混沌の中で選ばれし英雄 ~理不尽な世界を魔法と人型兵器で破壊してやる~   作:氷炎の双剣

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今話から新章になります。
新しい主人公、予想と合ってましたか?

今回からはラインが中心、エルス国のお話となります。

ラインという一般人の一人の視点からこの世界を見て行きたいと思います。今までは大まかでしたが、これからはより深くこの世界に入って行きます。

この話から読む方はそういう状況なんだなと流して頂けたら読みやすいかと思います。

9/26改稿


〈4章 ライン 戦争編〉
4-1 復讐


 -エルス国 ???サイド-

 

 地球連合軍と火星独立軍が地球の各地で戦っている中、エルス国は地球連合軍と同盟を締結し、火星独立軍に宣戦布告した。

 もちろん宣戦布告するという事は戦争するという事だ。

 エルス国も国産のHAWを配備し始めていた。

 

 そんな中、エルス国初めての戦闘が勃発する。

 

 

 

 

 

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「くっ……これが戦争……」

 

 燃え盛る街の中、家族と共に逃げている青年は空からやって来る黒い人型兵器ーーHAWを忌々しく睨みつけていた。

 

「ライン!! 突っ立って無いで逃げるわよ!!」

 

 一緒に逃げている母親から急かされる。

 ラインは頷き、後を追う。

 

 ラインの背中の上空では激戦が繰り広げられていた。

 

 

 

 

 

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 -エルス国 オークランド基地-

 

 エルス国は北のノースアイランドと南のサウスアイランドを領有していて、オークランド基地はノースアイランドの先端付近にある、ノースアイランド内、最大規模を誇る基地だった。

 いや正確にはエルス国最大と言っても良いだろう。

 そして一番、火星独立軍の領土に近く、上陸してくるのは明らかだった。

 

 

 

 今回の戦闘ではエルス国のオークランド基地に火星独立軍が降下して来たのであった。

 

 空から降って来る火星独立軍のHAWに対し、エルス国産の緑色のHAWが地上から見上げて、右手に持つアサルトライフルで攻撃する。

 そして左手に持った身体がすっぽり隠れるほどの大きな盾で防御する。

 

 この鉄壁のような防御体制に火星独立軍は苦戦する。

 

 戦況はエルス国優勢になるが、経済的にも人口的にも発展してるオークランドの民間居住区に流れ弾が当たってしまう……

 

 

 

 

 

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「ハアハア……」

 

 ライン達は戦闘とは反対側に逃げていた。

 だが逃げても逃げても歩いて移動出来る距離など、一瞬でその距離を動き回るHAWとの戦闘から逃げる事は出来ない。

 

 ライン達の真上をHAWが轟音と突風を撒き散らしながら、通過していき、その後をミサイルが追いかけて行く。 

 火星独立軍のHAWがミサイルを迎撃しようとするが迎撃しきれなくてミサイルが直撃する。

 

 ミサイルがコクピットに直撃したHAWはグラッと姿勢を崩し、落下し始める。ライン達の元に。

 

 上から大きなーー大きな物が落ちて来るーーそれは易々と俺達を簡単に肉塊にしてしまうだろう。

 

 ーー落下してくる速度は速いはずなのに、スローモーションのように見えるーー

 

 だがラインの身体は固まってしまったように動かない。

 

 ーー動けよ!! 動けよ俺の足!! このままじゃ……死ぬ!!

 

 しかし現実は非常にも自分の足では無いかのようにビクともしない。

 

 もう諦めるしかーー。そうラインが思った時ーー

 

 ーー突然爆発し、吹き飛ばされ地面に叩きつけられる。

 

 

 一体……何が起こったんだ? 

 

 とラインは痛い身体に鞭打ちながら、粉塵に覆われた元居た場所を探す。

 

 風が吹き、粉塵が晴れると上から緑色のーーエルス国のHAWが降りてくる。

 

 それをぼーっと見ているとふと

 家族の事を思い出す。

 

 そうだ!! 家族はーー母さんは!? 

 

 ラインは駆け出す。

 

 そして、家族が居たらしき場所にたどり着く。

 

 息を少し切らしながら足を止める。その目線の先には残骸が散乱していた。

 

 小さく残る炎、HAWの部品、建物の残骸……そしてーー

 

 ーー母さんと父さんのだろうか。HAWの残骸の下から足がはみ出ていた。

 

「あっ……ああ、あああああああああーー!!」

 

 もう頭の中は感情で溢れかえっていた。寂しさ、怒り、悲しみ、恨み。もう数え切れないほどの感情で満ちていた。

 

 嫌だ!! 嘘だ!! 何でーー何故僕らなんだ……何でなんだよぉぉぉぉーー!!

 

 

 

 

 

 

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 ラインが悲しみにくれている時、後ろにパイロットスーツを着た男が立つ。

 

 だがラインは気づかない。

 

 男はしゃがみ、ラインを背中から抱きしめる。そして耳元で囁く。

 

 すまない……と。

 

 ラインは一瞬、男に怒りを覚えたがこの人は自分を救ってくれたのだと思い出し、八つ当たりしようとしていた自分を抑え、静かに泣き出す。

 

 男も静かにラインを抱きしめていた。

 

 

 

 

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 しばらくすると泣き止んだのかラインがすっと立ち上がる。そして、男に頭を下げる。

 

「ありがとうございました。おかげで助かりました。感謝しています。本当にありがとうございました」

 

 ラインはそれだけ言うと、港に向けてフラフラと歩き出す。

 

 男は呆気に取られ、呆けていたが直ぐにラインを追いかける。

 

 男にはどうしても、これからラインが生きるようには見えず、死にに行くように見えたのである。

 

 追いつき、肩を掴み、振り向かせる。

 

「オイ!! ちょっと待て!!」

 

 ラインの表情からは感情が読み取れなかった。

 

「何ですか? ……ああ、家族の死亡届けですか? すみません、戦闘が終わってから出します」

 

 もはや家族の死を物のように扱っているラインに怒りが沸き、殴る。

 

 もはや身体に力が入って無いラインは容易に吹っ飛ぶ。

 

「……何をするのですか? 私はアナタに無礼を働いた記憶は無いのですが」

 

 ラインは殴られた頬を抑え、ゆっくり立ち上がる。その目には邪魔をされた苛立ちが見える。

 

 男はまた拳を振り上げるが、ラインのさっきの言葉を思い出し、拳を下ろす。

 

「今回は事故という事にしますので、失礼します」

 

 とラインは去ろうとするが男は止める。

 するとラインは男を睨み付ける。

 

「いい加減にして下さい!!」

 

 振りほどこうとするが、男は離さない。少し攻防が続くと男の口から言葉が零れる。

 

「なあ……お前……死ぬ気だろ?」

 

 その言葉を聞いた途端、ラインの動きはピタッと止まる。

 それを確認した男は続ける。

 

「お前は……火星独立軍に、復讐したいんだろ?」

 

 ラインは拳を握りしめ、歯を噛み締めながら振り返る。

 

「復讐なんて無駄だから止めろって言うん……ですか?」

 

 そう言うラインの目は涙に溢れていた。

 

 男は頷く。

 

「俺達は戦争をやっている……今直ぐに分かれとは言わん。敵を恨んでも無駄だ。こちらが恨めば恨むほど敵が増える。復讐したら復讐され……もうこれは止まらないスパイラルだ。だからお前はーー」

 

 男は一旦言葉を止め、ラインの目をしっかり見据えて話す。

 

「ーー戦争自体を恨め」

 

 

 

 

 

 

 

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 ラインは男に連れられ、避難所に来ていた。そこにはたくさんの戦争の被害者が居た。誰もが戦争の恐怖を体験し、縮こまっていた。

 

 そんな様子を見て、ラインは少し落ち着いていた。

 

 辛いのは俺だけじゃない……皆が戦争の被害者なんだ……

 

 と感じたラインは兵士達を手伝おうとする。

 

 荷物を運んでいる兵士に話しかける。

 

「あの、私に出来る事は有りませんか?」

 

 兵士は一瞬驚いた表情を見せたが、直ぐに顔を引き締め、答える。

 

「いえ、皆さんを守るのが私達、軍人の役目です。休んで待っていて下さい」

 

 やんわりと断られるが、ラインはしつこくお願いする。

 

「……分かりました。ですが、無理しないで下さいね?」

 

 パアッとラインの顔が笑顔になる。早速ラインは荷物を運び始める。

 

 決して軽く無い、辛い作業だったが頭の中をからっぽに出来るのでラインにはむしろ嬉しかった。

 

 

 

 

 

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 しばらく作業をしていると次第に戦闘音が止む。

 

 その事に気づいた人々はざわめき始める。

 

 兵士達も慌ただしくなって来る。

 

 ラインは作業を止め、隙間に座り込む。

 

 しばらくすると優しそうな顔をした男が部下を連れ、避難所に居る人々に声を掛けて行く。ゆっくりと丁寧に。

 

 そしてラインの所にもやって来る。

 

 男はラインと同じ目線までしゃがみこみ、声を掛けてくる。

 

「大丈夫かい? 怪我は無いかい?」

 

 その声と顔を見てラインは思い出す。

 

「まさか……アナタはエルス国代表、ブライス代表……ですか?」

 

 男は静かに頷く。

 

 ラインはブライスがここまで来て、戦争の被害者に話しかけている事に感動したが、直ぐに自分の気持ちを思い出す。

 

「わざわざありがとうごさいます。兵士の皆さんには本当に助けられています。……あの一つお願いが有るのですが……」

 

 その言葉に部下が断ろうとするがブライスが遮る。

 

「……何かな? 私に出来る事なら出来るだけしよう」

 

 ラインはゆっくりと口を開ける。

 

「私を……軍人にしてください」

 

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