混沌の中で選ばれし英雄 ~理不尽な世界を魔法と人型兵器で破壊してやる~   作:氷炎の双剣

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また書き貯めしときます。週毎だと予定とかでめっちゃ短くなるときがあるんですよね……今回は今週2話書きました


15-5 託された面倒

 

 妖しく微笑む両者で先に啖呵を切ったのは老婆だった。

 

「まずお主達は何を求める?」

 

 それにグレンはすかさず答える。

 

「俺らが欲しいのは車で、それも破棄しても良い物だ。必要無くなったら燃やすつもり予定だ」

 

 燃やすという言葉を聞いて大きく口角を上げる老婆。

 

「これは相当ヤバい案件だねぇ。お尋ね者で追われてると言うわけか、それも身分証もないと」

 

 老婆は手元のタバコに火を付けて、一息つき少し考えた後、頷く。

 

「こちらも迷惑掛けたようだし、そもそもここに入ってくるって事はワシの事を知ってだろう? なら期待に応えないとのぅ。だがこちらにも条件がある」

 

 タバコの灰を灰皿の縁を叩いて捨てて、吸って吐いた煙が虚空に消えていく。

 

「条件とは何だ? こちらも難題は受けかねるぞ」

 

 グレンにも譲れないところはあると鋭い視線が物語っていた。

 

「難題じゃないわい。車を焼くなら後ろに積んで欲しい物がある。それの中身は確認せず、そのまま焼いてくれるのが条件じゃ」

 

 焼く? 焼く事をわざわざ俺らにやらせるのか……何か危ない気がするが……

 

「一体俺達に何をさせる気だ?」

 

 グレンも同じ事を思ったらしく、質問をする。

 だが老婆は横に首を振る。

 

「そこは聞かないのが常識じゃよ。

 そういえば今の時代どの車にもGPSが付いておる。だからお主達が車を盗んでも場所が分かるし、外している車も怪しまれて捕まる。だからこうやって持ち主から借りるのが一番じゃろ?」

 

 一般人に交渉しても良いが、それは信頼が置けない。金を貰って、通報することもあり得る。だからこそこういうある意味信頼が置けるここに話を持ちかけたのだ。

 色々悪さをやっているここは敵の敵は味方という理論で選んだ。

 

 もはやここ以上の好条件は無いかもしれない。承諾するしか無い。

 

「……分かった。グレン、この条件を飲もう」

 

 その言葉にグレンは目を見開いて俺を見詰める。

 

「お前がこれを選ぶなんて珍しいな……この条件は絶対面倒な事になるぞ? それでも良いのか?」

「ああ、これらも試練と考えれば……」

 

 俺の決意を聞いたグレンは微笑んで、俺の背中を一叩き。痛って……

 

「よっしゃ、受けるか。車も飛びっきりいい奴頼むぜ?」

 

 承諾の意志を見せると老婆はニッコリ笑う。

 

「商談成立じゃ。今すぐ車を用意させる。ちょっとまっとれ」

 

 老婆が出て行き、グレンと2人きりになる。

 静寂がここを支配した時、グレンがふと語り出す。

 

「なんかこうしてお前と居ると外国への旅行だと感じるわ」

 

 そう言ったグレンの表情は楽しそうではなく、複雑な思いを込めた物であった。何かを思い出しているのだろうか。

 

「次来るときは隠れてじゃなくて、堂々と行きたいな。……万里の長城とか見たいなぁ」

 

 咄嗟に思い付いたのは万里の長城で他にもいくつも浮かび上がる。今では中国は火星独立共和国の支配下にあるのでエルス国や地球連合国の人は入れない。現状入れるのは日本などの中立国や、支配下の国だ。

 

 と先の旅行話に花を咲かせていると老婆がやってくる。

 

「準備出来たの。さぁ頼むぞ」

 

 老婆の案内で行くとガレージには2人乗りの軽トラだった。後ろには怪しげな箱が鎖などで厳重に車にくくりつけられていた。

 

 そして何故かガラの悪い奴が外まで並んでいて道を作っている。

 

 運転はアカデミーで免許取ったし、むしろHAWに比べれば楽過ぎる。だがそれが油断で事故はシャレにならん。

 

 俺の運転で発進した車は男達に見送られて、街に消えていった。

 

 

 

 

 

 北京の街は栄えていて、多くの人口が北京に集中している為、街が何処までも続いていた。

 因みにエルス国では中心部を離れたら、畑が見える。

 

 多くの車が行き来していて、道も3車線が何処までも続いている。だがそれでも中々進まない。

 渋滞にハマり、前のボードに脚を乗っけてあくびをかいているグレン。行儀悪いぞ、なんて言い飽きたからもう言わないが。

 

 渋滞で止まっていると窓をノックされる。まさか追っ手か!? と思わず構えてしまうが、外に居たのは笑みを浮かべてる老人。

 

 中国語で言われて分からないが、手振りや持ってる物で大体分かる。暇なドライバーへの訪問販売だな。まとわりつかれても嫌だったので、売っていた月餅(げっぺい)というお菓子を買ってみる。

 

 食べてみると(あん)が入っており、甘い。若干眠気が混じっていた頭が糖分で起きる。これがジュースのように気軽に買える値段だからビックリだ。気に入った俺は10個買い、運転しながら頬張る。

 グレンはどうやら1個で満足し、それ以降手をつけてこない。日本のアリサと居た時とは違い、独り占め出来るな。

 

 渋滞から抜ける頃には全て平らげてしまって、お腹もいっぱいになる。そして眠気も最高になり、グレンに運転を代わって貰うがーー

 

「ウッヒォォーー」

 

 と叫びながら猛スピードで誰も居ない道路を駆け抜けるグレン。もちろんそんな中で寝れる訳がない。

 

「捕まらないと思うが、こんなスピードで寝れるかぁぁぁ」

 

 それにわざと左右に揺らすグレン

 は俺を寝かせる気が無いらしい。

 

「まあまあせっかくのドライブだから楽しもうぜ!! ーーおっとどうやらお客さんだ」

 

 グレンが指差した先には白塗りのバンが併走していた。俺らを抜かすにしてはスピードが遅すぎる。

 

 そしてスライドドアが開いて中からは銃火器を持った男が出て来る。

 

「ほんとだな……こりゃあ厄介な物を積んじまったようだ……」

 

 その銃口から轟音を鳴らして容赦なく弾丸を放たれる。

 

「まだ俺らの正体には気付いてないようだな」

 

 とグレンが涼しい顔をしながら雨のような銃撃から車を何かで覆う。それに当たり銃弾は落ちていく。

 

 銃火器が無駄だと気付いた敵は中に引っ込む。

 無駄だと分かったら帰ってくれないかな? 大事(おおごと)にはしたくない……

 

 だがその願いも虚しく、中からは対戦車ミサイルを持った男が出て来る。

 うっそだろ!? 軽トラに対戦車ミサイルを撃つ奴なんて居るのかよ!?

 

 白塗りのバンはスピードを落とし、俺らの後ろに付く。そして身を乗り出して構えた対戦車ミサイルが放たれる。

 

 弾着まで1秒も無いーーと思ったがミサイルはこちらに飛んでくる事無く、何故か上に逸れていく。そしてミサイルは一回転して元の白塗りのバンに向かっていき、直撃した白塗りのバンは木っ端みじんになる。

 

 高く上がった炎にグレンは喜ぶ。

 

「おおー花火だ!!」

 

 どうせさっきのミサイルの軌道はグレンの力だろう。近代兵器すら凌駕するグレンの実力に恐怖を覚えるが、それと同時にこれから手に入れる力に体が震える。

 

 それから暫く平和な時間が訪れる。また周りも木々に覆われ、山道に入ったようだ。人気は全く、たまにすれ違う車が居るだけだ。

 

 運転は俺に戻り、眠気はさっきの襲撃で吹き飛んだ。涼しい山道をドライブしていると爆音が近付いてくる。音的に飛行機では無いが、ヘリだろうか?

 

 凄く近くまで音は近付いてくる。何処に居るのだろうかと周りを見渡すが、見つからない。するとグレンが後ろを指差す。バックミラーで見る後ろに戦闘ヘリがくっついていた。

 

「そこの軽トラ。荷物を渡せ。助けてやる」

 

 と片言の英語で言ってくる。

 戦闘ヘリ持ってるとか軍隊かよ……

 

 さっきのバンとは違い、戦闘ヘリは本当に強い。小回りが効き、空を飛び回る戦車と言われている。火力は戦車すら破壊する対戦車ミサイル、そして歩兵なんて木っ端みじんで壁も貫通するバルカン砲

 。それを一方的に空から撃ってくる化け物だ。正直歩兵では携帯用対空ミサイルが無ければどうしようも無い。

 

 ーーが、こちらにはグレンが居る。

 横を見ると呆れ顔になるグレン。

 

「また俺かぁ? ほれほれ、これも試練だろう?」

 

 出番を譲られるが運転しながらどうしろと!!

 だがそんな心配もグレンは分かってらしく、大丈夫大丈夫、と言う。

 

 やけくそ気味にアクセルを放すが車のスピードは落ちず、曲がり道でもハンドルは動かず曲がる。どういう仕組みなのか気になるが、そこは今考えない。

 

 運転席の窓から外に出て、後ろの荷台に乗る。

 

「さて、戦闘開始だ」

 

 パイロット席に居る奴の顔を睨んでそう言った。

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