混沌の中で選ばれし英雄 ~理不尽な世界を魔法と人型兵器で破壊してやる~   作:氷炎の双剣

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11-7 前へ

 

 他の面々がこれから前を向こうとしてる中、ドリーは下を向いていた。

 涙が頬を伝って地面に落ちる。

 

 いきなり泣き始めたドリーにライン達は動揺する。

 

「ど、どうしたんだ?」

「どこか痛いの?」

 

 心配して詰め寄るラインとマナン。

 

 するとドリーはポツポツと語り始める。

 

「……さっき試合が、ラインのせいだと言うけどっ……僕がそもそも護衛出来てないのが悪いんだ!!」

 

 涙でぐしゃぐしゃの顔で自分の非を訴えるドリー。

 

 確かに護衛が出来ていれば何も問題ないのだが、現状は力不足だ。

 だがそんなのは問題では無い。そんなこと挙げていたらきりが無くなる。

 マナンが近接戦出来れば護衛なんか要らないし、ラインが最強だったならば全員相手出来る。

 

 もしを挙げたら幾らでも挙げられる。今大事なのは現状で最高の実力を発揮することだ。

 

 ラインは自身を責めるドリーに優しく微笑みかける。

 

「なあ、ドリー。俺達は恵まれてるとは思わないか?」

 

 いきなり抽象的な話題に混乱するドリー。

 

「……訳が分からないよ。僕は皆と違って得意な事が無いんだ。だから僕は、恵まれてると感じた事なんか無いよ!!」

 

 ドリーの心からの叫びは部屋中に響き渡った。

 腐抜けた野郎だ!! と業を煮やしたアーロンがドリーに摑みかかろうとするのを抑えて、ラインは語りかける。

 

「なあ、少し身の上話して良いか?」

 

 ドリーは小さく頷いた。

 

「俺は2年前、オークランドで楽しく暮らしていた。学校にも行けてたし、日々の生活に不安は無かった。

 だけど、あの日から俺の人生は大きく変わったんだ」

 

 そう言ったラインの視線は虚空を見つめていた。

 

 

 

 

 

 

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 今でも思い出す事の出来る火の臭い。火には臭いは無いが、様々な物が焼けた臭いが鼻腔に付く。

 

 家族が焼けた臭い、家が焼けた臭い、平和な生活が焼けた臭い。

 

 どれも大事にしていた物だった。

 

 だが一瞬で奪って行った。戦争が。

 

 そして何も無くなったラインに手を差し伸べてくれたエルス国の兵士。

 全てを失って絶望してた俺に見せてくれたのは大きな目標。

 その時、生きる意味を失っていた俺には救いだった。

 

 そして俺はこうして目標に向けて取り組めている。取り組んでいられる環境を作って貰っている。

 

 世界には今日のご飯すらままならない子もいるのに俺達はこうして衣食住、そして選択する自由は与えられてるではないか?

 

 俺達はこの時代では恵まれているのでは無いだろうか。

 

 

 

 

 

 

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 ラインの話を聞いてこの場に居た面々はそれぞれの反応を示す。

 

 アーロンは

 

 へえ、なかなかキツいの経験したな。

 

 マヤは

 

 ……そう。色々失礼したわね。

 

 マナンは感動して泣いている。

 

 そしてドリーは口をつぐみ、顔を伏せる。ラインの話を自分を恥じているのだろうか。

 

 再度顔を上げた時はまた涙が溢れ出していた。

 

「僕は、ラインみたいに辛い過去や優れた力は持ってないんだ!!」

 

 頭を抱えて泣くドリーにラインはしゃがみ込む。

 

「そうだな。俺とお前は違う。ならそれでいいじゃないか。何も俺に成れとは言ってないぞ」

 

 悪戯っ子のように笑うラインにドリーもつられて笑ってしまう。

 

 良い雰囲気になった2人に他の面々も自然と笑顔になる。

 

 そんな彼らはここから再スタートするのであった。

 

 

 

 

 

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 年月は過ぎ、とうとうアカデミー卒業試験となった。

 卒業試験はチームでの模擬戦によるトーナメント戦。

 

 もちろん優勝に近いほど成績が良くなるが、一概にそうではない。負けても活躍してたり、良い作戦を立てていたら評価される。

 

 そう、卒業試験は評価する場所なのだ。この場には各部署の隊長格が来ている。そして気に入った生徒を要望するという制度である。

 

 人気な部署は代表直属部隊。

 主にエルス国代表や重要人物の護衛や特殊任務をこなす。

 その指揮権はエルス国代表にしかない。正に代表直属部隊である。

 

 人数はそう多くなく、少数精鋭部隊である。ここに入るには優勝かそれに近い活躍をした者が例年入る。

 

 会場は市街地、ジャングル、軍事施設と3種類のマップで多くの固定カメラによって観客に見せる。

 観客は軍事関係のみでまた兵士達の楽しみにもなっている。

 賭けもやっているとか。

 

 そんな卒業試験に挑むライン達。

 

 最初の相手はティナのチーム。

 場所も市街地で正にリベンジとなる。

 

「リベンジか。負けられないな」

 

 と気合を入れるライン。このチームと戦うのはあの時以来だ。

 

「ええ、必ず勝つわよ」

 

 と腕を前で交錯させるマヤ。こちらもやる気は十分だ。

 

「楽しくなってきたなぁ!!」

 

 笑いが止まらないアーロン。勝ち進めれば、強者と戦うのは必然だ。

 

「僕の上がった実力を見せてやる!!」

 

 と意気込むマナン。もう銃の腕前はプロ級だろう。

 

「僕は自分の出来る事をやるだけだ」

 

 比較的落ち着いている表情のドリーだが、足は細かく動いており興奮している事を隠せてない。

 

 観客の居る場所は市街地から100mぐらい離れており、そこから双眼鏡か、手持ちの端末で見ることとなる。

 もちろん出場者には端末の持ち込みは禁じられている。

 端末を見たらどこに居るのかまるわかりだからである。

 

 例年通り盛り上がる会場。設置された席は満席で立ち見席も埋まりそうだ。

 

 もの凄い人だかりにライン達の間にも緊張が走る。

 

「凄い人だな……」

 

「こんなんじゃミス出来ないね」

 

 感嘆するラインの耳にマナンの独り言が耳に入る。

 するとラインはマナンを嗜める。

 

「マナン、ミスはしても良いんだ。そのミスを如何にフォローするかだ」

 

 マナンの肩に手を置いて、安心させる。

 緊張で実力を発揮できないのはマズい。

 

 

 

 

 

 

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 試合開始時間になり、開始を知らせるアラームが鳴り響く。

 それと共に動き出す両チーム。

 

 ライン達が目指すのは前と同じでマンションの屋上だ。同じ手で二の舞になるかと思えるがライン達には秘策があった。

 

「良しっ、行くぞ!!」

 

 ラインの気合を入れる為に叫んだ声は観衆の声にかき消されていった。

 

 そして前回と同じようにマンションの入り口で両チームは遭遇する。

 

「マナン!! 頼む!!」

 

 ラインの呼びかけにマナンはアサルトを連射する。前回はそのままだったが、今回は魔法弾を放つ。

 

 風の魔法を受けた銃弾は速度と正確性を増して敵のチームに襲いかかる。

 だがもちろんウォールシールドに阻まれる。

 

 だけどこれも想定内。あくまでも牽制だからである。

 

 そして両チームは中に入っていく。階段を駆け登り、屋上を目指す。

 

 だが俺らはここでマナンによる妨害を行う!!

 

「マナン、頼んだ!!」

 

「了解!!」

 

 マナンは背中のバックパックから取り出したグレネードランチャーーー爆発物を相手に飛ばすーーを向こうの階段に向ける。

 

「撃てっ!!」

 

 ラインの掛け声と共に弾を撃ちだす。

 

 放物線を描いて飛んで行った弾は階段付近の壁に直撃し、爆炎と轟音を立てて壁を破壊する。

 

 一部が剥き出しになった階段では敵チームが戸惑っているのが見える。

 

「マナン、引き続き砲撃支援を!! アーロン頼んだ!!」

 

「おう!!」

 

 力強く応えたアーロンに安心しながら他の面々は屋上に進む。

 

 ラインが考えた秘策とは普通屋上に連れて行くスナイパーを1階に置く事。そしてその護衛に近接最強のアーロンを置くという事。

 

 敵が寄ってこない限りヒマな護衛をアーロンに任せたられたのは理由がある。

 

 最初、護衛と聞いて強敵と戦えないと怒ったアーロンに対してラインはこう言った。

 

 マナンというエサがあるから強敵は来ると。

 

 確かにチームで守られるべき存在の後衛が1人で下にいるのである。そこに行くには飛び降りれば一瞬である。だから基本的には後衛は高い所に置いて、妨害が来る方向を制限する。

 

 しかし今回は無防備に見える後衛。そう当然ながら1人が飛び降りた。

 

 マナンは前衛が来ると、逃げるように中に引っ込む。そして相手もそれを追うように入っていく……

 

 そしてその3秒後、マナンを倒したかと思えた前衛が壁ぶち抜いて外に吹き飛ばされる。

 

 その前衛は地面をゴロゴロと転がり、力が抜けた状態で仰向けになる。

 自動防御機能が発動し、離脱。

 

 一瞬で動いた戦況に会場は興奮で盛り上がる。

 

 そして壊れた壁からティナ達を見上げるアーロン。

 その表情は口角を大きく上げ、挑発している笑みだった。

 

 

 

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