喰霊-廻-   作:しなー

11 / 87
第11話 -共闘-

 凄い。そんな幼稚な感想しか出てこない程度に、俺は感動していた。

 

 斬撃が舞うのに合わせて、カテゴリーCが次々に切り刻まれていく。

 

 舞う銀。それにつられる様にして舞う俺の刃。

 

 俺の刃が舞踏を終えると、出来た隙をカバーするように冥がその薙刀を空へと奔らせる。

 

 凄い。

 

小学生並の感想で申し訳ないが、再度思う。

 

俺の語彙力ではこの状況を表す単語がこれ以外に見つからないのだ。

 

 

 

 立ち回りの最中に冥と視線が交差する。

 

その目が何を主張しているのかは分かりかねるが、その目線と手に持つ獲物の角度から判断して首を倒す。

 

 するとそこに寸分の狂いもなく薙刀が突き出され、俺の背後にいたカテゴリーCを討伐していく。

 

 俺も最小の動きで冥の後ろへと回り込むと、その背後を狙っていたカテゴリーCを薙ぎ払い、冥と背中合わせの形となる。

 

これの繰り返しだ。

 

 この連携には寸分の隙も無い。

 

 一旦両者共に背中合わせの形となると、同じタイミングでそこから飛び出し、群れを切り払いはじめ、どちらかが囲まれたタイミングでどちらかが駆けつけて再び背中合わせの形となる。

 

 2人いることにより出来る、180度の壁を克服した戦法。

 

 人間の限界である180度を超えた、半円型ではない円型の殺傷範囲。

 

 

 

 まさか、実力のある人間との共闘が、ここまで効率のいいものだったとは。

 

 背後のカバーを完全に任せることが出来る人間がいることで、自分が気を配らなければならない範囲がかなり削減され、殆ど前方のみに意識を傾けることが出来るようになるのだ。

 

 そのため、今まで出来なかった攻め方が可能となり、攻めの効率が格段に上昇する。

 

 2倍ではなく、その効率は2乗。

 

 乗数的な伸び方ではなく、その効率は指数関数的に爆発していく。

 

 

 これならば、こいつらを片付けるのに10分とかからないのではないかとまで思う。

 

いや、実際10分かかる事は無いだろう。このペースならもっと早く片付く可能性が高い。

 

 

 こうやって1度連携を体験してみると、今まで他人との共闘を避けてきたことが勿体ないことだったのかもしれないと思えてくる。

 

 流石に冥程の実力者とはいかずとも、それなりに出来る人間数人と俺で組んでいれば、もっと効率よく狩れた怨霊もいたのかもしれない。

 

 後ろを任せることが出来る。

 

 流石に冥クラスの存在に後ろを任せる機会はそうそう無いが、それがどれだけ効率の良くて、安心できるものなのか。それを今日初めて知った。

 

「まだまだ粗削りですが、流石ですね。私に合わせられることも含めてとても中学1年生の動きとは思えません」

 

「ありがとうございます。でもこっちのセリフですよ、それ。まさか俺に初見から合わせられる人が居るなんて思ってもいなかった」

 

 再び背中合わせの形となりながら軽口の応酬を行う。

 

 ちなみにこれは本心だ。俺の動きは多分かなりトリッキーなのでこうまで俺が動きやすいようにフォローしてくれるとは思ってもみなかった。

 

 それに正直息が切れてきた俺としては度々こうやって小休憩を挟んでくれるのはありがたい。

 

 三途河戦は俺が思っていた以上に精神と身体に負担がかかっていたようで、想定よりも遥かに消耗が激しかったのだ。

 

自分がここまで疲弊しているとは気づいていなかった。

 

これでは奴を倒す前に自分の意識外で体力切れを起こすことも有り得そうで怖い。

 

 

「確かにその小回りが良く利く身体に特化した体術に合わせるのは少々骨が折れますね」

 

「ちょ、それ遠回しにチビって言ってますよね?」

 

 確かに俺、貴女より身長10cm以上低いけれども。140cmプラスアルファしかまだないけれども。確かに同年代に比べていささか以上に小さいかもだけどまだ中1だし、伸び幅なんて無限に存在している筈だ。

 

 

 くすっと笑う冥。

 

 ……この微笑とか、この連携の気の利き方とかを見ていると、とてもダークサイドに堕ちた人間には見えないんだけどな。

 

 ほんと、ただ魅力的な人なだけである。

 

「それでは参りましょうか。思ったよりも効率よく狩れているので、狩りきるまでそれほど時間はかからないでしょう」

 

「そうですね。こいつらさっさと枯らしてあのバカ殺しに行かないと」

 

「あのバカ?……先ほどまでここで戦っていた特異点らしき妖力のことですか?」

 

「ええ。殺生石もってやがりますので間違っても埋め込まれたりしないでくださいね。俺、貴女を殺したくはないので」

 

 そう言って俺は駆け出す。 

 

 殺生石、と驚いた様子で呟く冥。だが今はそれに気を配っている場合ではないと判断したのか、それについて俺に疑問を投げかけることなく、敵の殲滅に向かった。

 

 

 

 その後、5分ほどかけて殆どのカテゴリーCを討伐した。

 

 何体討伐したかなど覚えていない。

 

 どちらかというと冥との共闘を如何に効率よくするかずっと思考しながら討伐をしており、敵を切るというより冥に合わせることをメインに戦っていたので、数など意識していなかった。

 

 ただただとんでもない数を討伐していることだけは覚えている。

 

 周りに築かれるのはカテゴリーCの死体の山。

 

 

 これを一言で表すのならば死屍累々という四字熟語が最も適切なのだろう。

 

 息切れを隠せず、膝に手をついて呼吸を整えてしまう。

 

 流石にそろそろ体力が辛い。スタート地点の討伐から始まって、そのあとのマラソンに三途河戦、そしてこれだ。

 

 これで息切れ一つせずに立っていられるような奴は化物だ。

 

相対的に見ればこの年でこの体力量は異常かもしれないが、少なくとも絶対的に見て化物ではない。

 

 近くで残党がいないかを確認している冥は息切れなどしていないように見える。

 

多分俺とは純粋な運動量が違うからだろう。

 

もし俺と同じ運動量に、この出血を加えたなら話はかなり変わってくるだろう。多分。

 

「終わったようですね。お怪我は?」

 

確認をし終え、諫山冥が近づいてくる。

 

その言葉を聞いて、改めて自分を見返す。戦闘中はアドレナリンが出ていて気づけないことが多々あるが、終わってみると存外酷い怪我をしていたなんて事象は案外あるものだ。

 

痛みを訴える箇所は2つ。

 

左腕と右の脇腹だ。つまり三途河にやられた傷だけ。それ以外にはそれといった傷は見当たらない。

 

「見ての通りカテゴリーAにやられたケガだけですよ。まだ消毒とかはしてないですけど、止血は済んでます」

 

 小野寺の能力を使えば止血も出来るのだ。患部に直接霊力を巻き付けて止血することで直接圧迫が可能になる。

 

 こういった応用力を見ても非常に優れた能力であり、なかなかチート臭いところはあるのだが、残念ながらそうは問屋が卸さないのがこの世の中である。

 

 この能力、霊力を固体として外界に放出することが出来るのだが、選べるのはその形状だけであり、硬度は選ぶことが出来ない。

 

 この能力の熟練度により硬度を変化させるなどの応用が利くには利くのだが、硬度を鉄からダイアモンドレベルに変化させるとかその程度の柔軟性しか持っていないため、何かやわらかい物質が必要な場合はまったく不要の産物となる。

 

 止血で使うものといえばガーゼに包帯辺りが鉄則ではあるが、そんな便利なものこの能力では作り出せない。

 

 止血をするときは、鉄の硬度を持つ不思議な物体で身体を巻き付けるようにして押さえつけるくらいしかできないのだ。

 

 霊力を巻き付ける形で二の腕の止血を行っているが、ぶっちゃけこれは腕にフィットした鋼鉄の輪っかを無理やり外部からつけるようなものであるので、非常に痛い。

 

 キツキツの鉄の輪っかをつけた状態で動き回るとどうなるかご存知だろうか?下手をしたら皮がずりむける。

 

 流石に純粋なそれではないのでそこまでではないが、これだけの運動量を重ねるとやはり止血のためのそれが痛みを訴える要因となるのは避けられない。

 

 とはいえこの痛みを我慢せずに出血の多さで動きが鈍ってしまい結果殺されました、なんてことにならないように一応止血はしてる。けっこー痛いけど。

 

「止血……その黄色い腕輪が……。包帯はお持ちではないんですか?」

 

「そんな高尚なもの持ち合わせてないですね、残念ながら。正直いつも”一撃も貰わない”つもりでここ(戦場)に来てるので持ち歩かないことにしてるんですよ。それにこの能力もありますし」

 

 こんこん、と二度輪っかをたたく。

 

「さて。ゆっくりしている時間はあんまないですし、そろそろ行きますか。カテゴリーAが本隊なんかと合流されたら厄介なことになりますし。できれば冥さんには―――」

 

「お待ちください。その傷、消毒はまだなのですね?」

 

 そろそろ土宮舞と三途河が合流していてもおかしくはない時間である。急がないと危ないのだが、なぜか冥さんに行動を止められた。

 

「その止血を解いていただけますか?そんな応急処置では出せる力も出せません」

 

 ?となりながらも言われるがままに止血を解く俺。

 

 すると失礼、と前置きしつつ華麗に薙刀を振るう冥さん。サン、という軽快な斬撃音が響いて薙刀が振るわれる。ちょ、姉さま?

 

突然薙刀をふるわれたので、正直結構ビビってしまった。

 

 反射的に避けようとするが、流石にここでいきなり害を加えてくるとは考えにくいのでその一閃を見送る。

 

流石に「止血です」とか言って腕を切り落とされるなんてことは無いだろう。

 

つかその場合寧ろ出血増えるし。

 

 すると見事にパサリと切れる俺の二の腕部分の服。彼女は俺の服だけを薙刀で切り裂いたらしい。

 

 文章にすると簡単に聞こえるが、実際にこれをやろうとしたら意味が分からないほどの技術が必要となる。

 

 包丁を考えてみるといい。あんな短い刃物で、あんなに対象との距離が近い刃物であっても我々は頻繁に手を切る。それを薙刀なんて対象との距離が掴みにくい得物で皮膚を切らずに服だけを切り裂くのだ。それがどれだけの難易度かなんて想像に難くないだろう。感心する技術力だ。

 

 

 俺の袖が切れたのを確認すると、冥さんはその切れた部分に両手をかけて俺の袖部分を引きちぎった。

 

「!?」

 

 思わず驚愕の表情を浮かべる俺。

 

さっきから驚きっぱなしだが、仕方無いだろう。

 

ちょ、大胆ですねお姉さま。

 

 治療の為とはわかっていながらも、ぶっちゃけ少々ドキドキしてしまう。

 

 こんな俺を批判する奴は恐らく、いや、絶対にいないと断言する。多分いるとしたらそれは女だけだ。

 

 こんな美人にこんなにも大胆な治療をされて喜ばない男などいるものか、いや、いない(反語)

 

 

 

 

 だがまじめな話、俺はかなり今驚いていた。

 

 連携の件もそうだが、この人がこれほど他人に気を使える人間だと想像もしていなかったからだ。

 

 ますますこの人が堕ちることが現実味を欠いてきた。この人を、あの糞石(・・・・)は堕とすのか。

 

 

 

「……腱は外れているようですが、なかなか酷い傷ですね。痛みます。我慢してください」

 

 驚いている俺を尻目に、ガーゼに消毒液を含ませ、それを傷口に当てる冥さん。

 

 とんでもない激痛が傷口を襲う。

 

 棒手裏剣でぶっ刺された時はアドレナリンが大量放出されていたし、綺麗に刺さったからか激痛ではあったものの耐えられないほどの痛みを感じたという訳ではなかった。

 

 だが今は気分が沈静化している。それに加えてここ一年は殆どケガなどする機会に恵まれず、痛みに対する耐性など消え去ってしまっていたために思わず悲鳴を上げそうになる。

 

 痛い。単純にかなり痛い。

 

 腕の治療を驚くべき速度で終えた冥さんが、俺の服を捲って脇腹の治療もしてくれているという普通なら俺得な状況であるにも関わらず、そんなことを意識することが出来ない程度には激痛だった。

 

「……こういうのも失礼かもしれませんが、安心しました。貴方でも年相応の顔をなさるのですね」

 

 俺の苦痛にゆがむ顔を見ながら、膝立ちで俺にそういう冥さん。腹に関しても俺が激痛に耐えている間に殆ど終わりかけている。本日何回目の驚きか知らないが、またしても驚くべき技術だ。

 

「貴方と話していると自分と同年代以上の人と話している感覚に囚われてしまう時があります。なので、安心しました。……さて、終了しました」

 

 いや、年相応の顔って。むしろ俺の場合は年不相応の顔の方が年相応の顔なわけであって、むしろ年相応の顔してたらそれは年不相応の顔っていうか……。

 

 なんとも気恥ずかしい。薄まってきた激痛を、今度は気恥ずかしさが上回ってきた。

 

「……年相応って、貴女もまだ中学生じゃないですか。それはともあれありがとうございます、さっきよりも大分動きやすいです」

 

 なんとなく一発お返ししておく。

 

 ……年相応とか言われてしまった理由が自分で分かってしまったかもしれない。

 

「それはよかったです。これからの行動に支障があってはなりませんから。このことに注意して次回からは応急処置の道具くらいは持ち歩くよう心掛けるとよろしいかと」

 

 俺の手当てを終えた冥さんは薙刀を手に取ると、黄泉に戦い方の批判をした時と同じような口調でそう言う。

 

 ……確かにいままで一発も親父とか以外からは貰ったことがなかったが、これからは必要になるかもしれない。

 

 先人の言うことは聞いておこう。人生的には俺が先輩だが、退魔士としてのキャリアはあっちが遥かに上なのだから。

 

 次回から簡易の緊急セットくらいは持ち歩いておこう。そんなことを思っていると、さらに声がかかった。 

 

「あと、私は中学生ではありませんよ」

 

「へ?」

 

 思わず耳を疑う。

 

 あれ?公式設定ではこの人は喰霊-零-時点で18歳だったはずだ。

 

 つまり今は15。

 

 ちょうど中学3年生の筈だが……。

 

 そこで一つの可能性に思い至る。それは、

 

「私は早生まれなのです」

 

 早生まれで18歳。

 

 喰霊-零-時点でフリー。なるほど、そーゆーことか。

 

 つまりはもうあの時点で彼女は高校を卒業していたということか。道理で公式サイトにもJKの表記がなかったわけだ。もうあの時点でアルバイトのようなものではなく退魔士として活動していたということか。

 

「……なるほど。結構年離れてたんですね俺ら」

 

 実際の年齢と、学校の年齢とは実は乖離が激しい。

 

 単純な年齢差は2歳ではあるが、実質の年齢差は3歳。子供の1年とは大人の一年と比べ物にならない程度にはでかいものである。

 

 意外な事実に驚きつつも、俺は思考を切り替えていく。

 

 さて、おふざけの時間はここまでだ。

 

 

「冥さん。至れり尽くせりで色々して貰っておいて申し訳ないんですが、更に2つお願いがあります」

 

 先ほどとは打って変わって真剣な表情をして冥に向き直る。

 

 この人が来てくれたのは非常にありがたい。

 

 正直途中から来ることを計算に入れ忘れていたほどだ。

 

 だが、それでもやはり懸念事項とは存在するものである。

 

 絶対なんてことはこの世の中になかなか存在しない。今回においても、この戦力で失敗することなど往々にしてあるのだ。

 

「一つはカテゴリーAを追って欲しいこと。俺にけがを負わせたそいつが今回のこの事件の主犯です。そいつを片付ければ今回のこの騒動は解決します」

 

 それどころかもし三途河を討伐することに成功した場合、あの悲劇が起こらなくなる可能性が高い。玉藻御前、つまりは一代前の九尾の使い手の影響により、思わぬところで綻びが出てしまう可能性も存在するが、それでもあの悲劇だけは起こらない。

 

「そしてもう1つは、カテゴリーAと出くわしたとしても決して戦わないでください(・・・・・・・・・・・・)。撤退して俺に即座に連絡を入れて貰えると助かります」

 

 この人が来てくれたことは非常に嬉しい。だが、既にこの人の内面にはドス黒い憎悪の波が渦巻いているだろう。

 

 それを、あのバカ(三途河)に付け狙われてはたまったもんではない。

 

 それこそ予期せぬ原作崩壊が起こってしまう。

 

 

「これだけして貰って更にお願いするのが無粋なのは分かっています。それでも尚お願いしたい。どうか、俺の指示に従って貰えないでしょうか?」

 

 根拠もないお願いを聞いてもらって、命を救ってもらって、手当てまでして貰って尚お願いをしようというのだ。恩知らずと言われても仕方がない程だ。

 

 でも、これがこの人を救う方法でもあるのだ。

 

 俺が居れば守れる。自惚れではなく、あいつの戦法を一番知っているのが俺だからだ。

 

 その赤い瞳でじっと俺を見返す冥さん。

 

 何を思考しているのだろうか。もしかしたら俺が間者の可能性も考慮に入れているのかもしれない。俺だったらそうするかもしれない。自分をこいつはおびき寄せ、何かに利用するつもりだと。

 

 だが、そんなつもりは毛頭ない。

 

 気圧されてしまいそうなその眼光に真正面から向き合う。

 

 原作知識を知っているからなんてより馬鹿げた事を言うことなど出来やしない。一番確度のある情報が、一番確度の無い情報になるとはなんて皮肉だろうか。

 

 ただ、俺は彼女に信じてもらうしかないのだ。

 

 

「……わかりました。1度貴方を信用してこちらまでやってきたのですから、最後まで信用いたしましょう」

 

 そう言って冥さんは踵を返す。

 

 恐らく彼女なりの何かしらの推論があったのだろう。

 

 その結果俺が信じて貰えたのか、それとも信じたと言っているだけなのかは分からない。

 

 だが不思議にも俺には確証があった。この人はプライド的にそんな嘘はつかないだろうと。

 

「本当に、何から何までありがとうございます。奴は棒手裏剣と巫蠱術の使い手です。殺生石にも気を配ってくださいね。この借りは、必ず」

 

「ええ、楽しみにしております。それではご武運を」

 

  

 それだけ残すと、高校生女子が出すとは思えない速度で森へ冥さんは消えていく。

 

 

 

―――本当に、堕としたくないな。

 

 

 正直、黄泉と神楽を救うことが第一であり、この人の救済は二の次に考えていた所がある。

 

 この人が救済されることではなく、あの姉妹が救済されることが俺の望みだったからだ。

 

 だが、一つまた願望が加わってしまった。

 

 この人も救いたい。

 

 この身に余る、大きすぎる願いなのかもしれない。

 

 大きすぎる欲望はその身を亡ぼすとはよく言われることである。

 

 全てを望むなど、ガキのやることだ。

 

 大人は現実との軋轢を考えて選択をせざるを得ない。

 

 でも、今の俺はガキだ。

 

 とある作品ではガキには無限の可能性が宿っていると述べられていたこともある。

 

 

「よかったな三途河。俺はどうやら殺生石にふさわしいらしいぞ」

 

 

 矮小な自分の無限の可能性とやらに掛け金を全部懸けて最高のリターンを得る。

 

 そんな馬鹿げた欲望を抱く卑小な人間こそ、古来悪魔が食い物にしてきた典型的な存在だろう。

 

 

 しかし、ガキにはそれがあるのも事実だ。

 

 

 今どこに土宮がいるのかは分からない。三途河と戦っている最中になかなか移動したため、自分の場所を一時的に見失っている状況だ。

 

 そんな中で、三途河を再度探し出すのは非常に困難だ。

 

―――だが、恐らく殺生石が場所を教えてくれるだろう。

 

 あのへばりつくような、ヘドロのような感覚。殺生石同士の共振のようなものかもしれない。

 

 

 

 もし俺がチートとやらを与えられたのだとしたら、あの感覚こそがそれだろう。

 

 

 諌山冥が走り出した方向とは逆の方向に走り出す。

 

 

 

 

 必ず、負の連鎖の1チェーン目を、断ち切る。





冥の誕生日と、学校の存在は勝手に設定しました。年齢は公式サイトより引用です。
あと気づいた方がいるかもしれませんが、主人公の年齢を一つ上げました。
これは黄泉と1つ違いにしようと考えてたので、「黄泉が高1。んじゃあ中3だな」って考えて年齢を逆算したのですが、そもそも黄泉が高1じゃなかったって言う。
高2でしたね。しくった……。喰霊-零-好きとしてありえぬミスをしておりました……。
一応修正したつもりではありますが、直ってない所があったらお知らせください。

神楽 11歳 小学五年生
りん 13歳 中学1年生
黄泉 14歳 中学2年生

に今の時系列だとなります。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。