混沌の中で選ばれし英雄 ~理不尽な世界を魔法と人型兵器で破壊してやる~   作:氷炎の双剣

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すみません、投稿忘れてました。今回は閑話を辞めて、本編を進める事にしました。

まあ閑話が本編に関わる内容だったので……
そのうち途中に閑話?を入れます。


〈12章 ライン 動乱編〉
12-1 軍人とは


 

 アカデミーでの待機命令が出た俺達は地下に避難していた。一緒に避難している不安げな様子の1年生達を宥めるのも最高学年の義務だ。

 そういえば、入学式の後に出会った先輩ーーエレット先輩はこんな気持ちだったのだろうか。確かに1年生達はか弱く感じる。

 

 また三年生達も初めての戦闘態勢に表情が強ばっている。

 今まで何度か来襲はあったがどれも小規模でオークランド基地だけの戦闘であった。ここウェリントンまで戦闘態勢が引かれたのはあの時以来だ。

 そして未だに鳴り響く空襲警報が自分を動揺させている。今日は良く自分の鼓動が聞こえる。

 

 ウェリントンで空襲警報が鳴るという事は相当大規模な戦闘になる可能性がある。近くの住民も避難命令が出ているだろう。地下や屋内へ避難しているはずだ。

 

 そしてアカデミーの地下に避難している俺達の中でも点呼が取られる。

 だが一人足りなかった。それはグレンだった。

 

「アイツはこんな時にどこほっつき歩いてるんだぁ!!」

 

 引率の先生のゴリが吠える。

 

 またグレンか……アイツはほんと自由気ままで良く居ない。何処かしらで女漁りでもしてるのだろうか。

 

 だが探しに行く訳には行かない。攻撃に巻き込まれる可能性がある。

 

 そしてゴリもここを守るという仕事を放棄するわけにはいかない。一人の為に皆を危険にさらしてはならないのだ。

 

 まあグレンなら大丈夫だろうと皆は口にしないが心の中で思っていた。またあの強さは並の魔法師では太刀打ち出来ない。

 

 そして遠くからの爆発音や地響きがここまで伝わってくる。ウェリントン基地も戦闘になったか。

 

 ウェリントン基地からそう離れてないアカデミーにも攻撃が来る可能性もある。そんな可能性に唇を噛み締める。

 

 戦闘音で皆不安そうな顔で俯く。力の無い俺達はただ通り過ぎるのを待つしか無い。

 

 そんな中、地下の入り口が開かれる。ゴリやエマ先生教員陣が咄嗟に入り口に動く。

 

 殺気の集中放火を受けた男ーーグレンはたはは……と頭を掻いて困惑していた。

 

「馬鹿野郎!! こんな時にほっつき歩くとは死にたいのか!!」

 

 ゴリや教員陣に包囲され、説教を受けたグレンはとても小さくなっていた。自業自得だ。

 

 やっと解放されたグレンは忍び足でこちらに向かってくる。その間も教員陣の誰かがずっと監視していた。

 

「よぉ……すげぇ剣幕だったぜ……」

 

「お前が悪い」

 

 キッパリと断言した俺にグレンは耳打ちした。

 

 

「なぁ、良いこと教えてやろうか?」

 

「……何だ?」

 

 どうせ女絡みだろう。まあ面白そうなので聞いておく。

 

 だがグレンはにやけた顔を瞬時に引き締めた。そして爆弾を投下する。

 

「ウェリントン基地、後方に敵魔法師部隊を確認した。人数は50人ぐらいか。もしこの人数が無防備な後方から攻撃したらーー分かるな?」

 

「ーーそれは、不味すぎる!!」

 

 突然大声を上げた俺に怪訝な視線が集まる。やっちまった。

 

 軍隊という物は戦闘集団がほとんどだが、かなりの数、後方支援部隊も存在する。もちろん軍人なので武器や訓練は受けているが、最前線で戦う者に比べればその実力差は一目瞭然だ。

 

 また魔法師の後方支援部隊が少ないのもマズイ原因だ。現状魔法師は最前線以外での活躍の場は少ない。エマ先生のような治療魔法が使える人ような居れば良いが、戦える治療魔法師は最前線の衛生兵として出て行ってしまう。

 

 要するに魔法師として後方支援部隊にいるのは戦闘出来ない魔法師だけなのだ。

 魔法の使えない整備兵や衛生兵も多く居るだろうが、戦力としては約に立たないだろう。

 

 実際戦力として換算出来るのは上層部だけか。ブライス代表とヨシフ副代表とその護衛だろうか。多分代表直属部隊は出払っているはすだ。オークランド基地や他の基地も攻撃を受けているのだから。

 最悪ブライス代表か副代表のどちらか居ないかもしれない。一人はオークランド基地防衛に行ってそうだ。

 

 にしてもどうやってグレンはこの情報を?

 

 俺が視線を戻すのも見計らっていたのか口を開く。

 

「まあそれは追々話す。それよりもこれをどうするかだ」

 

 どうするかだって? 俺達で倒せと? この前の合宿とは訳が違う。合宿の時は魔法師はエマ先生が抑えてくれたし、弱かった。

 

 だが今回は違う。戦争で後ろから奇襲するような任を与えられた魔法師は相当な強さの魔法師だ。

 

 後ろから奇襲するという事はもし前線を崩せなかった場合、袋のネズミという事になる。そう成功して生きるか失敗して死ぬかの二択になるのだ。

 そしてこの一撃が戦闘の命運を分けるとなるのならこの部隊はエリート部隊だ。

 重要な任務に下っ端を当てるようなミスはしないだろう。

 

「どうする、とはどういう意味だ? まさか俺達でやろうと言うのではないだろうな?」

 

 まさかとは思うが一応牽制しとく。そんな特攻まがいはしたくない。

 

 するとグレンはニンマリと笑う。

 

「そうだ、と言ったら?」

 

「無理だ!! いくらお前が強いって言ったって相手は50人だぞ!!」

 

 またしても大声で注目を集めてしまう。さすがに見かねたエマ先生がやってくる。

 

「ライン君大丈夫? ここには来ないから大丈夫よ」

 

 そう言いながら背中をさすってくれるエマ先生。少し落ち着かないと。

 大きく深呼吸して心を落ち着かせる。落ち着いたのを確認したエマ先生は入り口に戻っていく。

 

「済まない……俺も苛立っていたようだ。何回も体験してるはずなんだがな……」

 

「いや、俺も端折(はしょ)り過ぎたな。俺は、いや俺達は奇襲をかける」

 

「俺達? 仮に教員陣と三年生が動いたとしても勝てるか分からんぞ? それは理解してるのか?」

 

 グレンはもちろん、と頷く。

 

「当たり前だ。俺も軽くみてはいない。だから強力な援軍を用意した」

 

「ーー援軍?」

 

 まさか代表でも動かすとでも言うのだろうか。

 

 グレンはニヤリと面白そうに笑う。

 

「まあそれは見てからのお楽しみ」

 

 

 

 

 

 -----

 

 結局、周りから説得していく事となった。まあ2人で声を上げても通らない気がする。

 

 最初は自分のチームからだ。

 

「カクカクシカジカ」

 

「なるほど……って全然訳分からないわよ!!」

 

 すぐにボケにツッコミを入れてくれるマヤ。いやぁ落ち着く。

 

 ツッコミを入れたマヤも呆れ顔でこちらが話すのを待っている。

 

「……で、面白い話を持ってきたんだろうな?」

 

 笑顔一つ見せないアーロン。戦いたいのに戦えないのは不満そうだ。

 

「……何をするの? 僕に出来ることあれば手伝うよ」

 

 ドリー、ありがたい。

 

「こういうときのラインは重大な発言するんだよね」

 

 もう察しているマナン。流石だな。

 

「面白い……まあアーロンには面白いかもしれないな。実はウェリントン基地後方から敵が奇襲しようとしている」

 

 この言葉だけでマヤとアーロンは大体察したようだ。

 

「なるほどね。薄い後方を守るために私達で行くって訳ね。でも私達だけで行けるかしら?」

 

「ふんっ、出番がやってきたわけか。面白そうじゃねえか」

 

 2人は笑顔で頷くが他の2人は不安そうだ。

 

「いやいや、いきなり敵部隊と戦うの!? 僕らはアカデミー待機でしょ!!」

 

「敵は強大かもしれないけどラインとならやれそうな気がするよ。僕は行く」

 

 ドリーは反対のようだが、マナンは来てくれそうだ。

 

「ドリー、俺達はアカデミー待機命令だがその存在が代表が知ったら、攻撃命令が出るだろう。今動ける部隊は俺達しかいない」

 

 俺の言葉にドリーも悩んだ末、頷く。

 

 さて次はティナ達だな。

 

「カクカクシカジカ」

 

「……それさっきも言ってたよね?」

 

 聞かれていたか。

 

「それで何よ? さっきからちょこまかと動いているから来ると思ってたけど。さっさと言いなさい」

 

「ああ、これから外に出て戦うから協力して欲しい」

 

「結構省いたわね!? ……まあ理由も聞く必要は無いわね。ラインのチームが賛同してるなら文句ないわ。皆も良いわね?」

 

 ティナのチームも賛同を得られた。次はエドウィン達だ。行きたくない。

 

「ウマシカウマシカ」

 

「何だそれは。馬鹿にしてるのか?」

 

 正解!! と心の中で拍手を送る。

 

「それでだ、代表から出撃命令が出た。へールズ家の威信に賭けて勝利を手に入れて欲しいと」

 

 出任せの嘘だったが、名声を気にするエドウィンは大喜びする。

 

「お任せを!! 必ずや勝利をエルス国に献上致しましょう!!」

 

 うーん、付いてもいい嘘もあるよね。

 

 とりあえず、戦果を手にグレンのところに戻る。

 

「おう、ラインどうだった?」

 

 既にくつろいでいるグレンに戦果を報告する。

 

「3チームの協力は取り付けた。後17チームだが何処までいけた?」

 

「全部終わった」

 

「は?」

 

 2度も言わせるなと言わんばかりの目線を送ってくるグレン。

 

「だから教員陣以外は終わったって」

 

 ……嘘だろ? さすがに早すぎないか? これが人脈の差だというのか……

 

 あんぐり口を開けていると口に飴玉が突っ込まれる。グレープフルーツは嫌いだ。

 

 最後の砦、教員陣に2人で向かう。

 

 散々騒いだ2人なので教員陣も怪訝な表情だ。

 

「何だ? トイレなら向こうだぞ?」

 

 向こうも何かを察しているらしく、トイレなどと適当な事を投げかけてくる。2人の男が一緒にトイレに行く訳が無い。

 

「いいえ、違います」

 

 首を横に振って否定する。グレンはお前が説明しろと目線を送ってくる。

 

「実はウェリントン基地後方に敵魔法師部隊を確認したという情報が」

 

「ーー何!?」

 

 流石教員陣。その重大性に気づいていらっしゃる。

 

「その情報は確かなのか?」

 

 この質問はグレンが答えるしかない。

 

「ええ、この目で見ました。敵は50人前後。どれもBランク相当の部隊です」

 

 Bランク……改めて聞くと相手は強い。銀行で出会ったエルビン隊長もBランクだ。

 

 衝撃的な報告に教員陣もざわめく。そんな中ジェームズ先生は冷静に判断していた。

 

「なるほど。仮にグレン君が本当の事を言っていたとしたらそれは観光客にでも混じっていたのでしょう。魔法師ならばなおさら。持ち物検査では防ぎようは無い」

 

 そうか。スパイのような者か。

 それが有事の時に行動を起こすというのか……恐ろしい。

 

「うむむ……」

 

 珍しくゴリが弱気だ。やはりBランクは強いのだろうか。実際に戦ったことが無いから分からん。

 

「ライン君、Bランクというのは強いよ。私自身Bランクだから私と戦うようなものだよ」

 

 エマ先生が分かりやすく教えてくれる。エマ先生と同じ!? 強い……全力で戦っても勝てるだろうか。

 

 教員陣がうなり声を上げてる中、グレンに背中を小突かれる。

 分かってる。

 

「先生方、そこで我々3年生も出撃します。教員陣と力を合わせれば「戦いを舐めるな!!」」

 

 ゴリが額に青筋を立てて怒鳴る。

 

「戦いは数じゃない!! もちろん数が大幅に開いていれば違うかもしれんが、今回はたった2倍だ!! 

 それもヒヨッコ共がほとんどだ。我々も自身を守るのに精一杯で守り切れん。仮に勝てたとしても被害は甚大。そんな作戦なんぞ承認出来るか!!」

 

 相手は50人、こちらは100人を超えるが実力差は明らか。

 勝てるとは思えない戦力差だった。

 

 だがグレンは諦めてなかった。

 

「宜しいですか、先生方。戦力差は大きく、不利な状況ですが援軍を要請してあります。

 それに敵はこちらが気づいた事に気づいていない。そう、奇襲する者が奇襲されるとは誰もが思いません。普通気づいたならば防衛態勢を取るはずです。その方が被害が少ないからです。しかし今回は防衛体制を取った所で戦力が足りず、守り切れないのは明らか。ならば肉を切らせて骨を断ちましょう」

 

 見事なまでの説得力のある言葉だったが、一つだけ怪訝な部分があった。そう、援軍だ。

 

「待て、援軍だと? 援軍が送れる状況ならば最初か防衛態勢を引けば良いではないか」

 

 至極全うな意見に皆が頷く。そうなんだよ。俺もそうすれば良いのにと思ってたんだが……

 

 また怪訝な視線で見つめられるグレン。

 だがグレンは首を横に振る。

 

「そうですね……今はまだ明かせません。いわゆる義勇兵とでも言いましょうか」

 

 義勇兵ーー有志による兵隊だ。だがそれはエルス国が公でやってることであり、有志は既に出払っているだろ。しかし何故義勇兵と偽るのだろうか。

 

 曖昧な答えに教員陣は当然納得しない。味方か分からない、戦力が不明な部隊を援軍として期待出来るはずもない。

 

 詳細な説明を求める教員陣にグレンは鋭い視線を向ける。そしてさっきまでの丁寧な態度を一変させる。

 

「なぁ、俺は別にエルス国を助ける義理は無ぇ。だがこうして助けてやろうか提案してるのに、味方か分からない、戦力が不安だ? お前らは戦争を舐めてんのか!! 犠牲なんぞ恐れては戦争なんか出来ねぇ!! 俺ら軍人が考えるのはどうやって国を守るかじゃないのか!? 

 いつの間にかによ、犠牲を少なくしないといけないという風潮が有るけどよ。その前に国を守るのが俺達の最重要目標じゃないのか!! それを思い出せ!! 国を守るのに必要最小限の犠牲を恐れるな!! お前らは軍人だろう!!」

 

 生徒から教師へあるまじき発言。部下から上官への発言としてもマズイものだ。だがこの非常事態に叱るという思考に至らなかった教員陣が誇らしい。

 

「グワッハッハッ、グレン、お前も良いこと言うのだな!!」

 

「目が覚めました。グレン君ありがとう」

 

「まさか君に諭されるなんてね……そうだこれは戦争なんだ」

 

 それぞれグレンに感謝を述べる。

 そしてグレンも嬉しそうだ。

 

「良かったぜ。ここの教員陣が無能じゃなくて。これならやれそうだ」

 

 だがこれから待っているのは厳しい戦いだ。どうしても犠牲は出るだろう。それが親しい者だとしても俺は前に進めるのだろか。

 

 未だに続く爆発音と地響きが戦争だと再認識させる。

 

 

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