IS大戦OG   作:sigurui

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7話 凶鳥、ブリュンヒルデと会う

 

イングは窓を眺め本日何度目か分からない溜息を吐き出した。

 

イングが眺める外、倉持技研第2研究所ゲート前には人、人、人で埋め尽くされ、レポーターやテレビカメラ、カメラのレンズの砲口が建物を捉え撮影していた。

更にその前には警察官が護衛するなど騒然とした騒ぎだった。

 

ヒカルノはテレビのチャンネルを何の気なく回す。

 

『ただ今、私は倉持技研第2研究所前に来ております! ご覧ください! この報道陣の数を! イング・イーグレットをそのカメラに収めようと報道陣が詰めかけ現地は騒然としております。外国の記者もいるようです!』

 

『まさか、男性操縦者が現れるなんてね~』

 

『これは世紀の出来事ですよ!!』

 

『現在、東京為替市場は倉持技研の株が高騰しており、市場は一時混乱に陥っています』

 

これにはヒカルノもどうした物かと頭を抱えた。

 

「はぁ……。何て騒ぎ……」

 

「ISが開発されて十数年、男性操縦者は僕だけですからね……。騒ぎにもなりますよ」

 

そう、ISは女性しか扱えないという定説が根底から覆った歴史的瞬間なのだ。日本政府は元より各国特に日本を含む7大国は大いに関心を示した。

日本国籍の外国人。元は何処の国籍なのか、彼の実力は、彼の開発したISはいか程か。などなど吹き出る疑問と関心を押さえ水面下で日本に働きかける。

日本も日本でイングと彼が持ちえる開発技術独占を狙い水面下で動き出した。

 

「明後日がIS学園の試験でしょ? 大丈夫?」

 

「今更、中学生の問題に手間取りませんよ。問題は実技試験。はてさて……、まさか彼のブリュンヒルデが出るとは思えませんが……」

 

そのヒカルノの疑問にイングは苦笑交じりに答えた。

その言葉にヒカルノは面白半分でこう言った。

 

「いや、アイツなら出そう……」

 

と。

 

 

 

その頃、IS学園教職員は大騒ぎだった。

特別枠や推薦は締め切られたのに突如、男でIS操縦者が現れた。しかも、自身が開発した機体でISを2機伴った賊を撃退した。

そんな凄腕が入学してくるのだ。報道陣だけでは無く教職員も気になる所だがそれ所では無かった。

 

「織斑先生! CCVテレビから連絡が!!」

 

「織斑先生!! 朝フジTVからイング・イーグレット君の事で取材したいと!!」

 

「織斑先生、TVSから取材オファーが!!」

 

「織斑先生! NHCが特集をしたいと!」

 

流石にこれでは鋼の精神を持つ織斑 千冬でも少々参ってしまう。

 

「何度も言わせるな! テレビ局、新聞社、ラジオ、ネット放送、有りと有らゆる取材はNGだ。生徒のプライバシーや安全保障上の問題もある。そう伝えろ!」

 

この怒声に似た命令に教職員は大慌てで現場対応に追われる羽目になった。

眼鏡をかけた小柄で緑色の髪をショートカットにした女性が千冬に語り掛けた。

 

「織斑先生、お茶です」

 

「有難う。山田先生」

 

千冬がそう言うと湯呑茶碗を受け取り静かに啜り、大きく嘆息した。

 

「電話、鳴りやみませんね……」

 

お茶を渡した女性、山田真耶は少しウンザリしながらも自身もお茶を可愛く啜った。

 

「彼のせいでは無いのは分かるがこれは酷い……。朝から晩まで電話が鳴りっぱなしだ」

 

いい加減、コール音が止まない事に嫌気がさし始めた千冬はウンザリしながら茶を呷る。

 

「ですが、あの映像を見る限り、入れない訳にもいかないかと……。彼、相当の実力者ですよ。少なくともあの映像の人物が彼なら私じゃ敵いません」

 

真耶が話しているのは倉持技研第2研究所の監視カメラの映像だった。

それは、意図的に倉持技研が流出し各国で映像が出回った事により彼女達も知る所となった。

 

「いや、山田先生だけじゃない。私も危ないかもな……。最新鋭の性能を抜きにしてもあの腕前だ。特に射撃戦は寒気すら覚えた。射撃だけ見ても『ブリュンヒルデ』か『ヴァルキリー』クラスの実力者だ。ロングレンジでは喰われるかも」

 

その言葉に真耶は驚きを露わにした。

何せ、初代ブリュンヒルデであり公式戦負けなしのこの女傑から随分と弱気な発言が飛び出したのだ。

真耶は我が耳を疑いたくなった。

しかし、次の言葉で真耶は内心安堵した。

 

「ただ、クロスレンジでは負ける気はサラサラ無い」

 

その言葉と共に千冬は温くなった緑茶を呷った。

 

 

 

試験当日、イングは報道陣が取り囲む正面玄関から入る。

一斉に焚かれるフラッシュを一瞥せずIS学園の建物に入っていく。

我かんせずを貫くに至ったのはいい加減、対応するのに辟易していた事が大きかった。

 

午前の筆記試験は滞りなく終わり、愈々、午後の実技試験に移った。

 

「イーグレット君、初めまして、IS実技試験を担当する山田 真耶です」

 

真耶の自己紹介にイングもお辞儀をしながら答えた。

 

「よろしくお願いします」

 

その丁寧な挨拶と流暢な日本語に感心しつつも本題に入っていく。

 

「試験内容は本校指定のISを使った1オン1形式の試験です。これはISの適正を見る為の試験ですので試合の勝敗は試験内容に含まれません。また、シールドエネルギーエンプティーで試合は終了となります。質問はありますか?」

 

その質問にイングは機体の事について質問した。

 

「機体は何を使用するのでしょうか?」

 

「機体は日本の打鉄、フランスのラファール・リヴァイヴのいずれかです」

 

その事にイングは更に突っ込んだ質問をした。

 

「ソフトウェアは初心者用の歩行及び飛行の補助モード機能はオンでしょうか? 出来れば軍のプロフェッショナル使用にモードをチェンジしたいのです。武装の指定は軍で標準的な装備でしょうか?」

 

その質問に真耶は明確に答えていく。

 

「使用OSの変更は可能です。ですが、試験でプロフェッショナルモードを使用したのは代表候補生か代表の受験生位ですね。大丈夫ですか?」

 

「打鉄を使わせていただくならプロフェッショナルモードの方が有り難いです。何せ我が社の製品ですから心得ていますよ」

 

その質問にイングは明確に答える。

その言葉に真耶も言われてみればそうだなと思った。彼は倉持技研の社員でありエクスバインの開発者なのだ。それくらいはできるだろうと思った。

気を取り直し真耶は武装の話に移る。

 

「武装は、打鉄は防衛使用。ラファールは通常使用ですね」

 

「打鉄は近接用ブレードの葵とアサルトライフルの焔備か……。撃鉄の使用は?」

 

その言葉に真耶は驚き呆れた。

撃鉄とは超長距離射撃装備であり、命中率の世界記録を保持している装備だ。それを100メートル有るか無いかの競技場で使用する者はいないのだ。

 

「認められません。それに超長距離狙撃が必要なシチュエーションは無いですよ?」

 

「火力と命中精度は折り紙付きですよ。狭い室内の閉所空間での打撃力は必要でしょう?」

 

この言葉にスナイパーライフルをアウトレンジでは無くロングレンジで使うのかと真耶は唖然とした。

 

(この子、素人ですね……。スナイパーライフルを狭い競技場で使うなんて……。幾ら威力と命中精度が優れていても取り回しは最悪。機動戦に不向きな兵装選択なんて)

 

安定した所での狙撃では無い自分も相手も動くのだ。それも高速で。

その時だった、違う所から声がした。

 

「面白いじゃないか、山田先生。許可しよう」

 

その言葉に真耶は驚きの声を上げた。

 

「織斑先生!? ですが」

 

ドアの前に千冬がいた。その顔は実に面白そうな顔をしていたのだ。

 

(彼女が織斑 千冬……。初代ブリュンヒルデか。強い。この上なく)

 

イングは彼女から発せられた闘気で感じ取った。

 

千冬もまたイングから感じ取っていた。

 

(成程、強い。弟の一夏とそう変わらない年なのに身に纏う雰囲気が戦士のソレだ。静かだがその内に秘めたモノは強い。私の出会った中では一級品。それを気負う事無く、まるで服でも着るかの様に自然体で身に纏っている。強者故の驕りでは無い。多くの激戦を潜り抜け、自身よりも強い敵と戦い生き残った者だけが手にする雰囲気だ)

 

その時、千冬は疑問に思った。

 

(こんな弟と変わらないガキがこの雰囲気……。一体どれ程の修羅場を?)

 

そう思うと千冬は真耶にこう言った。

 

「山田先生、試験官の変更を」

 

「では、誰が?」

 

その質問に千冬は静かにだが試す様にイングを見据えて言い放った。

 

「試験官は、私だ」

 

その宣言にイングも真耶も驚きを露わにした。

だが、イングはそれを静かに受け入れ、千冬を静かに、だが力強く見つめた。

しかし、真耶は驚きから抜け出せなかった。

 

「織斑先生が試験をしたら生徒が潰れます!」

 

その言葉に千冬は微笑を称えながらイングを見据え言い放った

 

「そんなヤワじゃないさ、コイツは。いい眼だ。困難に折れない眼をしている」

 

そう言うと千冬は部屋から出ていくのであった

その最中千冬は思った。

 

(見極める。イング・イーグレットという“人間”を)

 

凶鳥対ブリュンヒルデ。

戦いのカードは出そろったのだった。

 

 

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