僕とアザゼルの頑張りは、儚く僕が折れたために霧散したわけだったが、結局、僕を引き釣りながら外へ出たモードレッドは、再び現世で親と直面した形になったのだが……
「……父上」
さっきまでの威勢は、どこへやら。声がすごく小さいし覇気がない。こんなに近くにいる僕でさえギリ聞こえたぐらいだ。
アルトリアもまさか、息子が召喚されたとは、思ってもみなかっただろう。
目を見開き、驚いてる。
言っとくがこの場所に感動の再開はないと思う。だって息子に殺された間柄だぜ。
もしや、サーヴァント召喚は、縁だとアザゼルが明言していたが僕の縁は、ペンドラゴン家とかではないだろうな?それとも顔?
まぁ、いい。今は、一刻も早く、この気まずい空気から抜け出そう。
これはあくまで親子の問題。僕の関わる余地なし。
「あ、あの。モードレッドさん。僕、急用を思い出したから、腕放してもらっていいかな?」
だが、モードレッドは無言で僕の腕を掴む力を強くするだけだった。
「あ、あの……聞いてる?」
「嘘は良くありませんよシドー。今日一日ずっと私との鍛錬のはずです」
と、アルトリアは僕に言った後、モードレットに向かって、
「それと、モードレット。私は今も昔も、貴方を王と認めることも、息子と認めることも決してないだろう。だが、貴方もシドーと契約したのなら、私に叛逆を誓ったその剣で私と共にシドーの剣となることを認めます」
つまり、私の意見は生前と何一つ変わってないけど、サーヴァントとしての責務を全うするなら仲間だよん。ということか。
わかりづらいわ!!
ここは、二人のマスターとして僕がおせっかいでも焼こうとするか。
拳を握り締め、何も感情を窺わせない表情のモードレッドにひと言。
「そんなに落ち込むなよな。親に反抗出来るだけまだいい方じゃないか。これ僕の親戚のおじさん話なんだけど、そのおじさん。中学の頃、親は、海外に転勤に行って、家でも一人、学校でも友達ができずに一人。でも顔だけイケメンだったから無駄に自意識過剰でな。いつしか自分には、特別な力が宿ってるだとか、女にモテまくって学校中のスターだとか、存在そのものが他人とは違うとか、俗にいう厨二病に罹ってしまってな。それが長く続いたおかげで以後、人から距離を置かれるようになり、挙句の果てに友達の作り方、人への接し方さえ忘れてしまって、社会不適合者、ボッチの烙印を押されてしまったのさ」
「「「………」」」
あれ?なんでみんなしてこっち見んの?
「で、マスターは自分の昔話して、俺を慰めてるつもりか?」
「ばっか!親戚のおじさんの話だよ。つまりだ。お前は反抗できる親がいただけマシだってことだよ。親は子の目標となるモノだろ。それは逆説的に親は子に追い抜かされないように子のはるか先を走ってなきゃいけない。つまり、子を認めてしまった瞬間に親の敗北が決まるんだよ」
そんなこと国を束ねる親ができるわけねぇだろ。とモードレットに語り掛けるが、なにそのバカを見る目?
アルトリアも頭に手を置き、ため息ついてるし。
「はぁ、シドーらしいと言えばシドーらしいですね。私が不肖の息子が迷惑かけるかもしれませんが仲良くしてください」
と、アルトリアが僕に軽くお辞儀すると、アザゼルに転移魔方陣を展開するように目で訴えると、僕らは、グレモリー邸へとジャンプした。
―――○▽○―――
結局、その日の昼からの鍛錬は、僕が気を利かして、休みにしてもらい、親子水入らずの時間を取ってもらうことにした。
と言っても、アルトリアは、気まずそうな表情で渋々、了承してくれたわけなのだが。
ともかく、親子仲良くなってほしいという一心の僕は、二人を街に放り出して、グレモリー邸で突然空いてしまったオフを満喫するわけなのだが、グレモリー邸に到着してから銀髪のメイドさんの視線がきつい。
「……あ、あの、なんでついてくんの?」
「アルトリア様からシドー様を下手に休ませるなと言われておりますので……」
「って言われても、部屋でグーたらするしか、やることないんだけど」
むしろ、グーたらするために適当な理由をつけてアルトリアを僕から放したと言っても過言ではない。
どうしたらメイドさんのスキをついて、自室で引きこもるか、を考えていると、メイドさんが神妙な面持ちで話し出す。
「では、お時間が空いているのならシドー様には少し、頼みごとがあるのですが……」
頼み事?メイドさんが?掃除の手伝いとかなら嫌だな。ここは、適当に断ろう。
「悪いけど、今の僕ってそれどころじゃないんだよね。ほら、僕って聖杯じゃん。超レアな存在なわけじゃん?」
「実は、小猫がアザゼル様の提示したトレーニングメニューを過剰に取り組み、お倒れになりました」
「えっ!マジで。」
話をスル―された時、一瞬、目の前のメイドに対しこのババァ!!などと思ってしまったものの、小猫ちゃんが倒れたのなら話は別だ。
「メイドさん。小猫ちゃんは?マイラブリーエンジェル小猫ちゃんは、いまどこです?」
「こっちです」
メイドさんについて入室したのは、小猫ちゃんの部屋だった。
他の眷属のみんなは、イッセー以外一応話は済ませたようで、中には僕だけ入れと言われた。
いいんですか?僕を小猫ちゃんと二人っきりにさせるなんて……間違いが起こっても知りませんよ。
僕に与えられた部屋より一回り広い部屋。寝室に法へ足を向けると、小猫ちゃんがベットに横になっていた。
――っ!
小猫ちゃんの頭部に生えているモノを見て驚いた。
猫耳だ。猫耳の生えた小猫ちゃんだ。ラブリー。すっげぇ可愛い。お人形さんみたいだ……グヘへッ、じゅるり!
おっと、一瞬、理性が危ないところだったぜ。
一旦落ち着こう。深呼吸。
「スーハ―スーハ―……よし!」
「何しに来たんですか?」
気づくと、半眼でこちらを見ている小猫ちゃん。不機嫌そうな声だ。
「メイドさんから小猫ちゃんが倒れたって聞いてね。心配だから様子を見に来たんだ」
「帰ってください」
部屋に入ってまだ一分も経っていないのに退場命令。さすがの僕でも傷つくな。
だが、拒絶されただけで引き下がるシドー君ではない。
そのままベッド脇に移動して、小猫ちゃんの出方をうかがう。
「聞こえなかったんですか?帰ってください」
またも、小猫ちゃんからの退場命令。
「うぐっ。そ、そう言わずにシドー君こう見えて心は、うすさ0.8ミリのガラスなんだから」
「……」
ぶすっとしたまま、小猫ちゃんは答えない。
「致命傷を負っても治ればいい的な歪んだコンセプトの鍛錬を受けてる僕が言えた義理じゃないけど、無理をしちゃだめだよ」
「……なりたい」
小猫ちゃんが小さく呟く。
「ん?なにに?僕のお嫁さんになりたいって?」
「強くなりたいんです。祐斗先輩やゼノヴィア先輩、朱乃さん、イッセー先輩のように心と体を強くしていきたいんですギャー君も強くなってきてます。アーシア先輩のように回復の力もありません……このままでは私は役立たずになってしまいます……。私が一番……弱いから……」
あれ?その中に僕の名前がないんですが?まぁ、眷属じゃないからな。
小猫ちゃんは、ボロボロと涙をこぼしながらも続ける。
「……けれど、猫又の力を使いたくない……。使えば姉さまのように……」
初めて――。初めて女の子の泣き顔を見たな。
こんなとき、コミュ力Maxのリア充なら気の利いた事を連発するのだけど、生憎、僕は非リア充。年齢=彼女いない歴。童貞でボッチだからな。
「ただの人間で弱い僕は、イッセーみたいに気の利いたこと言えないけど、小猫ちゃんがピンチの時ぐらいは、僕が代わりにそのピンチを肩代わりしてあげるよ。どうせこれからもそれぐらいしか役に立たなさそうだし。小猫ちゃんの代わりに死ねたらそれはそれで僕の人生も花が咲くってもんだ」
「シドー先輩……」
小猫ちゃんは、腕で涙を拭うと、無理やり作り笑いを浮かべ言った。
「さすがに今の発言は、気持ち悪かったので出て行ってください」
「……お、おぅ」
やっぱりキモかったか。だって、こんな経験初めてなんだから許してくれよぉ。
小猫ちゃんにとどめを刺され、泣きそうな顔で部屋をでていこうとするも、
「先輩。でも、ありがとうございます。ありえませんが私がピンチになった時は、必ず助けに来てくださいね」
そう、こんどは笑顔で言ってくれたのだった。
その言葉にお兄ちゃん元気100%!明日から再開される地獄の特訓もやりきれるような気分になり、僕は部屋を後にした。
次の日、アルトリアによる地獄の特訓が始まるのかと、思いきや、現在、僕がいるのは、日本で言う東京みたいな超高層ビルに囲まれた都市の中にある若者の街的な若い悪魔が蔓延る街の中だった。
というものの、いつも毎朝、アルトリアが僕を起こしに来て鍛錬が始まるのだが、今日は、早朝からモードレッドが、アルトリアが起こしに来る前に僕を起こし、グレモリー邸の外へ連れ出すや、電車や地下鉄、バスやらを乗り継ぎ、2時間ほど、現在に至るのだが……。
「なぁ、モードレッド。ここどこ?」
「冥界の首都。リリスだそうだ」
そうか、首都か。たしかにこの規模の街並みと言ったら首都クラスの街だろう。
だが、僕は決して、そういう意味で尋ねたわけではない。
「じゃなくて、なんで僕は冥界の首都なんかにいるのさ。あっちも悪魔。こっちも悪魔。僕、人ごみが嫌いなんだよ。人間恐怖症なんだよ」
「おいおい、マスター。人間なんてどこにいるよ。ここにいる奴らは、みんな悪魔だぜ」
「悪魔も人間も一緒だ。現に悪魔なんて人間と見た目変わらないじゃん。もう、嫌だよ。人が多すぎて胃がキリキリするよ。シドー君おうち帰る」
もう、こんな若いヤング共が集まる場所なんて嫌だよ。
踵を返し、来た道を引き返そうとするも、モードレットに首根っこを掴まれる。
「わりぃが、お前はマスターだが、俺の方が格上だ。目上の人には、従いなさいって親に教わらなかったか?」
「生憎、僕の親は放任教育の第一人者だから、なんな理屈なんて教わってないし。だから、放せ。僕はおうちに帰るんだ」
頑なに、電車の駅へ戻ろうとする僕だったが、モードレッドは、そんな僕を無視して、僕を引き釣りながら、街の中へ足を進める。
「家に帰ってもどうせ父上にボコボコにされるだけだろ。なら今日ぐらい俺に付き合え!」
「なんでさ」
「なんでって…今の俺の姿見て何か引っかからないか?」
姿?
頭からつま先までじっくり、見て見るが、アルトリアそっくりな顔に昨日召喚してから着込んでる騎士甲冑にと、それと言っておかしな点はない。
「……あっ!髪切った?」
「ふざけてるようならぶっ飛ばすぞ。マスター!服だよ服!俺、騎士甲冑しか持ってねぇんだよ」
たしかに、いつも騎士甲冑と言うのは、おかしな話か。アルトリアの場合も騎士甲冑で傍にいられるのも恥ずかしいから、僕自ら買いに行ったんだっけ
そうして、あーだこーだ言い続けながらモードレッドが歩みを止めた先にある店は、大型の複合施設。
そして、中に入り向かった先は、まさかのユニ○ロ冥界リリス店だった。
目を疑ったものの何度見てもあのユニ○ロ。まさかグローバルカンパニーのユニ○ロだったわけだが、冥界まで進出してるとは。
「……ユニ○ロ、マジっパねぇ」
「マスター。なに突っ立ってんだ。早く中はいるぞ」
「お、おう」
モードレッドにリードされ中にかいる僕。
一瞬、女の子にエスコートされてると錯覚し、嬉しい気持ちになったことは、黙っておこう。あいつは男。
しばらく服選びに付き合っていると、モードレッドが手に取ったのは、まさかのへそ出しチューブトップに真っ赤なレザージャケット、ギリギリ尻を隠してるだけの短パンという男が着るには無理がある服だった。
「……マジでそれでいいのか?」
さすが女装と呼べなくもない服に考え直すように進言すも、
「動きやすそうだし、これでいいんだよ。俺が選んだものになんか文句あんのか?」
「いや、ないけど」
本人がいいと言うのならそれでいいのだろう。
会計後、すぐに試着室に入って騎士甲冑からチューブトップに真っ赤なレザージャケット、短パンに着替えると……。
「ど、どうだ。マスター。似合ってるか?」
顔を真っ赤にしつつ感想を聞いてくるモードレッド。
クソッ!こいつは男だ。だまされるなシドー。
たしかに今のモードレッドの格好は、かっこいいし、かわいい。だが、間違ってる。
「たしかに似合ってるんだけど……その、言いにくいんだけど…男なんだからそういう服はちょっと……」
避けた方がいいんじゃないかな?と相手の気に触れないように言葉を選んで言おうと思ったのだが言えなかった。
それは、モードレッドが途中で僕の言葉を遮り、人を殺せるんじゃないかと思えるほどの目つきで胸ぐらをつかんだからだ。
「あ”!てぇめぇ、今なんつった?俺が男だと!?ぶん殴られてぇのか?」
「えっ!ちょっ、まっ、え!男じゃないの!?」
だって、俺っこだし、アザゼルもアルトリアも息子、不詳の息子って……。
でも、考えてみると体つき、顔的にも女じゃね?ちょっと胸もあるような気がするし……
「お前、まさかずっと、俺のこと、男だと思ってたのか?」
「ちょっと、待って!頭の中整理させて!」
一旦、タイムをもらい、昨日からのモードレッドの言動、行動、態度を頭の中で精査する。
結果……
「えぇえええええ!!お前、女だったの!?」
「俺を女扱いすんじゃねぇえええ!!」
「グハッ!!」
モードレッドの拳が腹にクリーンヒットする。
「ど、どっちだよ」
つまり、女だが、女扱いしてほしくない。かといって男扱いもしてほしくない。
どうせいっちゅうねん。
「ったく。バカマスターめ!品性も欠片もねぇ奴だな。次、行くぞ!」
そう言って、腹にパンチを受けて蹲る僕を無理に立たせ次ぎに向かったのは、まさかの下着売り場だった。
おい、マジか!
「バカマスター。なに突っ立ってんだ。早く入るぞ!」
「お、おう」
中へ入ると、四方八方女性下着。ピンクからブラック、情熱の意味を込めているのか真っ赤な際どい下着、果ては如何わしい場所に穴が開いた下着まで幅広く取り揃えられた下着売り場だった。
完全に場違いである。
以前もアルトリアの下着を渋谷のラグジュアリーショップで買ったことのある僕だからこそ、思うことがある。ここは冥界だと。人間界の下着売り場では、お目にかかれない大人の下着まで取り揃えられている。
しかも、何を血迷ったのか、モードレッドが真っ先に手に取ったのは、真っ赤な際どい上下セットの下着。
ユニ○ロの時もそうだったが、モードレッドの買い物は即決が多い。目に入り気に入ったら買うので、悩むことがないため買い物は早い。
が、今手に取っている下着は、ダメだろ。アルトリアの純白の下着と比べても際どすぎる。
「よし、これにする」
そういって、そのほかにも赤い下着を買い物かごの中に放り込んでいき、レジに向かう。
僕らが店に入ってからモードレッドがレジに向かうまでのタイム約3分。カップラーメン並みだ。
その後、彼女の日用品などもかい、また、2時間もかけて帰宅した。