IS大戦OG   作:sigurui

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3話 研究室の凶鳥

イングは倉持技研の社員になってから1ヶ月が過ぎた。

 

彼が取り掛かっているのは自身が持っている技術をフィードバックする作業に移っていた。

そもそも、技術的格差が激しい為、どうにかして使える技術と使えない技術の選定を行う事に終始していた。

 

そもそも、ヒカルノが得意とする分野はインターフェイスの分野であり、イングの得意とする機械工学とは違うのが大きな要員であった。

 

「どうだい、イング?」

 

軽快なノック音と共にヒカルノが入出した。

 

「今の所、テスラ・ドライブのIS搭載に目途が立ちました。それと、シールドエネルギーの容量向上は僕の世界の技術の応用で30%増加しました」

 

「ほお~……。やるね~。流石イング」

 

イングは自身の名をイーグレット・イングからイング・イーグレットに改名した。

イーグレットはまあ、苗字みたいな物だし呼ばれ慣れないから。とは本人談である。

 

「後は“エクスバイン”に反映させますよ」

 

そう、イングは元の世界に存在するパーソナル・トルーパー、通称PTのエクスバインに似せてISを開発していた。

このエクスバインとはヒュッケバインシリーズに分類されるPTである。

マオ・インダストリーがゲシュペンストシリーズ等で得られたデータを元に、数々のEOT技術を惜しみなく使って開発した。PTX-005ビルドシュバインの運用データを元に、ゲシュペンストMk.Ⅱの量産化データを組み込み、コストダウンと汎用性を求めて3機が同時に開発され、その内の1機であるヒュッケバイン009がヒュッケバインMk.Ⅲ用のAMパーツ(アーマードモジュールパーツ)のフィッティング調整機として改造されたのがエクストラヒュッケバイン、通称エクスバインである。

何ゆえエクスバインなのかといえば元々エクスバインはエグゼクスバインの大元であり、封印戦争後、彼の小隊がマオ・インダストリーとの共同開発にて次世代主力機計画のフラグシップモデルとして運用していた経緯がある。さらに自身が乗っていたエグゼクスバインの大元の為、参考にし易かったのも大きな要因である。(別に創〇、サン〇イズにバニシングされるからでは無い)

 

その事を踏まえて倉持技研の打鉄に変わるフラグシップ機として第2研究所主動の元開発が進められていた。

開発目的は現行存在する第3世代ISの圧倒と量産性の両立が開発目的である。

 

その目的の為にはイングの機体の技術をフィードバックする必要がある。

 

「テストしてみる?」

 

ヒカルノの言葉にイングは静かに首を横に振った。

 

「パイロットがいませんよ」

 

「君が乗ればいい。念能力でコアネットワークを掌握できる君ならできるだろ?」

 

そう、イングはISを操縦する事が出来る。

自身の念能力を駆使してISのコアを掌握、そこからインターフェイスに働きかけ動かすという物である。

 

しかし、欠点もあり、コアの主導権を無理矢理自身に移譲する為、若干のタイムラグが生じてしまう。

通常であれば1行程ですむ作業を2行程挟まなければならない。

その為、イングのIS操縦は大半がマニュアル制御を余儀なくされるのである。

 

この事は倉持技研社長である石田 ヒロミにより知る者には緘口令が敷かれた。

 

「T-LINKシステムを詰めればいいんですけど……」

 

T-LINKシステムは念能力の権威、ケンゾウ・コバヤシが開発した念動力感知増幅装置で、人間の持つ念能力を増幅させ、メカニックへとダイレクトに伝える機能がある。優れた念動力者であれば絶対的な力を発揮するシステムである。

T-LINKシステムはブラックボックスの部分も多く、難航していた。

 

「それでも、君は強いよ。誇っていい。君は単なるデータとはいえ2代目から今までのブリュンヒルデを下している。正直、化け物じみてる」

 

「所詮はデータですよ。本当の戦闘はあんなものでは無いです」

 

その言葉にイングは苦笑を禁じ得ない。

高がデータだ。実戦のいつ死ぬか分からない、何処に攻撃が来るか分からない。

分からないことづくめの戦場でデータ通りの戦いなんてできる訳が無いのだ。

 

「それに、初代には勝てませんでした。データ上でも肌で分かる。“彼女”、織斑 千冬は本物の剣士だ」

 

イングの予想ではあの地球でも五指、宇宙でも十指に入るインファイターだと思った。

 

流石にゼンガー・ゾンボルトやリシュウ・トウゴウに比べれば見劣りはするが渡り合える逸材だろう。

 

何せゼンガーは悪を断つ剣と敵から恐れられ、リシュウにいたっては全盛期ならゼンガーをも超えると言われている化け物なのだ。

 

そんな化け物共と接近戦で渡り合えるのは銀河系を探しても早々いない。

 

そんな連中と接近戦でいい勝負ができるとはこの世界の戦士も侮れない。

 

「まあ、君は打鉄、向こうは暮桜だから如実に差は出るよ」

 

そうは言うがとイングは思うが、ヒカルノにとって異常で異様なのだ。

何せ、量産機の第2世代で1世代下とはいえ織斑 千冬用にカスタマイズされた暮桜と互角に渡り合い装備性能の差と機体性能の差で押し切られたこと以外はデータ上とはいえ全盛期の織斑 千冬と互角なのだ。更に言えばアウトレンジでは勝っていた。

 

(あの織斑 千冬を向こうに回してアウトレンジで完封なんて普通はできない芸当なんだけどな~。それも打鉄で)

 

もしかすれば、エクスバインならあの織斑 千冬に勝つ事が出来るかもとさえ思える程、イングの戦闘センスはずば抜けていた。

 

(経験の差なのだろうな……。機体がPTからISになっても扱いきる。言葉にするのは簡単だが、実際やってみろと言われたらできないのが普通だよね……)

 

ISの操縦はPTとは違う。だが、イングは見事乗りこなしたのだ。

そんな芸当が出来たのはダブルG、ダイナミック・ゼネラル・ガーディアンの操縦系、ダイレクト・モーション・リンク、DMLに似ていると思ったからである。

その為、イングはカノウ・トウマが行っていた訓練を行う事にした。

まず、手足に一個10キロの重りを両手足につけ生活し、訓練した。

走り込み、射撃訓練、西洋剣術などなどを退院して今まで続けて来た。

何故、剣術を西洋剣術にしたかといえばイングが使う武器の大半は西洋剣術に根差した武装が多い。ロッシュセイバーにしろT‐linkセイバーにしろ西洋系の武装なのだ。

その為、イングは動画サイトに出回っている西洋剣術を参考にそれを覚え込み、訓練していった。

今までモーションパターンに頼っていた事を自身の体に覚えさせたことを反映していく。

ゼンガー程で無いにしても剣術は冴えを見せ、射撃ではレーツェル・ファインシュメッカーに及ばない物の元の自分に戻りつつあった。

それを念能力と組み合わせる。

イングは分かっていたのだ。自身にあるのは優れた射撃センスでも卓越した剣技でも全てを見通せる戦略眼でも無い。

並外れた念能力こそ自身が生き抜いてきた技なのだとこの世界で再認識した。

 

「テストパイロット、いないんですか?」

 

イングのその質問にヒカルノは頭を掻きながらぼやいた。

 

「ああ、打鉄弐式に人員を取られていてね。まあ、むこうは第1研究所、エクスバインは第2と別れて作業になっちゃったからね……。本来はハードである機体を第1の連中が組み上げてソフトをウチが受け持つのが普通なんだけど、社長が打鉄弐式とエクスバインをコンペするって言いださなければこんな事態になってなかったんだけどな」

 

「仕方ないですよ。弐式は以前からの作業。それを此方が割り込んで機材とスタッフを割いたんです。第1の人には恨まれても仕方ないと思ってます」

 

イングが異世界人である事を知っているのはヒカルノと社長の石田 ヒロミ以外誰も知らない。多分、社長はイングの技術も欲しいが彼が異世界人とばれるのは避けたい所。

それ故、カバーストーリーがある。ヒカルノが優秀な人材を拾ってきた。その試験の意味も兼ねての事だ。

 

「仕方ないですね……。テストは僕の方でしておきます」

 

「頼むね」

 

そう言うとヒカルノはイングの研究室から退出するのだった。

 

 

 

 

 

 

 

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