった。部屋にグレンと戻り、ベッドに横になりながら考える。

 

 今日だけでグレンが死んだと思い、白熊と死闘を繰り広げ、死にかけた。

 これほどギリギリな戦いはウェリントン防衛戦以来だろうか。あの時も死にかけた所を仲間に救われたな……

 

 今でも俺を庇って攻撃を受けたマヤの表情を鮮明に思い出せる。そして最後の最後まで俺の事を思ってくれた彼女。

 もうあの時のような事を起こしたくない。でもまたグレンを失う所だった……

 

 その時掌に痛みを感じて、ふと見ると爪が食い込み、血が出ていた。無意識に俺は力を込めすぎていたのか……

 

 部屋に置いてある救急箱で治療していると、グレンが呟く。

 

「そんなに気を病む必要は無い。俺達は戦争やってんだ。お前は全員救えるとは思わない方が良い」

「だけどーー」

 

 顔を上げて見たグレンの表情はとても寂しげで、思わず言葉に詰まった。

 俺はグレンの過去を知らない。何故、中高とエルス国に居なかったのか。そしてそこで何があって強大な力を手に入れたのか。俺はグレンを知らなさすぎる。

 

 黙った俺を見て、言葉を続ける。

 

「……お前が言いたい事は分かる。だが人の掌は小さいんだ。そこに貯めておける水なんてほんの少しだ」

 

 グレンは掌にペットボトルの水を注ぐ。最初は零れなかったが直ぐに掌が溢れ、水が零れ出す。

 

「……分かってるさ。でも俺はこれ以上、目の前で大切な人が死ぬのを見たくない!!」

 

 駄々っ子のようかもしれない。でも家族やマヤのように目の前で逝くのは嫌なんだ。

 

 するとグレンは掌の水を空中に放り投げる。本来ならば水滴が床に落ちたりするが何故か霧のようになり、消えた。

 そして俺を鋭い視線でみつめる。

 

「ならば強くなるしかない。そう、誰にも負けないように」  

 

 単純明快な答えだった。だがそう簡単では無い。世界には俺よりも強い人はゴロゴロしている。目の前にさえ、居るのだから。

 

「そう、上手く行くのかよ……今から必死でやったとしても……」

 

 消えるような小さな声で呟き、その後沈黙が続く。

 

 いつもはうるさいグレンには珍しく暫くしても何も返してこない。

 

 ふと見るとグレンは難しい顔をしていた。

 

「どうした?」

 

 さっきまでの話ならばここまで難しい顔をしないはずだ。他に何がある。

 

 すると難しい顔のまま、俺に顔を向ける。

 

「嫌な風だ……戦いは終わってるはずなのに何かが、起きている」

 

 ソフィアさん達の事だろうか。確かに向こうでは戦闘はまだ続いている。だが制空権を取った今かなり優勢だと思うのだが……

 

「じゃあソフィアさん達に連絡取ってみるか?」

 

 すると首を横に振り、否定する。

 

「いや、そっちじゃない。この要塞内の話だ」

「要塞内? 敵は外ならともかく、ここは入り口が限られてるし、そこには当然厳重な警備が敷かれてる。そこを突破して、中に入ってきたというのか?」

 

 矛盾に気付いたグレンはまた黙り込む。

 仮に敵にノエのような強い奴が居たとして、入り口を突破したとしたら今ここは蜂の巣を突かれたように大騒ぎになってるはずだ。だが現に静かで、たまに来る巡回の兵士達も平穏だ。全く異変は起きていない。

 

 だがこういう勘という物は馬鹿にならない。特に生死の狭間に居る兵士達は感覚や思考が研ぎ澄まされていく。それにグレンが言うのなら可能性はあり得る。

 

「気のせいの可能性も有るからソフィアさんには連絡しないで俺達だけで見回らないか? ちょうど暇してた所だから散歩がてらに」

 

 手の治療も終わり、行く気は満々で腕を回す。

 

 そんな俺の様子にグレンは軽く微笑む。

 

「そうだな。散歩でもするか」

 

 そう言ったグレンの背中を少し嬉しそうだった。

 

 

 

 

 

 -----

 

 適当に要塞内を散歩する。出入り口やシャワールーム、食堂などは人が多いが少しでもそこから外れると人気がない。

 そういう所を重点的に見ているが特に異常は無い。

 

 グレンも注意深く見ているが特に何も発見はしていない。

 

 そして次の区間に行こうとしていると。行列が前からやって来る。

 

 先頭に兵士が歩き、後ろには鎖で繫がれた捕虜達が一列で行進していた。魔法もあるため、鎖では余り意味が無いが、こうして集団で繫がれていると中々動きにくい。

 抵抗しても、もたついている間に殺される。

 

 捕虜は10人ぐらいだろうか。兵士は前に1人、後ろに3人。全員が小銃を捕虜に構えている。捕虜の先頭が少し偉そうな階級の服を着ているのが見えた。

 これから情報でも聞き出すのだろうか。俺達とすれ違うようにさっき俺達が来た道を行く。

 

 その後、俺達は入り口に戻る。先ほどと変わらず多くの兵士が完全装備で見渡している。その中には魔法師も見られ、もし今から俺とグレンが暴れ出してもやられるのは見えている。

 兵士が固まっていればやりやすいのだが、高さや方向、バラバラに散っており、更に土嚢が積んである。攻めるとしても出来ればやりたくない守備の堅さだ。

 仮に突破出来ても援軍は無数に居る。

 

 と再度警備の厳重さを確認した所で部屋に戻る。

 

 グレンは頭を抱えて悩んでいる。

 

「まだ嫌な風は続いているか?」 

 

 落胆した様子で頷く。

 

「ああ、更に強くなった。これは間違いない」

 

 まさか勘違いかと思ったが、そう断言するならやっぱり何かがありそうだ。

 

 再度部屋の外に出ようしたが、巡回の兵士に呼び止められる。

 

「おい、何処に行く気だ?」

 

 2人組の兵士が訝しくこちらを見てくる。

 

「ちょっと散歩に行こうかと思いまして……」

 

 すると首を横に振られる。

 

「ダメだ。ここには機密も多い。同盟国とはいえ、見せられない物もある。不用意にここから出ないでくれ」

 

 と部屋の中に戻される。

 さっきは巡回に見つからなかったから大丈夫だった訳で、本来はダメだったのか……

 

 とりあえず部屋に戻り大人しくする。まあもちろん隙を見て抜け出すつもりだが……

 

 暫く外には兵士が居るみたいなので精神を落ち着かせて、俺も気で探してみるか。

 

 微かに聞こえる音が聞こえなくなっていく。

 

 まず隣に居るグレンの気、外に居る兵士の気、そしてシャワールームや食堂に居る無数の気を感じられる。要塞内まで広げると、最深部にユルゲン閣下やレジス少尉の気も感じられる。特に異常は無かった。

 そして元に戻ろうとした瞬間、微かに殺気を感じる。誰か、何処かは分からない。全然知らない人がユルゲン閣下達に殺気を向けているーー

 

 目を開けた時にはグレンが俺の顔を覗き込んでいた。手に持っているペンは置けよ。

 

「戻ったのか。どうだった?」

 

 残念そうに戻るグレンの背中を睨みながら答える。

 

「誰かがユルゲン閣下を狙っている。それも既に中に入っている。だが今何処に居るのかは分からない」

 

 曖昧な答えだがグレンにはそれで良かったようだ。

 

「やはりか……殺気かな、俺が感じたのは。俺が女以外にも分かるとは……」

 

 とどうでも良いことを腕を組んで考えているが、どうするんだ。

 

「もう入ってる事を聞いて気付いたのだが、誰か分かったわ」

「え?」

 

 驚いた俺の顔を見ながらニヤリと笑ったのだった。

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。