混沌の中で選ばれし英雄 ~理不尽な世界を魔法と人型兵器で破壊してやる~   作:氷炎の双剣

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こんにちは。いよいよアカデミー編終了です。
長かったような短かったような。予定よりは短くしたつもりですが、話数を見ると書いたなあと思います。  

次回からは新章に入ります。
思い付いたら閑話入れるかもしれません。

ご要望があれば感想かTwitterなどでお知らせください。


11-14 グレンとの戦い

 

 空調が効いていて程よい涼しさのアリーナの中、俺とグレンは無言で対峙していた。そして俺達の周りにはナイフが散乱していた。

 

 やる気スイッチが入ったグレンは目つきを鋭くさせながら手をこちらにかざすと、ナイフは刃をこちらに向けながら宙に浮く。

 

「さて、まずはお手並み拝見と行こうか」

 

 ニヤッと楽しそうに笑うグレンに釣られて自分も笑ってしまっていることに気づく。

 

「来いっ!!」

 

 剣を強く握りしめてナイフの動きを注視する。

 

 グレンが手を動かすとその動きと同じようにナイフも移動する。

 両手でナイフを操作する様は指揮者のようだ。さしずめ演奏者はナイフか。

 

 ナイフが鳥の群れのように群を成して向かって来る。

 

 さすがにあの数は迎え打つ事が出来ないので横に飛び退いて避ける。

 もちろんそのぐらい読んでいたらしく、一部を分離させ襲いかからせるが、少数だったので剣で弾く。

 

 それを何度も繰り返すが千日手(せんにちて)だったのでグレンはナイフの動きを止める。

 

「ふう、なかなかやるじゃないか。とりあえずは楽しめそうだ。じゃあこれはどうだ?」

 

 グレンは手を横に一閃すると、ナイフは俺を包囲するように大きく広がる。

 

「これは……エドウィンを倒したやつだな」

 

 予想が当たっていたからなのかグレンは嬉しそうに頷く。

 

「そうそう。さあこれを躱せたらエドウィン以上だぞ?」

 

 ……あれからエドウィンも成長しているし、一概にこれを躱せたらエドウィンとは言えない。

 まあこれが凌げない程度ではグレンとは戦うのは話にならないだろう。

 

 対策を考えていると、グレンは何かを思いついたらしく、あっ、と声を上げる。

 

「そういえばもうウォールシールドが有るんだったな。確かにウォールシールドを使えば防げそうだ。それじゃ面白くないから対策させて貰うわーーエンチャント、風」

 

 ナイフに風の魔法を付与(エンチャント)する。これによってウォールシールドを貫通してこちらまで来る。厄介な事に気付きやがって。

 

「さて、もう良いか? いや、答えを聞く必要は無かったな。戦いは待ってはくれない」

 

 一瞬哀しい目をするが直ぐにナイフを全方位から俺に向けて行かせる。

 

 全方位から迫り来る無数のナイフ。流石グレン。通り抜けられる隙間なんて無い。通るには複数のナイフを弾く必要があるがその間に他のナイフが体に突き刺さるだろう。

 

 肝心のウォールシールドもダメ。防ぐ方法は無く、逃げる方法も無い。

 ならーー弾くしかないようだ。

 

 

 

 

 

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 -グレン サイド-

 

 無数のナイフに囲まれたライン。その包囲からは逃げ場は無い。肝心のウォールシールドは風のエンチャントによって貫通し、ナイフは威力、速度も上昇する。

 エドウィンのとは比べものにならないほど難しい。

 俺ですらどう凌ぐか悩む所だ。

 少しやり過ぎたか。

 

 そしてラインは無数のナイフが迫るとウォールシールドを張りやがった。

 

 何故だ!? ウォールシールドは無駄だと言ったし、理解してるはず。まさか俺が付与したナイフが貫通しないと踏んでいるのか、祈っているのか!?

 馬鹿らしい。俺の風のエンチャントしたナイフは薄いコンクリートなら易々と貫くぞ。

 

 ライン、お前は一体何を!?

 

 

 

 

 

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 ウォールシールドを張った時、グレンは何とも間抜けな顔をしていた。

 まあそれはそうだろう。忠告を受けたのにもかかわらず、その行動をしているのだから。

 

 自分の極周囲だけ球状に張ったウォールシールドを確認して

 、次の魔法を発動させる。

 

「さて、ショータイムだ!!」

 

 地面に向けて魔法を発動させる。

 

「ーーバースト!!」

 

 そう言った瞬間、目の前が真っ白になった。そして遅れて爆風と爆音がウォールシールドを叩く。分かっていた事だけど怖さのあまり目を閉じてしまった。

 

 少し経って落ち着くと周りを見渡す。思った通りナイフは近くには無く、吹き飛ばされていた。

 自爆覚悟の技がなんとか通じたな。

 

 グレンの顔を見ると信じられないという顔をしていた。

 俺の視線に気付くと大きく笑い出す。

 

「ハッハッハッ……そうか、あのウォールシールドは自爆をしない為か。安全な自爆という訳か!! いやいや、これは俺も思いつかなんだ。見事だよ!!」

 

 拍手をしてくれるグレン。俺も賭けだった訳だが上手くいってよかった。だが流石に至近距離で思いっ切りぶっ放したから、体にダメージが……

 

 遅れてくる痛みに顔を歪めてるとグレンは微笑を浮かべる。

 

「流石にダメージは来るよなあ。あんだけの威力を至近距離で受けたもんなぁ。普通なら少しでも遠ざかろうとするから威力はそのまま入らないが自爆だもんなぁ」

 

 そうこの方法は最善手では無い。正確には俺に出来る最善手だろうか。

 強者ならば全てを弾き返すか、ナイフごと消滅させるか出来そうだが。

 

「さて、ここで問題です。この攻撃を何回も繰り返したらどうなるでしょうか?」

 

 グレンは微笑を浮かべながら手を差し出し、再度ナイフを宙に浮かせ俺を包囲する。

 

「……さあ、どうする?」

 

 グレンの言う通り、この手は何回も使える訳じゃない。後2回も出来るかも分からないが一方グレンは全く辛そうには見えない。

 

 悔しいが既にチェックメイトだ。

 俺が敗れればアーロンだが、人数が減ったこちらに勝ち目は薄い。

 ならば一騎討ちを辞めるしかないのか……

 

 俺が苦悶の表情を浮かべていると、突如グレンは首を横に振る。

 

「ああ、やめやめ!! こんなんじゃ観客を楽しませれない!! こんな面白くない勝ちは却下!!」

 

 と一人で納得して、ナイフの包囲を解く。

 

「……良いのか? あのまま続ければ余裕で勝てるというのに」

 

 するとグレンは肩をすくめる。

 

「決まった勝利など面白くないし、俺も観客も望んでない。こういう戦いは一進一退が面白いんだぜ?」

 

 コイツは俺の事を舐め腐っているが残念ながらそれほどの実力差が有る。

 まあ油断したところを頂くとするか。

 

「……分かった。お互いに良い試合をしよう」

 

 相手の気まぐれで助かるのはしゃくだが、まだチャンスが有る方が嬉しい。

 

 グレンも近接戦で決着を付けたいらしく、ナイフを地に落とす。沢山の渇いた金属音が周囲から聞こえる。

 その音と共に両者は動き出す。

 

 グレンはナイフを片手に、俺は片手剣を構える。

 そしてお互いに剣捌きを披露していく。剣捌きは重点的に鍛えた技だ。実力差が有るのも技量の差で何とか埋められそうだ。

 

 お互いに肉体強化魔法を掛けた状態での打ち合いは凄まじい速さで金属音を鳴り響かせる。

 

 拮抗した戦いにお互いに思わず笑みが零れる。

 

「ははっ、やるじゃないか、ライン」

 

「いや、まだまだぁ!!」

 

 お互いに汗を振りまきながら戦う様子に観客も盛り上がる。目が離せない状況にボルテージも最高潮だ。

 

 もう何も考えずにお互いの動きを見て攻防を繰り返すぐらいに高度な戦いになっている。もはや反射の域だ。

 

「はぁ……はぁ……そろそろ終わらせるか?」

 

 グレンと同様に俺も肩で息している。

 グレンはわざわざこの実力まで下がって来ている。勝ったとしても勝ちとは言えないが、本人が楽しんでるなら文句は無い。

 俺も楽しい。

 

「ああ……これで勝ったら本気だせよ? お前の本気を見たい」

 

 好奇心からの素直な言葉だった。

 

 だがグレンは一瞬目を伏せるが、直ぐに目線を合わせる。

 

「……ああ、約束しよう」

 

 お互いに剣を構え、力を溜める。そして刹那にお互いの顔が触れ合いそうな所まで来ていたーー

 

 しかしその直後、会場内に鳴り響いたサイレンにお互いの動きはピタリと止まった。

 

 そしてサイレン後に続く放送に会場の雰囲気は凍りついた。

 

「敵軍が接近中。繰り返す、敵軍が接近中。直ちに戦闘員は戦闘態勢に移行せよ。再度通達するーー」

 

 その放送内容に試合中の両チームは固まるが、観客達は冷静に素早く会場を出て行く。

 

 固まる両チームに審判が降りて来て説明する。

 

「済まないが、我が軍はこれから戦闘態勢に入る。もちろんこの試合は中止となる。君達はアカデミーで待機と命令が下された。直ぐに準備したまえ」

 

 それだけ言って審判も急いでこの会場から出て行く。

 

 戦闘態勢ーーそうか。火星独立軍が攻めて来たのか。この忌々しいサイレンは未だ俺を苦しめる。家族を失った時も聞こえた音だ。

 

 歯を噛み締めているとグレンが俺の肩に手を置く。

 

「まあ落ち着けって。まだ敵が来たわけじゃない。待機命令だ」

 

 その通りだ。俺は今は軍人だ。

 戦う時には戦えないといけないのだ。

 

 じんわり暑くなってきたアリーナ内は空調が切られた事を意味していた。

 

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