混沌の中で選ばれし英雄 ~理不尽な世界を魔法と人型兵器で破壊してやる~   作:氷炎の双剣

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まだ続きます


15-2 駆け引き

 

 グレンは代表にゆっくり近付き、机越しに怪しく微笑む。

 

「今なら2人手に入るお得な期間となっております」

 

 ーー2人!? もう1人は誰だ!?

 

 懐疑的な視線を向けるがグレンは代表に視線を向けたままだ。

 

 そして代表は大きく見開いた瞳を怪訝で曇らせる。

 

「……君の口ぶりからはラインも選ばれし者だという感じに聞こえるが?」

 

 俺も代表と同じように聞こえる。しきりに頷き、グレンの言ってることを否定する。

 

 だがグレンは怪しい微笑みを崩さず、俺の隣に戻ってきて肩に手を回してくる。

 

「それは、これからコイツを選ばれし者にするんですよ」

 

 ーー俺を、選ばれし者に!?

 

 思わず隣のグレンの顔を凝視してしまう。俺の視線に気付いたグレンは優しく微笑む。

 

 そしてグレンの発言に更に眉をひそめた代表は質問をする。

 

「まさか……君には他の選ばれし者を選択、力を付与する事が出来るというのか?」

 

 もし代表の言った事が本当ならばグレンが世界の命運を握っているというのか……

 

 だがそんな俺の考えとは違い、肩をすくめるグレン。

 

「……少し、違いますね。俺が出来るのは試練を受ける者を個人的感情で選ぶだけで、案内役みたいなもんです。それもソイツが受かるかは分かりません」

 

 代表はその話を聞いて、顎を触りながらグレンの意図を読もうとしていた。

 

「……ならば、それを何故私に話した? 国の代表としては少しでも戦力を増やしたい。君の意向を無視して試練の有りかを聞き出し、選ばれし者を全てこちらの陣営で管理、戦力として使うのも可能だ。そんな危険性を考えなかった訳ではあるまい?」

 

 怪しく瞳を光らせる代表にグレンは楽しそうに笑う。

 

「流石、ブライス代表だ!! その常に国を思う心意気、お見それしました。ですが、私はブライス代表を信頼してます。そして選ばれし者はそんな(やわ)では有りません。もし7人が揃ったならば、国1つ、簡単に滅ぼせるでしょう。現に若輩者の私でさえ、代表に匹敵する力を持っています」

 

 代表とグレンの間に火花が散った気がしたが、直ぐに無くなる。

 代表が面白そうに微笑んでからだ。

 

「ふふ、言いおるなグレン。伝説の選ばれし者がどれだけ強いか知らんが、まだ君に負ける程年老いてはいない」

 

 手を顔の前に組んだ代表から瞬時に膨らんだ魔力と殺気に俺は悪寒を感じ、体が動かなくなる。

 そしてグレンは冷や汗を掻きながら、楽しそうに笑っていた。

 

「……流石は、神速の英傑。こりゃあ俺もまだまだだな……」

 

 さっきまで強気に出ていたグレンは苦笑いをして俺の隣まで代表に背を向けて戻ってくる。

 そして代表に頭を下げる。

 

「数々の無礼をお許し下さい。ですがこれで我々も安心して戻って来れます。我々は強制されて陣営には参加しません。自分で決めた道を進みます」

 

 グレンは俺の顔を自信ありげに見る。俺は頷き返し、代表に自分の気持ちを伝える。

 

「私も同じ気持ちです。もし強大な力を手に入れたとしたらそれは自分の気持ちに従って使いたい、信念を貫く為に使います」

 

 もしこの力を悪用しようとしたらそれは凄い被害を世界にもたらす事が可能だろう。だがそれは俺の目指す所じゃない。この戦争を一刻も早く、正しく終わらせる事に使うんだ。

 

 俺の瞳を覗く代表は最初に会った時のように深く、俺の事を見ていた。だが今ならば俺は胸を張って見られても大丈夫だ。

 

 すると代表は柔らかな笑みを浮かべる。

 

「……大丈夫そうだな。何かしら理由があって、また暴走し、我々と敵対するというのなら私は全力で君達を迎え撃つ。そうならない事を切に願っているよ」

 

 そう言ってくれた代表は俺達に長期休暇をくれ、様々な縛りから解放してくれた。

 

 執務室を出たら端末に電話が入っていて、見るとマナンからであった。

 通路の端によって電話をマナンにかける。

 

 するとコール音が1、2回目鳴ったところでとられるが聞こえてくるのは銃声ばかり。

 え? 戦闘中じゃないだろうな。

 

 騒がしい音声の向こうから聞こえたマナンの声は嬉しそうだった。

 

「おかえり、ライン!! 怪我とかしてないよねっ?」

 

 まず俺の心配をしてくるが心配なのはそっちの状況だよ。

 

「いや、怪我はしてないが……そっちは戦闘中なのか!?」

「違うよ。今は演習中だよ」

 

 演習なら良かった……いや、訓練中に電話はマズいだろ!!

 

 そんな俺の考えに気付いた様子も無いマナンは話を続ける。

 

「これが終わったら帰るから、その後会える?」

 

 そう言いながら一際大きい銃声が聞こえてくる。マナンが撃ったのだろう。俺の鼓膜が逝きそうだ。

 

 隣のグレンを見ると会話が聞こえていたのか、ニヤつきながら背中を叩かれる。

 

「おうおう、行ってこい。これが最後の合瀬かもしれんからな」

 

 ったく、マナンとはそういう関係では無いというのに……

 そんな否定も無駄だと分かっているのでそのまま頷く。

 

 ーーというか最後って……

 

「え? 試練って死ぬの?」

 

 そう聞くとグレンは首を傾げる。

 

「あれ? 言ってなかったか?」

 

 忘れてたー、とふざけた顔で自分の頭を叩いてるグレン。

 

「まあ、世界を変える力だ。そのぐらいの防衛システムはあるさ。まあ肉体的ではなく、精神的な試練だ。って事で今日が最後の晩餐になるかもしれんなぁ」

 

 面白そうに言うグレンと対照的に俺は焦る。

 

「いきなり過ぎんだろ!! 明日死ぬよといわれて何をすれば良いんだよ!!」

 

 と抗議のように言うが、グレンはそれを聞いて真剣な表情に戻す。

 

「軍人はいつ死ぬか分からない。死ぬのは今日かもしれない、明日かもしれない、そう思って暮らさなければならない。それを忘れていないか?」

 

 そう言われて俺はハッとさせられる。俺は運が良くてここまで生きて、それを忘れてはいけないんだ。悔いの残らない人生を送らなければならない。

 

「分かったなら良い。さぁ、悔いの残らないように遊べ」

 

 笑ってそう言うと、消えるように立ち去るグレンだった。

 

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