僕の平穏な人生がある日突然終わりを告げたようです   作:木原

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逆セクハラで訴えたい!けど……

正午過ぎ、グレモリー邸に帰ってきた僕たちを迎えてくれたのは、いつもの銀髪のメイドさんだった。

 

「お帰りなさいませ。モードレッド様。シドー様」

 

「おう、グレイフィア。いいもの買えたぜ。どうだ俺の服は」

 

手を広げ、子供のように冥界の首都で買った服を見せるモードレッド。

 

「はい。中々似合っております」

 

「だろだろ!」

 

たしかに似合ってるけど、露出が高いと思う。

 

体系的にもモデルのような彼女が、へそ出しチューブトップに短パンなどというものを着てるために、街や帰りの電車の中で周りの視線を集めるわ。一緒にいる僕の心臓がバクバクするわで、全然落ち着いていられなかった。

 

僕みたいな非リア充がリア充に向ける殺気、嫉妬、憎悪が混ざり混ざったあの視線、今日初めて浴びたよ。

 

まさか、自分が向ける側から向けられる側へとなる日が来るとは、あらゆる意味で斬新だったぜ。

 

朝の買い物だけでどっと疲れた僕は、メイドさんとモードレッドが話し込んでる中、無視して、部屋に向かおうとすると、銀髪のメイドさんが待ったをかけた。

 

「シドー様」

 

「なんです?」

 

「今日の夜に魔王主催のパーティがありまして、アジュカ・ベルゼブブ様がぜひシドー様にもご出席願いたいとの事ですが、いかがなさいますか?」

 

パーティ?アジュカ・ベルゼブブが……

 

なんか怖いな。一応、僕が呼ばれた理由だけでも聞いてみるか。

 

「それって……」

 

「魔王主催のパーティだと!なんか楽しそうじゃねぇーか。行こうぜマスター」

 

メイドさんに理由を聞こうととした瞬間、モードレッドにかき消された。

 

「いやいや、僕にお誘いが来たんだろ。なら普通、僕しか行けないんじゃないか?」

 

「いえ、シドー様がご出席なされるのならば、シドー様のサーヴァントであります、モードレッド様もアーサー様もご出席できます」

 

「本当か!グレイフィア。なら出席だ。マスター。俺がちゃんとエスコートしてやるから出席しろ」

 

と、言いながらモードレッドは、虚空から白銀の剣を取り出し、僕に突きつける。

 

半場、脅しのような状況に僕は、考えに考え抜いて反論することなくモードレッドを尊重することにした。

 

理由は単純。剣を向けられて恐いから!

 

「出席するから、ね。クラレントおさめよう。ちゃんと出席するから」

 

僕の言葉に、白銀の剣――――宝具クラレントをひっこめると、僕の手を取り、嬉しそうに表情で笑う。

 

「おう、それでこそ、俺のマスターだ」

 

その後、妙に上機嫌のモードレッドにグレモリー城内を連れまわされたのは、また別の話だ。

 

―――○▽○―――

 

 

 

「ハァ」

 

疲れた。

 

モードレッドの奴、テンション高すぎなんだよ。

 

あの後、モードレッドと別れた僕は、真っすぐ自室に籠り、ひと眠り。

 

そして、今、カッポーン……。と音のするわけもないがグレモリー邸にある大浴場へと向かっていた。

 

疲れた後のお風呂タイムである。

 

グレモリー邸は、今現在女子率が極端に高いため、漫画でよくある例の後から女の子が入ってきてキャーエッチ!的な展開にならないために細心の注意を払いながら服を脱ぎ、ちゃんと誰が入ってるのかわかるように籠に入れる。

 

こういった状況でも女が間違えて風呂場に入ってきても、男の方が悪者にされるのだ。

 

理不尽な世界に生きている者としては、非常に残念だがそれが世界の決まり。

 

だが、僕は宣言しよう。もし、そんな状況になったなら、僕は頑として戦うと。

 

女よりも先に悲鳴を上げて、逆セクハラとして訴えようと思う。

 

「まぁ、そんな漫画みたいなこと起きるわけないけどな」

 

そう、呑気に扉を開き、さっそく、肩まで湯に浸かりながら、疲れをいやした。

 

相変わらず、グレモリーのスケールのデカさに驚かされるな。

 

この大浴場なんて、有名な温泉宿以上の風呂のデカさだし。

 

白煙で視界が悪いっていうデメリットを差し引いてもこの風呂に入るかいは、大いにある。

 

僕は、のんびりと手足を伸ばすと、湯に体をあずけ……ゴンッ!

 

あれ今なんか、後ろから桶を落としたような音が……。

 

振り向くと、そこには、片手で髪をすきながら、固まるアルトリアがいた。

 

「「…………」」

 

もちろんお互い素っ裸である。

 

なぜだ。漫画的展開にならないように細心の注意を払ったはずだ。それなのに……いや、そういえば、僕、後から女の子が入って来ない様な対策は講じたのだが、元々、女の子が風呂に入っていた時のシツエーションは、考えてなかった。

 

もう、彼女の裸を見るのは、何回目なのか。

 

前を隠すことなく呆然と立ち尽くすアルトリアに、僕は……。

 

「キャァァァアアアアアッッ!!エッチィィッッ!」

 

全力で前を隠した。

 

アルトリアには悪いが、ここは、彼女に悪役になってもらおう。僕は自分にさっき誓ったばかりだからな。こういう状況に至ったら戦うと。

 

しかし、神は僕を見ていてはくれなかったようだ。

 

瞬間、脱衣所の扉が開き、前を隠すことなく勢いよく現れたのは、アルトリアの不肖の息子、いや娘のモードレッド。

 

「どうした父上!なぜ浴場からマスターの声が!!」

 

薄暗い中、前を隠す僕と目が合った。

 

「……ぶっ飛ばす!」

 

途端、床に亀裂が入る程の力で跳躍するモードレッド。

 

彼女は、湯船に浸かる僕に向かって一直線に飛びかかると、僕の上に跨りマウントポディションを取った。

 

普段なら、それで僕がボコボコニやられて終わりなのが通例なのだが、もう一度言う。お互い素っ裸なのだ。つまり、今、湯船の中で僕らは、ギリギリセーフなのだがはたから見れば完全に騎乗位状態なのだ。

 

「ちょっ!ゴボッ…不味い、いろいろまずゴボボボッ……ブハッ!」

 

湯船に顔が沈んだり、浮かんだり。兎に角、僕は、彼女の額に手を当て、彼女を押し返そうとするが、相手もなかなか手ごわい。。

 

「し、シドー、それにモードレッドまで……やめなさい。二人ともハレンチです!」

 

そこへアルトリアも参戦。彼女は必死にモードレッドを羽交い絞めにして、僕から引きはがすと、両者の間に入り込み、頭を落ち着かせるためか、僕とモードレッドの頭を湯船に叩き付けた。

 

「二人ともそこまでです!」

 

「父上!どうして!こいつ父上の裸を見たんだぞ!」

 

「別に見てねぇよ。お、お前の体もアルトリアの体も見たこともねぇよ」

 

「バリバリ見てんじゃねぇかよ。俺の体に釘づけじゃねぇかよ」

 

「誰がお前みたいな奴の体なんか見るか。仮に見たとしても何も感じねぇよ。なんだその胸。男の僕と同じじゃん!」

 

「………」

 

「……なんでそこで無口になるんだよ」

 

こっちもいろいろ反応に困るっていうか。

 

自分の胸に手をかぶせ何やらブツブツ呟きだしたモードレット。

 

「……ぶっ殺してやるっ!」

 

眼に涙を浮かべながらの物騒なその言葉に、僕は思わず冷や汗が出てきた。

 

あれれ?これまずった?

 

宝具クラレントを取り出し、殺気と共に剣が斜めの軌道を描いて襲ってきた。

 

ヤバい!死ぬ。

 

だが、いつまでたってもクラレントが僕に傷をつけることはなかった。

 

アルトリアが即座に取り出したエクスカリバーでクラレントを受けていたのだ。

 

「邪魔をしないでくれ父上!そ、そいつは、俺が一番気にしてることを……む、胸のことを……」

 

「落ち着きなさいモードレッド。そんなことで一々、取り乱していたらこの先持ちませんよ」

 

「そんなことだと!こいつは、私の一糸纏わぬ姿を見ただけではなく、父上にいただいたこの体を侮辱されたのですよ!!」

 

「だから、そんなことで取り乱すなと言ってるのです。私なんかその男には、はだッ……」

 

あれれ?アルトリアって僕を庇ってくれるんだよね。じゃ、なんで僕をチラチラ見ながら言いよどんでいるのだろうか?

 

「私なんか、素肌を何度も嘗め回されたのですよ。それに比べるとあなたなんか、まだマシです」

 

「それは本当なのか?テメェ、俺以外に父上までにも手を!」

 

再び、モードレッドが僕を睨む。

 

「いや、お前に手出した憶えないし、アルトリアも何言ってんの?嘗め回したことなんて一度もないよ。そもそもそんな度胸、僕にないよ」

 

「お言葉ですがシドー。いつも私が入浴した後や薄着でいる際、私の体を嘗め回すように上から下まで見てるじゃないですか」

 

「べ、別に見てねぇよ。じ、自意識過剰すぎなんじゃねぇの!」

 

「眼が泳いでるぞ。マスター」

 

二人は、いつの間にか剣をしまい、手で胸を隠しながら僕に睨みを利かせる。

 

なに、この状況?一気に僕の不利な状況になっちゃったんだけど。

 

「ふ、二人とも取り敢えず、落ち着こう。ほ、ほら僕ら家族みたいなものだし、ジャパニーズ文化に寄り添って裸の付き合いも悪くないかと思うんだ」

 

「父上。この男。何を言うのかと思ったら、開き直りやがったぜ」

 

「ハァ、慣れですよモードレッド。じゃないと、この男とは、やっていけませんよ」

 

ため息を一つついたアルトリアは、馬鹿らしくなったのか、モードレッドに助言した後、大人しく湯船につかると、モードレッドも観念したのか、続けて湯船へと浸かった。

 

「あっ、そういえばマスター。聞きたいことがあったんだがいいか?」

 

「僕もモードレッドに言いたいことあるんだけどいいか?」

 

「また、胸のことだったら次こそ、マスターと言えどぶっ殺すからな」

 

「違うよ。そのマスターって呼び方だ。僕は、そんなマスターなんていう目上に立つ存在じゃないからシドーって呼んでくれって言うお願い事だよ」

 

だから、いちいち睨んでくるな。心臓に悪いよ。

 

「なに言ってんだ。俺が召喚されてからシドーより俺の方が格上に決まってんじゃねぇか。昼も同じこと言ったよな俺?」

 

「たしかにそんなことも言ってたな。まぁ、これからはシドーって呼んでくれよ。で。僕に聞きたいことって何?」

 

「おう、そうだった。シドーというよりは、父上にも聞いてほしんだが、俺に現状を教えてくれ!」

 

「現状?」

 

今、三人で風呂に入ってることとかか?

 

「それは、なぜ、私たちが呼ばれたのかっていうことでしょうか?」

 

「そうだ。第一、俺たち以外のサーヴァントもマスターの気配も感じられない。聖杯戦争の存在自体、いや、儀式の概念すら無さそうな世界になぜ俺が召喚されたんだ?そもそも聖杯戦争がなかったら俺たち英霊を召喚すらできねぇはずだけどな」

 

「聖杯戦争?そういえばアルトリアも召喚当初、そんなこと言ってたな」

 

「座にいる英霊は、聖杯戦争の勝者を目指すために、召喚に応じますからね。気になるのは当然ですよ」

 

なんか、難しいこと言うな。

 

「モードレッド。単刀直入に言うと、この世界には、聖杯戦争という概念すら存在しない」

 

アルトリアの言葉にモードレッドは、口を開けて固まってる。これが絶句というモノだろう。

 

「つ、つまり、聖杯なんて願望機、初めから存在しないってことか?」

 

「いいや、聖杯は、ちゃんと私たちの目の前に存在する。私たちは、その聖杯によって、現世に召喚されたんだと思います」

 

そう言って、僕に視線を寄越すアルトリア。

 

僕から本当のこと言えってか?

 

「目の前にだと!どこにだ。どこに聖杯なんてある?」

 

そう言いながらモードレッドも父上の視線を追って僕を見る。

 

「……実は僕がその聖杯らしんだ」

 

「は?」

 

「だから僕がモードレッドの求めてる聖杯。アザゼルや天界の天使、魔王様曰く生まれながらにして完成された天然の聖杯らしいよ」

 

「う、うそだ。そんなこと言って俺の気を引こうとしても俺は騙されねぇぞ!」

 

いやいや、そんなこと言われたって、紛れもない事実なんだから。

 

「残念ながら。それが現実です。シドーは紛れもない聖杯。そして、私たちの役目は剣に誓ったことを守ること」

 

「残念ながらってひどいね。僕とアルトリアの仲じゃなかったら、普通に傷ついてたよ」

 

「私とシドーの仲だから遠慮せずに本心からそう言えるのですよ」

 

「つまり、僕らには、遮る壁はないってこと?」

 

「ええ、そういうことかもしれませんね」

 

中々、嬉しいこと言ってくれるな。

 

こうして、僕ら三人は、その後、楽しく混浴を楽しんだわけだった。

 

 

 

 

 

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