混沌の中で選ばれし英雄 ~理不尽な世界を魔法と人型兵器で破壊してやる~ 作:氷炎の双剣
とうとうメインが……
15-1 世界の不思議
法律で決まっている、魔法を使用してはいけない図書館の中で魔法を使ったグレン。幸いな事に誰にも気付かれる事無く、俺の跳ね上がった心拍数とは裏腹に静寂が訪れる。
グレンが手に取った本はかなり古びており、色あせている。
ほとんどが電子化された今、余り必要のない紙の古文書だ。だが何故紙の本を?
グレンは不敵な笑みを浮かべたまま、本を開く。中に書いてあるのは世界史の話だった。だが書いてあるのは変哲も無いことで特に可笑しいところはない。
「ま、見てろって」
グレンが本に手をかざすと、本の文字の上に更に文字が浮かび上がっていく。重なるわけではなく、元々書いてあった文字が消えていく。なんだこの本は……
その文字にはこう書いてある。
『この本を手にし、この文字を読めるということは選ばれし者である。これは他人には見せてはならない物で、決して公表してはならない。そしてこの力は危険な物である』
選ばれし者? 他人には見せてはならないとあるぞ? そう書いてある物を俺に見せているグレン。罰でも当たるのでは?
だが爆発も雷も起こる様子は無い。
そんな俺の様子を気にした風も無く、更に読み進めていく。
『この本は選ばれし者についての本である。世界が混沌を極め、荒れに荒れた時に突如現れる能力者達の事を選ばれし者と呼ぶ。その能力は様々で、炎、風、水、土、雷、そして光と闇となっている』
世界が混沌……正に今のような大戦。こういう時に現れると。
そういえば過去にあった大戦にも英雄が現れた。あれも関係しているのだろうか。
謎は深まるばかりで、先を読んでいくしかない。
『能力者の数は全てで7人。同じ能力者は同時代には決して現れない。また能力者はランダムで現れ、固まる可能性もある。仕組みは分かっていない』
全部で7人か……まさかその1人はグレンだと言うのか……
本を真面目に読むグレンの横顔は凛々しくいつものふざける態度とのギャップに目が惹かれる。憧れもある。だがそれ以上にグレンの過去が気になっていた。
『その能力が発現するとそれぞれの属性の特色が1つ現れ、身体能力、魔力が大幅に上昇する。普通の魔法師と比べると10倍近く魔力が違う』
10倍!? 10倍もの魔力があるならば俺に魔力を分けても余裕なのは納得出来る……だがその力は強力過ぎる。
10人を相手にすれば互角と一見思うが、それは違う。10倍もの魔力を持つならば敵の防御は軽く突破され、ファイヤーボールすら必殺級となる。魔力を節約しても威力は増大するのだ。並の魔法師ではファイヤーボールをウォールシールドで防ぐ事は出来ないだろう。
そして文章は最後にこう書かれていた。
『もし選ばれし者が7人揃った時、世界は救済されるか、破滅の道を辿るだろう』
破滅ーーその言葉は俺の中で大きく残った。
救済と破滅、それは両極端な結果でそれは選ばれし者達がどうするかによって決まるのだろう。
そんな強力な力をーー欲しいとふともう1人の俺が言った気がした。いやそれは俺だったかもしれない。
そしてこれ以降のページには何も浮かばず、ただの歴史の本となっていた。
本を静かに閉じたグレンは俺を見詰める。
「……どう思った?」
その声は恐る恐る聞いたように小さい物だった。
「……この話が本当ならば、俺はその力が欲しい。そして多くの選ばれし者を集め、この戦争を終結させる」
これ以上大切な仲間達を奪われたくない、その気持ちが更に強くなる。そしてそれと同時に心に大きな闇が蠢くのも感じる。
俺の言葉を聞いたグレンは嬉しそうに微笑む。
「お前ならそう言うと思ってた。良いだろう、選ばれし者への試練を受けてみろ」
本を普通にしまったグレンは着いてこい、と言い、図書館の出口に向かって歩き始める。
その力は一体何処に眠っているのだろうか……
そう考えながらグレンの背中を追っていった。
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俺らはエルス国本部に来ていた。
代表への面接は人気で決められた短い時間に殺到しており、更に申請理由は持ち物検査など色々な手順が必要だ。代表は国家元首であるから当然ではあるが。
そして多忙な身で有りながら多くの人と会うという代表の体力に感嘆するしかない。
ふざけた申請理由では弾かれるのが普通だ。かといって特に理由もないが……
するとグレンが申請理由を申請用の端末に打ち込んでいく。
その理由とは
『ラインについて』
そう書かれていた。
え? 俺?
そんな俺の驚きを気にした様子も無く、スラスラと打ち込み申請ボタンを押す。
しばらくすると奥の部屋から何人かの兵士が現れ、端末を見ながら読み上げる。
「ライン、グレンの両名、面談申請が通った。今すぐとの事だ。着いてこい」
前後左右挟まれるように兵士が周りにつき、代表が居る部屋に連れて行かれる。これも変なことしないように見張られているようだ。様々な人が来るから仕方ない。
代表の執務室に着くと兵士がモニターに話し掛ける。
「失礼します、ライン、グレン両名。お連れしました」
「入ってよし」
了承を受け取り、部屋に入っていく。
中には部屋の隅に一人ずつ、4名の護衛と机を隔てた椅子に座る代表とその隣にも1名居た。
俺らを中に入れると兵士は部屋を出て行く。
自動扉が閉まった音と共に代表は話し始める。
「久しぶりだ、2人とも。初の大きな戦場、良く無事で帰ってきた。君たちを見込んだ甲斐があった」
満足そうに頷く代表に俺らは頭を下げる。
「……さて、ラインについてと書いてある申請理由だが……何があった?」
顔の前に手を組み、真剣な表情に変わった代表はこちらに答えを促す。
「はっ、その前に護衛の方々には退出を願いたいのですが……」
四隅に不満そうな目を向けるグレンに護衛達は額に青筋を立てる。
「ふざけた事を……我々は代表の護衛だ。離れる訳にはいかん」
殺気を放たれるが、代表が手を挙げる。
「待て、コイツらの言うことに従ってくれ。もしコイツらがスパイだとしても仮にも私はエルス国代表。まだまだ二つ名は健在だから大丈夫だ」
代表が周りの護衛達に視線を送ると渋々と部屋を出て行き、ここには3人だけになる。
何を言うのかグレンは。
「……ありがとう御座います。まあラインについてでは無いんですけどね……」
と苦笑いするグレンに代表の鋭い視線が刺さる。
「……私を騙すとは良い度胸だね。まあ良い。仮に襲うなら無言だろうし、何か私に用件が有るんだろう?」
騙したことを水に流してくれた代表は話を促す。
「流石、エルス国代表。話が早いです。……代表はご存じですか、選ばれし者の事を?」
ストレートに言ったグレン。だが代表の顔は険しくなる。
「……選ばれし者? 聞いたこと無いな……何かのチームか?」
アゴに手を置いて、端末で調べる代表。だが情報は出て来ず、頭を捻る代表にグレンは虚空を見ながら語り出す。
「……この世界には色んな不思議が存在します。魔法も科学も、まだまだ人間には理解しがたい物ばかり。そんな世界に1つの伝説が存在します」
本に有ったフレーズを言い始める。
『世界が混沌に満ちた時、選ばれし者達、7人が現れる。世界を救うか、破滅の道へ至らしめるかは強大な力を持つ、その者らの心次第である』
その言葉を聞いた代表は神妙な面持ちでグレンを見詰める。
「……もしその者らが存在したとしても、今は科学も発達している世界初。1人で無双出来る時代は終わっている。たった7人に世界の命運を委ねられない」
指導者としての代表の意見に俺は感銘を受ける。立場が違えば意見が違うんだ。
否定する代表にグレンは微笑む。
「確かに7人が世界を
怪しく微笑むグレンに代表は目を大きく見開いた。