あの会議から何事もなく、あっという間に一週間程過ぎた。
なんか
それに気のせいかもしれないが頭がよくなった気がする。
「あら?戌姫薬の片づけ頼んでたのにやってないじゃない」
「あ、忘れてた」
「あら?もう老化かしら?はやいわねぇ」
訂正、全然頭はよくなって無いようだ。
~閑話休題~
「そう言えばついに明後日で此処ともおさらばね」
「そうだったね」
「そう言えば貴方私以外の人に何も教えてないけどいいのかしら?」
「それは明後日になれば分かるよ」
「?...まぁいいわ、貴方と会えるのは今日が最後っぽいしね」
永琳がそう漏らす。
少し理解できなかったが時間が経つにつれ脳が追い付いてきた。
「そう言えば永琳ってこの町での頭脳なんだってね」
「あら、それって誰から聞いたのかしら?」
「依姫」
「あぁ、依姫ね。あの子どこで聞いたのかしらね?」
「噂でも流れてるんじゃないかな?」
「まぁ、そんなことどうでもいいんだけど。」
「さっきの話に戻るけど...頭脳ってことは明日、飛び立つ前日は点検や発射のリハーサルで忙しいんだろうね、きっと」
「あら、そんなに意地悪な言い方しなくてもいいんじゃない?」
永琳はニヤッと笑いながらこちらを見る。
俺はそれを嘲笑うかのようにその場に転がった。
「あら?私に服従してくれるんかしら?」
その場から立ち永琳はつかつかと俺の正面へと来た。
するとその場でしゃがみ俺の腹を撫で始めた。
「やめろ永琳、俺は座るのが疲れるから転がっただけだ。決して服従するわけでは無い。」
「そういいながら尻尾ふってる辺りやっぱり貴方って犬なのね」
「うるせぇ」
「ふふふ」
笑いながら、結局永琳は5分くらい俺の腹を撫で続けた。
気持ちよかったが口には出さないのが紳士だ、いくら本能で尻尾を振ろうが口では言わないぞ。
アホな事を考えつつ俺は姿勢を整え永琳を見た。
「(ん?何か考え事してるな...)」
永琳の顔を見ると何か苦虫を噛み潰したような顔をしている。
プルルルルル...プルルル、ガチャ
急に鳴り出した電話をポケットから出し、永琳は少しこちらを見た。
だが、見たのはほんの一瞬ですぐに別の方を向いてしまった。
そのまま永琳は電話の人物と通話を始めた。
「もしもし、八意です。...はい...はい...あ、分かりました。今行きます。」
プチ
永琳が「はぁ...」と溜息をつきながら電話を再びポケットへしまった。
「はぁ、やっぱりというか案の定仕事が増えたわ」
「うん、会話で何となく察したさ」
「まぁ、そういうことでもうすぐに出ないといけないの...恐らくもう会えないわ。あっちで寝泊まりするし...」
「ってことはここでお別れか...」
「...えぇ」
「......すっごい唐突だな」
「…」
鎮まった空気が自分に刺さる。
ここで過ごした約半年、ここには慣れ、そして親しい友人もできた。
その親しい友人が今ここで別れとなる...
なんか...前まで当たり前だった日常が、こうも簡単に崩れてしまうと少し寂しく感じてしまう。
当たり前の大切さを改めて感じた。
「もう、戌姫...そんな顔をしないで...貴方が生きてれば会えるって言ったじゃない」
「...でも、何か...」
「そんなに落ち込むことじゃないわ。これは運命なの。決定事項よ、それには抗うことができないの。理解のいい貴方ならわかるでしょ?」
「あぁ...」
「ホラ顔を上げて、いつまでも男がくよくよしないの。いつか来るその時まで待ちなさい」
「あぁ...わかったよ」
「そうよ、それでこそ戌姫だわ...ん、そろそろ時間だわ...」
永琳が時計を見てそう呟やいた...
「行ってくるわ」
「あぁ、いってらっしゃい...また会うその日まで...八意永琳...」
そんな声が実験室の中で寂しく木霊していた。
そしてそこに座っていた犬は暫しの間底を動かなかったという...