でも、なんとかして主人公を強くさせます……あっ、でも普通には強くさせませんよ。
天国のおじいちゃん、おばあちゃん。海外のお父さん、お母さん。
乙坂士道は、今日をもって女性経験ゼロのボッチからべろチュウ経験有りのボッチへとジョブズチェンジ致しました。
まさか、僕の初チュウがべろチュウになるとは。
というか、女の子の口が……こんなにも柔らかいなんて、それにいい匂いもした。
まさに最高の気分だ。
でも、いい思いをした後には、必ず悪い事もある。
「………」
「………」
そう、普通に気まづい。
この街の終わりが近づいているというのに、僕とアルトリアだけが戦場の真ん中でモジモジしていた。
例えるならそう、初エッチした次の日の朝みたいな
「………しっ、し…ししシドー。わ、私たちも参戦したほ、ほうがいっ、いいでは?」
「……い、いやあ……あの中に僕が加勢……」
アルトリアと目があってしまった。
途端、反射的に顔を背けてしまう。
「「……………」」
再び沈黙が2人の空間に流れる。
あぁ、もうこれダメだわ。
アルトリアと目さえ合わせられん。
こんな気持ちをリア充共は、日常的に体験していると考えたら、これからリア充達を見下せない。
もう、見下すどころか尊敬の域だわコレ。
あいにく、僕の方から話を切り出す勇気はなく、アルトリアが深呼吸をした後、2人の間を流れる沈黙を断ち切った。
「……シドー。このままでは、何も出来ないのでさっきの事は、お互い忘れましょう。そして今は、ひとまず目の前の事情にだけ専念する事にしましょう」
「う、ううん。そ、そうだな。うん」
若干動揺しつつ、僕も気持ちを切り替える。
「なら、まずは今、起こっていることを説明してください」
「お、おう。そうだね。ぼ、僕がわかっている範囲でなら………」
学校の帰りに突然、誘拐され、見知らぬ廃墟で目覚めたばかりで状況が掴めなてない僕に向かって、ハゲの神父に君は聖杯だと言われた事や、よく分からんが折れたはずのエクスカリバーが再び統合されたこと、あの堕天使を殺さないとまもなくこの街が消滅すること、など隠す必要もないので包み隠さず全て話した。
「聖杯に……エクスカリバー……それにコカビエル……ですか」
僕の説明を聞いた後、何故か僕と手に持つ透明な剣をまじまじと見つめるアルトリア。
ま、まさか先程のチュウ、アルトリア的にはまんざらではなかったのか?
それに少しだが、アルトリアの顔が赤いような……
ま、まさかこれは、そういう事なのか?
乙坂シドー、ここは、男がリードしなければ。
僕は、1人気合を入れ、アルトリアの肩に手を置いた。
「いきなりなんですか?」
「ふっ、アルトリアの気持ちは……そ、その、伝わってるさ……いいよ。もう一回……チュウしてもおおおおおおおお!!」
目を瞑り、再びチュウしようとするもアルトリアにサラリと腕を取られその場で取り押さえられた。
「さっきも言いましたが、接吻のことは忘れてくださいシドー。後、あまり言いたくないですが今のシドー、若干気持ち悪いですよ」
「………痛い痛い。ああああ折れる折れる!僕が悪かったごめん、調子に乗りすぎてた。だから手を離して!」
僕の言葉に、アルトリアは、結構真面目な顔つきで僕を立たせるというアフターケア付きで拘束を解いてくれた。
「……いててて」
開放されたばかりの腕を回し、残った痛みを払う。
いつも思うんだけどそんな怪力、どこから生産されてんの?
それにしても……コカビエルの野郎は、クソ強ぇな。
あいつ1人で紅く濃厚なオーラを纏うリアス・グレモリーや姫島朱乃、それに無から剣を創り出す木場やデュランダルとか言うすごそうな剣を持った少女相手に、本気を出さずに余裕で圧倒している。
そんな光景を傍観しながらコカビエルを指差して。
「……なぇ、アルトリアだったらあれに勝てる?」
「まぁ、宝具を使わない場合だと空に逃げられたらさすがの私でも防戦に徹するしかありませんね」
「……マジですか⁉︎」
やはり、聖書の登場人物だけあるな。
「いえ、空戦の場合だけですよ。白兵戦では、私の方が圧倒的に有利です」
なるほど、つまりあの程度私の敵ではないと……でもあれだよな。
もし、ここでアルトリアがコカビエルと戦う事になれば、僕は一体誰に守って貰えばいいんだ?
それに僕らがコカビエルと戦う理由がない。
「アルトリア、やっぱり僕らはここで傍観するべきだと思う。話の流れ的にただ巻き込まれただけで僕自身、全く関係ない事柄らしいし。それに下手にあのコカビエルとか言う奴を倒して逆に僕たちが狙われる可能性もあるし……それに僕は、自分の命を危険にさらしてまで他人を助けたいと思うほど博愛主義ではない」
「しかし、シドー。聖杯であるあなたは、捕まった時点ですでに引き返せないと思いますが……でもシドーがそこまで言うのならわかりました。それがシドーの望みである以上私は、騎士としてあなたを全力で守ります」
その言葉に感激を覚えた僕は、先ほどのアルトリアが発言した言葉を思い返し……
「……えっ!もう僕、引き返せないの?」
「ええ、コカビエルが大々的にシドーは、聖杯だと言ったので教会側が黙っていないかと……」
アルトリアの言う教会ってあの教会だよな。
全世界に20億人の信者がいるっていうキリスト教の……おいおい、ヤバすぎんだろ。
いつから教会ってのは、そんな武装集団になったんだよ。
あぁ最近、結構な勢いで僕の頭の中の常識が塗りつぶされてゆく。
いや、待てよ。よくよく思い返してみればコカビエルから僕が聖杯だと聞いたのって結界内にいる奴らだけだよな。
「……なら、結界内にいる奴ら全員、殺せば教会に狙われる可能性もないし、これからは、以前みたいに平和にゴロゴロ寝ながら暮らせるってことじゃね?丁度、右腕の令呪だっけ、これの使い方も理だいたい把握できたし一丁、こいつらを殺して平穏という名の人生を取りど………嘘だよ嘘。冗談、乙坂ジョークだよ」
突然、身震いするほどの殺気が全身を駆け抜けた。
発生源は言わずともアルトリアだ。
やはり騎士なだけに美学的なのがあるのだろうか。
「あっ、そ、そうだ。 さっきからずっと気になってたんだけど……聖杯ってなに?」
強引に話を変え、適当に質問してみたわけだが、想像以上にアルトリアが驚いている。
「……聖杯を知らないのですか?シドー」
「いや、詳しくは知らないだけでどういうものかは知ってるよ」
「ワインを入れるコップだろ」と続けて言うとアルトリアが一瞬空を仰ぎ、『あぁ〜〜』と息を吐いた後、再びこちらを見た。
その時のアルトリアの顔は、どこか可哀想な奴を見るような顔で優しく微笑んでいた。
「そうですね……無知のシドーにもわかるように言うと聖杯とは、一種の願望機のようなものです」
「……がんぼうき?7つ集めると願いが叶う的な?」
「……なんですかそれ?」
「い、いやなんでもない。これも乙坂ジョークだよ」
話を濁したものの願望機と言えば、普通、頭に浮かぶにはドラゴンボールだよな。
「普段だと私のようなサーヴァントは、その聖杯を手に入れるためにそれぞれのクラスごとに英霊の座から呼び出され、戦い合うはずなのですが……まぁ、この話は、今は関係ないので省きます……」
「ん?ちょっと待って。関係大ありだと思うけど。だってアルトリアが召喚されてるっていうことは、他の英霊も……」
「その心配はありません」
僕の言葉を遮り、アルトリアは続ける。
「理由はわかりませんがどうやら私だけが聖杯、つまりシドーから召喚されたようです。と言っても私自身、シドーが聖杯だと最近確信が持てたんですけどね。聖杯とは、古来より様々な言い伝えがありますがシドー自身の聖杯は、本来はユートピアにあるとされる万能の釜を模した魔術礼装であって、この惑星に流れる龍脈や地脈から絶えず魔力を汲み取り、その汲み取った莫大な魔力であらゆる願いも叶えるモノだと私は認識していますが……」
と、アルトリアの話を聞いている僕だったが、それは見た目だけであって本当の所、聞いているフリをしているだけでアルトリアの話など全然聞いてなかった。
それもそのはず、まず第一に何言ってるかわかんない。
話の内容がコアすぎる。
さらには、僕らの視線の先では、まさに今、コカビエルが突然現れた第三者によってボコボコにされている状況なのだ。
そんな状況でアルトリアの話など耳に入ってくるわけがない。
「……しかし、シドーがホムンクルスではない所を見る限り、生まれながらにして願望機としての機能を持ち合わせた人間……」
「なぁ、アルトリア」
説明中のアルトリアを遮り、僕は目の前の戦場に目をやる。
「……なんですかシドー。まだ話の最中なのですが」
「いや、それより今の状況認識してる?なんかすごいのが出てきたんだけど」
突如、現れた白銀の鎧を見に纏う第三者を指差しながら言う。
僕の指を追って、視線を戦場に向けるアルトリアだが、大して驚いた様子はない。
さらにどこか懐かしい表情で呟いた。
「やはり、白い龍も現存していましたか」
「は?白い龍?」
横でどこか納得したような呟きを聞いていた僕は、即座に疑問を呈した。
「はい、サクソン人の象徴である白い龍とあっちがブリトン人の象徴である赤い龍です」
兵藤一誠を指差すアルトリア。
「え?何言ってんの、というか、僕の目には、どっからどう見てもあれを龍と呼ぶには無理があると思うんだけど」
白銀の鎧の方は、まだドラゴンらしいフォルムだからどうにも言えんが、兵藤一誠の方は、あきらか人間だぞ。
「いえ、向こうは気づいてないかと思いますが赤い龍の因子を持つ私には、わかります。あの2人は、絶対、ブリテンの龍です」
まぁ、アルトリアがそういうのだからそうなのだろう。
と、言うかそんな話などぶっちゃけどうでもいい。
それよりもだ。
今の状況として、みんなの視線は、突如現れた第三者に集中しているし、結界も貼られていない。
つまり……
「よし、逃げるぞ」
「ちょ、シドー。いきなり何を……」
ここにいても十中八九、僕にとってメリットになることは何もないと判断した僕は、アルトリアの手を掴み、校門目指し全力で走り抜けた。
翌日、
昨日の事もあってか、学校に登校するのは少し気が引けたりもしたけど、いつものように出来るだけ平静を装いながらアルトリアと一緒に学校に向かう事にしたんだが……。
学校に着いた途端から僕らは、校内で出来る限りオカルト研究部を避けつつ学校生活を送る手筈のはずが、着いて早々、狙ったかのように校内放送で生徒会室まで呼び出され、個別に話を聞くためかアルトリアは生徒会室に、僕は、生徒会メンバーの匙という奴にオカルト研究部のある旧校舎まで連れて行かれた。
僕としても、オカルト研究部辺りが校門で待ち伏せたり、休み時間に教室まで訪ねてくるなど、何かしらのアクションは起こしてくるだろうとは、予想していたがまさか学校の権力を使われるとは、思いもしなかったぜ。
一応、サーヴァントのことや、アルトリア自身のことなど、向こうが知らなさそうなことは言わないように、グレモリー先輩が認識できる許容範囲のことだけを話すように事前に打ち合わせたのだが……
アルトリアの奴、手筈通りに適当に答えてくれているだろうか?
なんか、騎士道がなんちゃらかんちゃらとか話してそうだ。
まっ、アルトリアを信じてるから別に心配などしていないんだが。
問題は、僕の方だ。
僕自身、あまりグレモリー先輩と関わりたくないし、昨晩、錯乱していたとはいえ、自分が助かりたい一心であんな事を口走ってしまったので、できるだけ顔を合わしたくない。
……鬱だ。
そして今、僕は、オカルト研究部の部室に設置されてるソファーに腰をかけグレモリー先輩がやってくるのを待っているのだが、こんなに座り心地の悪いソファーに座ったのは初めてだ。
ソファーに詳しくない僕でも見ただけで高額だとわかるソファーだが、気持ちのモチベーションだけでここまで高額なソファーの座り心地が安物のソファーのように変わるとは……。
座りながらモジモジしていると部室の扉が開き、姫島先輩を引き連れた紅髪の綺麗な女性が姿を現した。
「時間を取らせてしまって申し訳ないわ。学校のことに関しては、一応生徒会に頼んで公欠扱いにしておいたから安心してちょうだい」
腕を胸の下で組みながら上から目線で言うグレモリー先輩に適当に返事をする。
「……へぃ」
公欠扱いって今日一日中、ここに拘束されんのかよ。
まったく、おっぱいでかかったら態度もでかくなんのかよ。
そんな事を思いながらも、ついつい胸に目線がいってしまう。
グレモリー先輩は、そのまま僕の正面に座る。
ボインッ!
おっと、座った衝撃でグレモリー先輩のおっぱいから変な音が聞こえてきたぜ。
でも、目の前のボインは、なんの権利があって僕をこんなチンケな部室に連れ込んでんだ?
ハァ、ここは前世の年齢+今世の年齢、つまりボインの年上である僕が自分の立場をわかってない小娘に大人の権力と言うものを言い聞かせてやるか!
「あのね。ボイン先輩……じゃなくて、グレモリー先輩。学校に着くなり僕をこんなとこに連れ出すとは、どういった事でしょうか。一生徒の貴方が何の権限を持ってこんな事をしているのですか?こんな事は正直言って横暴です。生徒会も生徒会です。勝手に公欠扱いとか職権乱用もいいところですよ。まったく。この事は、学校側は、知っているんですか?あまり僕もこんな事は言いたくないですが貴方達のやっている事は、校則に違反している。よって僕は、この学園の生徒としての権利を奪われた事を駒王学園の理事会に訴える事もできるんです。すると、どうなります?そう、貴方は、何かしらの処分を受ける事になるでしょう。この僕を!傷つけたから!……でも、僕も鬼じゃない。こう見えても優しんです。世界の恵まれない子供達のためにコンビニで出たお釣りを寄付した事もあるんですから。そんな世界に貢献しているこの僕からの提案なのですが今、ここで生徒会室にいる僕の連れ共々、今ここで開放してくれるなら今日の事は、なかった事にしてあげましょう。でももし、このままこのような愚行を続けるのならば僕は、この事を学校側に訴える権利があります」
相手の反論させる暇もないまま、最後は、ドヤ顔でキメてやった。
言っとくがこのまま彼女が僕を拘束し続けるのなら理事長室に駆け込み助けを求める予定だ。
学校に登校したのにその事実を捻じ曲げ僕を勝手に公欠にした事は、許せる事ではない。
机の上で手を組みながら真剣な眼差しでグレモリー先輩を見ているとグレモリー先輩は、その重い口を開いた。
さぁ、僕に謝れ。そして醜態に晒された顔を僕に眺めさせろ。
「悪いけどこの学園って私の家のモノなの。理事会も私の関係者が大半を占めているし、この案件は、学園側も了承済みだわ」
グレモリー先輩の口から放たれたまさかの言葉は、今まで偉そうに腕を組んでいた僕の心臓に思いっきり突き刺さった。
簡単に言うと『こうかばつぐん』という事である。
「…………マジ?」
「ええ、本当よ。それに駒王町一帯の土地は、いわばグレモリー家の物よ。確か貴方が住んでいるマンションもグレモリー家の所有物だわ……えーっと確か……」
先輩がポケットから携帯を取り出し、操作する。
見たところ何かを検索しているのか。
数秒後、グレモリー先輩が、自身の携帯の画面を僕に見せてきた。
「………ってここ、僕の家じゃないですか⁉︎」
携帯の画面に映っていたのは、僕の住んでいるマンションの空き部屋情報。
それに、よく見てみると大家さんの欄には……
「………リアス・グレモリーッ!」
「数年前だったかしら、不動産投資を勉強してみたくなって自分のポケットマネーで貴方の住んでるマンションまるまる一棟買ったのよ」
「………と、いう事は」
「そう、私、貴方の大家さんよ……で、その事を踏まえてたけど……貴方に聞きたい事があるの、ちゃんと答えてくれるわね」
「はい、僕に答えられる範囲でならぜひ!」
こんな相手に逆らえるわけないよ。
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