混沌の中で選ばれし英雄 ~理不尽な世界を魔法と人型兵器で破壊してやる~   作:氷炎の双剣

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11-6 指揮官の能力

 

 俺が対峙しているのは冷静沈着にこちらの挙動を注視している男。

 その腰には一振りの刀。俺が握っている真っ直ぐに伸びている剣ーー直刀ではなく、僅かに曲がっている剣ーー曲刀である。

 

 片方にしか刃が付いていない。反対側に()りが付いているのは切断力を増すためとか。

 

 そんなどうでも良いことが頭の片隅を()ぎっている間も相手は動かなかった。

 

 どういうことだ? あくまでもカウンター狙いなのか?

 

 相手の意図が読めない。こうしている間にもアーロンとティナの戦況は動きつつある。

 

 優れた格闘センスと肉体硬化魔法によって実力向上したティナだったが、アーロンの実力には押されっぱなしだった。

 

「ーーっく、やるわね」

 

「へっ、まだまだぁ!!」

 

 苦渋の表情を浮かべるティナと楽しそうな表情を浮かべるアーロン。

 

 見事な格闘戦を繰り広げる2人に見入ってしまいそうになるがここは堪えて、こちらも仕掛けよう。

 

 じりじりと間合いを詰めるライン。

 

 もう少しで自身の間合いに入る距離になったとき、第六感が危険だと告げる。

 

 何か、嫌な予感がするっ!? 

 

 足を止めたラインの鼻先を刀が(かす)める。

 

 刃を潰したとはいえ、細い金属の塊。掠った鼻先からは血が出ていた。

 

 危なかった……あの距離はもう相手の間合いだったか。

 一瞬で攻撃を仕掛けて、鞘に戻した事を見ると、居合の心得が有るみたいだな。

 

 流石に真っ正面から仕掛けるのは不利だと悟る。

 魔法や小技で動かしてから間合いに入る。

 

 そう決意したラインに耳のイヤホンから悲鳴が聞こえる。ドリーのだ。

 

「しまった!! ーーアーロン、マヤ、ここは頼む!!」

 

 戦っている2人にここは任せ、階段を駆け登る。

 屋上にいるドリー達が危ない!!

 

 屋上に着くと既にAMAの自動防御が発動したドリーが腰を抜かして座り込んでいた。

 

 そしてマナンは壁に追い込まれていた。

 

 こちらに気付いたマナンが悲鳴に近い声を上げる。

 

「ーーライン!! 助けて!!」

 

「今、行く!!」

 

 一直線でマナンを追い詰めている奴に向かう。やらせない!!

 

 だがその間にフリーの相手が入る。

 

「退けっ!! 邪魔だ!!」

 

 剣に力を込めるが、押し込むどころか逆に押し込められる。

 

 何だこの力は!? こいつは護衛のハズじゃ……

 

 護衛は後衛の盾になって時間を稼ぐのが得意で、力はそんなに必要とされない。

 だがこの敵はどうだろうか。つばぜり合いしているのにこちらが押されているではないか。

 

 くっ……このままでは……

 

 苦渋の表情で相手の肩越しに向こうを見るがマナンはアサルトライフルの先に付けた銃剣で戦っている。

 そして相手も銃剣。

 

 銃剣戦だ。

 

 接近されたスナイパーは銃剣によって敵を追い払う。近接は弱そうなスナイパーだが、銃剣を付けた銃を槍のように扱う者もいて、侮れない。優れたスナイパーほど銃剣も強い。

 

 そんな重要な銃剣戦だが、マナンは苦手としている。みるみる追い詰められていく。

 

 思わず口から言葉を発してしまう。

 

「マナンっ!?」

 

「……ごめん、ライン」

 

 そう言ったマナンの防御を貫通して相手の銃剣はマナンに届く。

 自動防御が発動したマナンはそのまま床に崩れ落ちる。

 

「ちくしょう!! 近接寄りのチームだったか!! 分散したのが敗因だったか……」

 

 そう悟ったラインの背後には相手が……

 

 

 

 

 

 -----

 

 マナンが脱落した時点で五対三。

 既に結果は見えていた。

 決してラインやアーロン、マヤが弱い訳では無い。

 だが三対一をしていき、一人一人潰して行くティナ達に俺達は為す術は無かった。

 

 試合終了のアラームと共に俺達は膝を付いていた。

 

「ちくしょう!! まだまだ行けたのによぉ!!」

 

 悔しくて叫んで地面を殴るアーロン。優勢だったアーロンには負ける雰囲気を感じ無かったのだろう。

 

 ラインは呆けた表情で空を見上げていた。空は青く、さっきより雲があった。意識は遠くに飛んでいた。

 

 そんなラインはアーロンの怒号で我に返る。

 

「てめぇらは何をしてたんだ!! あぁ!?」

 

 マナンとドリーに摑みかかるアーロン。マナンとドリーの顔には恐怖が見えた。

 

「待ちなさいよ!! 何も、この2人だけが悪いわけじゃないでしょ!!」

 

 3人の間に仲裁に入るマヤ。だがアーロンを止めるには至らなかった。

 

「うるせぇ!! 何だぁ? 俺が全員ぶっ殺さなかったのが悪いのかぁ!?」

 

 もうアーロンもやけくそだ。そりゃあ自分がちゃんと仕事していたのにいちゃもん付けられるのは心外だろう。

 

「待ってくれ」

 

 俺の言葉に全員の動きが止まる。こちらを全員が注視する。

 

「俺が悪かった……指示が悪かったんだ」

 

 頭を下げるラインにマナンがフォローに入る。

 

「そんな……ラインは悪くないよ。僕が……自衛出来ていれば……「違う!!」」

 

 いきなりラインが大声で叫んだのでびっくりするマナン。

 

 顔を上げて自分の間違えを一つ一つ話して行く。

 

「マナンのせいじゃない。まず指揮官である俺が屋上に固執(こしつ)する余り、チームを分けた事。

 更に敵の戦力を勝手に判断していた事。これは相手に前衛はいなくて、ドリー達でも行けたと判断したのが間違いだった。そう敵の戦力を決めつけてしまったんだ」

 

 戦場で決めつけてはいけない。戦場でイレギュラーは当たり前であり、決めつけては安心が生まれてしまうのだ。そこを敵につけ込まれたら敗北は必至だ。

 

 戦場に予想通りなどあり得ない。一手違うだけで戦況は変わるのだ。そこに大勢の意志が有るならばもはや予想は不可能だ。

 

 だから指揮官は無数の対策を練るのだ。そしていつもその対策は無駄になり、臨機応変が求められる。

 その能力をアカデミー卒業の指揮官は求められる。これから未来の戦場を動かすのは彼らなのだから。

 

 自分の失敗を客観的に話したラインに彼らは静まる。

 自分の非を認めるという事は簡単じゃない。それを自分から言いだしたラインに彼らは言うことは無かった。

 

「……そうね。指揮官であるあなたのミスね」

 

「……ふんっ、分かってるなら良い」

 

「ちょっと!!」

 

 怒るマナンをラインは遮る。

 

「いやマナン、その通りだ」

 

 アーロンとマヤはラインを責めているような口調だが、表情は全く怒りに満ちていない。むしろ早く片がついて安心しているようだ。

 

 その事に気付いたマナンも口をつぐむ。

 

 だがまだ一人、心の整理が出来ていない者が居た。

 涙をポロポロとこぼすドリーだった。

 

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