IS大戦OG   作:sigurui

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5話 舞う凶鳥

 

イングはエクスバインを戦闘機動で動かしながら今回の事について考える。

 

(相手は部隊とIS同時運用。明らかに何処かの軍が動いたと見るべきか)

 

思い当たる節は色々ある。

周辺諸国は元より同盟関係にあるアメリカなどもその対象に含まれるのだ。

装備をじっくり見た訳でも無いがよい装備だ。ランドウォーリアーシステムをつけていた事からも西側先進諸国の軍隊の可能性が高い。

 

(練度もいい、対応も速い。射撃も的確で無駄も無い。特殊部隊か……。だとすれば随分と豪勢だな。それならISの小隊も特殊部隊?)

 

その可能性に至った時、ハイパーセンサーにISが2機、感知する。

 

(待ち伏せ。機体はラファールリバイブに外付けのステルス迷彩を使用。ステルスはオンか……。どの国のIFFにも反応なし。明らかにアラスカ条約違反機。ROE上殺しても問題ないが控えよう)

 

そもそも、アラスカ条約は21の国と地域が参加して成立した物で、正式名称はIS運用協定であり、『協定』である。国家でなく、国家機関の一部同士で他の条約の許容範囲でとりかわすものであり、これは事実上の軍事協定であり、ジュネーブ条約、ハーグ陸戦条約、国際法範囲内である。軍事転用が可能になったISの取引などを規制すると同時に、ISの技術を独占的に保有していた日本への情報開示とその共有を定めた協定であり軍事転用の制限も掛けられている。

日本側の思惑としては世界を敵に回し資源が得られないという状態から回避し、技術は独占したいという思惑と海外は日本のISの技術の独占を防ぎ、パワーバランスを維持したい思惑もあった。

国家同士の鬩ぎ合いの末、条約では無く協定に持ってこれたのは日本の外交努力が大きかった。何故なら国家にとって条約が一番重い約束事でその次が協定なのである。

先行する形で列強に連なるアメリカ、ロシア、イギリス、フランス、中国、ドイツ、日本のビッグセブンと呼ばれる主要七大国がコア獲得の優先権を持ち、残りの地域大国にコアを回される形となった。

その意味では世界は不完全ながら第二次大戦前の状態へと戻ったといえる。

その中にISはIFFを表示し、何処の国の所属かをハッキリさせなければならない。という決まりと、外付けによるステルス迷彩の使用は禁止となっている。

この為、条約の網を抜ける様に元から軍用ISはステルス機能を付加している機体もある。

 

(1階メインホール、西側廊下に1機、玄関側に1機、東側の僕からしたら理想的な十字砲火の陣形だ。しかも退路は確保済み。センサー類もECMで対策済みか。ミサイル兵装は使えない。だけど、凶鳥の“眼”は誤魔化せない)

 

そう、エクスバインはこの世界のハイパーセンサーを超えるシステムとレーダーで戦闘を行っている。幾らハイパーセンサーを誤魔化せてもエクスバインの搭載するセンサー系統、通称、“凶鳥の眼”は誤魔化せない。

ミサイルも飛行機や艦船に乗せるようなミサイルなら二波長誘導やIIRや可視光の画像認識のミサイルはあるがIS搭載となると小型化に伴うコストがかかる為、絶対防御を抜くほどはコスト面で用意できない筈だ。

 

(今から進路を変えても向こうに読まれる。これだけの事が出来る奴らだ。なら正面突破して虚を突く)

 

イングはそう判断するとイングはエクスバインのテスラドライブを加速させるのだった。

 

 

 

 

一方、1階メインホール付近ではP-1、P-2共に待機していた。

 

「馬鹿な!? 減速するどころか加速だと!!」

 

『この操縦者は余程、自分の腕に自信があるのか。それとも単なる馬鹿か?』

 

P-2のプライベートチャンネルにP-1も同意した。

そう、これだけ入念にすれば普通は罠と判断して迂回して正面玄関か西側廊下の窓から侵入する筈だ。

それなのにこのIS操縦者は正面突破を選択した。

それも、東側廊下にはトラップ満載だ。

それを抜けてくるのだ。

 

イカれているとしか思えない。

 

派手な爆発音が東側廊下から響き渡る。

 

「クソ、マジかよ!? 音がどんどん近づいてくる!」

 

『ええ、トラップを強引に抜いてるみたいです』

 

余りの強引さにP-1、P-2とも呆れるしかない表情だ。

流石にそんなことではシールドエネルギーが持たない。特攻その物だ。

 

「来るぞ! P-2射撃用意。馬鹿に五五口径のシャワーをくれてやれ!」

 

『了解』

 

そう言うとP-1、P-2共にヴェントを構える。

 

標的は角を曲がり直線10メートル人間には長く感じる廊下もISの戦闘機動なら一瞬。

 

そう彼女達は考えていた。

 

2秒で駆け抜ける。

 

その確信が彼女達の仇となった。

 

突如、多数の光弾がP-2を襲った。

 

『な!?』

 

P-2は多数の光弾に被弾、パリアがガラス細工の様に砕け散り、絶対防御が発動する。

右肩、右手、左太腿に被弾し体勢が崩れてしまう。

 

『クッ……』

 

P-2は慌てて体勢を整えようとした時だった。P-2の1メートル付近にゴーグル付きが躍り出たのだ。

 

焦るP-2は近接ブレード、ブレッド・スライサーを左マニュピレータに展開するが遅かった。

ゴーグル付きは神速の速さで棒状の物を腰から引き抜くと同時に青紫の刀身を輝かせると、逆袈裟にP-2を切り裂いた。

とっさにブレードでガードしたがブレッド・スライサーの刃ごと斬り裂かれブレードの刃が回転しながら宙を舞う。

距離を取ろうとバックステップをするP-2にゴーグル付きは瞬時に追いつき、その青紫の刃をP-2に突き立てる。

P-2もバリアを展開したが御構い無しに刃を突き立てるゴーグル付き。

パリアは意図も容易く突き抜かれ、絶対防御が反応、見る見る内にシールドエネルギーが減っていく。

これにはP-2も唖然とした。

 

(馬鹿な……、こんな強い威力のクロスレンジウエポンがこの世に存在するというの!?)

 

「P-2!!」

 

P-1はヴェントを構えゴーグル付きに照準を定めるが、ゴーグル付きは左マニュピレータをP-1に向けるとライフルの様な武装を発砲していた。

 

「ッ! クソ!」

 

慌ててバリアを展開するがバリアが砕かれ絶対防御が発動、左肩、鳩尾、右膝に被弾する。

 

「がっは……」

 

いくら絶対防御でも衝撃までは防げない。

肺から空気が無くなる感覚に襲われるのを堪えてヴェントを撃ち弾幕を張る。

 

するとゴーグル付きはまるで宙に浮いていかの様にP-1の弾幕を軽やかに回避する。

 

「クソ!? 何だよ?」

 

そう言いながらもP-1は弾幕を張りながらもP-2のそばまで行く。

目線をゴーグル付きに合わせたままP-2にプライベートチャンネルを送る。

 

「大丈夫か、P-2?」

 

『ええ、ですが、シールドエネルギーの3分の2を持っていかれました』

 

その言葉にP-1は驚愕した。シールドエネルギーに余裕がある第2世代機のラファールがここまで減らされるのは稀だ。それを数秒に満たない時間であのゴーグル付きはやってのけたのだ。

P-1、P-2とも自然と冷や汗が流れる。

 

その時だった、ゴーグル付きからオープンチャンネルの文章ツールでの通信が入った。

 

英語でそれはこう書かれていた。

 

『投降しISは放棄しろ。命だけは助ける』

 

と。

 

「まさか、降伏勧告を突きつけてくるとはね……。しかも文章で」

 

『どうします?』

 

「お断り。と、言いたい所だけどラファールのスペックじゃあ、あの機体を落とすのは無理がある」

 

その時だった。HQから突如通信が入る。

 

『HQよりオールP、作戦を中止。撤退しろ』

 

その通信にP-1は素直に従った。

 

「了解」

 

しかし、P-2は余り納得していなかった。

 

『数の上では優勢です。まだ、行けます』

 

そのP-2の言葉に男は怒鳴る。

 

『状況を的確にみろ! 相手は手練れな上に機体性能はラファールを超えている。少しの数の優位は覆されるぞ! あれはどの第3世代機よりも強い』

 

指揮官の言葉にP-2は下唇を噛んだ。

 

「問題はどうやって脱出するかです。イグニッション・ブースト無しであの機動力だ。素直に逃がしてくれるとも思えません」

 

『玄関に車を回す。後はお前達次第だ』

 

その言葉にP-1は了解と短く答えるとP-2に諭した。

 

「P-2、逃げるぞ」

 

『……了解』

 

P-2はそう言うと筒状の物を左手に展開しそれを投げる。

ゴーグル付きは頭部の機関砲でそれを迎撃するが、その瞬間、眩い閃光と耳を劈く爆音がホール内を満たした。

 

 

 

 

 

イングは強烈な閃光に目を瞑る。

 

(フラッシュバン!? ちぃい!)

 

イングはふら付く自身の体を正常に戻し、敵を索敵、玄関に敵車両と思われるトラックが自動ドアを破り後方から突っ込んで入ってきた姿だった。

 

「逃がさない!」

 

イングはフォトン・ライフルを構えたがトラックから強烈な弾幕がイングを襲う。そこには7連砲身のガトリング砲4門が2機がイングのエクスバインを標的と定めていた。

 

「クアッド・ファランクス。2機もか」

 

イングは唸る様に呟くと回避行動とバリアを展開、念動フィールドを展開するのも忘れない。

 

25ミリの徹甲弾がエクスバインを襲う。

高速で飛んでくる徹甲弾の雨を掻い潜り反撃を試みようとしたが分厚い弾幕の前にライフルを破壊されてしまう。

 

「ちぃい!!」

 

イングは破壊されたライフルを未練無く投げ捨てると戦力で回避行動に移る。

敵トラックは急発進する。

慌てて、イングは後を追うが弾幕の壁が容赦無く行く手を阻む。

イングが尚も追いすがろうとした時、ヒカルノから通信が入ってきた。

 

「イング、深追いはしないで。別動隊が来る可能性もある。こっちは怪我人も多数いる上に戦えるのは君だけだ。だから別命あるまで待機」

 

その命令にイングは気持ちを切り替えると短く了解と答えるのだった。

 

 

 

 

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