僕の平穏な人生がある日突然終わりを告げたようです   作:木原

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宝具開放!もうやめてぇぇ!!

掃射された剣が部長の額をバターのように貫こうとしたその時、突如、影が舞い降り、土埃が待った。

 

きゃりいいん! と高く澄んだ音が暗い森の中を貫ぬく。

 

「何者だ?我の邪魔をする狼藉物は!」

 

土埃が舞う中、部長の処刑を邪魔された僕の中の人は、怒り心頭のまま、正面を睨みながら土埃の中に追い打つかのように続けて無名の剣を掃射するも、掃射したすべての剣が叩きおられ、金色の輝きが、正面からすべてを包み込もうとしてきた。

 

聖剣エクスカリバー。

 

「エクス……」

 

そう認識する前に、僕の体は、反射的に動いていたものの、すでにアルトリアは、左足を踏みしめ、聖剣を振り下ろす動作に入っている。

 

問答無用。隙すらもない、まさかの騎士らしくもない不意打ちに驚く僕であったが、今は中の人がなんとかしてくれるのを祈るのみだ。

 

「カリバァァァァアアア!!!」

 

「天の鎖よ」

 

僕の中の人は、どうにか神を縛る鎖で彼女を拘束しようとするも、一歩遅く、極太の星光が目前に迫る。

 

ヤバッ!アルトリアの奴、僕もろとも殺す気か!

 

ガンバレ中の人。僕は必死に中から中の人を応援するも、運命は残酷だった。

 

すべてを焼き尽くす光は、無慈悲にも僕の体ごと周りの木々をごっそり飲み込んだのだ。

 

「シドー!!」

 

光の外からアルトリアの叫ぶ声が聞こえる。

 

だが、僕の視界は以前、閃光に包まれ、全身を灼熱の焼石に身を包んでるようだった。

 

死んだ――と本気で思ったりもしたが、どうやら僕は死ねなかったらしい。

 

光が収まると、この森に残っていたものは僕とアルトリアと先輩とイッセーだけだった。

 

他はすべて焦土と化し、地面は黒く焼き尽くされており、光の奔流を放った彼女の背後も、余波の衝撃で木々がなぎ倒されている。

 

無論、ほぼゼロ距離からエクスカリバーを喰らった僕も辺りの木々と同じく全身から煙を上げ、全身の皮膚という皮膚が赤くただれていた。

 

それでも、致命傷を負っていないのは、この黄金の鎧のおかげなのか、僕の中の人のおかげなのか。

 

「痴れ者が!!誰の許可を得てこの我に……」

 

「チッ!エクスカリバァァァァアアア!!!」

 

僕の中の人が言ってる傍から僕が二本足で地面に建ってることにイラッとしたのか、舌打ちしたアルトリアは、またも宝具を開放する。

 

同時に僕の魔力もごっそり持っていかれるも、僕の中の人は、正面に黄金の波紋から大きな盾を展開させた。

 

「二度は通じんぞセイバー……なにっ!」

 

その時、僕の中の人が何かを察し、首を見上げると僕のほぼ真上に彼女と同じ顔を持った赤い甲冑に身を包んだモードレッドの姿。

 

たぶん、アルトリアの一発目の宝具開放の時に跳躍でもしたのだろう、その手にはすでにクラントが握られており、見間違えか、いつも彼女が手にしている白銀の剣が、鮮血にでも浴びたかのように禍々しく染まり、刀身に赤い静電気のようなものがほとぼしっていた。

 

「此れこそは、我が父を滅ぼせし邪剣!『我が麗しき父への叛逆(クラレント・ブラットアーサー)』!!!」

 

途端、またも僕の魔力がごっそりと持っていかれる感覚と同時にクラレントから赤い雷撃が極太の稲妻となって僕の頭から全身を貫いた。

 

「おのれぇぇぇえええええっっ!!」

 

脳が、眼球が、全身の血が瞬時に沸騰したかのような痛みを通り越した人類がまだ体験しえぬような激痛の中の激痛が体内を傍弱無人に駆け巡る。

 

それでも僕の意識が保てたのは、僕の中の人のおかげと言ってもいい。

 

いや、僕としてはいち早く意識を手放し、この地獄のような痛みから解放されたい。

 

すでに下半身を覆う黄金の鎧も続けさまに放たれた光の激流2発と赤い雷撃1発に溶かされ、全身が黒く炭素化していたが、僕の意識はまだあるし、体の主導権もまだ中の人の手にある。

 

「……お、おのれ……にん……ぎょうの…ガハッ」

 

おいおい、中の人まだやんのかよ。

 

生まれたての子牛のようにおぼつかない、グラグラな足取りで立ち上がろうとするも、上空から自由落下してきたモードレッドに背中をうらっ! と蹴られて前に倒れ込む。

 

ただ蹴られただけなのに鉄球をぶつけられたかのように痛い。

 

この一撃が決定打となったのか、僕の意識がプツリと途切れた。

 

 

 

 

―――○▽○―――

 

 

 

夢を見た。

 

――そこは黄金の都だった。

 

マルコ・ポーロが言い広めた黄金の国ジパングだろうか、それとも伝説の都アトランティスだろうか。

 

高く積まれた近海の輝き。山のように溢れる宝石の数々。

 

素人目でも数億の価値はあると断言できる絵画の数々。どのようなメロディを奏でれるのか想像もできない楽器。黄金でできた食器やフライパンの数々。はてには、輝船や黄金のガトリング銃、伝説の剣、呪いの剣、地平線の果てまで、数限りなく広がる財宝の群れ。

 

その一つ一つが値段をつけるのも困難な宝物だとわかる。

 

人の認識できる限界を超越した、無限の宝。おそらくここには、この世総ての過去、現在そして未来に至るまで人類史から生まれた財がおさめられてるに違いない。

 

こんな場所にいたらモノの数分で僕の金銭感覚は、狂ってしまうだろう。なんせここにある一つでも質屋に持っていけば、死ぬまでお金に困らないのだから。

 

ここがどこのなのか、直感的にわかった。たぶんだが、さっきまで僕の体の所有権を奪ってた中の人がたびたび展開していた黄金の波紋の中だろう。

 

ここに剣があった。槍があった。矢があった。斧があった。

 

一つとして同じものはなく、すべてが神話や伝説に語られる英雄が用いた剣やその原点。

 

例えば、僕の足元に無造作に捨てられた切っ先も刃のない銀色の剣。たしかこの剣は、イギリス王室に伝わる、王の載冠に使う儀礼用の剣。歴史の中で失われた王家の剣ととあるラノベで呼んだことがある。その近くには、グレモリー眷属のゼノヴィアが持つ剣と似たような剣が刺さっている。

 

そして遥か地平線の先に佇む存在感抜群な断崖のような巨大な剣。僕がたってる場所からあの剣が見えるってことは、近くで見ると数十メートルはあり、常人ではとてもじゃないけど持ち上げることはできないであろう。もし、その件を手にする者がいたとするのなら、きっとそいつは、神と呼ばれるものだろう。

 

しかし、僕の眼は、そのどれも眼中に入らなかった。なぜなら、そのどれもが小物に見えるぐらい圧倒的な雰囲気を醸し出している剣が目の前に浮かんでいたからだ。

 

いや、それを剣と呼んで良いのか、剣にしては刀身が円錐状で、三段に分かれた黒い刀身。赤い文様が刻まれ、刀身は淡く不気味に輝いている。

 

欲に駆られるまま、僕はその剣の柄に障ろうとした時、突然場面が変わった。

 

どこかの劇場なのか?ありとあらゆる装飾が施された劇場の上に立ち、まっすぐに座席の一番上部席の通路に立つすごく見覚えのある金髪の少女を見据えていた。

 

その少女はこちらをまるで恋敵にでもあったかのように憎悪にくらんだ視線をぶつけ、今にも泣きそうな儚い表情をしていた。

 

状況を察するに少女は、僕の後ろにあるものがどうしても欲しいらしい。だが、僕が邪魔で手出しできないと。

 

僕の後ろに何があるのかメッチャ気になるが、どうにも首が動かん。まるで自分の体ではなく、誰かに憑依してるみたいな感覚だ。

 

なんとか、首を動かそうと一人無駄な努力をしていると、少女が口を開いた。

 

「あれは私のモノだ、絶対に渡さん!」

 

「人の領分を超えた願望に手を伸ばす愚か者が……だが許してやろう。その破滅を愛してやれるのは天上天下にただ一人、このギルガメッシュをおいてほかにない。儚くも眩しき者よ。我が腕に抱かれるがいい。それが我の決定だ」

 

おいおい、こいつ急に何言っちゃってんの?自分に自信ありすぎだろ。

 

アルトリアもアルトリアで切羽詰まっちゃって、欲に塗れた醜い人間になっちゃってんな。

 

僕が知ってるマスター一筋の彼女とは、まるで別人だ。

 

その後、僕が憑依した人は、アルトリアに求婚し、断られるも、断られる度に断られた事実を真に受けず聞かなかったことにして、剣を掃射して何度も求婚する。

 

なんども振った男に何度も何度も調教まがいの告白をされ、もう、いろいろと限界の雰囲気を纏ったアルトリアは、男の攻撃に防戦一方になり、折れかけた時、そこに一人の男が現れた。

 

ひと言でいうと暗いインテリっぽい男だ。

 

そのインテリ男は、手の甲の令呪を前に突き出し、アルトリアにとって絶望的なことを言い放った。

 

「衛宮切嗣の名のもとに令呪を以てセイバーに命ず、宝具にて聖杯を破壊せよ」

 

「……なっ!」

 

アルトリアの顔が驚愕に染まり、己の意思に反して、手に持つ剣は、黄金の輝きと共に光を纏い始める。

 

おいおいマジかよ。実際僕がこの場に立ってたなら小便漏らしていただろう。

 

それほどまでに僕は、あの宝具にトラウマを抱いている。

 

「バカなッ、何のつもりだセイバー」

 

僕が憑依してる人もトラウマなのだろうか?さっきまでの余裕は消え、焦り始めた。

 

そこへインテリの男がまたも口を開いた。

 

「第三の令呪を持って重ねて命ず―――聖杯を破壊しろ」

 

「やめろぉぉぉぉぉッッ!!!」

 

瞬間、アルトリアが僕目がけて、あの恐ろしいエクスカリバーを放ち、何度目なのか僕の視界が光に飲まれた。

 

 

 

 

 

――――今のうちに死んでおけよ雑種

 

不意に耳元でそんな声が響いた気がして、僕は重い瞼をほとんどけいれんに近い形で持ち上げた。

 

数秒視界が確保されず、ピントがずれたような状態が続いたが、フォーカスの遠近が揺らぎ、ようやく自分がどこかの病室に寝かされていることに気付いた。

 

「……生きてる」

 

全身包帯だが体の主導権も無事戻ってるようだし、何より意識がはっきりしてる。

 

腕や腹に違和感がある。おそらく点滴の針やら電極やらが張り付けられてるのだろう。

 

部屋のカーテンは閉められ薄暗いが誰かの気配がある。

 

布団の腹辺りにわずかな重圧を感じる。

 

眼球だけを動かしてそちらを見ると、ベット横の椅子にモードレッドが眠っていた。

 

髪を下していて表情は見えないが、珍しく僕の看病をしてくれたんだな。

 

しかし、さっき見たあのリアルな夢。

 

一体全体なんだったのだろうか?最後の方チラッと、僕の後ろにあった聖杯に目を向けることができたものの、聖杯の正体は、何の変哲もない赤黒いぶどう酒のような液体が湧いてる黄金の杯だった。

 

アザゼルやアルトリアの言う聖杯で言うところの僕とは明らかに違う、完璧な聖杯――人間の形も動物の形もしてない杯の形をした聖杯だ。

 

いや、今は聖杯の形なんてどうでもいいな。

 

気になるのは、アルトリアの聖杯に掛ける願い。

 

夢の中であれほど執着に聖杯を欲していた彼女だ。

 

でも本人に聞くのもなんかアレだし、ちょうど、近くに彼女の息子がいることだし、ストレートに息子にでも聞いてみるか。

 

彼女の肩を強めに揺すりながら、上質に響くほどの結構大きめの声で言う。

 

「なぁ、モードレッド。起きてるか?つうか、聞きたいことあるから起きろ。お前の父ちゃんの聖杯に掛ける願いのことについて聞きたいから起きろ!」

 

「……シドー。そろそろ長い付き合いになるのに私とモードレッドを何間違えるとは、目でも腐ったんでしょうか?」

 

むくり と顔を起こしたアルトリアは、心の底から嫌そうな目でこちらに向け言ってくる。

 

「……あっ、ごめん。素で間違えた」

 

「アーチャーに乗っ取られた後なのでそう言う後遺症もなくはないかもしれませんが、以後気を付けてください。地味に心に響くんで……」

 

そう言いながら、頬を赤らめ視線を逸らすアルトリア。

 

「まぁ、でもたしかに私とモードレッドは、若干似てる部分もあるので今回は不問にしてあげますけど、今度からは気を付けてください」

 

「じッ……へぃ」

 

若干じゃなくてそっくりだけどな、と言いかけるも、アホ毛で見分けることをしなかった僕にも非があるので言わないでおいた。

 

そんなことよりも、もうこの際だからはっきり彼女の願いを聞いておこう。できることなら僕も協力できる範囲で協力したいし。

 

「それで……その……」

 

「それと、こんな場所で眠ってしまった私も私ですが、次からはもっと優しく起こしてください。流石にさっきの起こし方は、イラッとしました。で、聖杯に掛ける私の願い――でしたっけ?」

 

「まっ……まぁね。実はさっき、変な夢見ちゃってね。アルトリアがどこかの劇場で聖杯に必死になって手に入れようとしてるけど最終的に自分の手で嫌々ヒャッハーしちゃう夢」

 

「……」

 

およ?ビンゴか?彼女の表情が黒歴史を掘り返された僕みたいな顔になったぞ。

 

僕は、もっとわかりやすく彼女に伝えるために、夢で見た彼女のヒャッハーぶりを再現することにした。

 

「こんな風に泣き出しそうな顔しながらやめろぉぉ~、ってメッチャ必死にやめろ~おおおおおっ!!」

 

アルトリアが、顔を真っ赤にしながら物凄い目で僕を睨み、ベットの外に出ている腕を握りつぶそうと締め上げてくる。

 

痛みで声が上ずりし、それを聞いたのか壊す勢いで扉を蹴り上げモードレッドが中に入ってきた。

 

「シドー!どうした、敵襲か?」

 

僕は腕を締め上げられる痛みに耐えながら。

 

「た、助けて。お前の父ちゃんに……アルトリアに犯されりゅぅぅぅぅぅ!!」

 

その時、ゴキッ! と腕から嫌な音が聞こえた。

 

「……あっ」

 

アルトリアの腑抜けた声が部屋に響くと同時に鈍い痛みが僕の腕に広がった。

 

「お、おまっ、マジで腕折る奴が……」

 

「てんっめぇぇえええ!!父上になにしやがんだぁぁあああ!!」

 

何をどう見れば僕が加害者に見えたのか、目を血走らせたモードレッドが、助走をつけ、腕を折られ慌てふためく無防備な僕の腹にミサイルキックを放った。僕の腰の上に跨ってきた。

 

「ぐふっ!」

 

その後、僕の腹の上に座ったモードレッドは、襟首をつかみ、僕の顔を引き寄せる。

 

「父上と手を握り合るとか俺でもやったことねぇのに、なんでお前なんだよ!」

 

「そこか?まさかの嫉妬してたの」

 

つうか、いくらなんでも手を握ったことぐらいあるだろ。一応、仲の悪い親子でも最初から仲が悪かったわけじゃ……ん?ちょっとまてよ。

 

この二人、親子なんだよな。ということは、もしかしてアルトリアさんって………。

 

ギギギっ!とさびついた機械のように首を動かし、僕ら二人のことを見ているアルトリアの方を見る。襟を掴み、突っかかってくるモードレッドなんて気にもならない。

 

「なんですか?そんな驚いた顔して」

 

「いや、少し気になったことがあって…その、聞きづらいんだけど……アルトリアさんって……しょっ、しょ…」

 

「しょ?」

 

処女じゃないの?と尋ねたいのだが、こんなにも処女という言葉が口から出にくいなんて思いもしなかった。僕もだてに童貞を貫いてるわけではないということか。

 

もぞもぞ口の中で言い淀んでいると、何か勘違いをしたのだろうかモードレッドがまたも突っかかってきた。

 

「テメェ!俺の前で父上に色目使ってんじゃねぇ!!」

 

「ちょ、イタイイタイ。使ってない。色目なんて使ってない」

 

「テメェ!それは父上に魅力がないってことか!?」

 

めんどくせぇぇぇぇ!!

 

僕の襟を掴むモードレッドの力が一層強くなる。

 

「どうせ、病人の振りして、父上にいろいろ手取り足取り看病してもらう根端だったんだろう。でも残念だが俺の眼の光るうちは父上はやらねぇ。だから……」

 

なにか目の奥でモードレッドが決心したように感じると彼女は、病室に入ってきて初めてアルトリアの方を向いた。

 

「ち、父上、わりぃがこいつの看病は俺がやる。だから、父上は、自分の部屋で休んでくれ。こいつの看病であまり寝てない様子だからな」

 

「いや、行かないでアルトリアさん。なんか今ののこいつ目、超怖い。だから行かないで、もっと看病して」

 

握りつぶされ途中で垂れ下がっている腕を必死にアルトリアさんに向かって伸ばすが、僕の願いは届くことはなく、彼女は、クスクスっと笑い部屋を出ていた。

 

「……見捨てられた」

 

マスターなのに。しかし、自分の子供の成長を喜ぶようなさっきの笑顔は何だ。

 

ただ純粋にこいつが看病を目的とし、かつ疲れた様子のアルトリアを心配してるのなら、僕も喜んでモードレッドに合わせよう。だが、こいつの目、そんなことを考えてるような奴の眼じゃない。

 

アルトリアが完全に部屋から出て言ったことを確認した僕は、未だ僕の上に跨り、どこうとしないモードレッドに向かって視線を向けた。

 

「で、なんだよ。アルトリアを出ていかしてまで僕に言いたいことがあんだろ」

 

彼女も待ってましたと言わんばかりに、猛獣のような笑みを浮かべる。

 

「シドー。お前、父上に色目使ってるくせして、俺が考えてることも少しは、わかるようになったんだな」

 

いや、全然わからん。しいて言うなら、モードレッドが面倒くさいということぐらいだ。

 

「お前の眼にどう映ってるかは知らないけど、別に色目なんて使ってないけど」

 

「俺は知ってんだからな。お前が風呂上がりの父上を舐めまわすような目で見てることとか、こっそり父上の歯ブラシで夜な夜な歯を磨いてることとか、洗濯する時、父上の下着をスース―してることとか」

 

「ちょ、お、おま、お前何言ってんの?べ、べべつにしてねぇし。スース―もハーハ―もしてねぇし」

 

「嘘つけ。週2の頻度で父上の下着片手にトイレの中で夜な夜な自己発電に勤しんでんじゃねぇか!」

 

「おまっ、なんで知ってんだ…じゃなくて……やってません。記憶にないです」

 

「この期に及んでしらを切るつもりか?つうかさっき自分で認めたよな?」

 

「えっ、認めた覚えもないよ。まず僕がスーハ―した証拠もないし、証明しろといわれても証明のしようがないし」

 

「たちの悪い政治家みたいなこと言いやがって。まぁいい。お前、父上を狙ってんだろ」

 

モードレッドらしい直球の問いかけに少々戸惑ってしまう僕。

 

別にピンポイントで狙ってるわけではないんだけどな……。

 

「だんまりか。けど、シドーが父上の気を引こうとしてるのは俺の眼から見て確かだ。ならしかたねぇ。これも父上の気を引こうとするお前がわりぃんだ」

 

「いや、そんなんじゃない――」

 

猛獣の如き鋭い視線で見下ろすモードレッド。

 

背中に汗がにじむ。

 

恐怖を感じた。今すぐここから逃げないと殺される。

 

しかし、体の上に乗られてる以上身動きが取れない。

 

怖さと痛みに僕は文字通り行動不能に陥っていた。

 

「……だから、悪く思うなよ」

 

僕を親の仇みたいに見下ろしつつ、彼女は――着ているチューブトップを脱ぎ始めた。

 

「……は?」

 

「お前に父上を取られるぐらいなら、シドーから父上を奪われる前に俺がお前を奪ってやる」

 

なにその理屈!?

 

どうやらパット付きのチューブトップだったようで彼女の完全にぺったんこではないけど、僕よりかはある胸ががモロに見えた。

 

「ちょ―――」

 

僕は慌てて起き上がろうとするも、

 

ザクッ!っと顔の横を軽い衝撃が襲い、恐る恐る顔を向けると、モードレッドの宝具クラレントが突き刺さっていた。

 

「動くな!」

 

「は、はい」

 

捕食者の笑みを浮かべながら、彼女は、僕の服も力任せに破っていく。

 

お互い上半身は、何もつけていない。モードレッドの胸は控えめで肌もシミ一つない理想的なスタイルなのだが、全体に立ちこめる雰囲気が肉食獣そのものだった。

 

「シドーとの間に子を成せば、お前は俺のモノとなり、父上には指一本触れれなくなる。なに俺も初めてだか童貞のお前よりかは、そういうのに詳しい」

 

「いやっ、そ、そそそいうのはもっと――んんっ」

 

慎重になるべきだ、と言おうとしたのだが、その前にもモードレッドの艶やかな唇に、口をふさがれた。

 

おいおい、マジか!本気かこいつ。

 

彼女の腕が僕の体に絡みつき、ガッチリとホールドされ、口内に彼女の舌が侵入し蹂躙していく。

 

拝啓、天国のおばあちゃん。17歳。高校2年生の夏とうとう童貞を卒業します。野生溢れる肉食的な女性に一方的に犯されるってのも、自分の理想としていた初めての経験とは程遠いものだと思っていますが、こういうのも案外悪くないのかもしれません。去年まで夏デビューを飾った奴らを目の敵にし、時には背後からバレないように睨んだりしたこともありましたが、2学期からは、童貞臭い仲間だった者たちから睨まれる番ですね。いやはや、人生何が起きるかわからないモノです。昨日の敵は、今日の友ではなく、今日の友は、明日の敵になりそうです。

 

されるがまま……というか、別にこのまま最後まで行っても僕には、マイナスにはならないので、取り敢えず冷凍マグロのように何も考えず、流れに身を任せていると、あることに気づいた。

 

ん?タイムを計ってないので正確な時間は、わからないが今のところ最初からずっとベロチュウだ。しかも、モードレッドは、ベロちゅーを辞める気はなさそうだ。

 

まぁ、彼女も初めてと言ってたことだし、もう少し、このままされるがままの状態でいいかと、思い―――約30分。

 

………マジか!

 

一向にベロちゅーをやめようとしないモードレッド。二人の混ざり合った唾液でお互い顔中がとんでもないことになってる。

 

無論、上のモードレッドより下の僕の方が顔だけではなく、首筋から胸のあたりまで唾液が滴ってきている。

 

いつまで続くのか、と半場この状態にも慣れ始めてきた時――

 

「ぶはっ!」

 

ようやくモードレッドが僕の唇を開放してくれた。

 

モードレッドは、甘い吐息を吐きながら、勝ち誇ったような笑みを浮かべる。

 

まさかこいつ……。

 

「ふっ、これだけすれば確実にシドーの子を孕んだに違いないな」

 

いや、そんなどや顔で言われても……。

 

やっぱり、こいつの性知識、小学校低学年レベルだった

 

「これで父上には、手出しできねぇな。ざまぁみろシドー」

 

そう言い残し、モードレッドは、病室を後にしたのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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