混沌の中で選ばれし英雄 ~理不尽な世界を魔法と人型兵器で破壊してやる~   作:氷炎の双剣

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3-2 予想外の報告

 -地球連合軍本部 ルーカスサイド-

 

 バンッという大きな音に兵士は身体をビクリッと震わせる。

 大きな音を出したのは怒りに満ちたルーカスだった。

 

「……それは本当なのか?」

 

 ルーカスの低く唸るような声に兵士は冷や汗をかく。

 

「は、はい。報告によれば、ウランバートルにて朱威閣下は戦死され、部隊は敗走し、北京も陥落したと。通信は途絶え、偵察機も撃墜されてる事から確かかと」

 

 ルーカスは報告が間違いない事を知り、力が抜け椅子にもたれかかり、うーんと唸りながら頭を抱える。

 

 朱威が攻撃に出ず、北京に籠もればまだ我々の戦力の方が優勢だったが……朱威は死に、北京は占領される……最悪の事態だ。

 

 ルーカスは現状に頭を抱える。

 

 北京は要塞化された基地として有名だった。山に基地を作り、山その物が基地であった。なので攻撃は通りにくく、堅固であった。その防御力は1、2を争う程である。

 

 だが、ほとんどの部隊が朱威と共に壊滅し、更に指揮官の朱威が戦死したことによって指揮系統は混乱し、まともな戦闘は出来ないまま陥落したのである。

 

 北京を火星独立軍が占拠したとなると攻めるのは難しく、勝てたとしても多大な被害を被るのは目に見えていた。

 

「どうするか……このまま時を待っていても奴らは防備を固めるだけだ。やはり攻めるべきか?」

 

 隣にいるアイリーンに問う。

 答えるアイリーンの顔は苦渋に満ちていた。

 

「……そうですね。我が軍の戦力はこれ以上待っても増えはしませんが、敵の戦力は増大していきます。なのでーー」

 

 アイリーンが次の言葉を言おうとした時、兵士が焦りながら入って来る。

 

「ほ、報告します!!」

「どうした?」

「各地で……世界各地で反乱が起きています!!」

「何!?」

 

 ルーカスは驚きの余り立ち上がろうとして、おもっいきり足を机にぶつける。

 

「ぐあ……おぅ……ああ……続け……ろ」

 

 ルーカスは痛みの余り、うずくまりながら報告を促す。

 兵士は心配しながら報告を続ける。

 

「はい。各方面軍はほとんどの部隊を北京に向け移動でありますので、守備隊をほとんど残っておらず、そこで反乱が起き、基地や警察署などが占領されています」

「……」

「ククク……」

 

 呆れて言葉も出ないアイリーンに対して、笑い出すルーカス。

 怪訝な目でルーカスに注目が集まる。

 

「ルーカス少将、笑うところじゃないですよ?」

 

 アイリーンはルーカスをたしなめる。

 だがルーカスは笑いが止まらない。

 

「ククク……いやぁ、今の現状……反乱が各地で起きてる地球。これが今までの地球連合軍の統治の結果だと思うと……馬鹿らしくなってくるな」

 

 この言葉に誰もが目を伏せる。

 

 今まで誰もが目を伏せて来た問題なのだ。

 安定した政権の裏は闇にまみれ、不正、左遷などばかりだった。

 そしてルーカス本人も被害者である。

 そして多くの反乱軍も被害者である。

 それが戦争の原因だと言ってもいい。

 

 ルーカスは言葉を続ける。

 

「確かに火星独立軍の正義は正しいが、負けるわけにはいかない。俺が新しき地球連合軍を設立する。優秀な人達は地球連合軍にも沢山存在する。地球連合軍は上層部が腐ったせいで全てが腐った。ならば頭を変えればいい。だから俺は地球連合軍最高長官に就任しようと思う」

 

 ある意味クーデターと言える言葉に誰も反対はしない。

 アイリーンも賛同する。

 

 そして各方面軍の委任状も有り、反対する勢力は先の戦いで壊滅。就任は易々となったのであった。

 

 

 

 

 

 

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 -地球連合軍アスタナ基地 ユルゲンサイド-

 

 ユルゲン達はアスタナ基地ーーカザフスタンの首都近くの基地ーーに居た。

 アスタナ基地は今まで挙げて来た基地の中では小さいが、大軍が集まる基地としては十分な広さを持っていた。

 アスタナ基地にはヨーロッパ方面軍、アフリカ方面軍、インド方面軍が集結していた。

 そして、ここにも報告は届く。

 

 兵士が駆け足で部屋に入り、報告する。

 

「報告します!! ウランバートルにてアジア方面軍は敗退。朱威少将は戦死なされました。そして北京も陥落!!」

 

 この報告に3人は三者三様の反応をする。

 ユルゲンは立ち上がり、地団駄を踏み始める。

 

「あのーー馬鹿野郎が!! 独断先行して、戦死!? 更には北京までタダで献上しやがって!! あの世で会ったらまず一発ぶちかます!!」

 

 終いには指をポキポキ鳴らし始めるユルゲン。

 

 それに対し、他の二人は目をつぶっていた。

 決して寝てる訳ではない。

 二人はこれからを模索していた。

 

 二人の冷静な態度にユルゲンは熱が冷めたのかドカッと椅子に座る。

 

「ハア……で、俺達はどうする?」

 

 ユルゲンはため息をつきながら二人に尋ねる。 

 先に口を開いたのはインド方面軍最高指揮官ラーマン少将だった。

 

「まず、現状をまとめましょう。敵の正確な戦力は不明。北京、ウランバートル付近は占領しているかと。ですがまだ香港や上海、日本までは手は伸ばして無いと思われます」

 

 ラーマンの冷静な分析にユルゲンとファビアンは賛同する。

 ラーマンは話を続ける。

 

「しかし、それも時間の問題かと。やはり指揮官不在ではアジア方面は陥落すると思われます。なので、今から各方面軍を集結して再度攻撃する必要が有るかと」

 

 ラーマンの提案に異存はなかった。

 これが最良の案で有ると思える。

 だが次の報告で根本から覆されることを誰も予想出来なかった。

 

 兵士が慌てて駆け込んで来る。

 息も絶え絶えである。

 

「……報告します!! 各方面で……反乱が……反乱が起きました!!」

 

 この報告に3人は目を大きく見開く。

 最初に反応したのはユルゲンだった。

 

「反乱!? それも各方面だと!? 一体どうなってんだ!?」

 

 ユルゲンは声を荒げる。

 それを遮るようにファビアンが発言する。

 

「ふむ。敵も見事じゃな。これは北京には攻撃出来ないのう。我々も自分の所に戻るしか無い」

 

 反乱を放置したままにすると、住民は困る。経済活動は止まり、このままでは地球連合軍の統治から独立するかもしれない。

 だから統治を任されたユルゲン達は治安出動する必要があった。

 また報告によれば、反乱軍は戦車、戦闘機等保有するらしい。

 もはや部隊を戻さなければならないだろう。

 

 ユルゲン達は立ち上がり部屋を出て行く。

 治安出動の為に……

 

 

 

 

 

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 -火星独立軍北京基地 ユーリサイド-

 

 ズシンと着陸した振動を受け、ユーリ達も少し上下に揺れる。

 少し滑走路を走った後、飛行機はやがて止まりステップを降ろす。

 そこからはユーリ達、五人が降りてくる。

 

 ユーリは地面に立ち、重力と太陽の日差しを感じ、地球を懐かしく感じる。

 

 不毛の大地ーー火星ーーでは心地良くはならない。

 宇宙服が無ければ、外には出れないし、開発しなければ人は住めない。

 だが7年前とは違い人口も増え、地球の一都市ぐらいには匹敵するだろう。

だが地球の環境に比べればあまり良くない。

 

 ユーリは景色をボーッと見ていると肩を叩かれる。

 振り返ると、アンジェリカが笑顔で居た。

 

「ユー……リーダー、行きましょう」

 

 アンジェリカは最初間違えたが言い直し、行こうと促してくる。

 ユーリは自分が行かなければ皆動けない事に気づく。

 

「すまん。ボーッとしていたよ。さあ行こうか」

 

 ユーリ達は歩き出す。

 北京基地の最奥へ。

 

 

 

 

 

 

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 長官室にはユーリ達の他、多数の人が座って居た。

 これからの指針を考える為である。

 ユーリは口を開く。

 

「皆、ご苦労様。作戦は見事成功した。これも皆の健闘のおかげだ。要塞北京基地を手に入れたのは大きい。犠牲になった者には感謝仕切れない。必ずや地球連合軍を打ち破ろう」

「「「おう!!」」」

 

 大勢の兵士が一斉に立ち上がり、賛同する。

 その様子に満足したのか、ユーリは続きを話し始める。

 

「皆座ってくれ。では次はどう行くべきか、意見を出してくれ」

 

 まず最初に発言したのはサイオンであった。

 

「リーダー、敵の戦力はまだ我が軍を上回っており、北京に籠城しても勝ち目は薄いかと。しかし、各地の同朋が後ろから揺さぶっており、敵は合流出来ないかと。なので我々は一気に攻めるべきです」

 

 この意見に賛同する者が多数おり、意見はそのまま通ると思われた。

 しかし、クリフの言葉で滞る事になる。

 

「ふむ。作戦はいいが、肝心のHAWの数は足りてるのかな?」

 

 この言葉に皆凍りつく。

 先の戦いで予想以上に損害を受け、戦力は減っていた。

 

 だが反論を繰り出す男が居た。

 博士だ。

 

「クリフ大先生。その点は抜かり無いです。我々が地球に降りた事により、各地の我々の同朋と連携が更に緻密になりHAWもパイロットも増大します」

 

 この言葉に皆はおおーと感嘆の声を上げ、クリフも満足そうに頷く。

 そしてこれ以降は反論では無く、配置や指示を与えるだけとなり会議は終了する。

 

 

 

 

 

 

 そして残ったのはユーリを含め六人である。

 最初にアンジェリカが口を開く。

 

「お疲れさまです、皆さん。ユーリさんリーダーかっこよかったです!!」

「そうかな? 少しは様になって来た?」

「ふふ。もうユーリさんもすっかりリーダーですね」

「そういうアンジェリカも白衣の天使に見えて来たよ」

「て、天使ですか!? そんな天使だなんて……」

 

 アンジェリカは恥ずかしながらイヤイヤと身体を振っているが、ユーリ以外は内心ツッコミを入れていた。

 

 何で天使ってとこだけ抜き取るんだ……と。

 

 もちろんアンジェリカは白衣は着ていないが医療のスペシャリストなので白衣の天使と呼んだだけだ。

 だがアンジェリカは一人だけ勘違いをしていた。

 

 照れてるアンジェリカは置いといて、サイオンは確認する。

 

「俺は軍事顧問、ランスは訓練顧問、クリフ大先生は魔法顧問、アンジェリカは治療顧問、博士は兵器顧問で問題無いな?」

 

 ユーリは頷く。

 普通ならばユーリ達は各分野ではまだまだ未熟だ。

 しかし、顧問は能力では無く意志が高い者を配置していた。

 特にこの五分野に力を入れて行く予定だ。

 

 戦術と戦略を理解する指揮官の育成する軍事部門。

 猛烈なる武勇と冷静な兵士を育成する訓練部門。

 戦場を左右する魔法を扱いし冷静な魔法師を育成する魔法部門。

 戦場を影から支える医療と戦場の天使となる回復魔法を扱う者を育成する治療部門。

 新兵器を開発し、パイロットを育成する兵器部門。

 

 これらの五部門が火星独立軍の根幹を成していく……

 

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