喰霊-廻-   作:しなー

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前回までのあらすじ

凛を勧誘するために各地域の室長と、室長候補生が東京に集合
練習試合などを経て仲良くなった、凛と黄泉を含む室長候補生達。
しかしながらカテゴリーAクラスの霊的災害が発生。
それに対応する凛達。そしてそれに対応するうちに、事前情報に無かった敵(カテゴリーB)が登場し、仲間をそいつから守った黄泉が負傷し退場してしまう。
神出鬼没なそのカテゴリーBに後手に回る凛。
だが、剣輔と諌山冥の助力により、追い詰める方法を見つけだし、最終決戦に、諌山冥とともに望む。


第39話 -餓者髑髏11-

 

 カテゴリーBに知性はない。

 

 正確に言うと知性を持つ個体も居るが、今回のターゲットであるカテゴリーBにはそれが存在しない。

 

 だが、それでも本能的に危機を感じて回避したり、自分の利益のために相手を襲撃したりなどの行動を起こすことは可能である。

 

 脳みそもそれに代わる器官も体に持ち合わせていないと言うのにどうやってその行動を起こしているのか?という疑問を、そもそも理不尽な存在である怨霊に対して呈するのは野暮というものである。

 

 とかく、その理不尽な存在である怨霊にも、防衛反応や使命感のようなものは存在するのだ。

 

 そして、今回怨霊が反応せざるを得なかった理由は、その前者だった。

 

「―――待たせたな、クソ野郎」

 

 ロケットが炸裂したかのような衝撃と音と共に、カテゴリーBは自分が潜んでいた祠から叩き出される。

 

 文字通り骨が削れる音をたてながら地面を転がり、近くにそびえ立っていた木にぶつかり停止するカテゴリーB。

 

 もし彼が人間であり今の一撃を生き延びることが出来るタフな力を持っていたのだとすれば、今彼は間違いなくこう考えているだろう。

 

―――自分は今、何をされた?と。

 

 人間ならば損傷とそれによる痛みで立つことすらままならないダメージを負っているだろうに、カテゴリーBは即座に立ち上がり、自らを守るべく戦闘態勢に入る。

 

 現在の自分の状況を思考する力が無くても、自らを守るように動くことは出来る。自分に襲いかかる驚異を排除するべく眼の前の敵を見据える。

 

 眼の前に映るのは一組の男女。

 

 柔和だが理知的な顔をした黒髪の男に、処女雪のごとく白い髪をもつ鋭い雰囲気の麗人の組み合わせ。

 

「……今ので決めれたのでは?」

 

「それなら楽だったんですがね。手強いですよ、こいつ」

 

 まるで世間話でもするかのような気軽さで会話をしているが、その目線は一秒たりともカテゴリーBから外れることはない。一挙手一投足見逃さないとばかりに、鋭く眼の前の存在を睨みつけている。

 

 

「――――おい、クソ骸骨」

 

 繰り返すが、このカテゴリーBには思考能力がない。脳みそ自体無いのだから、当たり前だ。

 

 再度繰り返すが、しかして危機察知能力はある。考える脳は無くとも、脅威を感じる能力は当たり前に備わっている。

 

 その本能が告げている。耳元で太鼓が鳴り響くが如く、爆薬が炸裂するかの如く、警鐘を鳴らしている。

 

俺の姉貴分(諌山黄泉)を傷つけてくれやがったんだ。―――お前の行き先は、地獄すら生ぬるいと思え」

 

―――今から自分は祓わ(ころさ)れるのだと。

 

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 示し合わすこと無く、初手には冥さんが打って出た。

 

 まるで踊るような美しさで距離を詰めると、薙刀を振るう。

 

 相当の重さがある得物だと言うのに、まるで新体操のバトンを振るうが如く軽やかに一閃、二閃と放たれる。

 

 流れるような美しい剣閃ではあるが、カテゴリーBはそれを上手くいなす。相手がカテゴリーBでなければ見事な刀裁きに称賛を送っていただろう。よくもまぁ薙刀をあれほど綺麗にいなせるものだ。

 

 刀で薙刀を対処するのは非常に難しい。薙刀もしくは槍の持つリーチというアドバンテージは攻めにおいても守りにおいても有利になる。

 

 突いてよし切って良しのメリットを、刀からは届かない範囲から存分に繰り出してくる。

 

 そしてその扱いにおいて、冥さんは俺の知る限り最上位に居る人間だ。

 

 距離を詰められる前に突いて、隙があれば切り払い、攻められれば長い柄も使って受け止める。

 

 相手の攻守のタイミングを操りながら攻撃するその戦闘スタイル。流れるようにスタンスを入れ替えて相手に攻めの隙を作らせない。

 

―――常に自分の攻撃ターン。それが諌山冥の戦い方だ。

 

(……やっぱ上手いな)

 

 カテゴリーBの動きも見ながら、諌山冥の動きも俺は注視する。薙刀と戦う時はどうすれば戦いやすいか。この流れる動きの弱点は何か。 

 

 そのすべてを頭に叩き込む。この戦いで役立てるために、そして()()()()()のために。

 

「―――フッ!」

 

 タイミング良く薙刀を横に鋭く一閃し、カテゴリーBの刀を持つ手弾く諌山冥。そのタイミングで俺は地面を蹴る。

 

 一瞬で冥さんの横を通り抜けて、体勢を崩したカテゴリーBに肉薄する。

 

 冥さんもそれに気がついたのか、半歩移動し、俺の通るであろう道を空けてくれる。

 

 それを見て、体勢を崩した状態ながらバックステップを行って俺との距離を離そうとするカテゴリーB。

 

 戦闘中は常に冥さんの後ろで視界を遮って俺の存在が目に入りにくいよう位置調整をしていた。

 

 そのためこいつの目(あるのかしらないが)からは急に俺が目の前に出てきたように見えるはずだ。

 

 懐に潜り込み、体を両断してやろうと斬撃を繰り出す。

 

 だが、右脇腹から左肩にかけて切り裂いてやろうと繰り出した一撃は、今まで一度も抜かれていなかった小太刀を抜くことにより、回避される。

 

 鍔迫り合いのような形になる小太刀と俺の手刀。

 

 膂力ならば負けはしないし、体勢的に力が入れやすいのはカテゴリーBではなく自分である。

 

 それを理解しているカテゴリーBはその拮抗をすぐに解き、膝を使った蹴りを繰り出してくる。

 

―――受けるか。

 

 重い一撃。骨からどうやってまぁこの威力が出せるんだという程のもの。それを、わざと受ける。

 

 膝が腹に入る。重く響くその打撃。並の人間じゃこれで意識が持っていかれるだろう。とてもじゃないが耐えきれるような威力ではない。

 

 まぁ、()()()()()()の話だけどね。

 

 小野寺の術式の近接戦闘能力の高さを舐めてはいけない。

 

 みぞおち付近には戦闘前から予め防御用に薄い霊力の壁を一枚含ませてある。

 

 今ので粉々になってしまったが、衝撃を十二分に逃がしてくれた。戦闘におけるダメージには全くカウントされない程度の攻撃だ。

 

 ……まぁ痛くはあったけどね。

 

 ただしもちろん痛みを受けただけの成果はある。

 

 鋭く刺さった膝蹴りに合わせ、俺はカテゴリーBの膝裏を抱きしめるように拘束する。

 

 肉のない骨であるが故に掴みづらくはあったが、動かせない程度の固定には成功し、カテゴリーBの動きが静止する。

 

「冥さん!」

 

「―――わかっています」

 

 俺の呼びかけとほぼ同タイミングで、銀の一閃が闇を切り裂く。

 

 肋骨を薙刀が撫で、ガッという音をたてて右の肋骨が切断される。

 

 先程の奇襲を除けば今回初ヒット。致命傷ではない。が、これは深めに入った。

 

 普通であればそれと同時に俺も霊力による拘束を開始する。

 

 北海道支部の室長候補生である服部嬢にしばらく口を利いてもらえなくなった技だ。霊力を体にピッタリまとわせて動きを阻害し、拘束する技だ。

 

 威力は0なのだが、一度決まってしまえば勝利が確定する程の反則技だ。服部嬢にやった時は一発で決まったのだが―――。

 

(骨だからやりづらすぎるなこいつ……)

 

 が、相手は骨。人間で練習している時のように上手く決まらず、拘束が緩くなってしまった部分が大量に出てしまう。

 

 拘束を引きちぎり()()()()()()()()()()()()()()蹴りを繰り出してくるカテゴリーB。

 

 上体をのけぞらせてそれを回避し、バック転を行って冥さんの隣に着地する。

 

 人間相手なら今ので勝ってたのに……と冥さんが嫌いそうなタラレバを心に浮かべながら、カテゴリーBに視線を戻す。

 

 ガシャン、という音を立てて地面に着地するカテゴリーB。

 

 明らかなチャンス。だが俺は襲いかかれる状況にない。バック転直後だからね。

 

 一対一なら攻めることが難しいタイミングだったが、今はありがたいことに2対1だ。冥さんが空いている。

 

 確実に決めることの出来るタイミング。そこに冥さんが滑り出る。

 

 カテゴリーBは刀を振れる体勢ではないし、反撃をするにしても薙刀のリーチを掻い潜って攻撃できる手段を目の前の餓者髑髏は持ち合わせていない。

 

 一度も刃を見せていない、腰にある小太刀も今から抜くにはあまりに遅すぎる。

 

 避けることも相当難しいはずだ。

 

 勝ったなと、そう信じて疑わなかったのだが、急に心に警鐘が鳴り響く。

 

(なん、だ……!?)

 

 確証はない。が、このまま攻めては駄目だ。何故かそれだけはわかる。

 

 恐らく脊髄反射の類だ。脳でその脅威を認識していないが、俺の身体がそれを理解している。

 

「―――危ない!」

 

「きゃっ……!」

 

 本能のままに、ぐっと冥さんを引き寄せる。

 

 急ぎであったため、首の後ろの着物を掴み、思いっきり自分の方向に向かって引っ張り抱きとめる。

 

 それに僅か遅れて、冥さんの顔があった場所を謎の物体が通り過ぎる。

 

 冥さんの顔面のスレスレを通ったそれは、後ろにあった木に突き刺さって動きを停止する。

 

 カテゴリーBから警戒を怠ること無く、それに目をやる。何かが投擲されたのはわかった。だが、近くに投擲できるようなものなどあっただろうか。

 

 そう思いながら見やると、木に突き刺さっていたのは白い歪な形の物体。一瞬理解が及ばなかったが、それは先程までずっと見ていたものだった。

 

―――さっき切られた肋かよ!

 

 ガイアじゃないんだからさ……と思いつつも、同じ立場なら自分も同じようなことはやるだろう。

 

 戦略として上手い……のかは分からないが、なるほど合理的ではある。

 

「……顔面ぐらいなら貫通してたなありゃ。冥さん、大丈夫ですか?」

 

「……ありがとうございます」

 

「緊急だったので色々すみません。服を直したら合流してください。俺が行きます」

 

 俺の腕に抱かれている冥さんが着ているのは着物タイプの服である。

 

 腰の上までスカートがあるという、普通の着物とは違ったタイプの着物であるため、通常の着物よりはあれであるが、後ろを引っ張ればそりゃそうなるよねという状況である。

 

 本来ならもう少し配慮したかったのだが、今回ばかりは許してほしい。

 

 ちなみに眼福であった、などとは欠片も思っていない。

 

 ここは戦場なのだ。そんな不純なことを考えている余裕などあるはずがない。

 

「……」

 

 1秒前までは"助けられたことにプライドが許さないと思いつつも感謝をしている"という温かい目線だったはずなのに、俺を見る目がゴミでも見るような視線に変わったのはきっと気の所為だ。

 

「……さて」

 

 冥さんに上着をかけると、俺はやおら立ち上がる。

 

 小太刀を鞘に収め、太刀を構えているカテゴリーB。警戒しているのか、追撃をする気は無いようだ。

 

 俺は首を回し、骨をゴキッゴキッと首を鳴らす。

 

 こいつは強い。が、流石にこれだけやりあえば慣れてきた。

 

―――終わらせよう。

 

 なんの捻りもなく、カテゴリーBの眼前に躍り出る。

 

 そのまま両手に作り出した刃を繰り出して叩きつけていく。一見なんの捻りも無く見えるように、乱暴に、暴力的に刃を振るう。

 

 それを綺麗に逸し弾き、上手く対処してくるカテゴリーB。

 

 インファイトを繰り出そうとすると、先程解放した小太刀を抜く動作をちらつかせることで俺の動きを止める。

 

 攻撃のパターンは豊富だし、回避は上手いし、防御も巧みだ。今まで戦った敵の中でも、間違いなく3本の指に入る強さだろう。怨霊で言えば一番かもしれない。

 

 だが、黄泉よりは遅い。

 

 カテゴリーBが繰り出してきた突きを紙一重で避けると、カウンターで俺も突きを繰り出す。

 

 その一撃は右の鎖骨の一部を抉り取り、カテゴリーBに蓄積的なダメージを与えていく。

 

 ……相変わらず人間だったら致命傷になる傷が致命傷にならないのは腹立たしい。

 

 こちらは同じ場所に一撃食らったら終わりなのに、こいつは損傷し放題だ。

 

 しかしながら朗報もある。

 

「―――へぇ。切られたとこ、効いてるんだな、お前」

 

 動きを見ていて気がついた。こいつ、明らかに最初よりも刀を振るう精度も範囲も速度も落ちてきている。

 

 とくに右側だ。明らかに先程よりも右腕の動きが悪い。

 

 骨しか無いのに動くという常識外の存在であるのに、骨が無くなると動きが悪くなるらしい。

 

 これなら、行けるな。

 

 俺に向かって刀を振り下ろそうとしているカテゴリーBに対して、俺は手に纏っていた霊力の刃をかき消す。

 

 防御手段が無くなるわけだが、問題ない。―――それ以上のことをやるのだから。

 

 ()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

「ビンゴ」

 

 本当に一秒、いやコンマ一秒ズレたら、小野寺凛が2人になるであろうシビアなタイミング。

 

 だが、カテゴリーBの持つ太刀は、俺を切り裂くこと無く俺の手の中で動きを完全に止めていた。

 

 所謂、真剣白刃取り。それをやってのけたわけである。

 

 両の手で挟んだそれを力ずくで奪い取ると、全力で横蹴りを繰り出し、餓者髑髏を思いっきり後退させる。

 

 残っている肋骨にダメージが入った感覚。もしかすると脊椎あたりにも衝撃がいっているかもしれない。

 

 よろめきながらも、何とか体勢を整えて下がろうとするカテゴリーB。

 

 逃すものかと、俺はクナイ状にした霊力を6つ程投げつける。

 

 人間であれば十分ダメージを与えられたであろうそれだが、骨の化け物相手だと決定打になどなりはしない。

 

 せいぜい骨が削れたり、大きい骨にめり込んでくれる程度。無駄な攻撃だとカテゴリーBも思っただろう。

 

 数発に至っては命中せず、後ろの地面にめり込むだけという始末。当たりすらしていない。

 

―――だが、今回は外れたほう(そちら)が本命だ。

 

 地面に突き刺さったクナイに、遠隔で霊力を込める。

 

 バックステップで軽く後退してようとしていたカテゴリーBが、壁のような何かに阻まれて後退する脚を止める。

 

 ゴン、と骨が硬いものに当たる音を響かせて、カテゴリーBの意図しない形で体が静止する。

 

 カテゴリーBの後ろにあるのは一瞬で作られた、黄色い僅かに光る、カテゴリーBが力を入れて手を振るえばスグに壊れてしまう薄い壁。

 

 小野寺の術式によって作られた、しかして一瞬動きを止めるには十二分な壁。それによってカテゴリーBは動きを一瞬ながら完全に阻まれた。

 

「いただき」

 

―――とてつもない破壊音を立てて、俺の右ストレートがカテゴリーBの顔面に突き刺さる。

 

 左の眼窩から頬骨の辺りを完全に粉砕し、拳状に陥没した頭蓋骨にめり込む俺の右拳。

 

 それは勢いそのままにカテゴリーBの後ろにある壁に炸裂する。

 

 これまた激しい音を立てて後ろの壁が砕け散る。

 

 熊にでもやられたのかという程の惨状。並の髑髏ならこれでお陀仏だろう。だがこいつは並ではない。

 

 顔面を砕かれた瞬間から、崩れた体勢でありながらも小太刀を抜いて反撃しようとしているのが横目に映る。

 

 顔面を壊し切るにはもう一撃が欲しい。だが、それを打ち込んだら俺は刀で切られる。そのトレードオフ。

 

 普通なら後退するだろう。既に十二分にダメージは与えることに成功している。

 

(まぁ、俺は普通じゃないんだけどね)

 

 俺は()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

 一発目ほどの威力ではなかったが、再び炸裂音が夜の森に響き渡る。

 

 もう壊れかけだった頭蓋骨は、元々の機能であった脳を守るという役割どころか、形状すら保てずに崩壊する。

 

 砕けたのは小汚い骸骨だと言うのに、その散り際が美しくて、不思議な感覚だ。

 

 してやったりと自分を褒めてやりたいのもつかの間、即座に意識を切り替える。このカテゴリーBのことだ。顔面を潰された程度じゃこいつは止まらないはず。

 

 避けようにも、人を殴るためではなく物を壊すための左ストレートを振り抜いたのだ。体勢は崩れていないにせよ、即座に回避行動に出れるほどの余裕はない。

 

 刃による鋭い痛みを覚悟する。どこだ?どこをやられる?

 

 時間が引き伸ばされたかのように思える極限の集中の中、己の負傷を覚悟していると、痛みの代わりにやってきたのは金属音だった。

 

 甲高い音を立てて、視界に割り込んできた銀色。それに堰き止められる小太刀。

 

 目だけ左側を見ると、俺に襲いかかろうとしていた刀を、後ろから差し込まれた薙刀が食い止めていた。

 

「―――貴方、本当に馬鹿なんですか……?」

 

 服を整えたらしい諌山冥が、薙刀にて小太刀を食い止めてくれたらしい。

 

 本気で困惑したような声を出すのはやめてほしいが、このサポートは非常に助かった。

 

 これなら追撃を繰り出せる。

 

 そう思い再び右手を振り抜こうとすると、ガチャ、と音を立てて、カテゴリーBの手から小太刀が滑り落ちた。

 

 次いで文字通り地面に崩れ落ちるカテゴリーB。

 

 謎の力によって繋ぎ止められていた200以上の骨達は、その力を失い、バラバラになって地面へと衝突する。。

 

 バラバラに成った骨が、砂のように崩れていき、その姿をゆっくりと消滅させていく。

 

 冥さんの方に顔を向け、アイコンタクトを取る。

 

 すると、無言で頷いく冥さん。終わったと言うことだろう。俺も、この消えていく骨からもう霊力や呪力を感じられない。

 

 ……どうやら、こいつの弱点は頭だったらしい

 

「……はー。ようやく終わりましたね」

 

「……ええ。終わりましたね」

 

 崩れ行く骨を前に棒立ちする俺に、先程渡した上着を渡してくれる冥さん。

 

 ……流石に疲れた。まるで5年くらい経過したかのような疲労感だ。さっさと帰って黄泉の容態を確認したい。

 

「こちら小野寺凛より本部へ」

 

 渡された通信機に話しかける。

 

「―――件のカテゴリーB討伐完了。本部に帰投する」

 

 希望と共に伝えたその一文。純粋に喜ばしい、それ以外の要素が無いその文言。

 

 本部もそれに沸いているのが通信機越しに確認出来る。

 

 神童、小野寺凛がまた偉業を成したのだと。そう沸く声すら聞こえてくる。

 

 人間なんて単純な物だ。その歓声と、その称号に誇らしくなる俺がいるのを、俺は欠片も否定できない。

 

 そして喜んで悪いわけがない。たった齢16の俺が成したのは、それだけの偉業なのだから。

 

 だから俺は喜ぶ。態度には出さず、静かにゆっくりとその賞賛を噛みしめる。

 

―――それが、俺達に。いや。彼女に牙を剥くとは、露知らずに。

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