混沌の中で選ばれし英雄 ~理不尽な世界を魔法と人型兵器で破壊してやる~   作:氷炎の双剣

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1-7 自由な国を作る為には……

 -火星 元監獄-

 

 あの戦闘からまだ4、5日しか経っていない。まだ至る所に戦闘の痕跡が残っている。

 

 壁に残る弾痕、地面にこびりつく血痕。

 

 まだ戦闘の事から完全に離れられるのは時間がかかりそうだ。

 

 その頃、ユーリは監獄と呼ばれていた建物の中の廊下を歩いていた。そこには沢山の人々が思い思いに遊んでいた。今まで与えられなかった自由を満喫しているのだ。

 

 監獄には大人は少数派である。なのでほとんどが子供である。今まで自由に遊ぶ事が出来なかった子供達が思いっきり遊んでいる。あちらこちらに子供が駆け回っている。

 

 そんな様子を見ながら、ユーリは微笑んでると、子供がぶつかって来る。

 

「あっ……ご、ごめんなさい! 痛いのは許して!」

 

 子供は急に怯え出し、恐怖に滲んだ瞳をユーリに向ける。地球連合軍が居た頃を思い出してたのだろう。

 

 ユーリは子供の頭を優しく抱きしめながら、優しく声を掛ける。

 

「大丈夫。もう怖い人は居ないよ。君を傷付ける人はもう居ないんだ」

 

 最初は身体に力が入り、怯えていた子供だったが、次第に力が抜けていき抱きしめ返してくる。

 

 ユーリは身体を離すと、もう子供は笑顔だった。

 

「お兄ちゃん、ありがとう」

 

 そう言うと子供はさっきと同じようーーいや、さっきより元気に他の子供に混じって行った。

 

 ユーリはそれを眺めながら思った。

 

(まだ、皆の心の傷は癒えて無い……少しずつ癒やして行くしか無い)

 

 ユーリは一気に解決出来ない歯がゆさに歯を食いしばりながら、元地球連合軍支部に向かった。

 

 

 

 

 

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 -火星 元地球連合軍支部-

 

 長官室に入ると中にはアンジェリカが椅子に座り、 何かを夢中になって読んでいるみたいだ。

 

 入って来たユーリには気付かない。

 

 ユーリは近付いて後ろから声を掛けるとアンジェリカは飛び上がった。

 

「え!? ユーリさん!? ……な、何でここに!?」

 

 アンジェリカは慌てて、読んでいた物を背中に隠した。

 

 ユーリは疑問に思った。

 

(何で隠したんだろう……ちらっと女の人の写真があったような……)

 

 ユーリは疑問に思いながら、答える。

 

「サイオンに話が有るんだけど……ここに居ないのか……」

 

 サイオンに会いに来た事をアンジェリカに伝えるとアンジェリカは安堵する。

 

「あ、そ、そうなんですね! ……さ、サイオンさんは博士の所へ行きましたよ」

「うん、ありがとう。じゃあ博士の所行こうかな」

「あ、あの!」

 

 ユーリが踵を返し、行こうとすると、アンジェリカが引き止める。

 

「あのユーリさんは……胸が大きい人が好きですか? 小さい人が好きですか?」

 

 その質問にユーリは混乱する。

 

「え? どういう事?」

「そのままの意味です!」

 

 ますますユーリは混乱した。

 

(何でそんな事を聞いて来るんだ!? これは罠なのかな?)

 

 とユーリは周りを見渡すが、人もカメラらしき物も見当たらない。

 

 それにアンジェリカの表情は真剣その物だ。

 

 ユーリは仕方ないと思い、思ったままを答える。

 

「僕はどちらでも良いかな。胸の大きさで人の良し悪しが変わる訳じゃ無いと思うよ?」

 

 すると、アンジェリカは喜んだように話す。

 

「そうですか! ご意見ありがとうございます!」

「う、うん」

 

 アンジェリカはユーリの回答に満足したのか、鼻歌混じりに急に掃除を始める。

 

 ユーリはすっきりしないまま部屋を出て行った。

 

 廊下には盗み聞きをしていたクリフが居た。だがユーリは気付かない。

 

(ふぉふぉふぉ。若いとは良いのう。

 ユーリの答えは最良だが、アンジェリカの質問が悪いのう。ユーリ達はまだ、成長期に入ってすらおらん。だから、ユーリの周りにいる女の子はまだ発育しておらんから、胸が大きい小さいなど変わりは無いわ。

 質問するなら成長して差が出て来てからじゃな。ユーリの趣向も変わるかもしれんしのう)

 

 と一人で盗み聞きして楽しんでいるクリフは他の人からは変な目で見られている事には気付いていない。

 

 

 

 

 

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 ユーリは地下基地の格納庫に着くと、博士と話しているサイオンを見つけた。

 近づくと話声が聞こえる。

 

「どうだ? 量産のメドは立ちそうか?」

「うーん。直ぐには厳しいかな。やはり、世間には未知の領域だしね。普通の人にとって人型装甲兵器は夢の存在だから理解するのは時間かかるし、これからコイツを主力に、って事はコストも抑えないと」

「頼む。火星は手に入れても、地球連合軍を倒すには先ずは宇宙の制宙権を取らんと話しにならん」

「分かってる。問題は向こうの技術力の進歩とコストだ。もちろん僕も向こうへ行くよ」

 

 二人共顔を上げ、HAWを見上げる。

 すると、博士はユーリに気付いたのか手を挙げる。

 

「やあ、ユーリ。作戦はお疲れ様。大変だったみたいだね」

「うん。……そういえばあの時、博士は何してたの?」

「僕は此処に居たよ。コイツを改良してたのさ」

「え? じゃあ作戦には参加しなかったの!?」

「そうだね。僕は肉体労働はとんとダメでね。居たら足でまといになるからサイオンに外された」

 

 サイオンはニヤリと笑う。

 

「間違って無いだろう? 博士は子供にも負ける」

「ここの子供は例外だ! 地球の子供ではこんなに動かない!」

 

 博士の苦しい言い訳に二人で笑う。

 すると、サイオンが思い出したようにユーリに聞く。

 

「なあ、ユーリ。ここに来たのは用件があったんじゃないか?」

「あ! そうだった。あのさ、作戦で死んだ人達の葬式しない?」

「ほう……なるほど。ならば今日やるか。皆呼んで来い」

「うん!」

 

 ユーリは早速、人を集めに駆け出して行った。

 

 

 

 

 

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 一時間後、火星にいる全員が採掘所に集まっていた。

 

 目の前にはブルーシートで隠された沢山の死体があった。

 作戦で死んだ者達だった。

 作戦中、身に付けていたのは銃だけ。防具など無い。

 

 一方、敵兵士は防具を付けてたり、盾を持っていたりしたがこちらは服一枚。

 銃弾が当たっただけで死ぬのである。

 そんな中、この者達は勇敢に立ち向かって行ったのである。

 死体の中には友達や兄弟もいるだろう。

 

 悲しみに暮れてる中、サイオンが前に立つ。

 

「皆、集まってくれてありがとう。ユーリから聞いてた通り今から葬式を行う。死体は腐敗が進んでいるから見る事は出来ない。今ここで別れを告げてくれ」

 

 その言葉を聞いた途端に、嗚咽を漏らしたり、泣き声を上げたり、人それぞれの反応を示した。

 

 ユーリもその中の一人だ。

 ユーリはただ、拳を強く握りしめ、目を閉じ、ウィリーの冥福と復讐を誓った。

 

「ウィリー……君の未来を奪った地球連合軍を許さない。僕は必ず復讐してやる」

 

 

 

 

 

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 しばらくすると泣いていた者も周りの人達に慰められ、立ち直る事が出来たみたいだ。泣き声も次第に聞こえなくなる。

 

 サイオンはそれを期に話し始める。

 

「皆、良くこらえた! 死んだ者も皆が元気になった事を喜ぶだろう! 

 死者の願いは生者に元気で居て欲しいと思う。そして我々の願いは地球連合軍打倒だ! 我々と亡くなった者達を貶めたのは地球連合軍だ! 

 そして今も我々の同朋を貶めている。同朋を救わなければならん! そのためにはどうするか? 強くなるしか無い! そのためには我々には希望の旗が必要だ。ユーリ! 来い!」

 

 呼ばれたユーリは前に出る。皆の視線はユーリに集まる。

 

「皆も知っている通り、ユーリは力を覚醒し、我々を勝利に導いた。ならば、これからも我々の希望の旗となって貰おうではないか!」

 

 皆が「おぉー!!」と賛同する。

 

「ユーリには我々のリーダーとなってもらう。ユーリ、いいな?」

 

 ユーリは頷き、皆に視線を配る。

 

「皆! 僕に力を貸して欲しい! 地球連合軍打倒の為に!」

 

 ユーリの呼びかけに再び歓声が上がる。

 

「さあ、皆自分の出来る事をやって欲しい」

 

 その言葉にそれぞれ皆散って行く。

 

 ユーリは再度決意する。

 

 必ず地球連合軍打倒してやると。

 

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