東方大戌伝   作:-褌-

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今回短めです。


拾参 弐日前

あの会議から何事もなく、あっという間に一週間程過ぎた。

なんか(ようじゅう)になってから時間が経つのが速い。

それに気のせいかもしれないが頭がよくなった気がする。

 

「あら?戌姫薬の片づけ頼んでたのにやってないじゃない」

「あ、忘れてた」

「あら?もう老化かしら?はやいわねぇ」

 

訂正、全然頭はよくなって無いようだ。

 

 

~閑話休題~

 

「そう言えばついに明後日で此処ともおさらばね」

「そうだったね」

「そう言えば貴方私以外の人に何も教えてないけどいいのかしら?」

「それは明後日になれば分かるよ」

「?...まぁいいわ、貴方と会えるのは今日が最後っぽいしね」

 

永琳がそう漏らす。

少し理解できなかったが時間が経つにつれ脳が追い付いてきた。

 

「そう言えば永琳ってこの町での頭脳なんだってね」

「あら、それって誰から聞いたのかしら?」

「依姫」

「あぁ、依姫ね。あの子どこで聞いたのかしらね?」

「噂でも流れてるんじゃないかな?」

「まぁ、そんなことどうでもいいんだけど。」

「さっきの話に戻るけど...頭脳ってことは明日、飛び立つ前日は点検や発射のリハーサルで忙しいんだろうね、きっと」

「あら、そんなに意地悪な言い方しなくてもいいんじゃない?」

 

永琳はニヤッと笑いながらこちらを見る。

俺はそれを嘲笑うかのようにその場に転がった。

 

「あら?私に服従してくれるんかしら?」

 

その場から立ち永琳はつかつかと俺の正面へと来た。

するとその場でしゃがみ俺の腹を撫で始めた。

 

「やめろ永琳、俺は座るのが疲れるから転がっただけだ。決して服従するわけでは無い。」

「そういいながら尻尾ふってる辺りやっぱり貴方って犬なのね」

「うるせぇ」

「ふふふ」

 

笑いながら、結局永琳は5分くらい俺の腹を撫で続けた。

気持ちよかったが口には出さないのが紳士だ、いくら本能で尻尾を振ろうが口では言わないぞ。

アホな事を考えつつ俺は姿勢を整え永琳を見た。

 

「(ん?何か考え事してるな...)」

 

永琳の顔を見ると何か苦虫を噛み潰したような顔をしている。

 

プルルルルル...プルルル、ガチャ

急に鳴り出した電話をポケットから出し、永琳は少しこちらを見た。

だが、見たのはほんの一瞬ですぐに別の方を向いてしまった。

そのまま永琳は電話の人物と通話を始めた。

 

「もしもし、八意です。...はい...はい...あ、分かりました。今行きます。」

 

プチ

永琳が「はぁ...」と溜息をつきながら電話を再びポケットへしまった。

 

「はぁ、やっぱりというか案の定仕事が増えたわ」

「うん、会話で何となく察したさ」

「まぁ、そういうことでもうすぐに出ないといけないの...恐らくもう会えないわ。あっちで寝泊まりするし...」

「ってことはここでお別れか...」

「...えぇ」

「......すっごい唐突だな」

「…」

 

鎮まった空気が自分に刺さる。

ここで過ごした約半年、ここには慣れ、そして親しい友人もできた。

その親しい友人が今ここで別れとなる...

なんか...前まで当たり前だった日常が、こうも簡単に崩れてしまうと少し寂しく感じてしまう。

当たり前の大切さを改めて感じた。

 

「もう、戌姫...そんな顔をしないで...貴方が生きてれば会えるって言ったじゃない」

「...でも、何か...」

「そんなに落ち込むことじゃないわ。これは運命なの。決定事項よ、それには抗うことができないの。理解のいい貴方ならわかるでしょ?」

「あぁ...」

「ホラ顔を上げて、いつまでも男がくよくよしないの。いつか来るその時まで待ちなさい」

「あぁ...わかったよ」

「そうよ、それでこそ戌姫だわ...ん、そろそろ時間だわ...」

 

永琳が時計を見てそう呟やいた...

 

「行ってくるわ」

 

 

 

 

「あぁ、いってらっしゃい...また会うその日まで...八意永琳...」

 

 

 

そんな声が実験室の中で寂しく木霊していた。

 

 

そしてそこに座っていた犬は暫しの間底を動かなかったという...

 

 

 

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