混沌の中で選ばれし英雄 ~理不尽な世界を魔法と人型兵器で破壊してやる~   作:氷炎の双剣

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14-16 罠

 

 楽しそうに笑うグレン。それは先に答えを知ったかのような人のようにニヤニヤと笑う。暇ならばもう少し考えても良いが、今は時間が無い。

 

「勿体ぶらなくて良いから早く教えろ」

 

 少し睨むと肩をすくめる。

 

「はいはい。じゃあ俺達が行った所で武装してたのは?」

「ん? それなら出入口と重要な場所と巡回か?」

 

 と思い当たる場所を挙げてみる。

 だがグレンは横に首を振る。

 

「まだ1つ忘れてる。すれ違っただろ?」

 

 まだ有ったか?

 頭を捻ってさっきまでの事を反芻し、ふと思い出す。

 

「あ、すれ違ったのは捕虜達と兵士か。でも鎖で繫がれてたし、兵士も完全武装だぞ」

 

 するとグレンは大きな溜息を付く。

 

「やれやれ、まだまだだな。いいか、HAWがメインになった近代戦だが未だスパイは居る。それは全員が人の顔なんて覚えてないし、頻繁に入れ替わるからだ。だから誰も気に留めない。また必要なIDカードは悲しいことに簡単に偽造出来る。要するにもし引率の兵士が全員スパイだったら?」

 

 引率の兵士がスパイーーそれはもはや見張りは居らず、自由に中を歩き回れる事と同じだ。

 

 顔が強ばった俺にグレンは続ける。

 

「ま、これは勘だけど、一応確証もある。俺達と反対に向かった奴らはーー俺達がその前に行った場所はどこだ?」

「あっーー」

 

 俺達、すれ違う前は人気の無い発電機や弾薬庫を見ていた。その方向に向かって行った捕虜である彼らが向かうべきーー牢屋など無い。方向は反対だ。寄り道する場所も無い。

 考えられるのは、1つ。人気の無い場所に向かい、そこからーー

 

 その時、重い地響きが伝わる。地震かと思ったが直ぐにサイレンが鳴る。

 

『弾薬庫及び、発電機室で火災発生。直ちに消火活動に移れ』

 

 消火活動が失敗して弾薬庫に火が回ったら大爆発を起こす。ユルゲン閣下の居る地下司令室までは届かないが大きな被害が出るのは間違いない。

 

 そして外の見張りも消火活動に向かったのかがら空きになる。そりゃあここまで届くからな。命が惜しいなら消火活動に向かうだろう。

 

 フリーになった俺達はお互いに顔を見合わせ、悪い顔で微笑む。

 

 

 

 

 

 -----

 

 -地球連合軍 ユルゲン-

 

 暗い室内を多くの小さな光が照らしていた。それはモニターであり、多くの人が釘付けになって見ている。面白いテレビ番組とかでは無い。全てが戦場の情報で、刻々と変わる戦場の情報を読み取り、報告してくる。

 そして一段高い場所に位置するここのモニターにはそれらがまとまって来る。

 

 我らの新兵器、レーザー砲によって敵のHAWは大損害を受けた。そこから戦況は一変し、守る側の我々が攻めに転じた。途中、敵の抵抗があったがエルス国の活躍もあり、敵は撤退し、地上戦に移行した。

 

 だが敵のHAWは撤退しており、居るのは逃げ遅れた歩兵達だ。制空権と圧倒的兵力で優る我々の勝利は揺るがないだろう。

 

 待ってた地上戦とばかりに多くの士官がここを出て行った。残ったのは僅かな士官とレジス少尉とオペレーター達と二人の護衛だ。

 

 一息つこうと戦闘指揮所から移動してコーヒーを入れる。部下が何度も私が入れます、と言うが、自分で入れたのは格別に美味しい。

 

 そんな時、地響きが身体を襲う。カップが落ちて割れるが、そんなことよりも身体は動き出していた。

 

 走って戦闘指揮所に戻ると、顔面蒼白の部下が詰め寄ってくる。

 

「申し上げます!! 要塞内の弾薬庫付近で火災発生。直ちに消火活動をさせています」  

 

 報告されたのは敵襲では無くて、火災だった。だが不自然な火災だった。火気厳禁な場所で火を使ったアホが居るだろうか? 弾薬に火が付いたら大きな損害が出る。

 

 これは調査のしがいがあるなと思っている時に、戦闘指揮所の入り口から通信が来る。

 

「失礼します。高官を捕らえたと捕虜を連れてきている者達が居るのですが、どう致しましょうか?」

 

 困惑した表情の門番。

 普通ならばここは立ち入り禁止で、捕虜は牢獄に入れて、取り調べをする物でここに連れてくるものではない。

 

 だが高官ならば直接話したいという気持ちもある。

 

 顔を見せるように門番に言うと、カメラに捕虜の高官を近づけさせる。

 

 その顔を見ると確かに高官であった。それもかなりの。

 それを見たレジス少尉が顎に手を当てて考える。

 

 とりあえず話が聞きたいな。

 

「よし、中に入れろ」

 

 と指示を出して入口の扉を開けさせる。それと同時にレジス少尉が叫ぶ。

 

「待ってください!! これは罠です!!」

 

 と言った瞬間、銃声が聞こえる。

 その方向を見ると入口の兵士が引率の兵士に撃たれて倒れていた。

 

 マズいと思って扉を閉めようと思ったが既に中に入られる。

 

 敵は小銃を持った兵士が4人。鎖に繫がれた奴らが10人。だか鎖に繫がれた奴らも解錠しようとしている。

 

 アサルトライフルをこちらに向け銃撃するが護衛が間に入り、ウォールシールドで防ぐ。

 

 慌ててオペレーター達も掴みかかるが、銃で武装した敵に為す術無く撃たれる。オペレーターも軍人だが銃は持ってない。

 

 士官達はハンドガンで応戦するが、相手はアサルトライフル。一発撃てば10発返ってくるような状況で一人、また一人と死んでいく。

 

 二人の護衛は俺を守ることに必死で他に構う余裕は無い。唯一俺の背中に居るレジス少尉は嘆いていた。

 

「申しわけありません……火災発生からこのタイミングでの不自然な捕虜面会。敵の策略と見抜くのが遅すぎました……」

 

 と拳を握り締める。

 

「いや、俺が容易に開けたのが悪かった。お前は気付いて止めてくれた。それだけで十分だ」

 

 肩を叩いてやると感謝を述べ、考え始める。次なる一手を頼むぞ、レジス。

 

 だがその間にも状況は更に悪化した。敵の捕虜達全員が魔法師だった。次々と魔法をウォールシールドに撃ち込む。

 

 護衛の二人は優秀でランクはB。護衛で無ければ出世コースに乗れたかもしれない。だが二人は出世コースを蹴り、護衛を続けている。

 恵まれた護衛だが、この戦力差はどうしようも無い。もし二人だけならば戦えただろう。だが俺を守りながら戦うには敵が多すぎた。

 

「済まない。俺が足手まといなせいで満足に戦えんだろう」

 

 すると前を向きながら答える護衛。

 

「何をおっしゃいますか。守るのは我々の使命、それをこなしながらどう戦うかが我々の腕の見せどころですよ……ですが今回は守るだけになりそうです……力不足で申し訳ありません」

 

 こちらからは見えない顔はどんな表情なのだろうか気になるが、見えない方が彼らに良い気がした。

 

 そして抵抗も虚しく、次々と上がるオペレーター達の悲鳴に心を痛めながら、頭をフル回転させる。

 そして思い付いた作戦をレジス少尉に伝えると止められる。

 

「何をおっしゃるですか!! 閣下を狙ってきた連中に閣下を差し出すなんて出来ません!! どうかお考え直し下さい!!」

 

 今回は取り乱すレジス少尉。だが俺は少しでも多くの命を拾う。

 

 立ち上がり、声を張り上げる。

 

「私がユルゲンである。私を殺しに来たのだろう?」

 

 高官に目線を飛ばすと高官は手を挙げて攻撃を止めさせる。

 その間に護衛はウォールシールドを解除して、上がった息を整える。

 

「その通りだ。ユルゲン閣下、お命を頂戴しに参った」

 

 その声を聞くと女性だと分かる。見た目は男装しているが女性の声の高さだ。

 

「まさか女性だとはしらなかった。我々のデータもまだまだだな」

 

 するとその高官はせせり笑う。

 

「火星独立軍では性別、血筋なぞ関係ない。能力がある者が上に上がるのだ。それに比べ、地球連合軍は相変わらず腐ってるな」

 

 冷たい目で辺りを見渡す。軍人という肉体的な職業上の理由も有るが、それでも女は少ない。やはり未だ古い慣習に囚われているのだ。

 

「……確かに地球連合軍はまだまだ改革しなければならない。だが君らのように知識も、覚悟も、意志すらない烏合の衆に言われる筋合いは無いな」

 

 明らかな挑発だが、それに青筋を立てる高官。

 

「ふんっ、負け犬の遠吠えは見苦しいな。お前はあくまでも地球連合軍方面指揮官として立派な最後を遂げたいだろう? なら自殺しろ」

 

 目の前に投げられたハンドガン。それを拾って、自分の頭に当てる。

 

 それを見た護衛が慌てる。

 

「それはどうかお考え直しを!! 我々の命より閣下の命の方がどれだけ大事か……」

「我々の使命をどうか果たさせて下さい……」

 

 今にも泣き出しそうな表情をする二人。

 

 俺は高官を睨むと声を挙げる。

 

「もし俺が自殺したならばこれ以上殺さないでくれ。ターゲットは俺だろう?」

 

 そう言うと高官は怪しく微笑む。

 

「分かった。約束しよう」

 

 だがレジス少尉は認めなかった。

 

「ユルゲン閣下、彼らは約束を守るつもりはありません!! 何故ならユルゲン閣下が死んだら我々、要塞内は死兵と化します。彼らが逃げることは不可能です。それを彼らも承知してるはず。なので彼らも死兵としてここにやって来ており、生き残るつもりなんて彼らには毛頭ありません。どうか必ず破られる約束をしないで下さい!!」

 

 大きな声で主張するレジス少尉。先程と違って、その瞳には強い意志が秘められていた。

 

 そう言われたら俺の心は動くしなかった。俺は銃口を頭から外し、敵に向ける。

 

「……残念だが、君の提案は飲めなくなった。最後まで抵抗させて貰うよ」

「その選択、仲間の悲鳴を聞く度に自分が愚かだったと思うが良い」

 

 再度始まる戦いに身構えた時、声がどこからか聞こえる。 

 

「その選択、正解っすよ」

 

 そして視線が集まった入口の先にはグレンとラインが剣を抜いて構えていた。

 

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