混沌の中で選ばれし英雄 ~理不尽な世界を魔法と人型兵器で破壊してやる~   作:氷炎の双剣

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7-3 マナンの実家

 

 エレット先輩から狙撃を教わり、自信を持ったマナンは常に上機嫌だった。

 

 マナンは時たま頬を緩ませ、えへへと何度も笑うのでラインは呆れ、ため息を漏らす。

 

「……いいかげんに、そのアホ面を辞めないか。見てるこっちが恥ずかしくなるぞ」

「分かったよ。大丈夫」

 

 とマナンは言うが、改善される兆しは無い。再び頬を緩ませ、にやける。

 

 はぁ……と諦めのため息を付くラインだった。

 

 

 

 

 

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 アカデミー生は月曜日から金曜日まで授業があり、土曜日は休みだが外出許可は出ていない。要するに自主鍛錬の日である。苦手な分野の勉強や平日には忙しい先輩に師事して貰う等出来る日だ。一日丸ごと使えるのは素晴らしい。

 

 土曜日になるとマナンは朝早くから部屋を飛び出し、屋外射撃場でエレット先輩の師事を受け、狙撃している。

 

 その成果はみるみる成長していた。

 この結果にエレット先輩も満足げだ。

 

「うんうん、凄い成長だね。まだ1週間も経ってないのにここまで来るとは……」

 

 この様子を見ていたジェームズ先生も驚いていた。

 

「……これは凄い。……マナン君済まない。我々の試験では君の才能を見抜く事が出来なかったよ」

 

 深々と頭を下げるジェームズ先生にマナンは慌てる。

 

「そ、そんな!? ジェームズ先生は悪く無いですよ!! あの試験は一般大衆向けですから……僕のような落ちこぼれしか困らないですから」

 

 と苦笑いするマナンにラインは無言で背中を肘で小突く。

 

 小突かれたマナンはハッとし、すみませんと頭を下げる。

 すぐ自虐するのはマナンの悪い癖だ。

 

 相当マナンを試験が傷つけた事に気付いたジェームズ先生は苦虫をかみつぶしたような表情になる。

 

「……済まない、マナン君。私としては出来る限りのサポートをするつもりだ。だからいつでも頼ってくれ」

 

 異例な申し入れにマナン達は驚く。

 国の資産であるジェームズ先生が個人的協力を申し出たのだ。

 アカデミーの教官は選りすぐりの魔法師や腕利きばかりで、その師事を受けたい生徒や魔法師は沢山居るのにマナンを優先すると言ったのだ。

 

 もちろん教官達の個人的協力は余り良く思われておらず、この事はジェームズ先生の立場を追い込む事になってしまうかもしれない。

 だがジェームズ先生はそれすら覚悟の上で個人的協力を申し出たのだ。

 

 マナンは最初拒否したが、ジェームズ先生の強い意志によって賛同させられてしまった。

 

 この後、毎日深夜にジェームズ先生とのマンツーマンを受け続ける事になる。

 

 

 

 

 

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 次の日。日曜日である。1週間の内唯一外出許可が出る休日だ。この日はアカデミーからも休めとのお達しだ。

 

 毎週出掛ける訳では無いが、塞ぎがちなアカデミー生のほとんどはブラリと外出する。

 

 金は軍人候補生なので多少なり出る。その金額は社会人より少ないが、バイトするよりも高い。

 

 それに1ヶ月に4回しか無い金を使う機会だから金の羽振りも良くなるようだ。

 だが借金がばれた時点で即刻退学だ。

 

 基本的には親とは金銭的に繋がりを切られてる為、親に借金が有ろうが子供にはその支払う義務は無い。また支払うのも禁止されている。

 

 常に教えられるのは軍人で有る者は金に執着してはならないという教えだ。もし金に苦しい軍人に相手から金の誘惑があった場合、まともに戦えなくなるどころか裏切る可能性すら有る。

 そんな事にならない為本人達には厳しく、親との金銭的関係を断ち切るのだ。

 

 だがどうしても親を見捨てられないと言う状況になった場合、国の援助が入る仕組みだ。もちろんわざと借金を作った場合等は許可されない。また援助された家族は最低限以外の借金は認められず、お金の流れの監視が就くことになる。

 

 

 

 

 

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 この貴重な日曜日にラインとマナンは厳しい戦いに挑もうとしていた。

 

 目の前に建つのは高層マンション。

 首都ウェリントンの近くという超都会のど真ん中に立っているマンションだ。

 ウェリントンに軍事基地が有るので超高層マンションは認められず、その次の60mの高さのマンションだ。

 

 マナンから話を聞くに最上階らしい。

 

 綺麗に内装されたエレベーターで最上階まで登るとそこは異質な程、綺麗な廊下だった。一般的な家庭のラインにはどこか居心地の悪い廊下だ。

 光が床で反射して眩しいぐらいだ。それぐらいピカピカである。

 

 だが、これは共用の廊下らしい。

 訳分からない。

 

 両開きのドアの前に立つと、マナンはインターホンを押す。

 

 ピンポーン、ピンポーンと音が鳴ってから少し待つと女性の声が聞こえる。

 

「あら、マナンじゃないの。お帰りなさい。ーーえっ!? お友達も一緒なのね!! ほら早く案内なさい!!」

 

 インターホンが切れるのと同時にガチャガチャとという音と共にドアのロックが解除される。

 

 左側のドアを開いて中に入る。中に入ったライン達を照らすのは廊下を超えたリビングからの太陽光だった。

 その暖かさが緊張していた2人の気持ちを落ち着かせる。

 

 靴を脱いで廊下に上がると、スリッパを擦る音と共にマナンの母親が早足で向かって来る。

 

「いらっしゃい、まさかマナンのお友達がねぇ」

 

 驚いた顔をするマナンの母親。

 マナンは照れたのか、さっさとラインを連れて部屋に連れ込む。

 

 2週間ぶりのはずなのだが、部屋は綺麗だ。マナンの母親が手入れしていてくれたのだろうか。

 

 マナンの部屋はゲーム機やゲームソフトで溢れており、物は山積みだ。だが元の部屋の広さが広い為か全く狭く感じない。

 

 マナンは部屋にある冷蔵庫から麦茶を取り出しコップに入れ、ラインに差し出す。

 

 ありがとうと言って、差し出された麦茶を飲み干す。

 ちょうど喉が渇いていたのだ。

 

 すぐにまた麦茶が差し出されるが、さすがに続けては要らない。

 

 部屋の中央に有るテーブルを挟むように対面に座る。

 

 2人とも一息付いた後、マナンが切り出す。

 

「母さん、変わって無かったなあ……」

 

 そうポツリと漏らした言葉にラインは質問する。

 

「まさか、お前、飛び出して来たのか?」

 

 この言葉にマナンは頷く。

 

 魔法師になると書き残しをして家を飛び出したらしい。

 

 この事実にラインは頭を抱える。

 それで魔法師には成れませんけど、射撃出来ますよで許されるものかな……

 

 母親は行けそうだけど、話を聞くに父親がヤバイとか。

 

 2人でどうやって説得するか考えているとコンコンとノックされる。

 申し訳なさそうに入って来たのはお母さんだった。

 

「お話中ごめんなさいね。マナン、お父さんが話有るって」

 

 ーー来た!! 宣戦布告!!

 

 この言葉にマナンは諦めたようにヨロヨロと立ち上がる。フラフラと部屋を出て行くマナンをラインは呼び止める。

 

「待て、マナン。……俺も行く」

 

 この言葉にマナンは向日葵のような笑顔を見せた。ラインの参戦がよほど嬉しいらしい。

 

 散々悩んだが、何も出て来なかった…… なら、もう気持ちをぶつけるしか無い。

 

 と覚悟を決め、マナンと共にリビングに向かう。

 

 リビングに出ると太陽の光がこれでもかと差し込む。さすが最上階。ガラス張りから太陽が丸見えだ。

 

 広いリビングには右にはソファーとテレビ。左にテーブルとイスと分かれていた。マナンが来たのを気配で察したのか、テレビを消し、ソファーからこちらを向く。

 

 そのガタイの良さと強面の顔からはどうやっても医者には見えない。サングラスかけたらヤの付く人だ。

 

 ギロリとでも表現出来るぐらい鋭い視線に一瞬で2人は呑まれる。

 

 その鋭い視線は最初、マナンを見ていたがラインに移る。

 

「お前はマナンの何だ?」

 

 いきなりの質問に驚くが、ここは堪え、質問に答える。

 

「私は……マナンの友達です」

 

 その答えを聞いた父親は更にに視線を鋭くさせる。まるでラインは蛇に睨まれたカエルのように体が動かない。

 

 何でこんなに鋭い視線が医者に出来るんだ?

 

 と言う疑問が浮かぶが、これは今関係無い。

 

 震えるラインに父親は興味を無くす。

 

「……友達ふぜいが他人の家庭に口を出すな」

 

 射貫くような視線にラインは目を逸らーー

 

 

 ーーさ無かった。

 

 むしろ射かえすように視線を向ける。

 

「友達だからダメ? 友達の人生が掛かってるんですよ!? そんな事見過ごす事出来ません!!」

「友達ふぜいが何を言うか!! コイツの何が分かる!? 一ヶ月も友達になってないガキが何をほざくか!?」

 

 マナンの父親は目は血走り、今にもラインに掴みかかりそうだ。

 だがラインも負けじと言い返す。

 

「関係っていうのは時間が問題じゃないですよ!! お父さんにはマナンが何を思って飛び出したか分かりますか!?」

「どうせ、夢でも追いかけたのだろう?」

 

 鼻で笑い、マナンを馬鹿にする父親にラインはキレる。

 

「アンタはマナンの何を見てたんだ!? どうせ結果だけだろう?」

 

 この言葉に父親は笑いを堪えなくなり、吹き出す。

 

「くはっはっはっはっ。小僧、甘い目論見だな?」

「ーー何!?」

 

 混乱するラインにマナンの父親は不適な笑みを浮かべるのだった。

 

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