混沌の中で選ばれし英雄 ~理不尽な世界を魔法と人型兵器で破壊してやる~ 作:氷炎の双剣
轟音を鳴らしながら目の前で羽ばたく戦闘ヘリ。若干傷が汚れが目立つ為型落ちはしてそうだが、人一人やるには性能が十分過ぎる。
だが俺は魔法師。そう簡単にはやらせはしない。
ヘリのローターの爆音で声はどうせ届かないだろう。首を親指で横に切る仕草を見せつける。もちろん否定の意味だ。
すると意図が分かったのか、こちらにガトリング砲を向けてくる。ただの軽トラにそんな物をぶっぱなしたら穴だらけになるだろう。またAMAを着ていない俺は肉片と化す。
ガトリング砲が回転し始めるのと同時に無数の弾が吐き出される。ガトリング砲が人類史に現れて以降、普通の人が簡単に多くの人を殺せるようになった。そして延長線上である武器の銃口が俺に照準を定め、唸りを上げる。
「ウォールシールド!!」
素早く敵と俺らとの間に壁を作り出す。ガトリング砲ぐらいではビクともしない。この魔法は魔法師の生命線だ。
すると敵はガトリング砲の掃射を辞め、機体左右の対戦車ミサイルをぶっ放す。ウォールシールドに当たり、爆発音と振動がトラックを大きく揺らす。
対戦車ミサイルとなるとウォールシールドもそう保たない。敵もそう多くは対戦車ミサイルを撃てないが、装備している分を撃たれたら俺では……
このままでは死が待っているだけで未来など無い。だが俺は諦めない!!
すると心臓が大きく鳴る音が聞こえる。そして次の瞬間には思考がクリアになる。もう1人の俺が手を貸したのか。幸い全て俺の支配下で、奴は出てこない。
戦闘ヘリは空を飛ぶ以上、雷に対して想定されている。ならばライトニングよりと同等の速度を持つ魔法ーーふと頭の中を一条の光が通り抜ける映像が出て来る。その光は俺の仲間を奪った光だった。マヤを撃ち抜いた貫通魔法、それを皮肉にも思いだす。
その貫通魔法の術式は分からない。だがファイヤーボールを加工すれば出来る気がした。加工は平時に色々練習をして長年の研究で出来る物だ。ぶっつけ本番でやれると思えない難しさだが、今の集中力ならばやれる気がした。
ウォールシールドを張りながら、ファイヤーボールの魔力量の調整やイメージを作り上げる。普段の俺にはウォールシールドの維持で精一杯だ。
そういえばウォールシールドの維持力も上がっている。これが集中力のなす技か。敵が再度ミサイルを発射しようとしている所に出来た魔法を叩き込む。
「見よう見真似だがーー」
俺の手から放たれた魔法は元のファイヤーボールとは違い、小さく鋭く、高速で敵に向かっていく。だがその速度はマヤを貫いた魔法には遠く及ばず、敵にも避けられてしまう。
「まだか……だが方向性は良いーー」
再度魔力を練り上げる。だがその間にも敵の苛烈な攻撃は続き、ウォールシールドにヒビが入り始める。
チャンスは後1度だけかっ!!
魔法師は自分の魔力が繋がっている物ーーウォールシールドなどの持続的魔法が必要とされる物が外的要因で壊されると魔力が乱れ、立ちくらみやめまいなどが起きて戦闘が継続出来なくなる。あくまでも魔法師は現代戦で
かく言う俺もまだ普通の部類に入るから今が危機的な状況なのは変わらないが、グレンの力は借りたくなかった。グレンに言われたからではない。これから戦っていくには単純な力ではなく柔軟な発想が必要だとそう思ったからだ。
だからこそ俺はここで成功させる。この忌々しい魔法を。
何度もマヤの体を貫いた映像が頭の中を
ふつふつと黒い感情が埋め尽くされるのを感じながら、冷静な部分は魔法を完成させていく。
出力を一瞬で放ち、細く、真っ直ぐにーー
頭の中を一条の光が駆け抜けていく。その瞬間、魔法が出来たと確信出来た。
敵もやれると思ったのか、全弾発射する。それと同時に俺も完成した魔法を放つ。そして攻撃はお互いに到達する。
瞬時に敵に到達した魔法は敵を貫き、大きな穴を空け、そして火を噴き出して墜落していくのが見えるーー
が、こちらにもミサイルが2、3発飛んでくるのが見える。
恐ろしく精度の高いミサイルは迷い無く俺らに向かってくる。ライトニングで撃ち抜こうにも数が多すぎる。そして俺のウォールシールドでは耐えきれないーー
目の前に迫るミサイルを悔しげに睨むと到着する前に爆発する。そしてその爆風はこちらまで届いているはずなのに全く熱くも痛くも無い。
その光景は前にも見たことがあった。前の戦いの輸送機の時で、ミサイルをライトニングで撃ち落とした時だ。外気の影響を全く受けてない。
後ろを振り返るとグレンがバックミラー越しに満足そうに微笑んでいた。
「流石は俺が見込んだ男だ。普通の魔法師では空を自由に飛び回る戦闘ヘリを撃ち落とすのは無理だね。普通なら防戦が良いところだがお前は撃ち落とした。良くやった、最後のはサービスだ」
と言いながら運転席に早く戻れと言う。運転してくれないのかよ、俺は疲れたのに……
結局どういう仕組みで運転してるのか分からないが、そんなこと聞く気も失せたまま運転に戻る。
バックミラーから見えた煙が上がる光景は俺がやった成果だった。
その後妨害も無く、ようやく着いた場所はほんとの山奥だった。道が険しく、車はこれ以上入れない。
これからの行軍と今までの疲れで頭が痛くなる。
「済まん、少し休ませてくれ……」
と心の叫びが思わず出る。するとグレンは申し訳無さそうに謝る。
「済まねぇ……この体になってから身体能力が飛躍的に上昇するから疲れとか感じにくいんだ。こうやって誰かと行動するのも久しぶりでな考えていなかった」
その表情は寂しげで、グレンが遠く離れた存在に感じる。選ばれし者が疲れを感じにくい能力を常時発動しているなら、スポーツや登山などで疲れを楽しむ事は出来ないだろう。それはやはり普通の人間には戻れないという事だった。
だが俺はそれでもグレンを化け物とでも呼ぶ気は無かった。
「……そうか。定期的に休みを取ると考えたらどうだ?」
今の俺では誰でも出来る意見しか思い付かず、これしかない。するとグレンは自虐的な笑みを浮かべる。
「フフフ、それは講義で言ってたな。まともに聞こうとしてなかったからな俺は。あの頃はとりあえず目の前の事に必死だった」
今度は遠い目をするグレンにずっと思っていた質問する。
「なぁ、少しぐらい俺に昔の事情を話してくれても良いんじゃないか?」
今まで深いところは入らないでいた。だが俺は余りにもグレンについて知らなさすぎる。これからの信頼関係を作る上で俺は知りたかった。
するとグレンは腕を組み、何かを考える。そして頭の中の決着がついたのか話し始める。
「……そうだな。これから世界の秘密について知るというのに俺の秘密を知らないというのも可笑しいか」
と少し茶化してから語り始める。
「小学校を卒業してから、俺は海外に親の都合で付いていった。だがその途中で俺達は不幸に会ったんだ」
そう言ったグレンの瞳は大きく揺れていた。だがその表情はこれから始まる序章に過ぎなかった。
現在次話からグレンの過去編を始めようとしているのですが、迷っています。
今書いてる途中のグレン過去編を続けるか、それは一回置いといてラインの試練編に行くか迷っています。
そこは作者の私が決める話なのですが……
グレン過去編は結構長くなりそうな感じです。グレンを主人公として描く予定ですので……