混沌の中で選ばれし英雄 ~理不尽な世界を魔法と人型兵器で破壊してやる~   作:氷炎の双剣

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1-6 ユーリ達の行く末

(ん……う、うん?)

 

 ユーリは目をこすりながら目が覚めた。目を開けると寝ぼけた意識の中、周りの異常さに気付いた。

 そう、世界が白いのだ。周りにはただ一面の白。どちらが上か下か分からない。

 

(え? 僕は……確か……)

 

 ユーリを記憶をたどる。

 

 僕は確か、奴に吹き飛ばされて……どうなったんだ?

 ここはどこなんだ!?

 

 と考えていると後ろから声が聞こえた。

 振り返ると人の形をした黒い影みたいのが存在していた。

 

「……何なんだ? 人……なのか?」

 

 影はユーリの質問に答えた。

 

「ククク……ある意味、人では無いかな。まあどうでもいい。ユーリ、どうだ? 力は?」

 

 ユーリは自分の拳を握りしめる。

 

「……アナタが力をくれたのですか?」

「ああ。絶望に抗う力だよ。好きに使うがいい」

 

 ユーリは頭を下げる。

 

「それはありがとう。でももっと力が欲しい!!」

「……それは何の為だ?」

 

 ユーリは拳を強く握りしめ、影を真っ直ぐ見据えた。

 

「皆を守りたい!! ……そしてサラを奪った地球連合軍をぶっ壊す!! もうこんな世界は嫌だ! 大切な人を奪う世界は!!」

 

 その言葉を受けた影は揺らめく。

 相変わらず表情は見られないが、その影の揺らぎが感情を表しているように思える。

 

「……見事だ。やはり見込んだだけはあるな。ならば皆を導く力をやろう」

 

 影が手をユーリに (かざ)す とユーリの身体を光が (まと) う。

 

「さあ行くが良い。お前の望む未来を掴み取れ……」

 

 影が薄れていく……いや自分の意識が遠のいて行った……

 

 

 

 

 

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 目が覚めると目の前には白い天井が見える。余り綺麗では無いが、やはり白は清潔感を感じさせる。

 

(僕は助かったのか……)

 

 助かった事に安堵し、しばらく呆けていると、ユーリが目が覚めたのに気づいてアンジェリカが飛んで来る。

 

「ユーリさん! 大丈夫ですか!?」

「え? ……う、うん」

 

 ユーリはアンジェリカのあまりの剣幕に気押された。

 

「ど、どうしたの? そんなに慌てて」

「当たり前ですよ! 異常は無いのに、全然起きなかったんですよ! 心配するに決まってますよ!!」

「あ、そうか。ごめんね」

「そうですよ! ……ユーリさんが起きなかったら私……」

 

 アンジェリカは俯き、自分の拳をギュッと握りしめる。

 

「え? 何だって?」

「え? ……い、いや、何でも無いです!! あ、皆さんに伝えて来ますね!」

 

 アンジェリカは赤面して、慌てて部屋を出て行った。

 

(アンジェリカは心配性だな……)

 

 ユーリは苦笑いしながらアンジェリカが無事な事に安堵した。

 

 

 

 

 

 -----

 

(私……何言ってるだろ……)

 

 アンジェリカは走りながら、悩んでいた。

 

(ユーリさんには……サラさんがいるんだ……まだ。それを振り向かせようなんて……)

 

 と前を見ずに考えていると、人にぶつかった。

 

「キャッ!!」

「うおっ」

 

 アンジェリカは倒れてしまう。

 

 ぶつかった男はアンジェリカに近寄り、手を貸す。

 

 アンジェリカが見上げて顔を見るとサイオンだった。

 

「アンジェリカじゃないか。大丈夫か? でもよそ見はいかんぞ」

「ご、ごめんなさい!」

 

 アンジェリカは深く頭を下げる。

 そしてふと思い出したかのような顔をする。

 

「あ、そういえばユーリさんが……ユーリさんが!」

「何!? ユーリがどうしたんだ!?」

「目が覚めました!」

「ーー!?」

 

 サイオンは直ぐに駆け出す。

 その前にアンジェリカに伝える。

 

「皆に医務室に来るよう伝えておけ!」

「はいっ!!」

 

 2人共別々に走り出す。

 

 

 

 

 

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 ガラガラッという音と共に扉は開けられた。

 

 ユーリはそちらに目を向ける。

 

「ユーリ! 大丈夫か!?」

 

 ものすごい勢いで詰め寄って来たのはサイオンだった。

 

「うん。力が前よりも充実している。万全だよ」

 

 ユーリは手をグー、パーと開いたり閉じたりする。問題は無く、むしろ、力に満ちている。

 

 その様子を見たサイオンは安堵するが疑問が沸き起こる。

 

「前よりも? ……どういう事だ? まだ力が戻るには早いだろう?」

「普通はね。ある人が力をくれたんだよ。前より強い力を」

「そうか……万全ならいい。なら……」

 

 サイオンが次の言葉を言いかけた時、扉が大きく開いた。

 

「アイツが死んだってホントか!?」

 

 入って来たのは多少息切れしたランスだった。

 ユーリとサイオンは疑問の目でランスを見る。

 

 ランスは元気なユーリを見ると、大きなため息をついた。

 

「はぁぁぁ……アンジェリカの奴ちゃんと伝えろよ!」

 

 すると後ろからクリフとアンジェリカもやって来た。

 

「ランスさん! ランスさんがちゃんと聞かずに走って行ったからじゃないですか!」

「お前が早く言わねえからだろ!」

「それは走り疲れて、頭が回らなかったから……」

「そこまでじゃ二人共」

 

 クリフが間に入る。クリフは2人に注意する。

 

「アンジェリカは簡潔に、まとめなければな」

「はい……」

 

 アンジェリカは反省して、俯く。

 まるでリスのようだ。

 

 続けてランスを注意する。

 

「ランスはユーリを心配して気持ちが焦ったんじゃな」

「別に心配した訳じゃねえ……ただ知り合いが死んだら嫌な気持ちになるから確認しただけだ」

 

 ランスは恥ずかしそうにそっぽを向く。そのまま様子にクリフとアンジェリカはニヤニヤし始める。

 

「フォフォフォ……全く素直じゃないのう」

「ふふ……ランスさんは良い人ですね」

 

 ランスは恥ずかしくなり、居たたまれなくなったのか病室から出て行く。

 

「逃げたな」

「逃げましたね」

 

 クリフとアンジェリカは2人でニヤニヤしていた。

 

 そんな様子をユーリとサイオンは驚いた顔で見ていた。

 

「あの2人、いつの間かに仲良くなったんだか」

「うん、見事な連携だよね」

 

 そんな様子で火星は平和な時が流れて行く。

 

 

 

 

 

 -----

 

 2、3日後、主なメンバーが会議室に集まっていた。

 サイオン、ユーリ、アンジェリカ、ランス、クリフ、他何人かである。

 この会議で戦争の後処理を決めるのである。

 

 サイオンが前に立つ。

 

「皆、集まってくれてありがとう。そして協力してくれた同志達に感謝する。我々は勝ったのだ! 火星は俺達の国だ!」

 

 皆がおう! と賛同する。

 

「だが、その為に多くの犠牲者を出してしまった……だから明日、黙祷及び、火葬をするつもりだ」

 

 皆は小さく頷く。

 

 そして、サイオンの解散の声で皆部屋から出て行く。

 だが、特別部隊のメンバーだけは残された。

 

 ランスはサイオンに問いかけた。

 

「なあ、サイオン。なんで俺達だけ残したんだ?」

「それはだな。明日発表する事を皆に聞きたくてな」

 

 ランスは頭を捻るが全く出てこない。

 

「……なんかあったか?」 

「うむ。……リーダーをユーリにするつもりだ」

 

 この言葉に皆が驚く。

 今までのリーダーはサイオンであり、これからもサイオンではないかという予想を裏切ったからである。

 

 そして一番に声を上げたのはユーリだった。

 

「え? ……ええぇぇぇぇーーーー!?

 なんで僕がリーダーに!?」

「ユーリ、落ち着け。今説明する」

 

 サイオンは慌てるユーリを肩を掴んで落ち着かせる。

 

「まず、なぜユーリをリーダーに推したかだが、それは前の戦いに理由がある。我々が本丸を抑え、勝利したのは誰もが知っているだろう?」

 

 ユーリ達が活躍したように聞こえるが事実、本丸を抑えなかったら作戦は失敗していた。やはり装備、連度、数が違った。普通に戦えば負けるのは明らかだった。だから陽動し、本丸を叩くつもりだったが、作戦は失敗した。思いの他戦力があったのである。

 

 せいぜい、想定されてたのは見回りの兵士ぐらいであった。

 それが完全武装の兵士達と魔法師。備え過ぎも良いところである。

 

 そんな中ユーリ達は打ち破り、司令長官を倒し、指揮が混乱した所を打ち破ったのであった。

 

 もはやユーリ達がいなかったら負けてたのは明らかである。

 

「そこでユーリは覚醒した。そのおかげで我々は倒せた」

「でも……僕が気を失ったのは司令長官にやられたからだったような……」

「確かにお前は意識を失った。それから我々が覚醒して倒した」

「え? え? ……えっ?」

 

 ユーリは皆が覚醒した事に信じられないみたいだ。明らかに困惑した表情を浮かべる。

 

「皆、覚醒したの?」

 

 皆頷く。

 

「全員がユーリみたいな力を出せた。それで倒した」

「でもそれじゃ僕がリーダーになる理由にはならないよね?」

「そうだな。だが覚醒したのには共通点がある。それはーー

 

 

 

 

 

ーーお前を救いたいという気持ちだ」

 

 ユーリは衝撃を受けた。

 

 こんなに思ってくれる人が沢山いる……

 

 困惑してるユーリの目に一筋の涙が零れ落ちる。

 

 泣き出したユーリにランスが呆れる。

 

「はあ、ユーリは泣き虫だなぁ」

 

 やれやれとランスは首を振るが、そこにアンジェリカが乱入する。

 

「あれ? ランスさんもユーリさんが意識無い時、泣いていませんでした? ですよね、クリフさん?」

「うむうむ」

 

 2人共ニヤニヤとランスを見る。

 いきなり矛先が変わった事にランスは困惑する。

 

「なっ! あ、あれは怪我が痛かっただけだ!」

「そうですか。そういう事にしときましょうか」

「素直じゃないのう」

「けっ! やりにくいなぁ」

 

 微笑ましいやりとりが終わると、全員の視線はサイオンに向き直る。

 

「ユーリ、お前は俺達の希望だ。お前には何かある気がする」

 

 皆もうんうんと頷く。

 

「俺達はそれに賭けたい」

 

 皆そんな意見だった。

 

 挑むのは地球連合軍。相手は強大過ぎる。相手は地球全土、いや月もか。それに比べ火星の国力は地方の1都市にも及ばない。

 そんな中、喧嘩をふっかけようとしているのだ。

 もはや希望が無ければやって行けないだろう。

 だから未知の可能性を秘めているユーリに託すのであった。

 

 ユーリはまだ不安そうだ。

 

「でも……僕は何も知らないし、皆に指示する事も出来ない。それでも良いの?」

「大丈夫。俺達が教えるさ。ここには大魔法師のクリフ先生もいるし、俺も、みんなが支える。なに、お前には難しい事を要求するつもりは無い。希望の旗に成るだけで良い。難しい事は分担しよう」

 

 ユーリはサイオンの目を見る。その目は力強い目であった。

 

 そこまで強く思うなら僕は応えるだけだ。

 

「……分かった。僕は皆の希望となる。皆を導く!! そのために力を貸してくれ!!」

 

 ユーリの呼びかけに皆が立ち上がる。

 

「さあ、始めようか。自由の為に!!」

 




そういえば、皆さんはアンジェリカがユーリに好意を抱いている事はお気づきでしょうか?

もし気づいていらっしゃらなかったら表現を改善したいと思います。
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