仮面ライダーLYRICAL A’s to StrikerS   作:(MINA)

16 / 20
第十六話 「0070年 開戦」

時間は夜。

いつもは月と星が光輝いていたが、本日はそうではなかった。

ペーシモの屋敷をユーノ・スクライアは家から失敬した双眼鏡を用いて窺っていた。

「さすがにこの辺りの支配者だからセキュリティは万全だね」

四方の監視カメラに、最新技術による指定されたナンバーでしか開錠できないセキュリティゲート。

「だけど、僕にとっては何の問題にもならない」

ユーノの足元に翡翠色のミッドチルダ式の魔法陣が展開する。

自らに周囲と同化させる魔法をかけて、監視カメラを通り過ぎてから後ろに向く。

カメラのケーブルに狙いをつけて腰に収まっているサバイバルナイフ(以後:ナイフ)を投げる。

真っ直ぐに向かいケーブルに当たってブチッと切れて、ナイフは地面に刺さる。

ナイフを拾い上げて、手に握る。

現在ユーノがかけている魔法は監視カメラの映像を誤魔化すだけでなく、サーモグラフィに映し出される熱分布も誤魔化す事ができる。

コード入力画面を凝視する。

「このタイプか……。一回でも間違えると自動的にアラームがなるシステムだ……」

となると、時間もないし一番手っ取り早い方法はゲート端末の周波数を割り出して強制的に同調させる事だ。

右掌を入力画面にかざして、右手首に翡翠色の環状魔法陣が展開する。

環状魔法陣が回転しながら、周波数を同調させている。

キュルルルルルという音を立てている。

時間にして五秒後。

ピーっという音を立てた後、セキュリティゲートが開かれる。

素早く入り込むと直後にセキュリティゲートがまた閉じられた。

最初にかけた魔法は継続中だ。

「今のところは見回りをしている守衛はいない、と……」

右掌を地面に当てて、翡翠色の魔法陣を展開する。

ユーノの頭の中に、守衛の数やペーシモのところまでの地図が叩き込まれていく。

頭の中に叩き込まれた地図を思い出しながら、現在地と照らし合わせる。

「守衛の数が僕が思っているより少ないってのがよかったよ……」

自分はペーシモを暗殺に来たから、わざわざ派手な行動を取る必要はない。

(ダクトの中を通っていくしかないね……)

ユーノは中に入るためのダクトの場所まで移動する事にした。

ダクトの前に移動すると、ユーノはカバーを掴んで力いっぱい引っ張る。

ダクトを締めているボルトが強引にはがれていく。

全てが外れてカバーを静かに置いて、ユーノはダクトの中へと入り込んだ。

ダクトの中に入って、しばらく経ってからもう一度掌を地面につけて翡翠色の魔法陣を展開する。

今度はどのダクトから出れば見つからずに済むかを探査する。

「よし!」

リスクが限りなく低いダクトへの道程を把握すると、ユーノはダクトの中を移動した。

「ここだね……」

ダクトの中なのでカバーを引っ張るではなく、押し出すようにして強引にはがす。

手ではなく、ひたすら足で蹴りを入れるようなかたちでだ。

ベコリと凹んでカバーが外れる。

音を立てないように、ゆっくりと置く。

顔を出して、周囲を見回してダクトから抜ける。

「皮肉なものだよね……。アレだけ族長からも『使わなくていい術』なのにそれが今、役立つんだからね」

ぼやきながらも、掌を床につけて翡翠色の魔法陣を展開する。

屋敷内の地図と守衛の数などが頭の中に入っていく。

「よし!」

ユーノは駆け出した。

 

 

時空管理局本局応接室。

クロノ・ハラオウンとヴェロッサ・アコースは夜も会っていた。

テーブルの上にはどちらの趣味かはわからないが、ステーキ弁当が置かれていた。

「スクライアのもう一つの顔?」

クロノはステーキ弁当を食べていた箸を止める。

「あれ、知らなかったのかい?次元世界伝説の中では割と有名な部類なんだけどね」

ヴェロッサが意外そうな表情をしていた。

ちなみに次元世界伝説とは都市伝説のようなものだと思ってもらえればいい。

クロノはその手の話はトンデモ話と思っているので、大して興味を持っていなかった。

「スクライアってあのユーノの?」

確認するように訊ねるクロノ。

「他にはないと思うよ。スクライアなんて部族の名前」

ヴェロッサはステーキを一切れ口に銜えてから噛んで、残りを白米の上に置く。

「で、一体どういう顔なんだい?」

クロノがヴェロッサを促す。

「表の顔は知っての通り、一つの場所に居を構えずに発掘や考古学などに精通している顔。もう一つは……」

ヴェロッサの言葉にユーノはゴクリと固唾を呑む。

 

「スパイ活動や暗殺を生業にしていたらしいよ」

 

その場の空気が一瞬で冷えるものになった。

「今となっては生業にはしていないけど、それでも技術だけは伝わってるらしいけどね」

「ではユーノにも?」

「まず間違いなくそういう技術はあると思うよ。まぁ披露したり誰かに教えたりしても得しないから言わないって事は十分に考えられるけどね」

ヴェロッサはさっき噛み千切ったステーキ肉の残りを口の中に放り込む。

「思えば僕はもちろん、なのは達も彼---ユーノの事を知ってるわけじゃないんだな……」

そう思い返せば誰一人彼の事を知っている者はいないだろう。

『本当』のユーノ・スクライアを知っている者はこの時空管理局の中には一人もいないのかもしれない。

 

 

ペーシモは屋敷の最上階の寝室で眠っていると予測しているユーノは最短距離を選んで進んでいく。

その間、守衛とは一度も戦っていない。

「ここだな……」

一つの部屋の前に立つ。

開き戸式のドアであり、この屋敷の中にはごくわずかしかない。

用いられるのは全てペーシモ関連だ。

「やっぱり寝室だけあって、セキュリティがついてる……」

門扉同様にセキュリティが設置されていた。

右掌をコード入力画面にかざす。

右手首に翡翠色の環状魔法陣が展開される。

環状魔法陣が回転しながらキュイィィィンという音が鳴る。

ピーと鳴った後、ガチャリと開錠が成功した音が鳴る。

ドアを音を立てないようにゆっくりと開く。

巨大なベッドが一つ中央にあり、グガーグガーといびきが聞こえる。

(ペーシモか……)

腰に収まっているナイフを取り出して、逆手に構える。

(こいつがいる限り、村の人達が苦しみ続ける……)

意を決してユーノはベッドに向かって音を立てずに歩き出す。

 

ガシャン。

 

ユーノとベッドの間に鉄格子が遮った。

「なっ!?」

ベッドからむっくりと何かが起き上がる。

「やれやれ。久しぶりだねぇ。俺のところにまで来たヤツは……」

寝巻き姿のペーシモがこちらを馬鹿にするような目線を送っていた。

「ん?見ない顔……違うなぁ。お前確か村長であるグランベールのところにいた居候の小僧だったな?グランベールに命令でもされたのか?俺を殺しにいけってな……」

ペーシモは直接村に赴かなくても、その手の情報はいくらでも手に入れられる。

「あの人達は関係ない。僕が自分の意思で来たんだ……」

「ほぉ。今時虫唾が走るくらいの正義感だねぇ」

ペーシモはニヤニヤと笑う。

ユーノは睨み返す。

「取り押さえろ!」

その直後に屋敷内にいた守衛が入ってきて、ユーノを取り押さえた。

強引にひれ伏す体勢を取らされる。

「俺を殺しても何にも変わりゃしねぇよ。別の誰かがあの村を襲って権力者が変わるだけだ。そいつは俺よりも酷い奴かもしれねぇけどなぁ」

「!!」

ペーシモを見上げながら、ユーノは自分がここに来た事を知った。

自分のしている事は何の意味もないこという事を。

本当の意味で村の住人達を救った意味にはならないという事を。

「少し痛みつけてから村に捨てとけ」

ペーシモはベッドの中に潜った。

 

空は雲が泳いでいるが概ね晴れといってもいい天気。

ドロールが、武器を携帯しながらも散歩をしようとした時だ。

一台の車が停まっており、何かを放り捨てた。

「ん?ありゃペーシモの車じゃねぇか?ゴミでも捨てにきたのかよ?」

ゴミ?を見にいってみると……。

「お、お前!?」

ドロールはガチャンと武器をその場に落としてしまった。

ゴミ---それはしこたま痛めつけられたユーノだった。

「う……うう……」

擦り傷に鞭の痕など全身に傷を負っていた。

「まだ息がある!グラン爺のところに運んでやるからな!死ぬんじゃねぇぞ!!」

ドロールは意識が朦朧としているユーノを負ぶってグランベールの家まで向かった。

「グラン爺!!」

ドロールが勢いよく、ドアを開く。

「何じゃ?騒々しい……。ドロール!すぐに部屋に運べ!」

「わかってるって!」

グランベールはドロールが背負っているものが視界に入ると、すぐに部屋に運ぶように指示した。

「見た目以上に傷が深くないというのが幸いかもしれぬな。打撲や擦過傷は目立つが骨には何の異常もない……」

グランベールがベッドに寝かしつけているユーノを手当てしながら、容態を分析する。

「しかし何でコイツがこんな目に……」

ドロールは頭を捻って考えてみるが、ペーシモにここまでやられる理由が見当たらないのだ。

「スクライア君、そういえば僕と一緒にアンタのところで立ち聞きした後から変だった……」

「まさかアレを聞いてたのか?俺と手下達の会話を!?」

ドロールの質問にフィリオは首を縦に振る。

「だからって何でコイツがわざわざ……」

それでもドロールには理解できない。

赤の他人同然の彼が命懸けでペーシモの命を奪いに行く理由がわからないのだ。

「ペーシモを殺せば儂等が救われると考えたのじゃろう。『命』を奪ったことがない人間がそこまで考えて行動した結果なのじゃ……」

グランベールの言葉にその部屋にいる誰もがひとつの決断を下す事に時間はかからなかった。

 

ベッドで眠っていたユーノの閉じていた両目がゆっくりと開き始める。

部屋の照明がオフになっているため暗いが見知った天井であり、身体の節々に痛みが走る。

「生きてた……」

暗殺に赴いて目的を果たせずに、しこたま痛めつけられたとはいえ生還できたのは奇跡としか言いようがなかった。

ベッドから起き上がる。

「ぐっ……」

痛みが襲い掛かり、顔が苦痛に歪む。

両肩を上下に揺らして、息を乱す。

「結局何もできなかった……」

ユーノはベッドに寝そべって、呟く。

自分以外の誰かだったら成功していたのではないかと考えてしまう。

ドアをノックする音がした。

「どうぞ」

「スクライア君……。よかった……」

入ってきたのはフィリオだ。

自分が目を覚ました事に安堵の息を漏らしていた。

姿は見えないがユーノには妙に感じた。

どう妙なのかはわからないが、何かが違うと感じたのだ。

「その……聞いたよ。ペーシモを殺しにいったって……」

フィリオはこちらに歩んでこない。

「失敗したけどね……」

ユーノは自嘲気味に笑みを浮かべる。

「赤の他人同然の僕達のために行ったんでしょ?本当にありがとう。村のみんなを代表させてお礼を言わせて」

「いいよ。それに僕はこれで二度も助けられたんだね……。まだ一度目の恩も返せていないのに……」

「そんなことない十分だよ。スクライア君の行動でね。僕達が取る行動は決まったんだ」

「決まったってまさか……。戦うつもり!?無茶だ!素人がどうにかなる相手じゃない!」

「ダメなんだよ。村のみんなも戦えない人達はペーシモの人質に取られてる。戦わなきゃ殺されちゃうよ」

「あいつ……」

ユーノは両手を拳にして震わせる。

フィリオ達に与えられた選択肢は一つしかないという事になる。

これから攻め込んでくる集団と戦うしかないのだ。

ギシギシッと床を踏む音が聞こえる。

フィリオがこちらに近づいてくる証明だ。

部屋の照明をフィリオがオンにする。

そこにはフィリオがいた。

だが普段被っている帽子がなく、長い髪がなびいていた。

「なのは?」

そう言ってしまうのも無理もない。

髪型をストレートにしているだけで彼女の容姿は高町なのはと瓜二つなのだから。

「そう言えば最初に助けた時もその名前を呟いてたね。恋人?」

フィリオは普段とは違う穏やかだが拒否権を許さない口調で訊ねる。

「友達……かな……」

「嘘。意識がハッキリしない中で呟いた名前だよ。友達なわけがない」

フィリオが詰め寄り、息が顔にかかる距離までになっていた。

 

「……僕の好きな人」

 

ユーノは観念したのか素直に打ち明ける。

でもその気持ちを告げる事はない。

自分は青い空を飛翔する彼女には相応しくない。

彼女にとって自分は咎人なのだから。

「やっぱりそうなんだ……」

フィリオの顔が離れると同時に声が暗くなっていた。

「フィリオ?」

「フィーユ。それが僕の本当の名前。スクライア君ごめん!」

そう言うと同時に、フィリオはユーノに抱きついた。

「本当は怖いよ……。スクライア君と一緒にこれからもいたい。でもね。みんなで決めたんだ……」

「え?」

「お前さんを逃がすという事じゃよ」

グランベールとファーティとドロールが入り、フィリオが顔を紅くしながらも離れる。

「みなさん……」

「村全員と俺達ファミリーの総意なんだよ。オメェを逃がすってな」

「俺達がこれから戦うのはペーシモのためなんかじゃない。ペーシモにたった一人で立ち向かってくれた君の為に戦うんだ。ムッティやスールもここにいれば応じてくれるよ」

「そういうこと。だからスクライア君は逃げて」

言いたい事を言い終えたのか、グランベール以外の三人が部屋を出て行った。

「最後じゃからお主が抱えている疑問を答えてやろうと思うがどうじゃ?あるじゃろ?」

グランベールは椅子を取り出して、座る。

ユーノがグランベール関連で知りたがっている事といえば、ゼロノスカードや『時の列車』の存在のこと、そしてドロールが何故その事を知っているかだ。

「貴方やドロールさんはゼロノスカードや『時の列車』を知っている口振りでしたね。何故ですか?」

ユーノはかねてから考えていた事なので、とちることなく訊ねた。

「ドロールはな、かつては儂と共にこの次元世界の『時の運行』を守っておったのじゃ」

「変身とかせずに……なるほど、サポート役だったんですね」

ユーノの解答にグランベールは首を縦に振る。

「そして先程の答えからもうわかっておるかもしれぬが、儂は……」

 

「かつてゼロノスカードを使ってゼロノスとして戦っていたんですね」

 

グランベールが答える前にユーノが先に答えた。

「でもどうしてなんですか?あの遺跡にカードと『時の列車』を放置していたという事は戦う事をやめたって事ですよね?」

ユーノはグランベールが何故ゼロノスである事をやめたのかを訊ねる。

「お主はあのカードを使えば何が代償になるかを知っておるか?」

「はい。周囲の人達が変身者に関する記憶を忘れていく、でしょ」

「知っておったのか……」

「ゼロノスに変身する人を知っていますから」

ユーノの回答に満足しているグランベールは思わず目を丸くする。

「お主、何故ゼロノスを知っているのじゃ!?」

「短く言いますが、別の世界から来たゼロノスに過去に一度会っているんです」

ユーノは自分が見つけたゼロノスカードと『時の列車』はこの次元世界のものだと考えている。

次元世界にも『時間』が存在している以上、十分に有り得る事だからだ。

「もしかして戦う事をやめた理由って……」

「そうじゃ。儂は怖かったのじゃ。周囲の人間に忘れ去られていくことがな……」

「やっぱり……」

ユーノはグランベールがゼロノスである事をやめた理由にはおおよその見当がついていた。

まともな人間は『戦う事で周囲から忘れ去られていく』という現実を受け入れるのは難しい。

桜井侑斗はその現実を受け入れて戦っている稀有な存在だ。

彼ももしかしたら、内心ではその事実に怯えているかもしれない。

だがそれをおくびにも出さずに前を向いているのだから、並みの精神力ではない事は確かだ。

(侑斗さん……)

かつて海鳴で戦った青年を思い出す。

「お主は今選択を迫られておるのかもしれん」

「選択?」

「何と何から選択するかは儂が言う事ではないかもしれんが、どちらを選んでも茨の道じゃ。ゆめゆめ忘れてはならんぞ」

グランベールは自分が何と何を選択するかを察しているのだろう。

口に出さなかったのは彼のせめてもの配慮だろう。

グランベールも部屋を出て行き、残ったのはユーノ一人だ。

ユーノに迫られた選択とは……。

ひとつはここから逃げおおせてゼロノスカードを捨てて全てを忘れて元の生活に戻るという選択。

もうひとつは全てを受け入れて戦う事を選ぶ選択。

前者はユーノの心に大きなしこりを残す事になり、心の葛藤が常に付きまとう茨の道。後者を選択すればもう元の生活に戻る事はできない茨の道が待ち受けている。

どちらを選んでも他者はユーノを責めたりはしないだろう。

彼を責めるのは彼自身だからだ。

(誰も僕に戦えなんていわない……。決めるのは僕自身なんだ……)

彼の脳裏に二人の仮面ライダーの背中が甦る。

五年前に現れ、イマジンという怪人を難なく倒した別世界の戦士。

仮面ライダー電王と仮面ライダーゼロノス。

名誉や地位や富を求めて戦ったわけではない、自らの信念と使命を貫いて戦う『戦士』だった。

その生き方が九歳とはいえ、自分に大きな衝撃を与えた。

自分もあのような力が欲しいと思うようになった。

あるいはそれに匹敵する力が欲しいと思った。

自分は『魔導師』で強くなると決めた以上、『仮面ライダー』にはなれないと決めていた。

だが今はどうだろう。

『魔導師』としてはこれ以上強くなれないと三年前に宣告され、現在は『仮面ライダー』になれるかどうかという曖昧な状態だ。

手にすれば手に入るかもしれない距離にいながら、自分は手を伸ばそうとしない。

「何で悩んでるんですか?」

ユーノの身体から砂が噴き出て、上半身と下半身が逆転したイマジンが出現する。

「ん?君か……」

イマジンを見てから、ユーノはパーカーのポケットからカードケースを取り出す。

「ソレ使えば戦ってみんなを守れるんですよね?使わないんですか?」

イマジンが純粋に訊ねてくる。

「……使えば元に戻れなくなるよ」

「じゃあ使わなきゃいいじゃないですか」

ユーノの言葉にイマジンはサラリと返す。

自分はこのイマジンに何を期待していたのだろう。

自分にとって都合のいい答えを出してくれるとでも思ったのだろうか。

「それとも使わなきゃいけないんですか?」

「え?」

イマジンの率直な質問にユーノは目を丸くしていた。

「だって、今の言い方だと自分が使わなきゃいけないって聞こえちゃいますよ」

「使わなきゃいけない、か……」

海東大樹に渡されて自分は知らず知らずのうちに変な『義務』が芽生えていたのかもしれない。

(侑斗さんは義務でゼロノスカードを使っていたのかな……。違う。あの人は本当に使わなきゃいけないときにしか使ってないんだ……)

侑斗が住んでいる世界には仮面ライダー電王である野上良太郎がいる。

電王がいる限り、ゼロノスカードの乱用は防ぐ事ができる。

つまりゼロノスは電王不在もしくは電王だけでは手に余る時に現れる。

だが次元世界には電王はいない。

でもゼロノスは存在する。

そして次元世界ではイマジンの存在が明らかになっている以上、悠長に構えていられないのも理屈ではわかる。

そして自分がそのゼロノスになれる可能性がある位置に立っているのだ。

ユーノの脳裏にはイマジンに蹂躙されているかあるいはイマジンによって滅ぼされているミッドチルダが浮かび上がっていた。

(僕は、なのはを守りたい為に強くなる事を選んだ。でも……)

悩みの色が出ていたユーノの瞳に『意思』と『覚悟』が芽生え始めていた。

ユーノはベッドから立ち上がる。

「でも、もうそんな事を言ってる場合じゃないんだ……」

今はここにいない想い人よりも、ここにいる自分を助けてくれた人達を救いたい。

『強くなる』と誓った動機を思い返す。

イマジン出現の際に危惧を感じていた。

「僕がゼロノスになれるなら……」

カードケースを強く握り締める。

「僕がゼロノスになって、誰かを守る事が出来るなら……」

彼の瞳にはもう『迷い』はなかった。

そのために大きな代償を支払う事になったとしても。

「僕は……」

彼の腰元に光の粒子が発生する。

 

「僕はゼロノスになる!!」

 

ハッキリと口に発すると同時に、腰元の光の粒子は形となっていく。

腰元の光の粒子はゼロノスベルトとなった。

光の粒子はユーノの身体エネルギーであるチャクラという事だ。

イマジンはユーノの行動を見ていた。

今、次元世界のゼロノスが誕生しようとしていた。

 

 

アンビシオン率いるソルプレーザの面々が武器を構えていた。

「いいか!あの村を手に入れることが俺達のこの世界を手に入れる第一歩だ!だからしくじりは許されん!ここで失敗すれば俺達に未来はないと思え!!歯向かう者は一人残らず屍にしろ!無抵抗な奴等は無視しろ!目当ては……」

 

ペーシモの全て!!

 

ソルプレーザ一同が同時に叫ぶ。

「行くぞぉぉぉ!!」

アンビシオンが右手を掲げると同時に部下達は武器を手にした手を天にかざして宣誓する。

その中には、はぐれイマジンと思われるイマジンが二体ほどいた。

ソルプレーザは総出で村に向かって出陣した。

 

ドロール一家&村人連合軍が勝てる確率は奇跡でも起きない限り、ゼロとなった。

 

 

 




次回予告

    遂に戦いが始まった。

    ドロール一家&村人連合軍とソルプレーザがぶつかる。

    しかし、素人の集まりがプロに勝てるわけもなく次々と倒されていく。

    イマジン二体も暴れ、もはや絶体絶命となっていく。

    その時、一人の戦士と一体のイマジンが爆煙を抜けて現れた。

    第十七話 「0070年 ANOTHER Birth」
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。