混沌の中で選ばれし英雄 ~理不尽な世界を魔法と人型兵器で破壊してやる~   作:氷炎の双剣

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そろそろアカデミー編も終了です。
ライン達はこの戦争にどう立ち向かうのか。


11-12 ライバル

 

 エドウィン達との試合はライン達の勝利に終わり、アーロンは病院に搬送される。

 穏やかな表情で眠るアーロンは普段から想像出来ない。常に鋭い視線を周りに向けるのでこんな表情はあの飲み会以来だ。

 

 アーロンが搬送されてるのを見送りながら、後でお見舞いに行こうと思った時、後ろから肩を叩かれる。

 振り返ると何とも言えない表情のマヤが立っていた。

 

「ん? どうしたんだ?」

 

 そう聞くとマヤは髪を弄くりながらボソボソと呟く。

 

「……ねぇ……昨日の事は忘れた?」

 

 昨日の事? ーーああ、あの酔っぱらいね。

 

 苦虫をかみつぶしたような表情をしていると俺の左腕を握り潰そうとしてくる。

 

「……思い出してしまったようね。それは忘れなさい!!」

 

「痛たたたぁぁ!! 分かった、分かったから!! 忘れた、忘れたぞ!!」

 

 俺の必死な様子にどうやら納得したのか手を離してくれる。

 いたた……アザになったらどうするんだ。

 左腕をプラプラと動かして、異常は無いか調べる。うん、どうやら大丈夫だ。

 

 そんな俺の様子を見てやりすぎたと思ったのか

 

「動くなら良かったわ。次の試合に使えなかったら困るしね」

 

 そっぽを向いて言っているマヤ。こっちを向いて言え。

 

 そして俺達はそのまま部屋に戻るとすぐに寝てしまった。激しい戦闘で疲れが溜まっていたようだ。

 

 

 

 

 

 -----

 

 次の日アーロンの見舞いに全員で行く。

 

 軍病院の個室にアーロンは居た。最近は激しい戦闘が無いため、個室が空いていたからだとか。

 

 アーロンを看ていたのはエマ先生だった。学生の間はエマ先生がほとんどの生徒を看ている。

 

 当の本人のアーロンは起きて筋トレを始めていた。もう元気だな。

 

「エマ先生、こんにちは。アーロンはもう大丈夫なのですか?」

 

 リンゴを剥いていたエマ先生は笑顔で頷く。

 

「こんにちは、ライン君。アーロン君はもう大丈夫よ。そもそも命には別条は無かったから。一気に魔力を消費した疲れで寝てしまっただけみたい」

 

 良かった……確かにこの試験の自動防御機能はかなり魔力するように作られている。その分防御力は優れているが、魔力消費は激しい。

 重傷となる攻撃を魔力消費だけで済ましてるのだから素晴らしい性能だ。

 

 一安心しているとエマ先生からウサギの形のリンゴを貰う。ティナのに比べて可愛らしい。エマ先生の方が女子力は上らしい。

 

 わんこそばのリンゴを貰っているとアーロンの分のリンゴが心配になるが、既にアーロンには皿一杯のリンゴがあった。

 なるほど。アーロン、逃げたな。

 

 仕方なく口いっぱいにリンゴを食べているとやっとリンゴが無くなる。

 ふう、これなら昼食は要らないな。

 

 水分でたぷんたぷんの腹を擦っているとエマ先生は近くの手洗い場で手を洗いながら感謝してくる。

 

「ライン君、ありがとね。ついつい、可愛いウサギ作りたくって夢中で作っちゃった」

 

 そう可愛いらしく言っているがその目の下には隈が出来ていた。アーロンを付きっきりで看病していのだろうか。命には別状が無いとはいえ、万が一に備えたのかもしれない。

 

 そして眠気を紛わらす為にリンゴを切っていたのか。生徒一人に付きっきりは軍人としてはマズい。

 軍人としては失格だが、先生、人間としては尊敬出来る。

 

「美味しかったです。ですがこんな量は困ります。……もう私が居ますから先生は帰って下さって大丈夫ですよ」

 

 そう言うとエマ先生は申し訳なさそうな笑顔になる。

 

「あらら、ライン君に隠せない程に疲れが溜まってたかぁ。じゃあお願いしても良い?」

 

 もちろん、と頷くとエマ先生はありがとう、と手を振りながら帰って行く。

 お疲れさまでした。

 

 さて床で筋トレしているアーロンにリンゴを食わせよう。

 リンゴを目の前に差し出すとしかめっ面になる。

 

「俺は要らん」

 

 アーロンはそのまま筋トレを続ける。そうは言ってもこのリンゴどうすれば……

 

 皿一杯のリンゴの処理に困っているとドアが控え目にノックされる。

 アーロンは筋トレに夢中というか興味無いため、俺が代わりに答える。

 

「はい、どうぞ」

 

 許可が出るとゆっくりとドアが開かれる。そこにはフルーツバスケットを持ったマナンとマヤが。

 

「お邪魔します。あれ? 被っちゃった?」

 

 大量のリンゴを見て苦笑いするマナン。これは持って帰ろう。

 

 

 

 

 

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 結局マナンとマヤがリンゴを食べて片づけたのだが、その頃にはアーロンも筋トレが終わっていた。

 それを見て話を切り出す。

 

「まあ、何とも無いようで安心したよ」

 

 俺が爆発の直撃を受けたらと考えただけで寒気がする。でもそんな事はアーロンは気にして無さそうだ。

 

「ふんっ、俺があの程度で死ぬものか。明後日が決勝なんだから死んでられねぇよ」

 

 アーロンは馬鹿らしい、と鼻で笑う。

 そうだ。明後日は決勝なのだ。

 

 まだ対戦相手は決まってはいないが十中八九、グレンのチームだろう。

 確か今日試合だった気がする。

 

 軍事関係者だけにライブ中継されているチャンネルを端末に繋げる。

 

 そこには市街地戦で正に無双しているグレンが居た。

 

 中央のマンションの屋上で飛んでくる魔法や銃弾を軽く躱しつつ、ゆっくりと相手のチームに近づいって行ってるのだ。

 グレンのチームメンバーは誰も手出しはしてない。

 

 よくよく見るとやはりグレンは全てを躱してるのでは無く、銃弾や魔法が自ら逸れているのだ。

 大規模な魔法は躱して、小さな魔法は逸らす。そのように見えるのだ。

 

 俺の端末を覗き込んで見るマヤがポツリと呟く。

 

「……どういう仕組みかしら……こんなのと戦うというの?」

 

 不安で顔をしかめるマヤ。

 もはやこのシーンだけ見たら、『化け物』ノエのようだ。火星独立軍最強の戦士ーーノエ。その強さはこんな風に真正面から歩いてくるらしい。まあノエと違い、グレンは躱しているけど。

 

 実力の差を見せつけるグレンに会場もざわめいているようだ。

 

 その実力はあの銀行の時よりも格段に上がっていた。ライン達もあの時に比べて大幅に実力を付けたが初心者が実力を付けるのと、実力者が実力を付けるのでは伸びしろが全然違う。

 

 あの時のグレンはBランクだったが今はAランクに届くかもしれない。もちろんAランクの実力を知らない為憶測でしかないが。

 Aランクと言えばブライス代表だが確かにまだお互いに本気は出してない感じがする。

 

「グレンは強い。間違いなく俺よりも強い。だけどタダで負ける訳にはいかない。一矢報いてやろうぜ」

 

 そんなポジティブな発言に面々は強く頷く。

 

「ふんっ、ガレンかバレンか知らんが、強い奴なら俺に回せ。ようやく面白い奴に会えそうだ」

 

 武者震いなのか、体を震わせるアーロン。あんな実力差を見せつけられても楽しみに考えられるのはアーロンの長所かもしれない。

 

 だがグレンは俺と戦いたいだろう。何故かそう思える。

 

「もちろん強い奴はアーロンに渡すが、グレンとは俺が戦わないといけない気がする。いいや、戦いたい」

 

 そんな俺の強気な言葉にアーロンは目を大きく見開く。そして小さく笑う。

 

「じゃあお前が負けたら渡せよ? それまでに周りを片付けといてやる」

 

 素直に勝負を譲ってくれたアーロンに感謝する。ありがとな。

 

 さあグレン、お前は一体何者なんだ?

 

 そう見つめた空模様はさっきまでの晴れ模様では無く、薄暗い曇りになっていた。

 

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