……つもりです
ふと目を開ければ、目の前にはいつもの執務室が広がっていました。
「…これ、は…」
先程までいたホールとは違い、とても静かな、執務室。
書類も記憶にあるより少なく、壁にかけてある海域図面は、まだ沖ノ鳥を攻略していることを示しています。
「…昔の、記憶…?」
これはある意味、僕にとって嫌な時期の記憶です。
「提督?何をほうけてるんだい?」
執務室のドアを開けたのは、その時第一艦隊に所属していた最上さんでした。
「あぁ、いえ…今回も、ダメでしたか」
自分で言っておいてなんですが、今回も、とはどういう意味でしょう。
「まぁ、しょうがないさ。それに、声をかけるならボクじゃなくて“赤城さん”のほうがいいんじゃないかい?」
“赤城さん”、その言葉を聞いた瞬間に、僕の背筋は凍りつきました。
確かに僕の艦隊には赤城さんがいらっしゃいますが、第一艦隊には所属していません。
ですが、最上さんの言い方からすると、赤城さんは第一艦隊のメンバーに入っているような感じです。
「失礼します。」
透き通るような、凛とした声。
誇りを重んじる一航戦の、懐かしい声。
けどそれは、僕にとっては思いだしたくない記憶でした。
「一航戦、赤城。帰投しました。」
だって、この頃の赤城さんは、もう──
「すみません提督、旗艦である私が、不甲斐ないばかりに…阿武隈さんは現在ドッグにて治療を受けています。」
「…ん、確認しました。お疲れ様でした……赤城さん、あまり自分を責めないでください、これは僕の責任です。」
そう言っている間にも、赤城さんの顔は、少しずつ俯いていく。少しずつ、顔が見えなくなって来ます。
どうして僕は、平然と報告を受け、平然と“この”赤城さんと話しているのだろう。
「…提督の責任ではありません、あれは私が無茶をしたせいで…」
赤城さんの顔は、もう見えません。
俯いて、まっくろで。
「私があんなふうに、功を焦らなければ…」
お願いだから、顔をあげてください赤城さん。
でないと僕は、もう──
「焦って、提督の言う事を聞かなったから、私は沈んでしまったんですから…」
あぁ、これは、悪い夢なんだ。
お願いだから、早く醒めて──
「ですから、私の事でご自分を責めないでください…」
そういって、赤城さんは顔をあげた。
その顔は、窓から射す光を浴びて──
けれど、まっくろでした。
思わず、喉から声が出る。
「あ、あぁ…」
赤城さんだった筈の“それ”は、まっくろな顔で、こちらへ笑いかけたように思いました。
「…そちらにいる、“もう1人の私”と、加賀さんのこと。よろしくお願いしますね…?」
その一言で、僕の視界は真っ白に染まって──
気がつけば、目の前には僕の顔を心配そうに覗き込む雪風さんの顔が見えました。
「司令ぇ?大丈夫ですか?」
「…あぁ、はい…大丈夫ですよ」
なるべく平静を装って答えましたが、少し声が震えてしまいました。
「司令ぇ、もうすぐ試合です!準備しましょう!!」
待機室で少し待つつもりが、思ったよりも寝てしまっていたようです。
「わ、分かりました…あれ?二回戦の相手は、雪風さんたちですか?」
「はい!!」
元気いっぱいに返事されてしまいました。
これは、悪夢なんかでうなされてる場合ではなさそうです。
今度赤城さんと加賀さんを食事に誘いましょう。
赤城さんとしっかりお話ししたくなりましたしね。
はい、という訳で。
2本つづけて本編ではなく番外編?となりました。
次回は二回戦と相成ります。
今回は、シリアスというか、ホラーというか、ミステリーというか、その辺を意識しました。
あまり自分らしくない文章だった気がします。
では。今回はこの辺で。
天龍「なげぇぞ、ほら。さっさと準備しろよ?人足りねぇんだから」
はい、すいません…