仮面ライダーLYRICAL A’s to StrikerS   作:(MINA)

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第十三話 「0070年 難は去っても幸は来ず」

ディエンドはディエンドライバーの銃口を向け、引き金を絞る。

二箇所の銃口から魔力ともフリーエネルギーとも違う別室のエネルギーで構築された弾丸が発射された。

「君は列車の中に隠れていたまえ。守りながら戦うというのはどうにもやり辛い」

「は、はい!」

ディエンドの忠告に従うようにしてユーノ・スクライアは『時の列車』へと入った。

「まずはテメェからぶっ潰させてもらうぜ!!」

プローンイマジンはフリーエネルギーで両手に自動拳銃を出現させて、銃口を向けると同時に引き金を絞る。

「できるかな?君に」

ディエンドは左腰に装備されている黒いケース---ライダーカードホルダー(以後:カードホルダー)を開けて、一枚カードを引き抜く。

ブゥウンという音を鳴り響かせながら、ライダーカード(以後:カード)を一枚手にする。

ディエンドライバーを後方にスライドさせてカード挿入口に引き抜いたカードを差し込んで、前にスライドさせる。

ディエンドライバー側面から『ATTACK RIDE』とマゼンタカラーで浮かび上がる。

引き金を絞る。

ディエンドライバー側面の文字表示が『INVISIBLE』と切り替わる。

『アタックライド・インビジブル』

機械音声が発した直後に、ディエンドの身体が赤、青、緑のシルエットに切り替わって原型をなくした。

プローンイマジンが放った弾丸は素通りしてしまう。

「どこ行きやがった!?出て来い!!」

プローンイマジンは二丁の銃を構えながら、周囲を見回す。

「ここだよ」

声と同時にプローンイマジンの背後に赤、青、緑のシルエットが出現して三色は一つとなってディエンドライバーを構えているディエンドが出現する。

ディエンドライバーが銃口を構えて、引き金を絞る。

一度に二発のエネルギー弾丸が発射される。

振り向いたプローンイマジンも負けじと二丁の銃の引き金を絞る。

フリーエネルギーの弾丸が発射される。

四発の弾丸が発射され、宙で同時にぶつかって相殺される。

バァンボォンと爆煙が立つ。

互いに一瞬に近いが、視界が遮られる。

ブゥウンという音が鳴る。

ガシャッとディエンドライバーを後方へスライドさせて、先程引き抜いたカードを挿入口へと差し込む。

『ATTACK RIDE』

ディエンドライバーの側面にマゼンタカラーで表示される。

引き金を絞る。

『BLAST』と切り替わる。

『アタックライド・ブラスト』

ディエンドライバーが発すると同時に、銃口からマシンガンのように数発のエネルギー弾丸が発射された。

「何!?」

プローンイマジンも対処できないのか驚きの声を挙げながら、何発かを相殺する事はできたが全ては不可能なため直撃を許してしまう。

「ぐうっ!!」

プローンイマジンは仰け反って足を数歩さがってしまう。

ディエンドがこの機を逃すわけもなく、間合いを詰める為に駆け出した。

 

『時の列車』に避難しているユーノはディエンドの戦闘を内部から見ていた。

「あの銃は単なる射撃性能だけでなく、差し込んだカードの能力を引き出す機能も備わってるんだ……。たしかに電王やゼロノスとは違う戦い方だ」

ディエンドはカードの能力と自前の身体能力を駆使して戦っている。

カードの枚数だけ戦術が組めるという事になる。

それだけで電王やゼロノスよりも利点が多いという事になる。

ただし、素人にいきなりできるかといわれると確実に不可能だ。

カードの枚数=手数となるが、素人ならではの落とし穴もあるわけだ。

冷静に判断できないと手数の多さに混乱して敵にやられるという事になる。

だがディエンドにはそのような『迷い』が一切ない。

それだけカードを駆使して実戦を乗り越えてきているという証明だろう。

「凄いですねぇ。あの人」

列車内から声がする。

「そうだね。カードをいくら所持しているといっても、それぞれの特性を理解していないと宝の持ち腐れになるね」

ユーノは声に対して自然に答える。

「え?」

そこで自分が何と応対しているのか気付く。

列車内にいるのは自分以外にいないはずだ。

周囲を見回す。

前はもちろんの事、横にも背後にもいない。

「もしかして!」

そう思いながら、頭上を見上げるがただの天井で何もない。

「気のせい、とは思えないか……」

イマジンの出現に仮面ライダーの登場とまるで、自分の中にある『平穏』を全てぶち壊すように。

今なら何が起こっても不思議ではないからだ。

 

ディエンドがプローンイマジンとの間合いを詰めてから、左フックを繰り出す。

プローンイマジンにとっては避けきれない一撃ではないので、しゃがんで避ける。

「甘いね」

ディエンドライバーの銃口がしゃがんでいるプローンイマジンに突きつけた。

引き金を絞る。

二連式の銃口からエネルギー弾丸が発射される。

「!!」

プローンイマジンは首を傾けて避けると同時に、二丁の銃をディエンドに向けると同時に引き金を絞る。

「!!」

ディエンドはバック宙をして後方へと下がって、宙に浮く。

その間に一回引き金を絞る。

そして、両脚が地面に着地すると同時にもう一回引き金を絞る。

全弾がプローンイマジンに直撃する。

「がはあっ!!」

身体からブスブスと火花が飛んで、煙が噴き出ている。

だが『やられたらやり返す』という意思が、プローンイマジンの全身を突き動かしていた。

「潰す!!」

叫ぶと同時に銃を構えて、発砲する。

ディエンドは飛んでくる弾丸を横に走りながら避けていく。

弾丸は全て遺跡の壁に当たっていく。

頑健な造りではないらしく、めり込んだ弾丸を中心にして壁に亀裂が走り始める。

「まいったね……。長期で長引かせるわけにはいかないか」

カードホルダーからカードを一枚引き抜く。

そして、『時の列車』を見る。

「宣言はしてしまったしね」

ディエンドライバーを後方へスライドさせてから、カードを挿入口に差し込んで手ではなく、ディエンドライバーを前に振った勢いでガシャっとスライドさせた。

側面にマゼンタカラーで『KAMEN RIDE』と浮かび上がる。

走っていた両足は停まり、ディエンドライバーを構えて引き金を絞る。

『BLADE』とスペードの紋様を背景に切り替わる。

『カメンライド・ブレイド』

機械音声と共に赤、青、緑のシルエットが出現して、三方向に走ってから三色のシルエットは一つになる。

銀色と青色が目立ち、頭部はヘラクレスオオカブトをモチーフにし赤い目をした戦士が出現した。

左腰には専用武器が吊るされている。

戦士はプローンイマジンを睨んでいる。

戦士---仮面ライダーブレイド(以後:ブレイド)は一言も発することなく、プローンイマジンへと向かっていった。

 

「あれも仮面ライダー、かな?」

戦いを『時の列車』で覗き見ているユーノもディエンドが召喚したブレイドを強く『仮面ライダー』だと言い切ることはできなかった。

何せ知らないのだから無理もないことだが。

(何が起こっても不思議じゃないと覚悟を決めたけど……)

ここまでとは予想はしていなかった。

召喚されたブレイドはただ目の前の敵を倒すかのようにして、プローンイマジンに殴りかかっている。

避けられてはいるものの、その事に苛立ちや焦りを感じていないのか黙々と攻撃を繰り出していた。

その攻撃には『意思』のようなものが感じられない。

「戦士の召喚まで。もうほとんど魔法だよ……」

あまりに電王やゼロノスとは違う戦いぶりに、ユーノはどのようなコメントをすればいいかわからなかった。

「あんな事まで出来るとなると、次に何が出てくるんでしょうね?」

声はどこかディエンドの行動に期待していた。

「どこにいるの?」

ユーノは声に向かって試しに訊ねるが、何も出てこなかった。

光球が出現し、ユーノの頭上に浮いていた。

 

ディエンドとブレイドの二対一となってプローンイマジンにしてみれば苦しい状況に追い込まれていた。

二丁の銃で狙いをつけるが、どちらがいいかわからない。

ディエンドを狙えばブレイドがフリーとなって襲い掛かってくる。

反対にブレイドを狙えばディエンドが何かをしでかしてくるのはわかっている。

「くっ!」

プローンイマジンは結果として、一丁ずつそれぞれに狙いをつけて引き金を絞った。

だが元々射撃性能が低いので当たるはずがなく、ディエンドとブレイドは難なく避けてしまう。

弾丸は全て遺跡の壁にめり込む。

「ん?」

パラパラっと天井から土の欠片が降ってきた。

「そろそろヤバイね……」

ディエンドは周囲を見回しながら、ここがあまり長くもたないと理解する。

その直後にカードホルダーからカードを一枚引き抜く。

ディエンドライバーを後部にスライドしてから、カードを挿入口に差し込む。

そしてディエンドライバーを前へ突き出す。

同時にスライドしてブレイドの胸部に黄色でスペードの紋様と『FINAL FORM RIDE』と浮かび上がる。

そして、ディエンドはブレイドに狙いをつけて引き金を絞る。

 

「痛みは一瞬だ!!」

 

胸元が『BLADE BLADE』へと切り替わった。

『ファイナルフォームライド。ブ・ブ・ブ・ブレイド』

ディエンドライバーが発する。

ブレイドの背中に赤色のトランプカードの裏面のようなものが円となって出現する。

次に胴が伸びて、頭部が折れるようにして後ろへと引っ込む。

身体全身が逆立ちになりながら腰が捩れていく。

空に向かって突き立てている両脚が内股になって太股、ふくらはぎの裏側から刃が出現してブレイドの専用武器である醒剣ブレイラウザーが腰元から独りでに離れて両足の頂点に収まる。

ブレイドのファイナルフォームライド(以後:FFR)形態、ブレイドブレード(以後:Bブレード)である。

ディエンドはBブレードを手にする。

更にカードホルダーからカードを引き抜いて、ディエンドライバーに差し込む。

『ファイナルアタックライド。ブ・ブ・ブ・ブレイド』

ディエンドライバーの機械音声直後にディエンドはBブレードを握って、プローンイマジンに切りつける。

Bブレードの刀身は青いエネルギーに覆われている。

袈裟から右薙ぎへと斬りつける。

斬った瞬間にブワッとエネルギーが噴き出て、衝撃波が生じて最下層全体に伝わる。

「ぐおわああああああああ!!」

プローンイマジンは自身に斬りつけられたエネルギー量と肉体を耐久できるエネルギーの許容量を超えているため耐え切れずに爆発した。

爆煙がたちこめ、Bブレードの姿はなくなった。

 

イマジンは光球となって、自分の塒である『時の列車』に入り込んだ一人の少年を見ていた。

時折、声をかけてみるが大袈裟に驚く様子はなかった。

(魔法の世界だから、かなぁ)

実を言うとこのイマジン。『時の列車』の外を出た事がない。

出たいと思わなかったというのもあるし、イマジンの本懐にも興味を見出せなかったというのもある。

そもそもイマジンの本懐はどちらかというと嫌っていた。

(人の弱みにつけ込むなんて、嫌だもん)

イマジンとは思えない考えだ。

(この人、僕の事どう思うかなぁ)

自分にとっては一番最初に会話をした人間という事もある。

大袈裟に驚かなかったからこそ、妙な期待感を抱いてしまう。

少年が『時の列車』から出ようとする。

「あ、待って!待ってください!」

イマジンは光球状態で姿を現し、声のする方向に顔を向けている。

つまり今の自分と目が合っているのだ。

だがそれは一瞬でイマジンは少年---ユーノの中に入り込んでいた。

 

ユーノは自分が幻を見たのか疑っていた。

何かが自分の身体の中に入り込んだ感覚のようなものがある。

だがそこに論理的根拠がない。

両手を見るが、外見的な変化はない。

かけている眼鏡を外すが、視力がよくなったという事もない。

「気のせいかな……」

ユーノはドアを開いて、外を出る。

「やあ。こっちは片付いたよ」

ディエンドが軽く手を挙げる。

「今のは一体なんですか?」

ユーノはブレイドやFFRのBブレードの事を訊ねる。

「手品師にとって、『死』に等しい行為とは何だかわかるかい?」

ディエンドが質問で返してきた。

「マジックの種が明るみになる事、ですよね」

ユーノは自分が知りうる限りの考えをディエンドにぶつける。

「正解。僕の戦い方も同じ様なものだから聞かないでくれたまえ」

「はあ」

そう言われると、ユーノとしても黙っているしかない。

「そうだ!教授達は……」

ユーノは万に一の望みで生存者を探ろうとする。

「残念だがここにいる僕達以外は全員死亡している。この遺跡が墓地として使われたのがせめてもの救いかもしれない」

ディエンドは黙祷をささげる。

変身している以上、変身者はどのような表情を浮かべているかは想像するしかない。

「死者に敬意を払う事をいい事だが、急ぎたまえ。ここは間もなく崩れる」

ディエンドの言うように天井からパラパラと土がこぼれ、大きな瓦礫が落下を始める。

「おわっ!!」

ユーノはスレスレに落ちてきた事に驚き、仰け反る。

「ど、どうしたら……。脱出するにしても走ってたら間違いなく下敷きになる……」

(転送魔法?駄目だ。目的地を指定する時間がない!)

八方ふさがりになりつつあるユーノをディエンドは見ていた。

「それを使おうとは思わないのかい?君は『時の列車』を知らないわけじゃないんだ」

「でも……」

「使わないなら、その『時の列車』は瓦礫の下敷きになるし君もここで死ぬよ。では僕はお先に失礼」

ディエンドは忠告をすると、カードホルダーから一枚カードを引き抜く。

カードを差し込む。

ディエンドライバー側面にマゼンタカラーで『KAMEN RIDE』と表示されて、引き金を絞る。

『AGITO』と切り替わる。

『カメンライド・アギト』

機械音声と同時に赤、青、緑のシルエットが出現して上下左右に行き来してから中心でシルエットが重なると、金色と黒色が目立つ色彩で、複眼はブレイド同様の赤色で龍をモチーフにした戦士---仮面ライダーアギト(以後:アギト)が出現した。

ディエンドはすかさず、カードホルダーからもう一枚のカードを引き抜く。

そしてディエンドライバーに差し込む。

アギトの胸部に黄色で『FINAL FORM RIDE』と浮かび上がる。

「痛みは一瞬だ!!」

ディエンドが引き金を絞る。

アギトの胸部がアギトの頭部を表している紋様と同時に『AGITO TORNADOR』へと切り替わった。

『ファイナルフォームライド。ア・ア・ア・アギト』

ディエンドライバーが機械音声で発する。

アギトの背中にバイクのシート部分が出現する。

跳躍した直後に、両腕と両脚に赤色と金色が目立つ装甲が出現する。

その装甲が命ずるままにアギトは人型から別の型へと変形を始める。

やがてアギトは愛車であるマシントルネイダーのスライダーモードと酷似した姿---アギトトルネイダー(以後:Aトルネイダー)へと変形を完了した。

ディエンドはAトルネイダーのに乗っかる。

そして、そのまま出口へと向かっていった。

残されたのはユーノだけだ。

「海東さんの言うとおりだ。このままじゃ僕は下敷きで一巻の終わりだ……」

ユーノは『時の列車』に乗り込む。

現在は一両目、車輌全体を操縦するとしたらこの車輌だけだろうと推測する。

「このバイクで操縦できると思うけど……」

ユーノは五年前の戦いの際に、デンライナーに乗車した経験はあるがどのようにして操縦しているかは知らない。

取扱説明書らしいものはここにはないし、探す余裕もない。

コントローラーとなるバイクに跨る。

アクセルを噴かす。

ブォンと鳴って前輪と後輪が回転を始める。

その直後にガッコンという音がユーノの耳に入った。

バイクの前面にあるモニターは黒い画面のままだったのに、前面の景色が映し出されていた。

「動いてる?でもこれなら!」

ユーノはバイクのグリップを思いっきり回す。

『時の列車』が線路を敷設・撤去しながら走り出した。

ガガガガガガンという音を鳴らしながら、遺跡が崩れていった。

 

ディエンドの変身を解除した海東大樹は崩れていく遺跡を見ながらポケットの中にしまいこんでいたカードケースを取り出す。

「コレを『お宝』にする事が出来る人物だったのに……」

海東にしてみれば今手にしている物は『お宝』ではなく『ガラクタ』だった。

彼の言う『お宝』には様々な捉え方がある。

誰から見ても価値があり、売却した際には高額が確実に見込める『お宝』

一部の人間には大変価値があるが、一部の人間には何の価値もない『お宝』

そして、殆どの人間にとってはガラクタ同然だがたった一人にとっては何物にも勝る価値がある『お宝』

彼はそれを時には手にし、時には護っていたのだ。

今回の目的は『お宝』は『入手』と決めていた。

しかし、それは変更された。

何故ならユーノがこのカードケースを手にした時、海東には『輝き』が見えたからだ。

この『輝き』とはいわば『手にするに相応しい』と思われる人間が物に触れたときに生じるものだ。

つまり物に『輝き』を発せられる人間というのは端から見たら『ガラクタ』と思える物がその者にとっては『お宝』になるという事になる。

「コレを『お宝』にできる彼は間違いなく、これから先険しい道を辿る事になるね」

海東は確信に近い予想をする。

『お宝』を手にした者にはそれなりにリスクが訪れる事を知っているからだ。

それが、一人の人間の人生を変えるほどの『お宝』なら尚の事だろう。

「ん?」

ゴゴゴゴゴという音が鳴り響く。

その直後に砂煙が宙を舞い、巨大な影が地中から出てきた。

砂煙から線路が出現し、巨大な影---『時の列車』が出現した。

プシューッと音が鳴ってドアが開き、ユーノが出てきた。

「はあ……はあ……はあはあ」

出てきたユーノは疲弊しており、その場に座り込む。

無理もないだろうと海東は思う。

ぶっつけ本番で自動車やバイクとは違う別物を操縦して、生き永らえたのだから。

「お疲れ」

海東はそう言いながら、ユーノの前に立ってカードケースを差し出した。

「コレは?」

「受け取りたまえ。コレは今から君の『お宝』だ」

「え、あ、どうも。でもどうして?貴方はコレを私物にすることも出来たんじゃ……」

ユーノの質問に海東はというと。

「僕が手に入れるのは『お宝』だけさ。そしてソレは君が持つことによって初めて『お宝』になって、君以外には『ガラクタ』になるとわかったから君に渡しただけさ」

「?」

ユーノは首を傾げる。

「今はわからなくてもいい。でもいずれはわかるよ」

海東はそう告げると歩き出す。

その前の風景が歪みだす。

海東はユーノに顔を向け、呟く。

 

「頑張りたまえ。仮面ライダーになる運命の少年」

 

そして今度は真っ直ぐ前を見据えて歪んだ風景の中に入り込んだ。

 

「あの人、何て言ったんだろう?」

ユーノは海東の最後の呟きを聞き取る事ができずに、首を傾げていた。

『時の列車』は空間を歪ませて、線路を敷設して走っていった。

見送ってからユーノは手にしたカードケースを見る。

「僕にとっての『お宝』か……」

海東の言っている意味が理解できない。

(これがもし、侑斗さんのゼロノスと同じシステムなら僕もなれる……)

このカードケースの中に入っているカードを用いれば仮面ライダーゼロノスに変身できるとユーノは推測する。

(でも、使えば間違いなく……)

だがゼロノスカードの効力を知っているため、その考えはすぐに打ち消されてしまう。

ゼロノスカードの効力。

それは使用者に関する記憶を周囲の者達が忘却していく事だ。

使えば二度と元の生活を歩む事はできなくなるだろう。

使用者と相手との記憶に『ズレ』が生じるからだ。

「それよりもこれからどうしよう……」

発掘隊は自分を除けば全滅である。

最悪な事に救難信号などの器具もご丁寧にプローンイマジンは破壊している。

こちらから助けを呼ぶ事はできない。

今自分がいる次元世界は臨行次元船は一応来るが、辺境中の辺境であるため一日に一回くらいしか来ない。

事情を時空管理局に伝えたいというのも本音だが、まず自分が生き残る事が先決だ。

「港に行くにしても、地図も全部壊されちゃってるからなぁ……」

こんな時自分もデバイスを持っておけばよかったと考えるが、ないものねだりをしても仕方がない。

「とにかく歩こう。もしかしたらこの世界に住んでいる人に会えるかもしれない」

ユーノはカードケースをポケットにしまいこんで歩き出す。

歩くたびに彼の身体からバサッと白い砂が零れ出す。

砂は独りでに集まって、上半身と下半身が逆転していた真っ白な状態のイマジンとなる。

「あの、待ってください!」

「え?」

背後から声がしたので、ユーノは振り向くとそこにはフェレットと仮面ライダーのイメージが混濁したイマジンがいた。

「人が住んでる所は遺跡から南にありますよ!」

イマジンがユーノが歩く方角は間違っていると忠告する。

「えーと……君はもしかして、『時の列車』で話しかけてくれた……」

ユーノは何故ここにイマジンがいるのかわからなかった。

後、何故真っ白で上半身と下半身が逆転している妙な姿なのだろうと。

「はい!僕は……。あ、すいません。僕、まだ名前ないんです」

イマジンが首をがっくりと落とす。

「僕達イマジンは契約者と契約を交わさないと、実体化できないんです」

現在このイマジンは宙ぶらりんの状態という事になる。

「もしかしてその契約者って……僕?」

「はい!」

ユーノは自分を指差し、イマジンは無邪気に首を縦に振る。

「………」

ユーノは何も言えなくなっていた。

(ここまで来ると、本格的に魔導師から離れていくね……)

イマジンに憑かれてゼロノスカードまで所持しているのだから、ユーノでなくても言うだろう。

「で、南にいけば村か町があるんだね?」

「はい!『時の列車』でこの世界の地理は大体憶えてます!」

イマジンが自信を持って言う。

「それは頼もしい」

ユーノはこの聡明だが子供っぽいイマジンを信じる事にした。

 

イマジンが指定した方角を歩いて三時間後。

 

「はあはあ……はあ……はあはあ……」

ユーノは激しく息を乱し、両肩を上下させて歩いていた。

足取りも重くズルズルと引きずっているようにも見えた。

「そういえば聞いてなかったけど、その場所ってどのくらいの距離なの?」

「えーと五十ってモニターには出てました」

「それ絶対にメートルじゃなくてキロメートルだと思うよ」

ユーノはあと何十キロもあるかなければならないと思うと、『時の列車』を手探りで操縦した事や発掘の際での緊張感などによる疲れが一気に身体に圧し掛かってうつ伏せになって倒れた。

「あ、しっかり!」

「いくら身体を鍛えてても、精神的にもう……ダメ……」

ユーノはイマジンにそう呟くと完全に気を失った。

「ど、どうしよう!僕この身体じゃ運べないし!!」

あたふたとするイマジン。

上半身下半身逆転状態でその行動を取ると、とてもシュールである。

イマジンの耳に排気音と鼻に匂いが感じた。

「人が来る!これなら!」

そう言うと、イマジンはユーノの身体に入り込んだ。

 

「行き倒れ?」

「もしかして死んでないよね?お父さん」

「まぁ待て。まずは脈を取ってみる」

ジープに乗っている壮年の男と帽子を被った少年は、倒れているユーノを見つけた。

壮年の男はユーノの脈を取る。

「大丈夫だ。生きてる。ただ相当疲れてるみたいだな」

「助けるよね?」

「当たり前だろ」

壮年の男はユーノをジープの後部座席に寝かせて、そのまま自分達の村へと走らせた。

 




次回予告

    ある村に運ばれたユーノはとある家族に手厚く看護される。
 
    その頃管理局では発掘隊が行方不明になったので捜索チーム
    が編成されていた。

    発掘品で賄う村であり、小さくはあるがそこそこ裕福だった。

    しかし、そんな村にも魔の手が迫っていた。

    第十四話 「0070年 ユーノ・スクライアの消息」
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