混沌の中で選ばれし英雄 ~理不尽な世界を魔法と人型兵器で破壊してやる~   作:氷炎の双剣

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7-4 マナンの未来

 

 ーー甘い。

 

 この言葉は完全に追いつめたと思っていたラインにとって衝撃だった。

 

 ダメな親を批判し、論破することでマナンのアカデミーの継続を認めさせる作戦だったが、父親の甘いという言葉によってラインの作戦は崩れた。

 

 呆然とするラインに父親は鼻で笑う。

 

「お前はまだ甘いな。この問題の全容が見えていない」

 

 目を細める父親。その瞳にはラインへの呆れも含まれていた。

 

「俺は父親だ。息子であるマナンは長く見てきたつもりだ。そう、お前よりは」

 

 鋭い視線にラインは悔しさで歯を噛み締める。

 

「……マナンは出来る子だった」

 

 遠い目をした父親は懐かしそうに語る。

 

 

 

 

 

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 マナンは長男として生まれ、期待を一身に受け、英才教育を施されたマナンは期待に応える。

 医者の息子として期待されてる通りに頑張ったマナンはそのまま医者になれると誰もが予想していた。

 

 そんな時、3歳年下の弟が生まれる。

 

 生まれてからマナンと同じように英才教育を施した結果、マナンを上回る結果を叩きだしたのだ。

 

 そう、急に医者の卵として期待されてたのに弟が優秀と分かると周りは弟に関心が移ったのだ。

 

 マナンはその後頑張って勉強したが、弟に全く及ばなかったのだ。

 

 そして偶然、悪い結果を出してしまい、怒られると思ったマナンは父親の前でビクビクしていたーー

 

 ーーが父親は特に表情も変えずに

 

「次は頑張りなさい」

 

 と父親から何の言葉も無かったマナンは脱力する。

 

 ーー僕はもう期待されて無いんだ……

 

 と言う考えが脳裏に過ぎるが考え過ぎだとこの時は振り払った。

 

 その後医者の道を諦めたマナンは色んな道を模索するがどれも長続きはしなかった。

 

 

 

 

 

 

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 マナンの父親はマナンに視線を戻す。

 

「コイツは色々な物に手を出して、全て長続きしなかった。コイツはそういう奴なんだ」

 

 父親は複雑な心情が隠った視線でマナンを見つめる。

 マナンは視線に耐えられなくなったのか目線を逸らす。

 

 だがラインは視線を逸らさない。

 

「……この前のテストでマナンは魔法師としては厳しいという判定を受けました」

「ーーライン!?」

 

 マナンの悲鳴のような声が上がる。

 成績をバラした事への非難だろう。だが結局いつか分かる事だ。

 

「ですがマナンは狙撃という才能を開花させました。だから!! このままアカデミーを続けさせて下さい!! お願いします!!」

 

 頭を深々と下げ、祈る気持ちで心はいっぱいだ。

 

 アカデミーでは親との金銭的関係は無くなったとはいえ、親の同意が無ければ来られないのだ。

 もちろん親がまともな人に限り、同意が必要だ。

 だからマナンの父親の同意が無ければアカデミーは続けられないのだ。

 

 父親は深く頭を下げるラインを一瞥した後、マナンを見つめる。

 その後厳しい顔を崩し、優しい声でラインの顔を上げさせる。

 

「ライン君、もう君の気持ちは分かった。十分だ。顔を上げてくれ」

 

 いきなり別人に変わった父親にラインは目を丸くする。

 驚いて口が塞がらないラインに父親は苦笑いする。

 

「色々済まないね。あれは君を試していたんだ。……君は本当にマナンの事を考えてくれているんだね。他人の為に頭を下げる事はなかなか出来る事じゃない」

 

 父親はラインに微笑みかける。

 その優しい微笑みにラインはやっと我に返る。

 

「え? じゃあお父さんはマナンの事を疎ましく思っていたとかは……」

「いいや、むしろ心配していた。今まであちらこちらにフラフラしていた事を怒っているのは事実だが」

 

 ギロッと鋭い視線にマナンはまた視線を逸らす。

 

「だけど君という友達と狙撃という目標が出来たなら言うことは無い。マナン、アカデミーを続けなさい」

 

 この言葉にマナンは向日葵のように笑顔になる。

 

 だが、また父親の表情は厳しくなる。

 

「……戦争に参加する事は何も言わない。自分で決めた事だ。文句は無い。だから絶対に生きて帰って来る事。いいね?」

 

 頷く2人に父親は満足そうに微笑む。

 

「さあ、今日はマナンの友達が来た記念日だ。母さん、豪勢に頼む」

 

 その後豪華な夕食に与ったラインはマナンの家に泊まる事になった。

 

 

 

 

 

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 ああ、こんな物がこの世にあったとは……

 

 と大きな腹をさするラインにマナンは苦笑いする。

 

「いくら食べた事の無い物ばかりだからって食べ過ぎだよ」

「いや、だって、三大珍味とか今まで食った事無いぞ? そんな貴重な物を食べ無い訳にはいかんだろ」

 

 正論にマナンは口を閉ざす。でも内心では食べ過ぎだろと突っ込む。

 

 お腹いっぱいになったラインはすぐに横になって寝てしまった。

 その可愛らしい寝顔からはさっきの論戦を繰り広げた人物には見えない。

 

 たまに出るもう食べれないと呻く寝言にマナンは優しく微笑む。

 そして寝相でズレた布団をかけ直す。

 

 ラインには本当に感謝してるよ……試験の時も助けてくれた。

 あの時ラインが居なかったら僕は落ちていたよ。

 

 ありがとう……

 

 とマナンが言った時、寝ているラインが微笑んだのは偶然だったのだろうか……

 

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