僕の平穏な人生がある日突然終わりを告げたようです   作:木原

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システム:フェイト

夏休みを丸々使った冥界観光。

 

部長の家で夏休みだけでも金持ち気分を味わいながらグーたら過ごそうと思っていいたのだが……。なぜか僕は地獄の森の中、アルトリアの放つ剣の斬撃から逃げ惑っていた。

 

現在、僕に持たされた武器は、部長の家にあった普通の西洋剣。

 

アルトリアは、僕に合わせて模擬剣を使ってくれるわけではなく、バリバリの聖剣エクスカリバー。

 

シュパンッ!

 

隣に生えていた大木がバターのように斬れる。

 

「ひぃッ!」

 

「シドー。逃げてばかりじゃ実力は尽きませんよ」

 

ガキンッ!

 

ただの剣とエクスカリバーが交差する。

 

このままだと押し返される。

 

そもそもの話、伝説の聖剣とただの剣、所有者の技量はともかく、剣の性能からどっちが不利かあからさまだろ。

 

僕は、息を止め全身からかき集めた力を剣に乗せると、一気に剣を引いた。

 

「ほう」

 

その行動にアルトリアは、嬉しそうに降格を吊り上げる。

 

ぎゃりん! と刃同士が滑り、一直線の火花が飛び散る。力負けし後方に押しやられる僕を彼女は、全身をコンパクトに回転させ横薙ぎにエクスカリバーを振るってきた。

 

「オオオッ!」

 

短く吠えながら、刀身でエクスカリバーを受け流し、なんとか軌道を逸らすも……

 

「ガフッ!」

 

アルトリアの拳が無防備な脇腹に鋭く刺さり、途端、僕の体は、紙の人形でもあるかのように軽々と吹き飛び、遥か離れた大木にぶつかろうとした瞬間、ふわりと誰かに抱えられ勢いが止んだ。

 

「お見事です。まさか私の剣を受けきるとは、2週間の間によくここまで成長したものです」

 

いやいや、毎日、毎日、朝から晩まで休みなく剣の手ほどきを受けていたら流石にここまで成長しますよ。すんごい手加減されてるけど。

 

しかも彼女、最近、小さな傷ぐらいなら平気で負わせてくるんですよ

 

おかげで全身血だらけですわ。2週間の鍛錬で服も切り刻まれ過ぎてジャージが原型とどめてないし

 

「とりあえず、当分抱きかかえたままでいて、さっきので脇腹折れたかも」

 

「では、一旦、治療もかねて、グレモリー邸へ帰るとしましょうか」

 

そう、口にしたアルトリアに満面の笑みで頷くと、彼女は、僕を抱きかかえたままグレモリー邸へ帰ろうとするも

 

「おー、相変わらず仲いいなお前ら。修行するふりして森の中で一発してんじゃねぇか?」

 

上空から聞こえてきたのは、聞き覚えのある声。見上げてみれば、そこには堕天使の総督様がいた。

 

「なにかようでしょうかアザゼル。私たちは今、鍛錬中です。用がないのならお引き取り願います」

 

「冗談だよ。そうかっかすんな。例のアレが完成した事を伝えに来ただけだよ」

 

アザゼルが頭をごしごし掻きながらそう答える。

 

例のアレ?なんだ。

 

アルトリアを見ると、目を見開いてるし。

 

「ま、まさかもう、完成したのですか。早い、早すぎる。まだ一か月も経っていないというのに!」

 

「悪魔側が妙に張り切ってな。当初計画していた日数より意外と早く完成しただけだよ」

 

二人で話を完結しないでほしいのですが……めっちゃ気になるじゃん。

 

アザゼルが続ける。

 

「まぁな、アレを使うのは、いつでもいいんだが、できるだけ早い方がお前さんの肩の荷も落ちるかと思って、取り敢えず報告に来たまでだ。どうする?」

 

そして、しぶしぶアルトリアが首を縦に振ったことで、急遽、僕たちは、アザゼルに連れられ、同じ冥界にある堕天使領、グリゴリの研究所へと赴くことになった。

 

 

 

 

 

 

一先ず、グレモリー邸へと帰り、アルジェントに脇腹を治療してもらった僕らは、休む暇な研究所へ行くことになった。

 

僕ら三人が専用の転移魔方陣からジャンプして到着したのは、例のアレの為に、堕天使領と悪魔領の境界に建設された言う施設。

 

悪魔と堕天使の合同施設のため、経費も共同出資、共有機関となっているそうだ。

 

周りは森で特殊な結界に囲まれてるために関係者以外この施設に近づけないという。

 

僕たちは、施設内に直接魔方陣でジャンプしてきたために、施設の大きさまで把握できないが、雰囲気的に結構デカい。

 

出来たばかりなのか、施設内のどこからもあの独特の新築の匂いがする。

 

三人で廊下を歩く。壁も廊下も真っ白。傷、ほこり、ひとつもない。

 

まるで建物全体が殺菌されてるかのようだ。

 

時折、廊下を走るお掃除ロボらしきドラム缶のようなロボットとすれ違うも、施設員らしき関係者と全く出会わないんだけど。

 

なんだか気持ち悪いな。

 

「……先生。この施設、関係者がいなさそうなんだけど、なんかあったの?」

 

「基本、ここは緊急時以外無人だからな。管理はすべてグリゴリ本部から遠隔で行ってる」

 

「ふぅん。で、なんの施設?そろそろ教えてくれない?気になってそわそわするよ」

 

ぶっちゃけ堕天使、悪魔、悪の権化と言われる組織が誰も近づかない森の奥地にこんな施設を造る。

 

B級映画だと、正義のヒーローとかがやってきて破壊される類のものだぞ。

 

警戒を強める僕の問いかけに答えたのは、以外にもアルトリアだった。

 

「安心して下さい。別にシドーに危険が及ぶ類のものではございません。これもシドーの身を案じての措置です」

 

「そうだぞシドー。この施設は、悪魔、堕天使がお前の為に出資した、お前のための施設だ。だから恐れる必要なんかねぇよ。それにこの施設に9割は、アレを動かすための発電所も兼ねてる」

 

アザゼルがそう言う。僕の為にこんな素敵な施設を……。逆にスゲー恐ぇよ。不安しかない。

 

「よし、着いたぞ」

 

先を歩くアザゼルが立ち止まった先に合ったものは、壁と同化した真っ白のスライド式の自動ドア。

 

ドアからは素人の僕でも鳥肌が立つほど、不気味なオーラが発せられている。

 

「せ、先生。もしかして、この中がゴール的な?」

 

「そうだ。ここに例のアレがある」

 

と、アザゼルは、不気味に笑った後、アルトリアの方を向き、言う。

 

「悪いが騎士王様は、ここにいてくれ。サーヴァントの存在がアレにどんな影響を及ぼすかわからないからな」

 

「……はい。シドー。万が一のことがあったら惜しみなく令呪を使ってください。いいですね」

 

「お。おぅ」

 

そんな恐い顔で言われても、不安しか積もらないよ。

 

アザゼルがドアの横にあるタッチパネルでドアのロックを解除すると、僕とアザゼルは、扉の中へ入っていった。

 

中に入ると、後ろの扉が自動で閉まった。

 

これで完全に密室になったわけだ。

 

扉の中は、思ってたのと違い、真っ白の壁と床で覆われた会議室程の空間で、気になるのは床に刻み込まれた巨大なサークルだけで、後は、特になんにもない空間だ。

 

ただ、床のサークルが物凄く不気味な雰囲気を醸し出していた。

 

「アザゼル先生。これってもしかしてこれ関係?」

 

腕の令呪を先生に見えるようにかざす。

 

というのもこのサークル。僕がクラスカードを使おうとした時に、展開される魔方陣と雰囲気が似ている。

 

先生は、僕の言葉によくぞ、言ってくれた!みたいな表情で嬉しそうに口を開いた。

 

「ふふっ!まっ、シドーの癖に鋭いじゃねぇか。ほぼほぼ正解だ。この施設は、お前の聖杯、令呪、サーヴァントを解析して俺とアジュカ・ベルゼブブが共同で制作した守護英霊召喚システム・フェイト。俺が生涯造りだした中で最高傑作と呼べるほどの品物だ。まだ、製作途中でお前しか使えないがな」

 

最後辺り、先生は悔しそうだった。

 

どうやら、将来的に僕以外の者にもサーヴァントを召喚できるようにしたいようだ。

 

あくまで個人的な意見だけど、もし、これが完成したら世界の理を覆すほどの存在になりえるんじゃないか?神が創った神器以上の発明だぞ。

 

「じゃ、早速始めるか。シドー。サークルの中央に立って、なるべく強そうな英霊が来るように願うんだ。媒体がなかったら自動的に縁召喚になるらしいからな。とりあえず祈れ」

 

「いや、祈れって!強そうな英霊ってなに」

 

サークルから距離を取り、隅で遮光のためかサングラスを装着したアザゼルに叫ぶも、奴はコントロールパネルのようなものを操り、着々とシステムを起動させてゆく。

 

「なんせ俺も試すのは初めてだから知らん。とりあえずギリシャ神話のヘラクレスでも聖人でも誰でもいい。自分を守ってくれそうな人物が来るように祈るんだ」

 

そんな無茶な。

 

すでに、施設内の電力がこの部屋につぎ込まれているのか、足元のサークルが眩い光を放ち始めた。

 

こうなったら、祈ろう。英雄とか詳しくないけど、来い!僕を母性で包み込んでくれるようなグラマスな姉ちゃん!胸がデカい人限定で!

 

後、髪が長くて、優しく僕の面倒を見てくれる人がいいな。ロリ巨乳希望で!

 

眩い光の中から三つの円環が現れ、金色に輝きながら回転していく。

 

こ、これは、この輝きは、金髪ロリ巨乳か!?金髪ツインテールロリ巨乳なのか?

 

金髪ロリツインテールツンデレ巨乳娘が僕の祈りに応じて円環の理からやってくる!

 

高速で回転する円環から稲妻がほとぼしり、閃光と共に現れたのは……

 

「ん?アルトリア?」

 

光が収まり、目の前に佇んでいたのは、僕のよく知る騎士王様。

 

ただ違ってるのは、身に纏った甲冑。アルトリアのはドレスのような甲冑に対し、赤い光の走った白い鎧。

 

顔からつま先までまじまじと見つめていると、目の前のアルトリアのような人物が口を開いた。

 

「セイバー、モードレット推参!って、テメェ、なに人のことジロジロ変な目で見てやがんだ!」

 

口調は、アルトリアと全然違うが、顔、似すぎだろ。

 

「ま、まぁ、落ち着いて。ちょっと知り合いに似てたからびっくりしただけだから」

 

「ふんっ!ならいいんだがな。で、あんたが俺のマスターか?見たかんじ、へなちょこそうだが、俺が来たからには安心しろ。これより俺の件はお前と共にあり、お前の運命は俺と共にある――ここに契約は完了した」

 

彼女はそう告げて、僕をまじまじと見定めてくるが、僕は何がなんだが。とりあえず、外野にいるアザゼル見るとこっちへ来いと手招きしている。

 

サークルの中央に彼女一人残すのは気が引けるが、アザゼルの元へ小走りで向かうと、アザゼルは、僕の肩を組み、小声で話してきた。

 

「シドー。お前、よりによって最悪の英霊引き当てやがったな」

 

「は、はい?」

 

アザゼルの表情から察するに本格的にまずそうだ。だが、なにが不味いのかがわからない

 

「この際、はっきり言うが。あいつ、外で待つアーサー王の息子だぞ」

 

「んん?」

 

む、息子?えっ!アルトリアって子供いたの?

 

でもアルトリアが子持ちって事実に、立ち直れそうにないショックだけど、そんなに危惧する必要ないんじゃ……

 

「ブリテンの歴史上では、アーサー王は息子に反乱を起こされて、最後には自分が築いてきた国も仲間もぐちゃぐちゃにされて、最後にカムランの丘で相打ちになって死ぬんだ」

 

「んんんん?」

 

首を上げモードレッドの方をちらりと一瞥する。そして、首を戻すと再度アザゼルに確認する。

 

「あの英霊、アルトリア殺したの?」

 

「伝承ではな。正確には、奴が負わせた傷が致命傷となって死んだんだがな」

 

「………まずくない?」

 

二人を合わせるのダメだろ。

 

下手すると歴史が再現されるぞ。

 

「どうすんの?ここで二人の殺し合いに巻き込まれて死ぬなんて嫌だよ」

 

「俺だって嫌だよ。お前何とかしろよ」

 

堕天使総督とあろうお方が無茶言うなよ。

 

「二人でこそこそ、なに話してんだ?」

 

聞こえたのは、モードレッドの声。

 

二人してピクンッ!となった後、振り返ると、そこには、アルトリアと似たモードレッドがいた。

 

「ちょっと、いろいろな。それはそうと、お前さんは、本当にあのモードレッドでいいんだな?」

 

アザゼルは、恐る恐るモードレッドに気に触れないように再度、確認するも……

 

「あぁ、俺様がモードレッドだ。つうかお前だれだよ?マスターの連れのようだが、怪しいな。まさか、敵サーヴァントじゃねぇだろうな!?」

 

「残念ながら、俺はサーヴァントでも怪しい奴でもねぇよ。お前のマスターの先生でグリゴリの総督アザゼルっていえばわかるか」

 

「……グリゴリ?あの堕天使の組織のか?」

 

「話が早くて助かる。実はな……」

 

と、アザゼルが言いかけた時、シューっ!と自動扉が開き、心配そうな表情のアルトリアさんが扉から顔をのぞかせた。

 

「ずいぶんと時間がかかってる……」

 

僕らの行動は、早かった。

 

「「わああああああああああああッッ!!」」

 

二人でアルトリアの声をかき消すように声をあげると、アザゼルはアルトリア、僕はモードレッドと二人の前に立ちはだかり視界を遮断、その後、アザゼルは、アルトリアを連れ扉の外へ、僕とモードレッドは部屋の中にとどまった。

 

「マスター。いま父上の声がしたんだが、父上も召喚されてんのか?」

 

「た、たた他人のそそそ空似じゃないかな。アアア、アルトリリアなんて騎士王、し、知らないよ。ホント、シドー君ウソツカナイ」

 

「動揺しまくりじゃねぇか。いるんだな!!父上も召喚されてんだな!!!」

 

僕の肩を強く掴み、すごい剣幕で真っすぐ僕の目を見て来るモードレッド。

 

ち、近いよ。アルトリアと顔そっくりだから心臓に悪いよ。

 

こいつこう見えて男なんだよな。クソッ!ドキドキが止まらねぇ!いい匂いするし。

 

「で、どうなんだ。父上は、ここにいんのか?いるんだな!!」

 

殺気にも似た何とも言えない鋭い視線を直に浴びたどこにでもいる普通の高校生である僕は、敵うはずもなく、

 

「……う、うん」

 

目を泳がしながら首を縦に振ってしまった。

 

途端、モードレッドの目の色が変わったのを感じると、彼は、僕の腕を強引に掴み取りアルトリアがいる扉の外へと向かったのだった。

 

 

 

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