卒業旅行やら就職やらでかけず、なんと三か月。
とにかくすんません!
次の話もすぐ更新します。
そして旅館編もう一話やるといいましたが、無くなりました。
「……緊急招集か」
鳴り響く音が、久々にいい夢を見ていた俺を眠りから覚醒へといざなう。
気持ちの良い睡眠を妨げてくれたのは俺の仕事用携帯から鳴り響く着信音。ここ最近はあまり音が鳴っていなかったのだが、久々の鳴動だ。
携帯をとって時間を見る。……午前6:18分。早朝と呼ぶにふさわしい時間。できればもっと寝ていたかった。俺はどちらかといわずとも夜型の人間なのだ。
「うげ、メールも三通来てるじゃん。俺気が付いて無かったのか」
メールが計三通と、電話が一本かかってきている。俺が起こされたのはこの電話だが、その前に三通も呼び出しのメールが来ていたらしい。
「……はい。小野寺です。ええ、今起きました。……拾ってくれるんですね、わかりました。すぐ用意します」
二階堂からかかってきていた電話を切る。その後、着替えをしようとのそりと俺は布団から起き上がろうとして、それに失敗する。
「……?」
どうも腕に力が入らない。というよりも体全体に全く力が入らないのだ。まるで筋トレを死ぬほど行った一時間後のような、そんな不思議な感触。俺は筋トレをほとんどしないのでこんなになっていることなどめったにないのだが……。
―――もしかして、風邪か?
二度目の起き上がりチャレンジに失敗したことで、ようやくその不調の原因に気が付く。
ああこれ、なんで力入らないのかと思ったら、かなりの高熱でてるんだわ。
「にー!起きた!?」
どっどっどっど!などと元気な足音を響かせながら俺の部屋に突入してくる花蓮。
まだ母親も起きていない時間であるために華蓮も起きていないはずなのだが、先ほどのアラームで俺が起きたことに気が付いたのだろう。
「……おはよーかれん」
「おはよ!」
扉を開けた勢いそのままに突撃してきた華蓮を受け止めようとするが、残念ながら受け止めきれずにベッドに倒れこむ。
それが面白かったのか華蓮はきゃっきゃとはしゃいでいるが、俺の体に触れていて何か異変に気が付いたのか、馬乗りになりながら不思議な顔をして尋ねてきた。
「にーなんかあつい。どうしたの?」
「あーやっぱり熱いか。ごめん華蓮、体温計持ってきてくれる?あのぴぴぴってなるやつ」
「あーい!」
これまたとてつもない音を響かせながら救急箱へと走っていく華蓮。あいつの朝の元気には時折圧倒されるが、今はそれがなんとも頼もしい。
「おはよう、凛。緊急招集か?」
「おはよー。親父はいっつも朝早いね。なんで遺伝しなかったんだろそれ。……そ、丸の内に異常だってさ」
華蓮の騒ぎや俺の携帯で気が付いた親父が部屋に入ってくる。我が家は母親が朝に弱く、親父が朝に異常に強いため、早朝のお勤めの場合は大体親父が起きているのだ。
「丸の内か。それならば早急に対応せねばならんな」
「放置してたら経済的打撃やばそうだもんなあ」
「にー!持ってきたー!」
布団から起き上がらずに親父と会話していると、俺のお使いを見事に果たした華蓮が体温計をもって駆けてくる。
愛い妹である。
「ありがと華蓮」
「どういたしまして!」
「……体温計?凛、熱があるのか?お前が?」
体温計を持ってきてくれた華蓮の頭を撫でていると、親父が信じられないものを見るかのような目でこちらを見てきた。
「なんだよその反応。俺だって風邪の一つや二つくらい……ってあれ?」
熱で朧げな頭の中、風邪の記憶を探すが見当たらない。そういや俺、今世で風邪をひいたことあったか……?
「確かに熱っぽいなって思ったことはあるけど……、鍛錬休んだことはないし、というより華蓮の熱を測る以外で体温計を触った記憶がないぞ」
「お前は多少の体調不良なら平気な顔をして鍛錬に参加しているからな。そんなお前が体温計を握るとは相当なのだろう。今日は休みなさい。私から対策室に連絡しておこう」
「にー!風邪のときはねる!」
「いや、流石にこの緊急事態には参戦しないとまずいかな。学校は休むとしてもこれは参加するよ。……華蓮、わるいんだけどあのちゅーってする奴持ってきてもらっていい?あと黄色い箱の食べ物」
「あい!」
華蓮に某10秒飯と栄養の塊スティックを要望すると、さっさと起き上がって服を着替え、華蓮が持ってきてくれた体温計をわきに挟む。
検診とかで体温測らされたとき以外は確かにほとんど使った記憶がないなこれ。体調悪いなーとか思っても普通に過ごしてればすぐ治るし……。ケガして寝込んだりはあったけれども。
「凛、無茶はするなよ。お前が出ていくことは大事だが、それよりもお前が死なず戦い続けることのほうが重要なのだから」
「わかってるよ。でも結構きつくても後方で指示くらいなら出せると思うし、多分もう迎え来るよ。……って言ってる間にもう来たね」
俺の部屋の窓から外を見ていると、門の前にジープらしき車が止まったのが見えた。
間違いなく対策室だ。二階堂も既に対策室の面々が俺の家に向かっていると言っていたし、時間的にも適合する。
「親父さ、学校に休むって連絡しておいてもらえない?流石にお勤め後に学校行く余裕はないわ」
「わかった。お前は頑固だからお勤めに行くなと言ってもどうせ行くのだろうから止めはせん。ただ、無理はするな」
「わかってるわかってる。今回は後方支援に徹するよ。……おっと計測完了か」
ぴぴぴとあの独特な音を鳴らす体温計を脇から取り出す。子供の頃とか、SNSでネタにできる大学生の頃なんかは熱を出すと面白かったものだが、社会人なんかはどうなんだろう。会社を休めると喜ぶのだろうか。それともこの調子で会社に行かなければならないと嘆くのだろうか。
「げ」
「にーどうしたの?」
「人生初記録だわ。やべえこれ」
体温計を華蓮に手渡す。前世を踏まえてもこれだけの高熱にはお目にかかったことが殆どない。
「40度!?凛、これは普通の風邪ではない。大事を取って休みなさい」
「ごめん、無理だ親父。正直俺も辛いしそうしようかなとは思うんだけどさ、今回ちょっと気になることがあるから抜けるわけにはいかないんだよね」
ふらつく身体を律しながら俺は玄関へと向かう。
平熱が37度近い俺ではあるが、40度は流石につらい。このまま布団に倒れて華蓮の看病ごっこを堪能したいのはやまやまだが、今日はちょっと抜けられないのだ。
「……止めてもお前は聞かないのだろうな。わかった、行ってきなさい。だが、それを移す可能性があるのだから対策室の方々と行動するのはよしなさい。うちから一台車を出させよう」
「……許可してくれるんだ?うん、ありがとー。流石にその言葉には従うよ」
「うむ、そうしなさい。母さんには上手く伝えておくからお前も帰ってきたら合わせるのだぞ。その状態でお勤めに行ったと知れたらどれだけ不機嫌になるか……」
「うっ……。母さんのこと忘れてたわ……。お勤めから帰ってきたら一気に具合悪くなったで通しておいて」
「わかった。そう伝えておこう」
華蓮に聞こえないように親父と打ち合わせをする。こんな状態でお勤めに行ったなんて知れたら大変だ。三日くらいは多分不機嫌になる。
「よし。行ってきます。学校に休むって連絡はお願いね」
「それは任せなさい。気を付けて行ってくるのだぞ」
「にーちゃ!いってらっしゃい!」
「いってきます、華蓮。帰ってきたら看病よろしくね」
「あいー!」
びしっと敬礼する華蓮と、このバカ息子はといった表情を隠そうともしない親父。
……心配かけますねおやっさん。母親への対応もうまく頼みますよ。
実はこの話はすぐ書き終わったんですが、次の山彦が難産で……。アニメを文章に起こすのって凄い難しいんですよ……。
次もなる早で更新します。
オリジナルエピソードのが書きやすい……。