喰霊-廻-   作:しなー

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第1章 魂流転-たましいのるてん-
第1話 -プロローグ-


喰霊-零-二次創作 喰霊-廻-(がれい-めぐり-)

 

 

 

「喰霊-零-」、という物語をご存知であろうか?

 

 2008年ごろに放送されたアニメであり、人の世に死の穢れを撒く存在を退治する使命を背負った、2人の退魔師姉妹を描いた作品である。

 

 見た目麗しい退魔師姉妹が怨霊を日本刀を用いて軽快に切り裂いていく退魔アクションアニメであるのだが、その内容の深さや重さ、そして公式サイトまで使った大々的なドッキリなどで一時期かなりの注目を集めた。

 

 特に皆が主人公だと思っており、尚且つ公式サイトでも主人公として紹介されていた「防衛省特殊災害対策室第四課」のメンバーが1話で全員お陀仏したのは非常に話題となった。たぶん視聴していた人達は皆閉口してしまったのではないだろうか。何が起きたのか全く分からずじまいで1話が終わってしまい、視聴をやめてしまった人が多いと聞く。そんな皆が閉口してどうすればいいかわからなくなっている最中に公式サイトが切り替わり、1話終了時点では現在のホームページとなっていたという話題性たっぷりの演出がなされた。

 

 また時折「百合アニメ」として名前が挙がることがある作品でもある。確かに姉妹でポッキーゲームをしたり、入浴しているシーンがあるためそういわれているのだと推測されるが、実は全く百合アニメではなくむしろ鬱アニメに分類されるアニメであるので、もし百合を期待してこれから視聴する方はご注意願いたい。

 

 「喰霊-零-」は原作である「喰霊」の二年前を描いた作品で、この物語の続きは原作を読めば知ることができる。ただ、珍しくアニメ化が成功した作品であり、尚且つアニメが原作を超えたとまで言われる作品であるため、世界観や登場人物も同じ地続きの作品であるとはいえどもアニメの続きを得るために原作を読むと「拍子抜けした」となる人が多い。

 

 クオリティと話題性とは裏腹にあまり知名度があるわけではなく、アニメ好きを豪語する輩にこの物語の存在を尋ねたとしても知っている人はあまりいないだろう。あまり知名度のないまさに知る人ぞ知るアニメといった作品だが、その所謂「知っている」人の中ではかなりの高評価を得ている作品である。

 

 バイアスの掛かった視点から言わせてもらうならば実際に名作と言える出来であることは疑いようがない。神作といって過言ではない作品である。しかし残念ながら知名度はあまりない。まことに残念である。遺憾の念を禁じ得ない。

 

 さて、この物語の特徴だが、まず救いようのない「悲劇」であるということが挙げられる。

 

 この物語において「救い」は一切ない(・・・・)

 

 過言ではない。本当に一切ないのだ。

 

 序盤では不幸ではありながらも幸せに満ち足りた日常の風景、各々が各々の過去を抱えながらも乗り越えながら前に進む希望ともいうべき風景が描写される。

 

 主人公である諌山黄泉は怨霊に両親を殺されながらも諌山家に養女として迎え入れられ、そこで神童とも言うべき才覚を発揮して養子でありながら諌山家を任されるほどの人物となり、もう一人の主人公である土宮神楽は母を小学生にして失いながらも諌山黄泉や周囲の存在に支えられて普通の少女として、そして退魔師としても成長していく。

 

 そんな二人とその周囲を序盤は映し出している。非常に暖かく、そこに悲劇の影は存在しない。

 

 

 しかし中盤以降、序盤であった明るい雰囲気やおふざけは一切無くなっていく。黄泉が養子でありながら諌山の名を継ぐことから綻びが始まり、諌山が諌山を殺しさらに別の諌山が諌山を殺し……といったように負の連鎖が続いていき、最後にはすべてが崩壊する。

 

 ここでそれらを語りつくすことは不可能であるので避けるが、この物語においては本当に混じりけのない純粋な愛情すら人の心を壊すのに作用する。

 

 紆余曲折あってようやく掴んだ婚約者との甘いひと時が養父を殺す。

 その死が黄泉から「諌山」と婚約者を奪う。

「信じてる」、その一言が壊れかけの心への止めとなる。

 

 序盤の明るい展開はほぼ全てが絶望への非常に優秀な水先案内人となるのだ。

 

 原作である「喰霊」にてある程度皆救われるとはいえ、あまりに残酷で辛すぎる展開である。

 

 あまりに酷くて、あまりに惨い。

 

 辛辣で、絶望的だ。

 

 皮肉にも、だからこそこの作品は面白い。

 

 悲劇であるが故に姉妹の愛が光輝きこの作品の魅力を駆り立てる。

 

 悲惨であることがこの作品を名作足らしめているのである。

 

 

―――だけど。

 

 その悲劇を喜劇に変えたいと思うのは作品を汚すことになるのだろうか。

 

 その結末を誰もが認めるハッピーエンドに塗り替えたいと思うのは作品に対する侮辱なのだろうか。

 

 きっと。それは侮辱なのだろう。

 

 完成された物語に手を加えたいという気持ち、それは受け取り側の恣意的な願望であり、つまりは自分勝手な我儘なのだから。

 

 だが、それがどうした。

 

 たとえ原作(喰霊)で一通りの完結を見せていたとしても。

 

 たとえその完結が納得のいくものであったとしても。

 

―――俺は、それ以上を求めてやる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 これは、そんな悲劇の世界に二度目の生を受けた(オリ主)の物語。






 

 喰霊-廻-をご覧いただき、ありがとうございます。
 後半に行くにつれて文字数が加速度的に増えていくのでご注意ください。

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