混沌の中で選ばれし英雄 ~理不尽な世界を魔法と人型兵器で破壊してやる~ 作:氷炎の双剣
ところで既にこの作品も3周年。やっと本題らしきものが見えてきました。そして今回もやっちゃいます、人気投票!!
参加した方にはオリジナルエピソードをプレゼント!! 個人宛に送るのでアナタだけのエピソードになります。参加方法は活動報告にて開催しますので是非参加して下さい。
16-1 ヤバい場所
雨が降りしきる道路を走る父親が運転する車。助手席には父親と談笑する母親。
窓の外は見たことのない景色ばかりで改めて外国に来たんだ、と再認識する。
慣れたエルス国や友達と離れ、外国に行くと言い出した父親に俺は反対したが、母親は賛成した。
俺を説得する為の長い話の中身は会社の高いポストを用意されて、裕福な生活が出来るというもので俺には正直裕福なんてどうでも良く、友達と遊んでいる日々が好きだった。
だが親2人が行くと言ってるので、小学校を卒業したばかりの俺にはこれ以上抵抗出来なかった。
心をエルス国に残したまま外を見詰めても楽しくなかった。呆けて外を見ていていると急ブレーキで我に返る。
何が起きたんだ、と前を見るとそこには立ち塞がるように銃火器を持った男達がこちらを囲んでいた。突然起きた事態に俺は混乱していると父親が電話を掛けはじめる。警察だろうか、この場合掛けるのは。
そして電話が繋がった瞬間、父親は顔を安堵で緩ませる。
「あの、テロリストに包囲されてしまって、今すぐ助けに来てくーー」
ドンッ、という衝撃音と共に父親が揺れ、その直後に何かが車内に舞い散る。そして母親の悲鳴と共にやっと事態が呑み込めた。
父親が死んだーーさっきまで笑っていた父親がーー
頭が真っ白になる。父親が死んだという事実が示す意味を俺を現実逃避に向かわせる。
次第にぼやけていく意識の中、母親の悲鳴が大きな轟音の後に止む。それで客観的に母親が死んだことを理解する俺が居た。
そして俺に向けられた銃口を最後に意識を手放した。
再び目が覚めたのは体が左右に激しく揺られるからだ。重い頭で認識した景色は黒色の目出し帽を被った男達が何人も居る車内で、そして俺の体は縄で縛られていた。キツく締められてるのか痛く、全く解ける様子も無い。
また男達が訛った英語で言ってるのは早く逃げろ、そこまで来てるぞ、等の怒鳴り声。そして後ろからはパトカーのサイレンが聞こえる。
その目障りな音が俺の意識を覚醒させ、同時にさっき起きた出来事を思い出し俺の恐怖を更に増長させる。
「ウワァァァァァァーー」
思わず声が出てしまい、それで俺の覚醒に気付いた男達が猿ぐつわを無理矢理俺の口に入れる。
「黙れ、このクソガキが!!」
蹴りがお腹に入り、呼吸が出来なくなって叫びも消える。そして鈍い痛みが俺の意識を現実に引き戻す。
暴れて拘束を解こうにもそれに気付いた男達から暴行を受ける。体中が痛くて感覚が無くなるがすぐ後ろに警察が来ているかと思ったらこのチャンスを逃すまいとやる気が湧き上がる。
だが一向に警察が追いつく事は無く、次第に音は消えていった。
「おい、さっきまでの元気はどうした? やり過ぎたかぁ? まあこれだけの元気があれば高く売れるな」
男達は興味を失ったかのように離れていく。俺も同様に元気を失っていた。
もう助けは来ないんだ……
そう思うと何もかもがどうでも良くなった。
それから車が止まり、縛られたまま担がれ他の車に移される。そこからは目隠しをされ、長い時間が過ぎていった。
それから昼か夜かも分からないまま、再び見ることが出来た景色は闇夜に浮かぶ月が照らす白く高い塀がずっと続いていた。周りを見渡しても門はここしか無く、この門も警備は厳重だ。またここは盆地になってるためか山しかみえず、他に建物は見当たらない。
暫くぶりに自由になった体が気持ち良く、逃げだそうという気持ちが芽生えたが、こんなへんぴで何も無い所で逃げ出しても餓死するだろうとその考えを否定する。
後ろからどつかれながら俺は門の目の前まで歩かされる。そしてこちらを歓迎するかのように開いた門は有刺鉄線が張り巡らされており、まるで監獄の入口のようだった。
また門番も警備員ではなく、銃を持ったごろつきにしか見えない。タバコを吹かしながらこちらを見る目つきは期待に満ちた物だったが、俺を見ると舌打ちをして視線を彼方に向ける。
そして連れて行かれたのは食堂。そこには同い年から少し上の年齢ぐらいの少年少女が銃を分解して掃除していた。手はスムーズに動いているが、どの子も瞳に生気が無い。
異様な光景に俺は混乱するが、その間に後ろに居た男はそこに居た男と少し話をして出ていく。
残った男は俺の尻をいきなり蹴飛ばす。いきなりの暴行になんで? と思うが、それがこの男の教育の仕方であった。
「いきなりてめえに銃を渡すわけにはいかねぇ。床でも掃除しとけ」
渡されたのは使い込まれた雑巾1枚。乾いていたので濡らそうと水道を探すが、初めての場所で全く分からない。
すると座っていた少女が指をさしてくれる。そこには物置で隠れたトイレがあった。
「ありがとう」
と少女にお礼を言うが、少女はうんともすんとも言わず、小さく頷いて作業にさっさと戻ってしまう。
無愛想なのか、喋れないのか。それは今は分からない。
トイレに入って蛇口の水を捻るとお世辞でも綺麗とは言えない水だ。飲食用じゃ無いとはいえ、エルス国の時に比べて汚い。
だがここの水しかないのだろう。
雑巾を絞って床を拭き始めると少しもしない内にここを監督している男が怒鳴り始める。
「おい、汚れが取れてねぇじゃねぇか!!」
男は変色した床のシミを指差す。
水だけではどう見ても無理だ。
「それは、雑巾1枚じゃーー」
「ーー口答えしてんじゃねぇ!!」
反論してる途中で蹴りが飛んできて、俺は吹っ飛ぶ。作業している机に当たり、部品が飛ぶが彼ら彼女らは何も言わず部品を拾って何事も無かったように作業を続ける。
この出来事は味方してくれる人なんて誰も居ないということを再認識させてくれた。
「入ったばかりだから教育してやるよ」
と指を鳴らしながら男が近付いてくるーー思わず目を閉じようとしたとき、誰かがここに入ってくる。
「おいっ、教育も程々にしろよ」
低い声が響き渡り、男は手を止めて慌てて敬礼を返す。
「肝に銘じます!! リカディ様!!」
リカディと呼ばれた男は筋肉隆々で左目のまぶたには大きな傷跡があった。
俺を
「いいかっ、銃は自分の相棒だ!! 死ぬまで離すな!! そして相棒をしっかりメンテした者が生きて帰ってこれる!! そして日々の鍛錬が生死を分けることを忘れるな!!」
はいっ!! と揃った大きな返事がリカディに返されるがリカディはニコリともせず、ここを出ていく。
そしてリカディが居なくなるとまた作業に戻る彼ら彼女ら。また男は興が削がれたのか俺に舌打ちだけで済ました。
ここに居る奴らの異様な雰囲気に俺はこれからに不安で堪らなかった。