仮面ライダーLYRICAL A’s to StrikerS 作:(MINA)
次元航行艦アースラのレクリエーションルームでは同窓会的任務が無事に終了し、打ち上げとして盛り上がっていた。
「助けてください!ユノさん!」
プロキオン(フェレット)が愛らしい表情に涙腺を浮かべながら、ユーノ・スクライアに懇願していた。
「ロッキーくーん♪」
「ロッキーちゃん♪逃げちゃ駄目ですぅ~♪」
いかにも触ってその毛並みを堪能したがっている高町なのはとリィンがいた。
目がキラキラ輝いており、なのはの両手がわきわきと動いていた。
リィンはサイズが小さいためか、抱き枕のようにしてプロキオンを堪能しようとしているらしい。
プロキオンがユーノの頭の上で身体を丸くして怯えている。
しかし、可愛い物好きにはそのような仕種すら心を揺さぶられる材料にしかならない。
なのはとリィンの瞳が更に輝いているように見えた。
「なのは、リィン。ロッキーが凄く嫌がってるように見えるんだけど……」
ユーノは相棒が本気で怯えているようにも見えた。
その後景を周囲の者達は「また始った」というような表情をしており、誰も止めようとはしなかった。
「そんな事ないよ♪ね、リィン」
「はいです。リィン達はロッキーちゃんのフカフカな毛並みを堪能したいんですぅ♪」
なのはとリィンが嫌がるような事はしてないと言い張る。
「嘘です!なのさんもリィンさんも僕がグッタリするまで離さないんですよ!僕には拷問です!フェレット権を尊重してほしいです!」
「フェレット権って何だよ……」
プロキオンの主張をヴィータはツッコミを入れるが、彼の耳には入っていない。
その主張を聞いたなのはとリィンはというと。
「ロッキー君がそんなに嫌がってるなんて……」
「リィンは自分の欲望に忠実すぎたです……」
結構効いていた。
(僕ももっと主張しておけばよかったかな……)
ユーノは物怖じせずに主張するプロキオンを羨ましく思いながら、自身がフェレットの姿で生活していた時の事を思い出していた。
邪な感情を抱く男性ならば代わってほしいと言うだろうが、ユーノにしてみれば地獄そのものだった。
いくらフェレットとして鳴き叫んでも全然聞いてくれない。
人語を話せば珍生物扱いになるため、話したくても話せない。
元は人間でフェレットに擬態しているだけなので、常識や倫理等は全て『人間』を前提として行動してしまう。
しかし、可愛いもの好きの人(主に女性)はその辺りの事を察してくれない。
とにかく無防備なのだ。
平気で裸になるし、スキンシップを図ってくるしユーノ自身抗議をしても一向に聞き入れてもらえなかった事が多数なので、今のプロキオンの気持ちは痛いほど理解できる。
プロキオンはイマジンとはいえ性格は子供でも、性別は『男』なのだ。
若い女性の裸を見て、喜ぶような好色家ではなくむしろ羞恥心が勝るといってもいいほど初心なのだ。
「ユーノ君」
「ユーノさん」
プロキオンに抗議されて落ち込んでいるなのはとリィンがこちらを見ていた。
様子から察するに、プロキオンの機嫌を直してほしいとの事だろう。
「まぁ僕もフェレット姿のときは散々弄られたからね……」
女の子が落ち込む表情を見るのはあまり好きではないが、プロキオンの心情も理解できるので板挟み状態になっていた。
「ロッキー」
「何ですか?僕怒ってるんですよ。フェレット権が尊重されるまで戦うんです!」
頭上のプロキオンのご機嫌を伺ってみるが、絶賛不機嫌中だった。
「フェレット権ってなに?」
今度はフェイト・T・ハラオウンが訊ねるが、誰も回答してくれなかった。
「ロッキー。二人とも反省してるようだから許してあげたら?」
主にそのように言われると、プロキオンとしては従うかどうかは悩んでしまうところだ。
なのはとリィンを見るプロキオン。
反省しているようにも見える。
(女の子はマショウだと司書の人が言ってたです。でも……)
自分のせいで二人の少女が落ち込んでいる。
それを冷たく放置できるほど、自分は大人なイマジンではない。
「なのさん。リィンさん」
プロキオンが加害者的二人に声をかける。
「なに?ロッキー君」
「何ですか?ロッキーちゃん」
「フェレット権を尊重してくれるならいいですよ」
プロキオンが条件をつける。それを守れるなら許すという事だ。
「わかった。ロッキー君の権利---フェレット権を尊重するよ」
「リィンも尊重するです!」
二人の言葉をユーノとプロキオンを聞いている。
「ユノさん。お願いします」
「了解」
ユーノは頭上に乗っかっているプロキオンを両手で掴んで、なのはに差し出した。
なのははプロキオンを受け取り、凝視する。
「あ~。やっぱり可愛いよぉ」
「本当ですぅ」
なのはとリィンはプロキオンを見て、にへらと表情を緩める。
「なのは、リィン。ロッキーとの約束破っちゃ駄目だよ?」
「「は~い♪」」
なのはとリィンはプロキオンに嫌われないように、可愛がる事にした。
「フェレット権って何なん?」
八神はやてが訊ねるが、やっぱり誰も答えてはくれなかった。
プロキオンの背に乗っかっているリィンはなのはにある事を訊ねていた。
『戦技教導隊』の事である。
「一般イメージでの『教官』は『教育隊』の方になるね。私達『戦技教導隊』の主な仕事は魔導師用の新型装備や戦闘技術をテストしたり、最先端の戦闘技術を作り出したり研究したり、それから訓練部隊の仮想敵として演習の相手。想定される敵の能力や陣形をシュミレーションするからいろんな飛び方や戦い方をするんだよ」
なのはは一口ジュースを口に含む。
「あとは預った部隊相手に短期集中での技能訓練……。これが一番教官っぽいかな。私はこれが一番好きなんだけどね」
なのはは大まかな説明を終えた。
「要はアレだな。戦時のエースが戦争のないときに就く仕事だ。技術を腐らせず有用に使うためにな」
「うーん。まぁそんな感じではあるんですが……」
シグナムの端折った説明になのはは唸りながらも頷く。
「でも、うちの航空教導隊にも色んな年齢や経歴の人がいるんですけど、みんな飛ぶのが好きなんですよね。一緒に飛ぶ人や帰り着く地上が好きでだから自分の技術や力で自分の好きな空と地上を守りたいって。そういう思いは一緒なの」
なのはが語りながら笑顔になっていく。
誰もがその言葉に耳を傾けていた。
「なのはがずっと憧れていた夢の舞台だもんね……」
グラスを片手に持っているフェイトが付け足す。
「夢はまだまだこれからだけどね!」
なのはは右手を振り上げて、『もっと頑張る』という表れであった。
「勉強になりました!ありがとうございました。なのはさん!」
「どういたしまして」
リィンはプロキオンから降りて、はやての元へと戻っていった。
そんななのはをユーノ、フェイト、ヴィータが見ている。
「なのはは本当に嬉しそうだけど、ユーノはやっぱり心配でしょ?あの事故の後、私達三人は付っきりだし……」
フェイトがジュースを一口飲んでから、苦笑を浮かべながら訊ねてきた。
「あたしは心配じゃねー」
ヴィータはそっぽを向いて呟きながらチャーハンを一気に口の中に放り込んでいた。
「まぁ心配は心配だけど……。なのはが初めて空を飛んだときから何となくは思ってたんだ」
シグナムと話しているなのはを見ながらユーノは言う。
「なのはには青い空がよく似合うって」
ユーノは本人も無意識なうちに何か眩しい物でも見るような表情をしていた。
プロキオンが指定席であるユーノの左肩に飛び乗る。
ユーノは手にしたグラスをテーブルに置く。
「ユーノ?」
「少しアースラの中を散歩してくるよ。ロッキーは初めてだからね」
「そうなんだ。行ってらっしゃい」
「ありがとう」
ユーノは背を向けてレクリエーションルームを出ようとする。
「良太郎?」
一瞬だがフェイトにはユーノの背中がここにいるはずのない野上良太郎の背中に見えた。
「ん?どうしたの?フェイト」
「え、ううん。何でもないよ」
フェイトは両手をバタバタと振って慌てて誤魔化した。
自動ドアが閉じて、ユーノの姿がなくなるとフェイトは自身が何故そのような事を口に出したのかわからなかった。
「フェイトぉ、いくら良太郎に会いたいからってユーノの背中を見てソレはねーじゃねーのか?」
ヴィータが呆れながらもフェイトをからかう。
「ち、違うよ!私もわからないんだけど何でかユーノの背中が一瞬良太郎の背中に見えたんだよ」
「?」
言っている側のフェイト自身もわからない事を聞いている側のヴィータがわかるはずがなかった。
アースラの廊下をユーノとプロキオンが歩いていた。
プロキオンは新しい事を知る事が楽しいのかキョロキョロと見回していた。
「ごめんね。プロキオン」
ユーノの謝罪にプロキオンは首を傾げる。
「いいですよ。居辛かったんですか?」
「そうだね。覚悟はしてたけど見るのが辛くてね」
ユーノの表情は辛さを耐えているものだった。
決して、幼馴染達の前では見せない表情だ。
「みんな。夢に向かっているんだなって改めて思い知らされたよ……」
「ユノさん……」
人は誰でも夢を見る権利があるし、叶える権利もある。
だがそれは『時間』が存在しているからだ。
そして自分はその『時間』を護るために戦う事を選んだ。
同時に夢を見る権利も叶える権利も捨てた。
その事に後悔はない。
そもそも自分にはそんな事を後悔する『権利』もないのだ。
「『今』の僕があるのは『あの人達』のお陰だからね」
ユーノとプロキオンはガラガラの食堂に入る。
「もうすぐですね……」
「うん……」
プロキオンの言いたい事をユーノは理解できるので首を縦に振るだけだった。
レクリエーションルームでは話が盛り上がっていた。
今度はフェイトの番となっていた。
宙に映像写真を出現させていた。
フェイトと共に様々な子供が写っていた。
みな笑顔を浮かべているのが印象的だ。
「執務官の仕事で地上とか違う世界に行った時にね。事件に巻き込まれちゃった人とか、保護が必要な子供とか保護や救助をした後お手紙くれたりすることがあるの。特に子供だと懐いてくれたりして……」
「フェイトちゃん。子供に好かれるもんね~」
フェイトが詳細を説明し、なのはが率直な感想を述べた。
「あー!エリオ、しばらく見ないうちに大きなったなー」
はやてが映像写真に映っている一人の少年の名前を口に出していた。
「あーこいつもその手の子供かー。エリオ・モンディアル六歳祝い?」
ヴィータが映像写真の下に書かれている内容を口に出して読み上げる。
「うん。色々な事情があってちょっと前から私が保護者ってことになってるの。法的後見人はうちの義母さん」
「元気で優しいいい子だよ」
笑顔でなのはが付け足した。
「フェイトちゃんが専門のロストロギアの私的利用とか違法研究の捜査とかだと子供が巻き込まれてるケースが多いからなぁ」
はやてが解説しながらも映像写真を見る。
後ろでシャマルが「かわい~」と言っていたりする。
「うん。悲しい事なんだけどね。特に強い魔力や先天技能のある子供は……」
フェイトがどこか悲しげな笑みを浮かべる。
今こうして写っている笑顔になるまではそれなりの経緯があった。
身体の傷は治す事は出来ても、心の傷は簡単には消えない。
こうして笑顔を向けている子供達とて完全にその傷が消えたわけではない。
心の傷を癒すには荒療治か長い目で見るかどちらかしかないだろう。
自分は出生の事実を告げられたとき、荒療治で立ち直った側だ。
でも、そこには常に見守ってくれた人がいた。
(私がこうして子供達と関わったりお世話を焼いたりしてるのも良太郎が昔、私にしてくれた事から始っているのかもね)
振り返ってみると、そのように考える事も出来ていたりする。
「だからお前はそれを救って回っているんだろう」
「そーだよ」
シグナムとアルフ(幼児)が背中を押すように言う。
「子供が自由に未来
ユメ
を見られない世界は大人も寂しいですからね」
フェイトは穏やかだが、強い覚悟を持った瞳で告げた。
「そういう意味ではお前は執務官になれてよかったのだろうな。試験に二度落ちた時はもう駄目かと思ったぞ。野上がいない間に合格できてよかったな」
シグナムがフェイトをからかう。
「あうっ!シグナム。貴女はそうやってことあるごとに……。それに私は良太郎に言ったんです。絶対に諦めないってだから良太郎がいようがいまいが私が恥ずかしいと思うのは諦めた時だけです。それにシグナムこそどうなんですか?私の事をからかっていますけど、良太郎と会った時何も変わってないではその……」
フェイトが負けじと言い返す。
「……それもそうだな」
シグナムは自覚したようだ。
あれから六年。自分は何一つ変わっていない事に。
「その点、はやてさんはすごいわよね」
「上級キャリア試験一発合格!」
リンディ・ハラオウンが切り出し、エイミィ・リミエッタが締めた。
「私はそのタイミングとか色々と運がよかっただけですから……。レアスキル持ちの特例措置もありましたし……」
「またまたぁ」
エイミィがはやてに「ご謙遜を」というような口振りでからかう。
「凄い勉強してましたもんね」
「あの時から『試験』と聞くと心配で心配で……」
なのははその頃の事を思い出し、シャマルはまるで受験生を持った母親のような口振りだった。
ちなみにフェイトとシグナムはどんよりと落ち込んでいたが、誰もフォローには入らなかった。
「レアスキル保有者とかスタンドアロンで優秀な魔導師は結局便利アイテム扱いやからなぁ」
はやては疲れたのか近くにあった椅子に腰掛ける。
「適材が適所に配置されるとは限らへん」
なかば愚痴に近い事をこぼしていた。
「はやてとヴォルケンリッターの悩みどころだなぁ」
アルフがマンガ肉を食べながらザフィーラ(獣)にも別のマンガ肉を食べさせていた。
「でも、はやてちゃんの目標通り部隊指揮官になれば……」
「そのための研修も受けてるじゃない」
「準備と計画はしてるんやけどな。まだ当分は特別捜査官として色んな部署を渡り鳥や」
なのはがはやての目標を語り、フェイトがはやての近況を言う。
はやては現実を語りながら、リィンに皿に乗っている料理を食べさせていた。
「はやてちゃん。色んな場所に呼ばれちゃうから、お友達とかできづらいのがねぇ」
シャマルは、はやての人間関係に『友達』と呼べる人種が少ない事を懸念していた。
『渡り鳥』と自称するだけあって、はやて達は『巣』と呼べる腰を落ち着けるようなところがない。
メリットとして、様々な人脈を獲得する事は出来る。
デメリットしてはその付き合いが『広く浅く』になってしまうため信頼関係を築き上げるのにかなりの時間を要する事になる。
「いや友達は別に。もう十分に恵まれてるし」
シャマルの懸念をはやてはやんわりと流す。
「でも経験や経歴を作ったり人脈作りができるのはいいことですよね」
「まぁ確かに」
フェイトの台詞に焼き鳥を食べているシグナムは同意する。
「陸士部隊は海や空と違って部隊ごとの縄張り意識みたいなもんが強いから、その辺を肌で感じてみるとええってクロノ君も教えてくれたしな」
はやてはリィンに料理を食べさせる。
「まぁ部隊指揮官はなったらなったで大変そーやし、どこかで腰据えて落ち着けたらそれはそれで……ゆー感じやね」
はやてはおぼろげながらも自身の未来を語っていた。
「落ち着ける場所。見つかるといいよね」
「私も二人に追いつかななぁ」
なのはが希望先が叶う事を願い、はやても感謝を込めて笑顔で返した。
「ユーノ君はどう?ってあれユーノ君は……」
なのはが今度はユーノの近況を聞こうと思っていたのだが、そこには当の人物はいなかった。
ユーノとプロキオンは食堂ではなく、個室を覗いていた。
「ここがアースラでの個室だよ。ほとんど寝るだけ部屋だけどね」
「寝るだけ部屋?」
聞きなれない言葉にプロキオンは首を傾げる。
「寝る以外にはここに戻る事がないから寝るだけ部屋って僕は呼んでる」
ユーノが解説すると、プロキオンは納得する。
「次は転送ポートへと行こうか」
「はい!」
特に急がない足取りでユーノとプロキオンは艦内見学を続行していた。
なのははレクリエーションルームを出て、単身ユーノとプロキオンを捜していた。
アースラは広いとっても迷路ではない。
それに勝手知ったる何とやらであるため、どこに何があるかは大まかに把握している。
(ユーノ君……)
なのはは言い知れない不安のようなものがあった。
この不安は割と前から時折あった。
(いつからだろ……。ユーノ君が遠い人のように感じるようになったのは……)
今まではいて当たり前の存在だった。
自分が困った時、いつでも相談に乗ってくれた。
『無限書庫』は自分にとって心休まる場だった。
なのはがユーノの事を気になりだしたのは、自身が重傷に遭った時だ。
あの時、ユーノは自身の責任のようにして責めていた。
「僕が魔法の世界に巻き込みさえしなければ、こんな目に遭わずにすんだのに」と言って。
まるで『償い』のようにして、彼は自分のリハビリに付き合ってくれた。
自身が完治してからもユーノの『自分を責める』という姿勢は変わらなかった。
その度に「気にしていない。自分を責めなくていい」というような事を、なのはは言う。
ユーノはその度に笑みを浮かべて、お茶を濁すような言葉を吐く。
そして結果は変わらない。
(ユーノ君。やっぱり今でも気にしてるのかな……。アレは私の責任なのに……)
自分が重傷に遭った事に、ユーノに責任はないといえばない。
ユーノの周りに『変化』を感じるようになったのも、完治してからだろう。
食堂に入るが、誰もいない。
それは目に見える『変化』ではなかったので、すぐにはわからなかった。
ユーノが『変わった』と感じたのは今から一年前のあの二つの出来事だろう。
一つは五年に一度行われる時空管理局主催の魔法戦競技会『
参加資格は年齢制限なしではあるが、魔導師ランクに制限があって下は『ランクなし』からで上はA+
エープラス
までとなっている。
ユーノの魔導師ランクはAだったので、参加資格はある。
ユーノが参加する事になったと聞いたとき、なのはは驚いた。
その手の事に積極的にならないユーノが何故?と真っ先に思ったくらいだ。
結果としてはユーノが優勝した。
幼馴染とその仲間達も観戦しており、誰もが祝福の声やら宴会やらを催そうと企んでいた。
なのはも労いの言葉をかけようと思った。
その時、なのはは見た。
優勝者の顔には何の感情も入っていないことを。
まるで優勝した事に、感動も安堵もない、どうでもいいというような投げやりな表情をしていた。
その時、なのははユーノが『変わった』と確信した。
(その後からだっけ。ユーノ君が行方不明になって、戻ってきた時にはロッキー君がいたんだよね……)
もう一つはユーノが発掘の仕事に携わった際に行方不明になった事だろう。
二ヶ月近く音信不通になっており、もしくは死亡したのではないかとまで囁かれた事もあった。
なのはは仕事に取り組みながら、ユーノが無事に帰ってくることを願っていた。
ユーノが無事に帰還してすぐだろうか。彼が『変わった』と思えたのは。
以前のような暗さがなくなったのはいいが、何かを決意したように思えた。
何を決意したかはわからないが、そして現在に至るというわけだ。
「あ!ユーノ君!ロッキー君!」
なのはが声を上げると、艦内見学をしていたユーノとプロキオンが手を振ってくれた。
なのはと合流したユーノとプロキオンは二人と一匹のパーティ編成で歩いていた。
「そうなんだ。ロッキー君にアースラの中を見せてあげてたんだぁ」
なのははユーノからレクリエーションルームから抜けた理由を聞いて納得していた。
もちろん、それは建前である。
本当は居辛かったなんて事は口が避けても言えない。
「はい!いつも本棚ばっかりだから凄く新鮮で面白かったです!」
プロキオンは無邪気にそのように言う。
建前が始まりであっても物事を純粋に楽しめるのがプロキオンの長所である。
「よかったねロッキー君。でもそれなら私も一緒に行きたかったなぁ」
なのはは不満をこぼしながらちらりとユーノを睨む。
「でも、なのは。夢中で話してたじゃない?話の腰を折る気にはなれなかったからね」
「む~」
ユーノの最もな言い分になのはは頬を膨らませて唸って抗議する。
そんな仕種を見て、ユーノは笑みを浮かべる。
「あ、そうそう。ユーノ君は最近どうなの?」
「どうって?仕事の事?プライベート?」
「うーん。お仕事もだけどプライベートも知りたいかな」
「仕事は暇か忙しいかで言えば忙しいね。クロイノの資料請求は相変わらずスタッフ泣かせだし、プライベートっていっても休みの日は本を読んだり、学会に提出する論文書いたり、なのはと出かけたりとするくらいかな」
なのはは聞き終えると、ユーノの両肩を掴んでいた。
「ユーノ君!」
「は、はい」
思わぬ迫力に慇懃に返してしまう。
「私が言うのも変かもしれないけど、もっと遊んだ方がいいと思うよ!ユーノ君、このまんまじゃ寂しいお爺さんになっちゃうよ!?」
なのはは勝手に未来を予想しているが、何故か疑問になっていた。
「なのは。僕の未来を想像するのはいいけど、何で疑問形になっちゃうの?」
「だってぇ、ユーノ君、本当に『お爺さん』になれるのかどうか心配で……」
「僕は桃子さんや士郎さんじゃないから『お爺さん』になるよ」
「本当?」
なのはがずずいと顔を寄せる。
その目には『疑い』が篭っていた。
「私達がお婆さんになっても、ユーノ君はお爺さんになりそうにないような気がするんだよね……」
「根拠は?」
「うーん。私の勘じゃ信用できない?」
「魔法がらみでない、なのはの勘はどうもね~」
思いっきり疑っていた。
「ひどいよ!ユーノ君」
なのはは両手を高くかざして『怒ってます』というような仕種を取るが、ユーノにはそれが微笑ましく思えてしまう。
そんなユーノを見たなのはも笑顔になっている。
(最初はこの笑顔を守りたいから強くなりたいって思ってたんだっけ……)
今は違う。
今は『なのはだけ』の為に戦っているわけではないとハッキリと言える。
今は『時の運行』を護る為に戦っている。それがその世界に住んでいる人々を護る事になると信じてだ。
「ユーノ君?」
「ん、何?なのは」
「どうしたの?ジーっと私見てたけど顔に何かついてる?」
「いや、何でもないよ」
ユーノは腹の内を探られるのを避ける為に誤魔化した。
「お休みできたらさ。また海鳴においでよ。翠屋のケーキご馳走するよ♪」
なのはは、ユーノに休暇が出来たら海鳴に来るように促す。
「そうだね。久しぶりに食べたくなってきたよ」
「僕も食べたいですぅ」
「うん。ロッキー君も来たらご馳走するからね」
プロキオンが純粋に喜ぶ姿を見て、なのはとユーノも笑みを浮かべていた。
二人と一匹はその後も談笑しながら、レクリエーションルームへと足を進めた。
*
クロノ・ハラオウンとヴェロッサ・アコースは時空管理局本局の廊下を歩いていた。
「クロノ君。君から見てどうだい?君が見守ってきたエース達は?」
「……なのはやはやて達の事か?今更僕が語る必要はないさ。それぞれ優秀だよ」
ヴェロッサの質問に対して、クロノは「何を今更」というような表情をしていた。
「しかし三人ともまるで申し合わせたように技能と能力がバラけてるよね」
ヴェロッサが件の三人に関して口を開く。
「稀少技能と固有戦力持って支援特化型で指揮能力を持ち、仮面ライダーゼロノスとファーストコンタクトをした経歴がある八神はやて特別捜査官」
ちなみに武装隊では一尉扱いである。
「法務と事件捜査担当。多様な魔法と戦闘力で単身でも動き、仮面ライダー電王と出会い最初に戦闘した経験を持つフェイト・T・ハラオウン執務官」
はやての次にフェイトのことを語るヴェロッサ。
フェイトが電王と戦闘した事は今のフェイトにしてみれば閉まっておきたい『若気の至り』だったりする。
「部隊メンバーを鍛え育てる事が出来て、こと戦闘となれば単身でも集団戦闘でもあらゆる状況を打破してみせ、人類に対して友好的なイマジンと最初に接した『勝利の鍵』高町なのは二等空尉」
最後になのはの事を語って終えた。
「三人揃えば世界の一つや二つ軽々と救ってくれてみせそうだなってさ。かの三提督の現役時代みたいに」
「夢物語ではあるがな。それに今、管理局は次元犯罪者だけを相手にしているわけにはいかないからね。本当に夢物語だよ」
「イマジンかい?」
クロノが途端に真剣な表情になり、ヴェロッサも釣られて同じ表情になる。
「ああ。奴等は次元犯罪者よりずっと性質が悪い。個人の戦闘能力が魔導師でいうAAA-だからね」
それだけでまともに対処できる存在が限られてくるというものだ。
「でも、そんな夢物語を現実にしてくれそうな存在があるのも確かだ」
「仮面ライダーかい?」
ヴェロッサの一言にクロノは首を縦に振る。
「彼女達と彼等が手を取り合えばそれこそ本当に夢物語が実現できそうだけどね」
クロノが締めくくった。
「クロノ君はやっぱり優しいお兄ちゃんだねぇ」
「なんだそれは……」
ヴェロッサのからかいにクロノは苦笑するしかなかった。
(仮面ライダー---青いゼロノスもその部類に入るみたいだし、少し調べてみようかな)
ヴェロッサはクロノと共に歩きながらもAゼロノスの単独調査に取り掛かることを決意した。
こうして同窓会的任務は幕を閉じた。
次回予告
第六話 「G・W。二度目の出会い」