仮面ライダーLYRICAL A’s to StrikerS   作:(MINA)

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第二話 「舞台表と舞台裏」

『ゼロノスカード』

 

それは周囲の者達が使用者に関する『記憶』を忘却する能力を持つカード。

 

知らずに使った者には『後悔』が。

 

知って使う者には強い『覚悟』が必要とされる。

 

 

『皆さんの速度ならポイントまでは十五分ほどです。ロストロギアの受け取りと艦船の移動までナビゲートします』

シャリオ・フィニーノが定置観測基地から現在、目的地まで飛行している高町なのは、フェイト・T・ハラオウン、八神はやてに告げた。

「はい。よろしくね。シャーリー」

「グリフィス君もね」

フェイトとなのはが快諾した。

『はい!』

二人のナビゲーターが元気よく返事した。

「しかし、私達も今年で六年目か~」

はやて達は九歳から時空管理局で働いているので六年と既に『ベテラン』と呼ばれてもおかしくない。

「中学も今年で卒業だしね」

フェイト達は今年聖祥大付属中学を卒業する事になっている。

「卒業後は今より忙しくなるかなぁ」

なのはの言うように、この三人は中学校を卒業してからは高校に進学するつもりはない。

時空管理局の仕事を本業にしていくのだ。

はやては元々両親がいないため、その手の選択肢に異議を唱える者はいない。

財政面でバックアップをしてくれている元時空管理局提督であり、現在は地球で隠棲生活を送っているギル・グレアムは『与えられた時間を仕事だけでなくしっかりと楽しむ事を約束できるならば構わない』という条件をつけた。

フェイトの場合は家族全員が管理局員であるため、進路がそのようになる事に関してはハラオウン家全員反対を唱えたりはしなかった。

ただし、グレアム同様に『仕事に忙殺されずに人生を楽しむという事が条件』がリンディ・ハラオウンからつけられていた。

この手のことで一番悩まされるのがなのはである。

彼女は、フェイトやはやてと違ってそこまで『魔法』の世界にどっぷり浸かる必要性がないといえばない。

特に罪人扱いを受けて恩赦を貰った事もないので変に引け目になることもない。

高校に進学して掛持ちしながら業務に取り組んだからといって後ろ指を差されることはないだろう。

先の二人と違って、なのはに関しては揉めに揉めまくったのはいうまでもない。

リンディが仲裁を取り計らう中でやっと丸く収まったくらいだ。

しかし、なのはにも先の二人と同じく『条件』がつけられていた。

『気負わない事。時折は帰ってくる事。そして人生を楽しむ事』である。

保護者達がこのような条件をつけたのには理由がある。

それは『時の運行』を守っている仮面ライダー電王と仮面ライダーゼロノスを知ったことが大きな原因となっている。

彼等の存在によって、当たり前のように存在している『時間』が実は脅かされたり護られたりしているものだと知ったからだ。

誰にも称賛されずに、日の目の当たらない所で戦っている者達の事を考えると護られている側にしてみれば『時間』を大切に扱う義務が生じると感じるのは不自然なものではないだろう。

まさに生き急ぎとは真逆の事である。

生き急ぎとは限られた時間を有効には使わずにいたずらに放置している行為といってもいい。

ここにいる三人だけでなく、保護者達も教わったのだろう。

ここにはいない別の世界にいる『仮面ライダー』に。

「あの時は揉めたなぁ」

なのはは、頬を掻きながらその時の事を思い出していた。

「でも義母さん達があんな条件をつけてくるとは思わなかったよ。私達そんなに生き急いでるようにみえたのかな?」

フェイトも思い出しながら呟く。

「多分、そんな風に見えたんやろなぁ。アカンなぁ折角侑斗さん等が命懸けで護ってくれた時間やのにそんな風に使おうとしてたなんて」

はやてもしみじみ考えてから苦笑いを浮かべながら反省する。

「そうだね。今度良太郎達に逢う時に、そんな生き急いでたら怒られちゃうもんね」

「良太郎さん。怒ったら怖いもんね……」

フェイトもなのはも野上良太郎の起こった姿を思い出して、少しブルッと震えた。

「そんなに怖いんですか?」

リィンは野上良太郎を知らないため、怒った姿を知るはずもないので管理局のエースと呼ばれている二人が心底怯えたような態度を取ったので、はやてに訊ねた。

「そうやね。本気で怒った野上さんには多分やけど誰も勝てへんよ」

「へ?」

リィンが間抜けな声を出してしまう。

主の言っている事が信じられないのだ。

「シグナムやヴィータちゃんでもですか?」

「良太郎はシグナムに勝った事があるんだよ」

「ほ、本当ですかぁ!?」

フェイトの言葉に信じられない、という表情をリィンはしていた。

「うん。それは間違いないよ。私もはやてちゃんもその現場を見てるしね。それにヴィータちゃんは良太郎さんを怒らせたりはしないって心から誓っていると言ってたしね」

なのはが補足する。

「それにシグナムとフェイトちゃんは野上さんを巡ってのライバルなんやで」

リィンには実を言うとこの手の事は知らされていない。

リィンに訊ねられる事もなかったからだ。

「ふえぇ。そうなんですか~」

「は、はやて!」

「いずれはバレるんやからええやないの」

フェイトは顔を真っ赤にして抗議するが、はやては涼しい顔をしている。

「バレるってバラしたのは、はやてちゃんだよ……」

なのはがツッコミを入れる。

「自分のことを棚にあげて言わないでほしいよ。リィン。はやてはね、桜井さんから貰ったカードを毎日一時間懸けて磨いてるんだよ」

「ちょっ……フェイトちゃん!それは内緒やって言うたのに……」

「いずれはわかっちゃうんだからいいじゃない」

自身の痴態(?)を暴露されて、はやては顔を紅くして睨むがフェイトは悪戯っぽい笑みを浮かべていた。

「はやてちゃ……マイスターはやては、ユウトさんって人が好きなんですか?」

左肩に乗っかっているデバイスが無邪気に主に訊ねる。

「な、なななななに言うてんの!?リィン!わ、私と侑斗さんはそんな関係やあらへんよ!それに私の片想いやし……」

真っ赤な顔が更に真っ赤になって否定しようとするはやてだが、語尾がどんどん小さい声になっていた。

「二人ともそろそろ……ね?」

この二人がこういうやり取りをすると必然的になのはが仲裁役になってしまう。

なのはは二人が純粋に一人の人間を想える事が羨ましいと思った。

自分にも正直、そう想える人がいるのかどうかと訊ねられると「気になる人がいる」と答えてしまう。

『好き』か『嫌い』かの二択だと『好き』だと答えられる。

だがこの『好き』は、フェイトやはやてが一途に想い続けている原動力となっているそれ(・・)とは明らかに違っている。

それにその人物は明らかに何かが変わったようにも思えた。

根拠はないし、そのような事を当人に訊ねたとしてもはぐらかされるのがオチだろう。

相手は自分よりもはるかに口達者なのだから。

「みんなは卒業後はどうなるの?私は教導隊の一員としてあちこち回る事になるんだけど……」

なのはは話題を切り替えると同時に自分の今後の凡その予定を告げた。

「私は長期の執務官任務を受ける事になるね」

フェイトも答える。

「私は卒業の少し前にミッドの地上にお引越しや。ミッド首都

クラナガン

の南側で家族六人で暮らせる家。えーカンジのトコを探し中やねんけどな。決まったら遊びに来てな。二人とも」

「うん!」

「行く行く!」

フェイトとなのはが二つ返事で答える。

「リィンも、はやてちゃ……マイスターはやてと一緒にお待ちしてるです!」

リィンも笑顔で言う。

「あはは」

「そんな堅い言い方しなくても『はやてちゃん』でいいんじゃない?」

「う……」

何度も言い換えるリィンがおかしいのかフェイトは笑い、なのはは呼びたいようにに呼べばいいのではと

打診するが、リィンとしてはそれを甘んじる気はないようだ。

四人はそのような談笑をしながら、空を駆けていた。

 

 

北部定置観測基地では、護送隊のナビゲートをするためにグリフィス・ロウランとシャリオ・フィニーノがモニターに映る映像の変化を注意しながら見ていた。

「あれ?発掘地点と通信が繋がらない?」

シャリオが異変を口に出した。

「本当に?」

グリフィスが確認するように訊ねる。

シャリオはもう一度キーボードを叩きながら試みるが、結果は同じだった。

「本当だ……」

「一体どうなってるんだろ……」

グリフィスはシャリオが凝視している画面を見るが、『通信不能』と表示されていた。

またも警報が鳴った。

「今度は何?これってまさか……」

グリフィスが担当している場から鳴り響いており、席にモニターを戻ってみてみるとそこには見たことがない三人が映し出されていた。

グリフィスは中央モニターに映し出す。

「もしかしてこれって……」

シャリオも映し出された映像を見て、驚愕の表情を浮かべていた。

そこに映し出されていたのは二体のイマジンに一人の青色が目立つ戦士だった。

「もしかして最近噂になってる……」

「仮面ライダー……」

シャリオの続きをグリフィスが締めた。

 

 

目的地が視認できる範囲になると、四人はその光景を見て異変を感じた。

それは『楽しい談話』の時間の終了にもなる。

四人の表情が『少女』から『魔導師』になっていた。

現場上空に辿り着くと、発掘をしていた大学生二人が十体近くの楕円型の機械に襲われていた。

「現場確認。機械兵器らしき未確認体が多数出てます!」

「ん!」

リィンが解説すると、はやてが頷いた。

「フェイトちゃん!救助には私が回る!」

「私は遊撃する!はやてとリィンは上から指揮をお願い!」

「「了解!」」

なのは、フェイトが自身の役割を告げ、はやてとリィンは了承してその場で散開した。

「おし!やるよリィン!」

はやては左掌に乗っかっているリィンに呼びかける。

「はいです!」

リィンは了承して両手を広げてそのまま、はやての胸元に飛び込んだ。

激突はせずに溶け込むようにして入っていった。

 

『ユニゾン・イン!』

 

はやての髪が色素の薄い色になり、瞳の色が青色となる。

右手には『騎士杖』であるシュベルトクロイツが握られていた。

「中継!こちら現場!発掘地点を襲う不審機械を発見!強制停止を開始します!」

なのはが北部定置観測基地へと連絡する。

『本部に連絡します!』

「お願い!」

シャリオが返答し、フェイトは念押しに頼んだ。

「あ……」

「ああ……」

大学生二人は機械兵器の攻撃にもはや『最期』が来ると直感した時だ。

機械兵器が中央にある発射光が輝きだして、発射しようとした時だ。

なのはが素早く着地して、右手を前に出す。

バリア系の魔法障壁を展開させる。

機械兵器が発射されたレーザーを見事に防ぎきる。

バシィンと言うような音が鳴り響くが、その魔法障壁には破損はおろか亀裂一つ入っていない。

なのはが大学生二人を無事に守っているのを確認してからフェイトはバルディッシュ・アサルトを天にかざす。

「プラズマランサー!!」

『イエッサー』

フェイトの左右にバチバチと稲妻が帯びた黄金の魔力球が数個出現した。

やがてそれは黄金の環状魔法陣と(やじり)鏃となる。

「ファイアっ!!」

フェイトの掛け声と同時に黄金の鏃は一直線に機械兵器に向っていく。

機械兵器は『避ける』という事を知らないのか全弾直撃する。

「大丈夫ですか?」

「は……はい」

「あれが何故襲ってきたかはわかります?」

なのはは助けた大学生二人に襲われた事情を訊ねる。

「わかりません。コレを運び出していたら急に現れて……」

大学生の一人が両手で抱えているバンドで止められている木箱をなのはに見せた。

『広域スキャン終了。人間はあの二名だけです!』

はやての内にいるリィンが告げた。

「ん!」

はやてはその報告に頷く。

「あれは機械兵器……?」

『該当データはありません』

フェイトは腑に落ちない表情をしており、バルディッシュ・アサルトが短く眼前の敵が過去にも存在していたかどうかを照合した結果を告げた。

(当てたけど、倒した感触がまるでない……)

黄金の鏃は確かに機械兵器に直撃した。

だが、破壊したという実感がまるでないのだ。

何故そのように感じるかの答えは機械兵器自身がネタをばらしてくれるのを待つしかない。

『中継です!やはり未確認!危険認定破壊停止許可が出ました!』

シャリオが本部の指示を告げてくれた。

「了解!発掘員の救護は私が引き受ける!なのはちゃん!フェイトちゃん!思いっきりやってええよ!」

「「了解!」」

はやてがGOサインを送り、二人が承る。

機械兵器が何かを展開した。

足元に魔法陣が展開していないので、魔法ではないと思われるが似ているものだろうと推測しながら三人は凝視する。

『マスター』

「フィールドエフェクト?」

レイジングハート・エクセリオンが(なのは)の判断を仰ぐ。

基本魔法防御四種の一つであり、『フィールド』とは範囲内で発生する特定効果(温度変化等)の発生を阻害する事による防御である。

なのはが先程用いていた『バリア』系とは違い、展開範囲が広く効果によれば手も足も出せなくなってしまう厄介なものにもなる。

「様子見でワンショット!レイジングハート!」

『アクセルシューター』

なのはは機械兵器に向けてレイジングハート・エクセリオンを構える。

今から放つ一発を決め手とは考えず、機械兵器がどのような効果を持つフィールドを展開したのかを探るための一発だ。

ガシャンとレイジングハート・エクセリオンのヘッド付近のカバーがスライドしてガシャンと音を立て、蒸気を噴出しながら空になった薬莢を排出する。

「シュートォォォォ!!」

大きな桜色の魔力球から光線が走り先端には小型の魔力球が数個、機械兵器に向って飛んでいく。

機械兵器に直撃すると思われたが、展開したフィールド内に桜色の魔力球が侵入すると『球』としての形を保てなくなりやがて微粒子となって消滅した。

「無効化フィールド!」

なのはは展開したフィールドの正体を見極めた。

AMF(アンチマギリングフィールド)……。AAAランクの魔法防御を機械兵器が……」

フェイトはその現実を受け入れながらも、このようなものを制作した者がまともな輩ではないと本能的に感じた。

(はわわっAMFって言ったら魔法が通用しないってことですよ!?魔力結合が消されちゃったら攻撃が通らないです!)

はやての内にいるリィンが狼狽していた。

AMFはいわば魔導師を無力にする事さえ可能なフィールドであり、戦闘キャリアの薄いリィンの言う事はしごく尤もな事である。

「あはは。リィンはまだちっちゃいなぁ」

はやてはうろたえるリィンとは対照的に落ち着き払っていた。

(ええっ!?)

はやてが言う『ちっちゃい』とは身体的にという意味ではなく、精神的にという意味であり『幼い』とか『経験が足りない』という意味が含まれていたりする。

「憶えておこうね。戦いの場で「これさえやっとけば絶対無敵」なんて事はそうそう滅多にないんだよ」

なのはは真剣な表情でリィンに伝える。

レイジングハート・エクセリオンはガシュンガシュンとカバーをスライドしながら音を立てて蒸気を発しながら空薬莢を二個排出する。

フェイトのバルディッシュ・アサルトもカバーがスライドして内部に組み込まれたシリンダーが回転してガシュンと叩きつけるようにしてカバーが元の位置に戻った。

その動作を計二回行う。

「どんな強い相手にもどんな強力な攻撃や防御の手段にも、必ず穴はあって崩し方もある」

はやてが解説を始める。

その間にフェイトを中心にして、黒い雷雲が出現する。

ゴロゴロゴロと雷の音が鳴り始める。

なのはは最寄の地面にレイジングハート・エクセリオンを向けて威力が小さい魔力砲を放つ。

地面が抉れ、いくつかの小さな岩となり桜色の環状魔法陣を帯びて浮上していた。

「魔力が消されて通らないなら、『発生した効果』の方をぶつければええ」

はやての言葉どおりに二人は『発生した効果』を目的とした魔法を繰り出そうとする。

「たとえば小石……」

はやてが例える。

「スターダストォォ」

なのはの方は発射態勢が整っていた。

「たとえば雷……」

更にはやてが例える。

「サンダァァァァ」

フェイトも同じ様に態勢を整えて、後は発射するだけだった。

 

「「フォールゥゥゥゥ!!」」

 

なのはが環状魔法陣を帯びた小岩を、フェイトが魔力で発生させた雷雲から生じる雷を一斉に機械兵器に向って振り下ろした。

魔力を帯びた小岩は隕石のように。

雷雲から降り注ごうとしている雷は天の裁きのように。

機械兵器に触れ、その原型を歪めて機能を停止させた。

小岩に潰されて機能を停止したものや落雷して内部メカがショートして停止したものなど様々な残骸となって転がっていった。

(ふええぇ。すごいですぅ)

「二人とも一流のエースやからね」

内のリィンが感心しているが、はやてにしてみれば慣れた後景であった。

なのはとフェイトの攻撃範囲外にいた機械兵器が向きを変えて離れようとしていた。

「追おうか?」

「ううん。ええよ。こっちで捕獲するから平気やで」

なのはが申し出てきてくれるが、はやては丁重に断った。

二人にばかり働かせて高みの見物というのが嫌なのだ。

(リィン。頼んでええか?)

(はいです!)

はやては内のリィンに逃亡する機械兵器の捕獲を任せることにした。

(発生効果で足止め捕獲というと……)

機械兵器対策を講じながらリィンは使用する魔法を考える。

足元に三点の小魔法陣からなる三角形のベルカ式の魔法陣が展開される。

(こうです!!)

リィンが発動すべき魔法を放つ。

逃亡を謀ろうとしている機械兵器にリィンの足元と同じ魔法陣が出現して形を変えて動きを縛るような動きをする。

 

凍てつく足枷(フリーレンフェッセルン)!!)

 

機械兵器が氷漬けとなってその動きを停止した。

氷から噴き出る冷気が寒気を誘うが相手が機械なので反応はない。

「お見事!」

(ありがとうございますですぅ!)

なのはの褒め言葉をリィンは素直に受け取った。

難が去り、護送隊の代表としてフェイトが大学生二人と掛け合っていた。

「これがそのロストロギアですね」

「はい……。中身は宝石のような結晶体で『レリック』と呼ばれています」

わかる範囲で詳細を聞いているフェイトをなのはとはやては見ていた。

『…し……こちら……』

聞き覚えのある声がなのは達の耳に入った。

「こちらアースラ派遣隊。シグナムさんですか?」

なのはは送信者の名を確認する。

『その声はなのはか?そちらは無事か?』

「機械兵器の襲撃があったんですが……。まさかそっちも?」

『こちらは襲撃ではなかったがな。危機回避のため、既に無人だったのが不幸中の幸いだったが発掘現場は何もない。先程ヴィータとシャマルを緊急で呼び出した。あと悪報と朗報の二つがある』

シグナムが『悪報』と言うからには相当悪いものだろう。

なのは、はやて、リィンそして大学生との話が終わったフェイトは真剣な表情になっていた。

『まず悪報からだが、この次元世界にイマジンが一体いる。目的はわからん』

『イマジン』という単語を聞いただけで四人の表情は強張った。

出くわした場合は『交戦』ではなく『撤退』が魔導師達の暗黙のルールとなっている。

圧倒的に力量差がある者達なら迷わずこのルールどおりに行動する。

それなりに戦える者達はよほど危機に迫らない限りは戦ったりはしない。

そのくらい『仮面ライダー』がいない今の別世界(ここ)ではイマジンが脅威になっているのだ。

『そして朗報だ。そのイマジンと噂になっている青い仮面ライダーが交戦中との事だ』

 

 

Aゼロノスとプロキオンはクリケットイマジンと睨みあっていた。

プロキオンは両腕をクロスさせてフリーエネルギーを用いてシャキンと三本の鋭い爪を両手から生やす。

「レッツ、ゴー、バトルです!」

そのままクリケットイマジンに向っていった。

その速度は恐ろしく速い。

クリケットイマジンと間合いを詰めると、右フックを繰り出す。

しかし先に当たるのは拳ではなく三本の爪であるが。

ブォンという音が鳴り、クリケットイマジンはその場にしゃがんでから空振りになるがそのような音が鳴る時点でプロキオンの放った一撃は速い上に重たいのだという事を理解した。

「言葉遣いに騙されたぜ。テメェ、ガキの癖に随分と生意気な戦い方してるじゃねぇか!!」

後方に下がってクリケットイマジンはフリーエネルギーで二丁の拳銃を作り出してから、構えて狙いを定めて引き金を絞る。

「!!」

プロキオンはその場で高く跳躍するとその直後にフリーエネルギーの光線がクリケットイマジンに直撃した。

「ぐふぅ!」

プロキオンの奇襲はこの攻撃のための布石ならば抜群のコンビネーションである。

跳躍したプロキオンはクリケットイマジンの後方に着地する。

Aゼロノスの右手には銃が握られていた。銃といっても完全に『銃』の姿をしているわけではない。

ナイフのようにも見える形状だ。

Aゼロノスの専用ツールであるデュアルガッシャー(以後:Dガッシャー)である。

Aゼロノスは空いている左手を腰元に添えているDガッシャーのパーツに手を添えてから外す。

そして、下にあるゼロガッシャーの先端に似たパーツに縦連結させてから拳銃の引き金と密接している側のグリップを握ってから引き抜いた。

フリーエネルギーによって『銃』としての機能を持つDガッシャーバレットモード(Dバレット)へとなった。

左側のDバレットもクリケットイマジンに向ける。

そして引き金を絞る。

ガガガガガンとフリーエネルギーの光線がたった一回引き金を絞るだけで数発発射された。

右手のDバレットも人差し指を引き金に添えて絞る。

左と同じ様にたった一回、絞るだけで数発のフリーエネルギーの光線が発射される。

そのままAゼロノスはクリケットイマジンへと歩み寄る。

「いだっ!あだぁ!いだだだだぁ!!」

クリケットイマジンの体から後ろに足を下げながら火花が飛び散る。

Dバレットから発射される光線一発分の威力は仮面ライダー電王ガンフォームのデンガッシャーガンモード(以後:Dガン)の弾丸一発の二分の一しかない。

つまり一発食らってもイマジンには決定的なダメージを負わせる事は出来ないのだ。

しかし、DバレットはDガンにはない利点もある。

それは連射性である。

Dガンは一回引き金を絞って一発しか発射されないが、Dバレットは一回絞っても数発発射されるのだ。

それでパワー不足を補っているわけだ。

クリケットイマジンは前方と後方を交互に見比べる。

「ええい!クソォ!二対一じゃ分が悪いぜ!だがなぁ電王やゼロノスじゃねぇテメェ等ポッと出に負けてやるわけにはいかねぇんだよ!」

そう言いながら、両腕を水平に構えて引き金を絞る。

銃口から弾丸が発射され、立ち止まらずにその場で駒のように回り始める。

弾丸を避けながら、Aゼロノスとプロキオンは顔を見合わせて頷きあう。

「変身!」

プロキオンは全身を輝きだして、イマジンからフェレットへと姿を変えた。

クリケットイマジンはまだ回りながら乱射している。

Aゼロノスは跳躍してクリケットイマジンの頭上で逆立ちの態勢をとってから二丁のDバレットの銃口を向けて引き金を絞る。

銃口から発射された光線は無数の雨のようにして降り注ぐ。

「ぐわあああああっ!!」

前面にしか注意がなかったため、頭上からは完全に死角となっていた。

「変身!」

プロキオンがフェレットからイマジンへと変えて、その場で軽く跳躍して腰に捻りを加えて左飛び回し蹴りを放つ。

右側頭部に直撃して、左へと飛ばされるクリケットイマジン。

地面に転がるがすぐに起き上がる。

「ユノさん!」

プロキオンが主に次の攻撃を委ねる。

頭上攻撃から無事に着地したAゼロノスは両腕を引いた状態でDバレットを手放す。

スーッと真っ直ぐに落ちるDガッシャーのグリップを順手に握る。

それだけでDバレットからDガッシャーダガーモード(以後:Dダガー)となる。

デンガッシャーやゼロガッシャーと違って組み替える必要がないのも先の二つにはない利点といってもいいだろう。

そしてその二本のDダガーのグリップを向き合わせてそのまま寄せて連結させる。

上下に刃があり、フリーエネルギーで少しだけ大きくなる。

Dガッシャーランスモード(以後:Dランス)へと切り替えてから、クリケットイマジンへの間合いを詰めて駆ける。

「せえいっ!!」

Dランスを袈裟に振り下ろして、火花を飛び散らせてから、

「はああっ!!」

右切上へとDランスで切り上げる。

相手に何かをさせずに繰り出した攻撃なのでクリケットイマジンは防御をする間もなく、斬撃を食らう。

「ぐわあああっ!!」

Aゼロノスは間合いを開けるために後方へと飛びのく。

中腰になって、振りかぶる。

そしてDランスを投げた。

Dランスは手裏剣のように縦回転しながらクリケットイマジンへと向っていく。

回転は次第に増していき、速度も上がる。

クリケットイマジンに回転する刃が触れる。

ガリガリガリガリと容赦なく刃が抉りながら宙を舞う。

DランスはそのままUターンしてAゼロノスの元へと向っていく。

Aゼロノスは右手をかざすとパシッとDランスを受け止めた。

火花を跳び散らせているクリケットイマジンを一瞥してから、Dランスを握った手を下ろして踵を返す。

「契約者ののぞ……み……ぐうおあああああ!!」

肉体がダメージに耐え切れなくなり、クリケットイマジンは爆発を起こした。

プロキオンがAゼロノスに駆け寄る。

「やりましたね!ユノさん」

「うん。それじゃ帰ろっか」

Aゼロノスとプロキオンが無限書庫へと戻る手筈をとろうとした時だ。

彼等の前方には、なのは達が交戦したあの機械兵器が群れを成して現れた。

「アレ全部壊さないと帰れないみたいだね……」

「うえ~」

Aゼロノスは向ってくる機械兵器を睨みながらDランスを分離してDダガーへと戻し、プロキオンも悲鳴のような声を上げながらも両腕から三本の爪を出現させていた。

 

 

第12管理世界。

生活するには問題ない場所であり、自然に恵まれて気候もよくて訪れる人間も決して少なくはない。

そのような世界に『聖王教会』がある。

中央教堂では一人の女性が宙に映っているモニターを見ながら、打ち合わせをしていた。

『ええ。片方は無事に確保しているのですが、もう片方は爆発で発掘現場ごと消滅(ロスト)してしまっています』

「そうですか……」

女性は落胆するが、人命が下手に奪われていないだけマシだと思って良しとする事にした。

『爆発現場はこれから調査と捜索を行います』

女性の通信相手はクロノ・ハラオウンだった。

「クロノ提督。現場の方達はご無事でしょうか?」

『ええ。現地の発掘員にもこちらの魔導師達にも被害は何もありません』

「そうですか……。よかった」

クロノの言葉を聞き、女性---カリム・グラシアは安堵の息を漏らした。

『現場発掘員の迅速な避難は貴女からの指示をいただいていたからこそですね。騎士カリム』

「危険なロストロギアの調査と保守は管理局と同じく聖王教会の使命ですから。名前だけとはいえ、私は管理局の方にも在籍させていただいていますしね」

カリムは聖王教会教会騎士団であり、時空管理局理事官でもある。

「こちらのデータでは『レリック』は無理矢理な開封や魔力干渉をしない限り、暴走や暴発はないと思われますが、現場の皆さんには十分気をつけてくださるようお伝えいただけますか?」

『はい。それでは……』

クロノは了承すると、通信を切った。

「ふう……」

通信が切れてモニターが消えると、カリムはどっと疲労感に襲われたのか両肩を撫で下ろした。

「騎士カリム。やはりご友人が心配でしょうか?」

カリムの背後から一人の修道女が声をかけた。

「シャッハ」

カリムは後ろを振り返りながら修道女の名を呼ぶ。

シャッハ・ヌエラ。

カリム同様。『聖王教会』に所属する修道女である。

「よろしければ私が現地までお手伝いに窺いますよ。非才の身ながらこの身に賭けてお役に立ちます」

シャッハは謙虚ながらも、自身の意思を表に出す。

「クロノ提督や騎士はやては貴女の大切なご友人。万が一の事があっては大変ですから」

カリムはシャッハの言葉を聞きながら、抱えた不安が消えていくように感じた。

「ありがとうシャッハ。でも平気よ」

カリムはシャッハに顔を向ける。

「はやては強い子だし、今日は特に祝福の風(リインフォース)はもちろん守護騎士(ヴォルケンリッター)達も一緒で、はやての幼馴染の本局のエースさん達もご一緒だとか」

カリムが根拠を打ち明ける。

「それは私の出番はなさそうですね。大人しく貴女のそばについているとしましょう。あと、お茶をお淹れしますね」

「ええ。お願い」

シャッハは恭しく頭を下げてから、望むことを告げるとカリムは笑顔で応じた。




次回予告

第三話 「ファーストコンタクト」
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