僕の平穏な人生がある日突然終わりを告げたようです   作:木原

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冥界にGO!ついでに小猫ちゃんにもGO TO LAVING!!

さて、ここで僕の過去を語るとしよう。

 

過去といっても今よりほんの4年前のことだ。

 

その頃の僕は他者より少し、ほんの僅か特殊なだけで別の中学生と訳隔たりがなかった。

 

ただ一点をのぞいて。

 

そう、何を言おう僕は中学の頃中二病という、夢見がちな少年少女がちょうど中学の頃に患う精神疾患にかかっていたのだ。

 

 

ちなみに僕の場合は、中二病の中でも最もポピュラーでかつ、後後、後遺症が残りやすい邪気眼系という症状だった。

 

さらに僕は邪気眼系の中でも重度の邪気眼系だったのだ。

 

自分を古の時代から生き続ける始まりにして終焉をもたらす最強の真祖の吸血鬼で孤独を愛し、平和を憎んでいるという、今考えると訳が分からん設定を掲げて、日夜、場所を問わず真祖の吸血鬼としての活動を続けていた。

 

時には、学校に侵入したケルベロス(野良犬)や天使の手先であるエンジェルキャット(野良猫)をスクールヴァーリー(用務員)さんと撃退したこともあったし、エリートゴブリン(不良少年少女)の悪行を魔眼(カメラ)で記憶してエギメクルス(数学の遠藤先生)に報告したこともあった。

 

そして、中学二年の冬。僕は、一匹のヘルキャットを召喚した。といっても、その猫の正体は偶然僕の家に忍び込んだ黒猫だったが。

 

偶然召喚した黒猫になにか、宇宙的な因果を察知した当時の僕は、黒猫を僕の使い魔として認め、『漆黒の翼』という二つ名を与え、同じ家に住む魔術協会からの使者(本当の家族)の目を欺いて黒猫を部屋で買うことにした。

 

今思い返してみると、『漆黒の翼』には、ひどいことをしたと思う。

 

僕の私利私欲のためだけにお手製の蝙蝠の翼付き衣装を着せたり、変な魔方陣の中心で召喚の儀式にも付き合ってくれた。

 

ほかにも、毎日のトレーニングや町の巡回にも毎夜のごとく付き合ってくれたっけ?

 

まぁ、なんにせよ。『漆黒の翼』は僕の中学時代の良き、パートナー兼たった一人の理解者だったのだ。

 

だが、中学三年のある日のこと、黒猫は突然、僕の前から姿を消した。

 

黒猫と出会って毎日、夜を共にした黒猫が姿を消したのだ。

 

海外出張が多かった両親に変わってキメラだけが唯一毎日顔を合わせられる家族だっただけにショックだった。

 

三日三晩、何のやる気のない日々が続き、それが原因で、僕は現実に目覚めた。

 

「……というのが僕と黒猫『漆黒の翼』の感動の物語。どうだった?」

 

「………つかぬことをお聞きしますが。今何時なのか、お分かりで?」

 

「朝の5時過ぎだけど。それがどうかしたの?」

 

「どうかしたもなにも、朝早くに起こされて早々、知りたくもないシドーの昔話を聞かされた私の心情が解るかどうか聞いてるんです」

 

「感動の嵐だろ」

 

「いえ、ストレスの嵐です。まったく、サーヴァントに日頃から日常的にストレスを与え続けるマスターは現在過去においてあなたたけですよ」

 

寝間着姿のアルトリアさんは、心の底から不機嫌そうに寝起きや寝癖などを一切気にせずに僕をにらみつける。

 

折角の美顔がそれだけで台無しだ。

 

「まぁ、まぁ、落ち着いて。早起きは三文の徳っていうし、今日から、念願の冥界旅行だよ。もう僕、昨日から興奮のあまり全然寝付けなかったよ」

 

「だからと言って起こすのはやめてもらっていいですか。あまりにもしつこいとまた病院のお世話になることになりますよ」

 

「ひ、ひどい!でも、しょうがないじゃん。ア、アルトリアの寝顔を見てるだけで……あの…そ、その、チューしたくなって……」

 

「……ま、まさか、無防備な私に…し、したのですか?」

 

突然のカミングアウトに、顔を真っ赤に赤らめさせながら動揺するアルトリア。

 

ふっ!朝のドッキリ大作戦成功か。

 

これで、アルトリアも朝からすがすがしい気持ちのまま、冥界旅行を楽しめるはずだ。

 

後はネタ晴らしして、二人仲良く食卓を囲むだけ。

 

「……って!うっそぴょーん!!!って、じょ、冗談がは……あッッ!!」

 

視界が歪み、一転。

 

気が付くと僕は、天井を見ていた。

 

視線の先に、魔力で編んだ青いドレスに身を包んだ怒り心頭のアルトリアの姿。

 

「……殺す」

 

「えっ、ちょ待ッ!」

 

その後、僕らの寝室に血なまぐさい音と悲鳴が響き渡った。

 

 

 

 

 

―――○▽○―――

 

朝の9時になった。

 

駒王学園の夏服に身を包んだ僕らがまず向かったのは、最寄りの駅。

 

ここでアザゼル先生とグレモリー眷属と合流して冥界に行く手はずになっている。

 

しかし、冥界旅行の待ち合わせ場所がいつも電車に乗るときの駅とは。

 

もしかして、ホームの壁に向かって走ると冥界行きのホームに出るとかないよな。

 

「アルトリア。本当にここでいいんだよね?」

 

「はい。ここで待ち合わせと聞いていますので間違いないでしょう。心配しなくてもそろそろ時間ですしすぐに来ますよ。ほら」

 

と、アルトリアが僕の背後に向けると、後ろから聞き覚えのある声が聞こえた。

 

「おーい。シドー!それとアルトリアさん。おはようございますってシドー!その顔どうした」

 

イッセーが僕の腫れあがった顔を見て、朝からめんどくさいリアクションを取る。

 

「まぁ、なんだ。同棲してたら高校生でも過ちはある。いや高校生だからこそ、むしろそのようなことがあったのだろうな。今日のアルトリアは、いつもに増して朝からすごい激しかったと言っておこう」

 

「………」

 

イッセーが何を思ったのかアルトリアから一歩引いた。

 

「兵藤一誠!何か勘違いしてるようだから訂正するが、決して貴様が想像してるようなことじゃないぞ」

 

「わりぃ。アルトリアさん。俺、流石にそういう方面は疎いっていうか……朱乃さんと話し合うんじゃないですか?」

 

「だから、そんなんじゃないって……」

 

「今朝のプレイは、初めてだったな。あんな肉食的に僕を求めるなんてまるで血に飢えたドラゴン…いや、性欲に飢えた赤いドラゴンだったな」」

 

「貴様、わざと言ってるだろ。朝のこと根に持ってわざと意味深に言ってるだろ!」

 

と、アルトリアとじゃれていると他の眷属の方々もやってきた。

 

「先輩たちもおはようございます」

 

「えぇ、おはよう。さて、これでみんな揃ったわね?」

 

先輩が冥界行きのメンバーを再度確認すると、「着いてきて」と言い、先輩は、コツコツとエレベーターの方へと向かう。

 

ただのホームと改札口を繋ぐ普通のエレベーター。

 

先輩と明けの先輩が、先に中に入り言う。

 

「じゃ、まずは、有斗とアーシアとゼノヴィアとイッセー来てちょうだい。先に降りるわ」

 

下りる?

 

あれれ?たしかこの駅はホームが上階に設置されてるからこの階層から降りることなんてできないんだけど

 

イッセーも同じことを思ってたのか、僕と同じように目をぱちくりさしてる。

 

「慣れてる小猫は、シドー達を連れて来てちょうだい」

 

「はい、部長」

 

と、小猫ちゃんが言うとエレベーターの扉が閉まった。

 

「さて小猫ちゃん。やっと二人っきりになれたね」

 

「いえ、アルトリア先輩もいますが?」

 

「う、うん。いるんだけど、今朝、いろいろあってあまり気分がよろしくないんだよね」

 

 

原因は、たぶん今朝アルトリアに寝起きドッキリを仕掛けただろう。

 

一応、受けごたえはしてくれるんだけど、視線が怖いんだよね。

 

後にいるアルトリアに睨まれて心を狭くしていると小猫ちゃんは、そんな僕を見て一息。

 

「どうせ、シドー先輩がくだらないことでもしたのですよね」

 

「いや、くだらないというか……」

 

改めて思い返すとあまり好感の持てることじゃなかった気がする。

 

「やっぱくだらなかったわ。好きだよ。小猫ちゃん」

 

「ごめんなさい。では、エレベーターが来たので行きましょう。アルトリア先輩」

 

「ええ、そうですね」

 

僕を差し置いて、到着したエレベーターに先に乗り込む二人。

 

そして、自然の流れで扉を閉めやがった。

 

「ちょ、待っ!」

 

咄嗟に閉まりかけの扉に腕を潜り込ませる。

 

こいつら、マジで僕を置いていこうとしたな。

 

扉の安全装置が働き、再び扉が開かれる。

 

「二人ともひどいよ」

 

そう言いながら、エレベーターの中に入り、閉ボタンを押した。

 

…………。

 

「で、どうすんの?」

 

階層表示は当たり前に1階と2階しかないのだが――小猫ちゃんが僕の思いにこたえるようにポケットからカードらしきものを取り出すと電子パネルに向けた。

 

ピッと言う電子音の後にエレベーターが降下した。

 

えっ、なんか秘密のアジトっぽくて超カッコイイんですけど。

 

僕の封印された病気をぶり返させられそうな勢いなんですけど。

 

感動に打ちのめされることやく1分ほどようやくエレベーターは停止した。

 

その間、三人の間に特に会話はなかった。

 

小猫ちゃんは、元々無口だしアルトリアは、基本僕以外の人間とは事務的なこと以外話さないし、正直、気まずかった。

 

扉が開き、最初に僕の視界に広がったのはだだっ広いプラットホームだった。

 

つうか、上の駅よりも豪華に感じるのは僕だけなのか?

 

駅の作りも人間界のものとは若干違い、一言でいえばかっこいい。

 

まるで中学二年の少年の心を具現化したよな、造りだ。

 

遅れて部長たちに合流。

 

「全員揃ったところで三番ホームに行くわよ」

 

グレモリ―先輩と朱乃先輩、先導のもと、僕らは歩き出した。

 

しかし、こんな広いホームなのに利用客は僕たちだけしかいないって寂しいな。

 

魔力がエネルギー源のためか、幻想的な光を放つ壁の灯に見とれていると、いつの間にか前を歩くイッセーの隣に朱乃が来ていて、二人仲良く手を繋いでいた。

 

し、しかもあのつなぎ方はも、もしかして

 

「こ、恋人つなぎだと!!」

 

イッセーのくせになんという上級テクニックを!!

 

クソ―。イッセーにだけは負けておれん。

 

僕も負けじと隣を歩いている小猫ちゃんに密着すると小猫ちゃんのかわいいポニュポニュな手を握ろうとするも、

 

「えい」

 

メキメキッ!!

 

「ぐわぁぁぁぁ!!」

 

手を握りつぶすほどの力で握り返してきた。

 

骨の形が変形する前に小猫ちゃんの手を振りほどく。

 

振りほどいた手を見ると、手の平全体が青白く変色していた。

 

マジで握りつぶすつもりだったのか?

 

とうの手を握りつぶそうとした本人は、知らぬ顔で歩いてるし。

 

小猫ちゃん。恐ろしい子!

 

もう、こうなったらアルトリアで我慢するか。

 

あいつの手、剣を握るせいか、結構ごつごつなんだよな。

 

本人の前では恐くて言えねぇけど。

 

通路を右に行ったり、左に言ったりしていると再び空間の開けたところに出た。

 

なんか、目前に鋭利なフォルムをした超かっこいい列車。

 

世紀末な世界に出てきそうなその列車には、ところごころにグレモリ―の文様。

 

もしかして、この列車って先輩のプライベート列車とか?

 

前にいるイッセーも僕、同様目を見開いている。

 

だよね。ふつうこんな列車。実在してるだけで驚きなのに先輩の所有物とか。マジやべぇな。

 

プシュー。

 

列車のドアが開く。

 

部長仙道の元、俺たちは列車に中へと足を踏み入れたのだった。

 

 

 

 

チロチロチロリーン♪

 

発車のメロディが客車に流れ、列車は走り出す。

 

僕たちは、列車の中央に座ることとなり、僕は4人掛けのボックス席で小猫ちゃんと対面することになった。

 

ちなみにアルトリアは、アザゼルと大事な話があるとかでアザゼルと同じボックス席に対面に座っている。

 

さて、列車が走りだして数分、僕らの席には会話がない。

 

前に座る小猫ちゃんは、発車してからずっと持ち込んだ洋館を食べている。

 

……うん、なんか気まずいな。

 

となりの席では朱乃さんとイッセー、アルジェントにゼノヴィアがわいわいと楽しそうに盛り上がっている。

 

チッ!仲良し組が!楽しそうなところ見せつけてるんじゃねぇよ。

 

窓の外を見てる自分がみじめに思えてくるだろうが!

 

することもないので僕の前にいる小猫ちゃんにこんにちわメールでも送ろうかと思い、ポケットから携帯を取り出すが、

 

「……圏外かよ」

 

まぁ、あたりまえっちゃあたりまえだった。

 

今僕らがいるのは、人間界と冥界の狭間。次元の狭間と言う場所らしい。人間が生み出したツールが使えるわけがない。

 

携帯を使えないことに気が付いた僕は、溜息を吐き、ケータイをポケットに直そうとするが、その時、僕の小猫ちゃんセンサーが働いた。

 

「あの先ぱ……」

 

「なんだい小猫ちゃん?」

 

「いえ、別に先輩が期待してる様なことじゃないですよ。これ落としました」

 

そう言って、小猫ちゃんは弓兵のイラストが描かれた一枚のカードを差し出してきた。

 

アーチャーのクラスカードだ。

 

僕の切り札的存在。

 

一応、今回冥界に行くってことで、アルトリアには内緒でお守り代わりにポケットの中に忍ばせといたんだっけ。

 

もう一度言うがこのカードは、僕の最後の切り札。あまりむやみやたらに言いたくない。

 

「ありがとう。小猫ちゃん。助かったよ」

 

差し出されたカードをあまり勘繰りされても困るから、自然体で受け取る僕だったが……

 

「先輩。すごい手が振るえてますよ。このカード。なんかあるんですか?」

 

意識すればするほど緊張してしまったよ。

 

「べ、別になにもな、ないよ」

 

「なんかあるんですね。なんですかコレ?」

 

チッ!バレたか。まるで少しの手がかりから真実にたどり着くコナンくんのようだ。

 

これは、事実を言わないと引いてくれそうにないな。

 

それに共通の秘密を共有するのって付き合ってるみたいじゃないか!

 

「別に言ってもいいけど、あまり他言しないでね。僕と小猫ちゃん、二人だけの秘密だゾ!」

 

「……気持ち悪い」

 

ボソッと僕に聞こえるように呟く小猫ちゃん。

 

計算された悪意しか感じられない。

 

「あれだね。神器で言うところの禁手と一緒で僕の切り札って感じのアイテムだよ」

 

僕も使ったことがないから使ったら何が起こるのか詳しく知らないのだけど。

 

というか、ぶっちゃけこのカードを使いたい自分がいる。

 

「でも、このカードを使った瞬間、僕は力に飲み込まれてロクなことにならないらしいけど。だから切り札って言ってもただのお守りみたいなもんだろ。それにアルトリアの前で使おうとすればボコられるし、今って時しか使わないさ」

 

そう言ってポケットから財布を取り出し、今度から落とさないように財布の中にしまう。

 

「ん?どうした小猫ちゃん。僕に見とれた?」

 

ひと言で表すなら唖然だろうか。小猫ちゃんが僕の方を見ながら羊羹を口に運ぶのも忘れて口を開けて固まっていた。

 

「いえ、なんで財布にしまうのかと、ただただ驚いていただけです」

 

驚くも何もお金と同等に大事なものを財布にしまっただけなんだが。

 

もしや小猫ちゃんは、お金以上の価値がある僕をお金と一緒にすることで僕がお金と同等の価値に下がることを恐れて……つまり僕を心配して……

 

やっぱり小猫ちゃんは僕が想像したとおりの紀伯のある悪魔さんだ。

 

 

「でも安心してね。もし小猫ちゃんがピンチになった時は迷わずアルトリアが見てないタイミングでこのカードをこそっと使うから」

 

そう言いながらウインクすると小猫ちゃんは、汚物を見た後のような表情を浮かべた。

 

自分的にかっこいいことを言ったつもりがそんな目で見られるとは――ゾクゾクするぜ。

 

「なんでそこで頬を染めるんですか。イッセー先輩とは別の気持ち悪さです」

 

「ありがとう。我々の業界ではご褒美です」

 

その後、小猫ちゃんに罵られながら至極の時を過ごした後、無事入国審査を終えて冥界入りを果たした。

 

 

 

 

 

 

 

―――○▽○―――

 

 

 

 

冥界を走ること30分ほど、

 

『まもなくグレモリ―本邸前。まもなくグレモリ―本邸前。皆様ご乗車ありがとうございました』

 

やっとご到着か。人間界から電車で約2時間。

 

なるほど、冥界と人間界は大阪から東京ぐらいの距離なんだな。

 

案外近いな

 

しっかし、駅名にグレモリーの名前が入ってるとか、先輩やべぇな。

 

駅前には何やらすんごい人だかりができてるし。

 

改めてもう一度。先輩んちヤベェな。以後先輩に対しては、もっともっと下手にかわいがられるように振る舞おう。お零れがほしいからね。

 

「シドー先輩。早く行きますよ」

 

「あ、うん」

 

小猫ちゃんに促され、僕は自分の荷物を持ち開いたドアから降車していく。

 

けど、アザゼル先生とアルトリアは降りる気配を見せなかった。

 

「ん?アルトリアは降りないの」

 

アザゼル先生はわかるけど、アルトリアは一応、僕の騎士だよ。

 

「ええ。申し訳ないのですが私は、アザゼルと一緒にこのままグレモリ―領を抜けて、堕天使領の方に行く予定なので、しばらくシドーの近くにいることができません。夜には私もグレモリ―の本邸に向かいますが、万が一、何かトラブルがあった場合は、すぐに右手の令呪で私を呼んでください」

 

「たぶんここにいる限り危険はないと思うけど……なんで堕天使領?なんか用事でもあんの?」

 

「俺が呼んだんだよ。ちょいっとこいつに渡したいものがあってな。途中、魔王領にも寄るがお前の騎士様を危険にさらすことはねぇから安心しな」

 

アルトリアの代わりにアザゼルが手を振って説明をしてくれるが、別に僕は、アザゼルが言うようにアルトリアの心配はしてない。

 

アルトリアがトラブルを持ち込まないかが心配なのだ。

 

「じゃ、また後でね。アザゼル先生も」

 

「シドーもお気を付けて。私がいないからって先方に決して失礼のないようにお願いします」

 

「YOUは僕のオカンか!?」

 

二人に手を振りながらホームへ降りた瞬間、

 

『リアスお嬢様。おかえりなさいませっ!』

 

わぁ。びっくりした。

 

花火があがり、兵隊が空に向けて鉄砲をうち、子供たちが一斉に歌を奏でる。

 

ビックスター以上の待遇にイッセーやアルジェントを除くグレモリー眷属は、平然な顔をしているが一般人の僕は、どうしたらいいか混乱してとりあえず小猫ちゃんの背中に隠れることにした。

 

いや、僕以上にパ二クってる眷属がいた。

 

「ヒィィィィィ―――。人がいっぱいっ……」

 

直截な面識はないがグレモリー眷属の吸血鬼、名はギャスパー・ウラウディと言ったか?

 

幼い可愛らしい童顔にクリーム色のようなサラサラした髪をショートカット。

 

スカートから覗くすらっとした足は、ちょうど思春期に入る前の何も知らない無垢な少女のよう。

 

だが、残念なことにギャスパーという吸血鬼は男だ。

 

小学1年生の幼女から見た目が可愛ければ誰でもいい、僕の広く広い許容範囲でもさすがに男の娘までカバーしてない。

 

どんなに見た目が猫耳少女で胸がちっぱくても男の娘では、話にならない。

 

小猫ちゃんの影に隠れながら人目を避けているとそこへ銀髪をしたメイド姿の女性が一歩出てきた。

 

「お嬢様、おかえりなさいませ。お早いお着きでしたね。道中、ご無事で何よりです。さぁ眷属の皆様も馬車へお乗りください。本邸までこれで移動します」

 

メイドさんに誘導されて眷属たちは、すてすてと馬車に乗り出す。

 

だが、僕はその場に足を止めたままだった。

 

メイドさんが馬車に乗るように言ったのは、グレモリー先輩とその眷属たち。僕は、乗れと言われていない。

 

なるほど、これが新手のいじめか。

 

まったく、中学の修学旅行を思い出すぜ。

 

「シドーさま。どうなさいましたか?」

 

「えっと……すいません。僕も乗ってもいいの?」

 

「ええ、シドーさまが乗り次第、すぐに本邸へとご出発いたします」

 

どうやら、僕も乗ってよかったらしい。

 

結局、僕は一番前と二番目の馬車には乗り遅れたために、最後の馬車に銀髪のメイドさんと乗ることになった。

 

僕が乗り込むと続けて銀髪のメイドさんが乗り込み、馬車はパカラパカラとひずめの音を鳴らしながら進みだした。

 

………。

 

気まずい。

 

まさかこんなところで初対面の人と狭い空間に二人っきりになると思わなかった。

 

くそっ!せめてもう一人誰かがいれば、僕が空気になることも少なからずできたはずなのに。

 

………。

 

なんかさっきからすんごいメイドさんの視線を感じるんだけど。

 

「……な、なんすか?」

 

「いえ、やはりシドー様は、聖杯と言う規格外の力を持ちながらその本質は、ただの高校生だなと改めて感じていただけです。以前、目にしたときは、今みたいにじっくりシドー様を計る暇などなかったものですから」

 

「以前?どこかで僕ら出会ってたって?」

 

こんな銀髪のメイドさんなんて一度目にすると嫌でも記憶に残るはずなのに

 

「ま、まさか。僕たちは前世で離れ離れになった生き別れの兄弟……僕の本当のお姉ちゃんとか?」

 

「いえ、違います。先日コカビエルの件で私も駒王学園にいたもので」

 

なるほど、確かに言われてみるとそんな人いたような気がする。

 

その後、馬車は舗装された道をまっすぐ進み、僕の目線の先にとんでもなく巨大な宮殿が飛び込んできた。

 

まるでフランスのベルサイユ宮殿のようなお城だ。

 

「あれはグレモリー家の所有するお家の一つで当主様は住まう本邸でございます」

 

メイドさんが僕の心を見透かしたように言ってくる。

 

べ、べつに驚いてなんていないんだからね。

 

アルトリアのアーサー王伝説に出てくるお城の方がおっきいに決まってるんだからね。

 

「到着しました」

 

メイドが呟くと、馬車のドアが開かれた。

 

メイド見習いらしき悪魔が会釈をしてくる。

 

僕は、それに大統領が来日した際に見せる飛行機から降りる時にするように右手を挙げて軽く振る。

 

「さて、シドー様。皆さんは先に中に入ってますので」

 

「はいはい」

 

観衆の目に晒されている中、メイドさんに促され、僕は本邸へと続くレットカーペットを歩いてると、ちょうど本邸の入り口でグレモリー眷属と紅髪の少年が楽しそうに談笑しているのが見えたのだが、残念なことに、非常に残念なことにいくら可愛らしい少年でも、男である限り興味ない。

 

下手にガキに懐かれても面倒だし、そのまま突っ切るか。

 

久方ぶりにボッチスキル『ステルスシドー』を発動させた僕は、グレモリー眷属たちに気づかれぬよう気配を最大限隠し、彼女らの背後を千鳥足で通過し、本邸の敷地の中の門に入り中を進む。

 

城の中の門を潜り、桟橋をいくつかわたり、アジサイらしき花で飾られた庭園を突っ切り……どんだけ広いんだよ!。

 

歩いても歩いても城の中に入れない。というか入り口がどこにあるのか解らない。

 

冥界の姫路城かよ。ここわ。

 

外と違い敷地の中に入ってから誰一人、見てないし。

 

完全に迷いましたわ。

 

右腕の令呪は、残り2回。

 

トラブったら自分を呼べとかアルトリアも言ってたことだし、ここで一発使うか。

 

右腕を前に突き出し、僕は叫ぶ。

 

「令呪を持って命ず。僕の前に……」

 

「ここで何をやっておられるのですか?」

 

「わっ!びっくりした」

 

令呪を使おうとした瞬間、背後から誰かに手を掴まれた。

 

反射的に振り返り見ると、さっきのメイド。

 

ただ、メイドの目つきに警戒の視線が含まれている。

 

もしかして、怪しい人と勘違いされた感じ?

 

まぁ、たしかに始めてやってきた人間が人様の家の中を一人で歩いていたら怪しむだろう。警戒するだろう。

 

ここは、メイドさんからの疑いの目を収める方が先決だろう。

 

「えっと……なんといいますか。はじめて冥界に来たもんだから一人散策的な?」

 

ピューピューと口笛を囀りながらそっぽを向く僕。

 

「シドー様が一人で先走って先々行かれたのは、見ていましたから、一目見て迷うなとは思っていました。しかし、今、私が聞いたのはその事ではなくて、今シドー様がしようとなさっていたことです」

 

「は?」

 

今僕がしていたこと……後悔?

 

冥界で一人迷子になるぐらいなら門前で我慢してでもガキとの会話に参加しとけばよかったと言う後悔。

 

つうか、迷子になると思ってたなら助けようよ。

 

何この人?朱乃さんをも上回るSなの?

 

だが、思い返してみるとあの紅髪のガキもこの家の関係者っぽかったから下手にこの家のメイドさんに向かって正直に今の僕の思いを告げることはしづらいな。

 

僕が一生懸命にあまりよろしくない頭をフルに使って言い訳を考えていると、見かねたメイドさんが口を開いた。

 

「ハァ、シドー様の右腕の痣のことですよ。今は見る影もなく霧散してますがとてつもない魔力が収束されてかけていましたから」

 

「いま、僕のことバカだと思ったでしょ」

 

「ええ、でも先ほどのシドー様のバカな反応を見て逆に安心もしました。ほんの少しの動作で私に警戒を解かせる相手などあなたが初めてですよ」

 

「ん?褒められてんの?」

 

罵られてる様な感じもするんだけど。

 

でも、メイドさん。すんごいかわいい笑みで言ってたからきっと褒めてるんだな。

 

「では、シドー様。改めて、グレモリー本邸入り口に案内しますのでついてきてください」

 

そうして、僕は、無事銀髪のメイドさんに連れられ先輩の実家の中に入ることができた。

 

メイドさん。ありがとう!

 

 

―――○▽○―――

 

 

前世の記憶の中で、子供のころ父親が飲んでいたビールを欲しがり、一口飲んで吐き出した思い出がある。

 

その日から、僕は酒は飲まないと神に誓ったのだが、グレモリー邸での晩飯に招待、された今日、こうして僕は、子供のころ以来、初めて酒を口にした。

 

冥界では、お酒に年齢制限などないらしい。

 

永劫に近い時を生きる悪魔にとって、酒を飲んだからと言って寿命が縮んでしまうことはまずない。

 

冥界では、自己責任なのだ。

 

やはり酒はうまくはないが、飲んでるうちにフワフワしてくる。

 

この感覚が気持ちよくて人は酒を飲むのだろう。

 

同じテーブルでイッセーがリアス先輩のお母ちゃんに叱咤されているが僕の耳には入ってこない。

 

晩飯の席で一人、話に乗ることができず、ひとりで酒をバクバク飲んでいると、その光景に見かねた木場が心配そうに言ってきた。

 

「シドーくん。飲みすぎだよ。今日は、グレモリー当主の目もあるんだからほどほどに、ね?」

 

木場は酒が入ったコップを後ろに控えるメイドに渡すと水を持ってくるように頼むがその前に小猫ちゃんが手に水を持ってやってきた。

 

「水なら私のが余ってるのでどうぞ」

 

「ありがとう。小猫ちゃん。シドー君。お水ここに置いとくからゆっくり飲んでね」

 

「うぃーす!」

 

酔った僕は、せっかく木場が持ってきてくれたお水に目もくれず目の前の食後の口直しに用意されたメロンを手に――

 

「あれ?メロンじゃない!――ってまな板やないかッぐへぇっ!」

 

瞬間、小猫ちゃんの拳が僕の頬にめり込んだ。

 

「すいません先輩。手が滑りました。ごめんなさい。手が勝手に動くんです。ほらまた手が勝手に……」

 

そう言って、小猫ちゃんは木場から水が入ったグラスを受け取ると、僕の鼻を右手でつまみ、強引にグラスの中の水を口の中へ流し込んできた。

 

「ググぐぼぐゴボゴボゴボゴボゴボッッ!!」

 

「小猫ちゃん。場所をわきまえて!ここ部長の家だから」

 

「ゴ、ゴボッ…き、きば……よけいなゴホッこと……言うんじゃ、ゴフッ」

 

小猫ちゃんとの初体験は全部僕の物なんだから!

 

すると、この光景を見かねたのかグレモリー先輩がとうとう、困ったような顔で言った。

 

「やめなさい小猫。その男にそういう類のお仕置きは、喜ぶだけよ」

 

「シドー。最近お前、マジで堂々と自分の変態性さらけ出すようになってきたよな。正直引くぞ」

 

「……たしかにそうですね。私のミスです」

 

グレモリー先輩の言葉に水責めをやめる小猫ちゃん。

 

「えっ、もうやめぐほっ!!」

 

だが、やめてグラスを机に置いたコンマ一秒後、小猫ちゃんの拳が僕のおなかにぬめり込んだ。

 

思わず、殴られた力と衝撃で床に倒れてしまった。

 

あっ、なんか視界もチカチカしてきた。

 

ルークの力、恐るべし。でもこれもきっと小猫ちゃんの愛!

 

この愛を心身ともに受け止めないと将来の嫁さんとの愛を育めない。

 

立つんだ!立つんだシドー!!

 

振るえる足を床に縛り付けるように踏ん張り、今持ちうる僕の全力をささげる。

 

「オォォォオオオオオオオオッッ!!」

 

咆哮で痛みなんか吹き飛ばせ!気合をパワーに粉骨砕身だ!

 

「立ったぞ!僕は立った!小猫ちゃんの愛を!深愛を勝ち取ったぐはっ!」

 

「気持ち悪いです。少し眠ってください」

 

2度のパンチには、耐えることができなく、痛みを感じる前に視界がシャットアウトしてしまった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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