怨霊退治の修行とやらはむやみやたらに厳しかった。
父親曰く、「霊力はある程度血筋によって決まってしまうからお前は武術を極めろ」とのことで、学校のない日は朝起きて寝るまで一日中柔術だの合気道だの剣術だのをやらされ続けたり、「知識とは重荷にならぬ武器である。よって頭が割れるほどに勉学に励め」と言われて離れに閉じ込められて勉強させられたりもした。
平日は帰ってきたら母の監視付きで宿題を速攻終わらせて、父が帰ってくるまでかなり高度なお勉強をさせられて、父が帰ってくるなり道場に連れていかれて文字通り吐くまでしごかれる。
休日は父親の予定が空いていれば山籠もりをさせられ、サバイバルや山での戦い方の指導をみっちり叩き込まれる。
父も母もいない時には知らないおっさんが指導しに来たりもした。
……えっと。ちょっとパパンとママンや、スパルタ過ぎないですかね?
前世の記憶持ちである俺としてはパパンの言いたいこともわかるし、こんな家系に生まれてしまった以上これより苦しいことなんかたくさんあるのだから幼き頃から苦労をして強くなりなさいというママンのいうことも十分に理解できる。
2人からある程度優秀な息子に対する超絶な期待と、それだからこそ尚更早死にしてほしくないっていう心配が降りかかってるのは非常に納得できるんだ。
納得はできるんだよ。確かに。
でもさ、普通に考えてみてよ。
パパン、ママン。僕まだ10歳にすらなってないんですよ?
teenなageにすら達してないんですよあなた方の息子さん?
遊ぶことが仕事とまで言われる年代の子供に彼らはいったい何をやらせているんだと常々思ってしまうのも仕方がない。
前世の目標を達成するために自ずから志願してはいるものの、正直毎日修行から逃げ出したくてたまらない、どうも小野寺です。
これ多分この体に宿ってる人格が俺じゃなくて普通の子供だったなら虐待として逮捕されてもおかしくないと思うな俺。
離れに閉じ込めて勉強させるとか普通に監禁ですわよママン。
この前親父のいい蹴りがみぞおちに入って本気で立てなくなってるっていうのに「この程度で倒れるとは何事だ!立てぃ!」とか言われて無理やり立たせられたときは「あぁこいつマジでぶっ殺すぞ」とか思ってしまったわよパパン。
4倍とか体重差あるやつのけりがまともに入って「この程度」ってなんだよ。
紀ちゃんだって黄泉の拳がまともに入ったときはうずくまってたんだぞ。
―――まあ、それでも本当に俺に「死んでほしくない」って思ってる気持ちがひしひしと伝わってくるからこんな厳しい修行も悪くないかなーなんて思ってはいるんだけどね。
でも神楽はよくこんな厳しい修行に耐えてたよな。さすがにここまで基地外ではないとは思うけど、それでも大概だろう。退魔士一族ブラックすぎワロタ。
ちなみに原作キャラとの絡みは今のところ殆どない。
黄泉とか冥姉さんとかとの絡みはなく、分家会議とやらで親父に付いていった時に雅楽さんと神楽ちゃんと一言二言をしただけである。
この頃はまだ神楽ちゃんのお母さんが死んでいないから、雅楽さんが分家を纏めているためちょっと喋ることができたのだ。
とはいえ分家の中でも結構低い地位にいるらしい小野寺家と、分家どころか総本山たる土宮に婿入りした雅楽さんとではあまり話す時間が取れず、残念ながら交流を深めることはできなかった。
ただどうやら俺は少々有名らしく、雅楽さんに名前を知ってもらえていたので今後関わることができるかもしれない。
まだ親父から許可が出ていないので、怨霊を退治したことはまだ殆ど無いのになぜ知られていたのかは謎であるが。
……個人的には幼少時は冥と関わる機会が最も多いのではないかと想像していたのだが、当てが外れたようだ。
諌山冥と話すのを楽しみにしていた節があるので残念である。
もう少ししたら分家会議にも出てくるのだろうか?
諌山奈落が分家の取りまとめ役になったときは諌山幽の後ろにいたはずだし、俺よりも2つ年上のはずだからそろそろ出てきてもおかしくはないだろう。
とはいえ親父は「分家会議になど出ている暇があったら鍛錬をせよ」っていう脳筋な考えの持ち主なので出てきても会えない可能性が高いのだが。
はてさて。そんなこんなで光陰矢の如しとはよく言ったもので(別に無作為に過ごしてはいないが)、流れるようなスピードで月日は過ぎて行った。
そして俺が中学1年生になったころの事だ。
―――駄々をこねてようやく連れて行ってもらえた分家会議で、面白い話を耳にした。
次話で原作キャラとの絡み入ります。
凛が中1⇔神楽小5⇔黄泉中2⇔喰霊-零-の3年前。
さて、そこで聞く面白い話ねえ。