仮面ライダーLYRICAL A’s to StrikerS   作:(MINA)

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第六話 「G・W。二度目の出会い」

次元航行艦アースラのレクリエーションルームでの打ち上げは締めに入ろうとしていた。

「あ、そや!二人ともG・W《ゴールデンウィーク》の連休!」

八神はやてが、思い出したかのように高町なのはとフェイト・T・ハラオウンに告げる。

「はやてちゃんの研修先の近くの温泉地なんだよね?」

「お休みの申請は出してあるよ」

なのはが旅行先の場所を確認し、フェイトは既に準備は整ってあると告げた。

「ホテルはもう予約してるからな。ホンマはアリサちゃんやすずかちゃんも来れたらよかったんやけど……」

はやても抜かりはないと告げるがアリサ・バニングス、月村すずかが不参加というのは残念でならなかった。

「ユーノ君も~」

なのはも不満顔を浮かべてユーノ・スクライアを見る。

「まぁ、女の子達でってことで……」

「ごめんなさい。なのさん」

ユーノはお茶を濁すような曖昧な返答で返し、プロキオン(フェレット)は申し訳なく頭を下げて謝罪した。

「ごゆっくりどうぞ」

「私達も緊急任務がなければ途中からでも合流します♪」

シグナムが三人(主にはやて)に慰労の言葉を送り、シャマルは後から合流すると告げる。

旅行先のことについて、盛り上がる面々をユーノとプロキオンが温かい目で見ている中ザフィーラ(獣)とアルフ(幼女)が寄ってきた。

(ユーノ、アンタ本当に参加しないのかい?)

アルフが念話の回線を開いて、ユーノに訊ねた。

(G・Wは僕にとっては忘れられない事があるからね……)

ユーノの表情が一瞬だが暗くなった。

(ゴメン。無神経だったね……)

アルフも思い出したのか、頭を下げる。

誰も見ていないというのが、せめてもの救いだ。

(スクライア。あれから一年も経過している。自分を責めるのはよせ)

ザフィーラはユーノが自責のあまりに自身の『存在』を蔑ろにしているのではないかと、懸念していた。

(ザフィーラさん。まだ一年『しか』経過していないんですよ)

ザフィーラの言葉にユーノは反論する。

(そうか……)

ザフィーラはそれ以上の言葉は何の意味もないと判断したのか、それ以上は口を開かなかった。

 

 

同窓会的任務から約二週間が経過した。

時期はG・W真っ只中となり、時空管理局局員も例外ではなく休暇届を提出するものが続出していた。

ここ『無限書庫』も例外ではなかった。

地下格納庫ではプロキオン(イマジン)はAライナーに荷物を詰め込んでいた。

テントにワインに当面の食料とぎっしりだ。

プロキオンはそれらを軽々と持ち上げて、Aライナーの中へと入れていく。

『ユノさん。荷物は粗方詰め込みましたっ!』

「わかった。ありがとう」

プロキオンの報告に端末で操作していてユーノは満足し、感謝の言葉を返す。

司書長室ではユーノは自身が休暇している間の『無限書庫』の運営を指示するための資料を作成していた。

「よしっ!できたっ!」

端末に入力を終えると、ユーノは資料をプリントアウトする。

その枚数は結構なものである。

「僕とプロキオンが休むだけでこれだけのシミュレーションがでてくるとは思わなかったよ」

ユーノは眼鏡をカチリと直しながら、溜め息をつく。

「ま、アンタが抜けるだけでそれだけの穴になっちまうってのが現実なんだけどねぇ」

司書長室にはアルフが三人分の紅茶を持ってきてくれた。

「ほい。プロキオン!こっちおいでぇ。アンタの分もあるよぉ」

『はーい!』

その三十秒後には地下格納庫にいたプロキオンは司書長室の直通エレベーターから降りてきた。

「いただきます!」

プロキオンはイマジンモードのまま合掌してから、紅茶を飲む。

「結構な数だねぇって、あたしがいない時の事も想定してのシュミレーションってワケかい……」

アルフは資料に目を通しながら、何故これだけの量になってしまったのかを改めて知った。

『無限書庫』の要となる人物が不在になる事を全て想定しての資料なのだという事を。

「で、ユーノ」

「なに?アルフ」

アルフは紅茶を一口飲んでから、対面で飲んでいるユーノに視線を向ける。

「しつこいけどさ、アンタ本当に参加する気ないのかい?」

アルフとてこちらの事情は知っている。

自分が今回の温泉旅行に不参加を表明したのを。

そしてこの事を、なのは達が知らないという事を。

「ごめん。参加は出来ないよ。というよりも参加する気になれないんだ」

ユーノは椅子から離れて立つ。

「そうかい……」

アルフは何も言わないようにした。

彼の抱えている荷物を下ろす事が出来るのはユーノ《彼》か、彼と共に歩む覚悟を選んだ者の誰かなのだという事を。

それから一時間後にユーノは『無限書庫』のスタッフに引継ぎを行うと、そのままAライナーに乗り込んで発車させた。

 

ミッドチルダ北部臨海第8空港。

G・Wだけあって、人が賑わっていた。

その中で一人の少女---ギンガ・ナカジマが受付の前に立っていた。

「お待たせしました。ご用件はなんでしょう?」

受付嬢が笑顔で訊ねてきた。

「あの……迷子の呼び出しをお願いしたいんです」

ギンガが緊張しながらも、口を開く。

「はい。ではまず、お客様のお名前をお願いします。それから出発された場所も……」

受付嬢が必要事項をギンガに告げながら、端末に手続きの準備を始めていた。

「はいっ。ミッド西部エルセアから来ました。ギンガ・ナカジマです。迷子になったのは、わたしの妹で……多分エントランスの辺りではぐれたと思うんですけど……」

ギンガは事の顛末を受付嬢に話す。

 

「名前はスバル・ナカジマ。十一歳です」

 

最後に名前をフルネームで告げた。

 

「んー。おねーちゃん、ここにもいない……」

少女---スバル・ナカジマは単身、姉のギンガを捜索していた。

台詞とは裏腹に表情には落胆の色はなかった。

「じゃあ今度はあっち♪捜索開始ー!」

はぐれてしまったギンガを見つけることが最優先事項なのだが、好奇心に勝てるはずもなくスバルは目に付いた別の場所へと駆け出した。

 

空港内の輸送物資仕分け室。

ひとつの光球がその中に誰に気づかれる事なく、入り込んだ。

その光球はやがて人型へと象っていく。

象られていく姿は二足歩行ではあるが、『人間』ではなかった。

もず型のイマジン---シュライクイマジンである。

「さーてお宝お宝っと♪」

シュライクイマジンは仕分け室で保管されている物を物色し始めた。

その中には『危険物扱い』と明記されている木箱もあった。

 

 

目的の次元世界に到着したユーノとプロキオンはキャンプの準備をしていた。

停車させているAライナーからプロキオンは荷物を下ろしていた。

ユーノはテントを張っていた。

あらゆる次元世界を放浪しているため、決まった住居を持たないスクライア族はテント生活が身体に染みこんでいるためその手際は慣れたものだった。

テントを張り終えたユーノは、周囲を見回す。

見渡す限り街や村はおろか、人っ子一人いない寂しい風景しかなかった。

あるのはテントを張っている対面にある一つの慰霊碑と二つの墓標があるだけだった。

「ザフィーラさんが言うように、あれから一年にもなるんですね……」

プロキオンも思い出しながら呟く。

「まだ一年さ……」

ユーノはザフィーラに返した台詞をプロキオンに返す。

その表情は打ち上げの際に一瞬だけ見せたものと同じで暗かった。

暗い雰囲気になり始めようとすることを察したかのようにAライナーから警鐘が鳴り出す。

「イマジン!?」

プロキオンの表情が険しくなる。

ユーノは持参している携帯端末を起動させて、イマジンの出現世界を検索する。

カタカタカタとキーボードを叩く音が響く。

「ミッドチルダの臨海第八空港に一体のイマジンが出現してる。目的は……」

更に空港のメインとなる端末にハッキングして、ユーノはイマジンが出現した理由を探る。

空港にイマジンが出現するとなると、『VIPの殺害』が真っ先に浮かび上がる。

乗客リストが出現するが、その中にはVIPと称される人物は一人も該当しなかった。

このイマジンは『殺人』以外が目的という事になる。

(殺人以外となると……)

端末のキーボードを中指と薬指で軽くタンタンタンとリズミカルに軽く叩く。

端末を用いる際に考え事をする仕種だ。

「!!」

ユーノの思考が固まったのか端末のキーボードを素早く叩く。

モニターに映し出されたのは、輸送物資仕分け室に保管されている物品のリストだった。

物品名と現物写真を対比する。

(写真から見ても、イミテーション(紛い物)ばっかりだ……。このイマジンが贋作コレクターと契約を交わしていればそれだけで動く動機にはなる)

美術品系は時として真作より贋作に着目される事もある。

考古学等に関わるユーノはその事を知っていた。

(でも贋作だとしても、粗悪なものばっかりだ。見る眼のある人ならすぐに贋作だと見破れる……。ん?)

物品リストの中にユーノにしてみればあからさまに怪しい物が目に入った。

『危険物扱い』と現物写真からも読み取る事が出来た。

(質量兵器?これじゃあまりにだし……)

ユーノの両目が大きく開く。

(まさか……)

ユーノの中で『危険物扱い』の中身が何なのかが明らかになろうとしたときだ。

「あ!ユノさん!見てください!!」

プロキオンが大声で端末に表記されているモノを指差す。

「どうしたのって……」

ユーノはプロキオンが告げたい事がなんなのかを端末に映っている現在の臨海第8空港の映像を見て理解した。

紅蓮の炎が覆うように空港を燃やしていたのだ。

燃え盛っている空港の近辺の空は夜なのに、茜色の空になっていた。

「行くよ!プロキオン」

「はい!ユノさん!!」

一人と一体はAライナーに乗り込んだ。

Aライナーの車輪はガタンと回り、空の一部に生じている空間の歪みに向かって線路を敷設しながら向かっていった。

 

 

「ふえ~。ミッドの地上も首都と北部は結構違うねぇ」

なのはは北部に足を踏み入れて、周囲を見回しながら感想を述べた。

「こっちの方は自然が多いから観光スポットも多いんだよ」

フェイトがガイドマップに記載されている内容を読み上げていた。

首都と違い、自然が満ち溢れており心が癒されるようだ。

二人の表情は強張ったものでも険しいものでもなく、自然な表情になっていた。

「はやてちゃんやリィンとの待ち合わせの時間までどのくらいだっけ?」

「ええとね。あと二時間、かな……」

なのはの問いにフェイトがジャケットのポケットから懐中時計を取り出して、パカッと蓋を開けて時刻を見る。

「それって良太郎さんに貰ったんだよね?」

「うん」

フェイトが愛用している懐中時計の送り主は、なのはも知っている。

「あれから六年も経つけど、その……電池切れたりしないの?」

なのはがおそるおそる訊ねる。

「そういう心配はないよ。この時計は『機械式』だからね」

「機械式?」

フェイトが懐中時計の形式を答えるが、なのはにしてみれば首を傾げるだけだった。

「懐中時計には『機械式』ともうひとつ、『クォーツ式』があってね。私の持ってる機械式だから電池の交換とかの心配はないんだよ」

「へええ~」

ちなみに『機械式』は竜頭を回して手で巻かなければならず、毎日もしくは数日に一度は行わなければならない。

対して『クォーツ式』は、先程なのはが言ったように電池で動いている。

手巻きの煩わしさや誤差修正などを考えると、『クォーツ式』に軍配が上がるが『機械式』ならではの『コチコチ音』を好む利用者も多いためどちらがいいかというのは完全に利用者任せになってしまうのが現実だ。

「逢えるって信じてるんだよね?」

「うん。良太郎が言ってたからね。いつになるかはわからないけど、また逢うのは未来でって」

なのはは一途に逢える事を信じているフェイトが羨ましく思えた。

一人の人間を一途に待ち続ける。

ドラマ等のフィクションならありがちなものだが、現実にそれを実行しようとして成功した者は殆どいない。

「頑張って。フェイトちゃん!」

「うん!」

なのはは親友の悲願が達成する事を心から願って応援した。

 

管理局武装隊陸士104部隊。

はやては隊士服の上着を着用しながら、外へ出ようとしていた。

「はやてちゃん。なのはさん達は空港からホテルに向かってるそうです」

側で宙に浮いているリィンが近況を報告していた。

「はぁい」

はやては理解すると、即座に返す。

「じゃ、ちょっと外回ってそのまま休暇に入りまーす」

はやては近くに局員にそのように告げると、隊舎を出た。

「はいよ。八神一尉。非常回線は開けといてくださいよー」

局員の一人が釈迦に説法を説くかのごとく、出て行くはやてに告げた。

はやては振り向かずに手を振って了承していた。

「はやてちゃん。外に回ると言ってましたけど、どのくらいの予定なんですかぁ?」

「ん?そうやね。時間にして一時間くらいかなぁ。回るだけやからさほど時間はかけへんよ」

深く込み入った仕事ならともかく巡回のようなものなので時間をかけるつもりは最初からないと、はやてはリィンに告げる。

「楽しみですねぇ」

リィンの頭には既に温泉旅行のことで頭がいっぱいだった。

身体全身にもそれがハッキリと出ている。

はやてはそんなリィンを見て、笑みを浮かべる。

『回線失礼します!八神一尉!』

突如、非常回線が開かれた。

歩を進めていたはやてだが、その場で停まる。

「どないしたんですか?」

『実はミッドチルダ北部臨海第8空港で火災が発生しましたので、至急救援活動に向かってください!!』

「了解です。すぐ向かいます」

はやての表情は管理局員の表情となっていた。

「はやてちゃん……」

「リィン。休暇はなしやで」

はやての表情で、リィンはこれから何が起こるのかは大体の予想が出来た。

 

ミッドチルダの空の一部が歪んで、線路が敷設されて『時の列車』であるAライナーが出現した。

モニターには臨海第8空港が映し出されていた。

「どうします?このまま行きますか?」

AライナーのコントローラーであるマシンANOTHERホーン(以後:Aホーン)に跨っているプロキオンが訊ねてきた。

「他ならともかく、ミッドチルダ《ここ》ではイマジンのいる現場に直でAライナーで向かうのは後々面倒だからね」

ユーノはそう告げると、二両目のガトリングを抜けてから三両目のマガジンへと足を進める。

三両目のマガジンは格納庫となっており、一台の青色がメインカラーとなっている大型装甲車が置かれていた。

T-REXの頭部を髣髴させるレックスランダーだ。

「コレに乗っていく」

「コレも十分目立つと思いますけど……」

ユーノの決断に異を唱えるつもりはないが、プロキオンとしてはAライナーで現場に向かうのもレックスランダーで向かうのも大差ないのではと思ってしまう。

「陸地を走るのと空を翔るのだったら、大きく違うよ」

ユーノは言うと同時にゼロノスベルトを出現させて、カチリと腰に巻く。

バックル上部のチェンジレバーをスライドさせる。

カードケースを取り出して、ゼロノスカードを一枚抜き取る。

青色のカラーリングが目立つ側を表にしている。

「変身!」

ゼロノスカードをクロスディスクに挿入《アプセット》する。

『ベテルギウスフォーム』

電子音声が発すると同時に、ヴァイオリンが奏でるミュージックフォーンが流れ出す。

黒色と銀色のオーラスキンに包まれてから、青色が目立つオーラアーマーが装着される。

頭部の銀色のデンレールからネドケラトプスの頭部を髣髴させる電仮面が走り出して、装着される。

そして両肩、両下腕、両ふくらはぎから突起が出現する。

Aゼロノスに変身を終えてからレックスランダーを見る。

レックスランダーのキャノピーが自動的に開く。

Aゼロノスとプロキオンは乗り込む。

その直後にキャノピーは自動的に閉じられた。

ブゥゥゥンという鈍い音が起動音となっていた。

一人と一体の暗かった正面はモニターが映し出される。

『レックスランダー。発進完了シークエンス開始。現在十パーセント』

モニターには発進完了までのバーと十パーセントと図と数字で表示されていた。

『二十パーセント』

レックスランダーに組み込まれているAIが告げる。

『五十パーセント。駆動系システム設定完了。残りの五十パーセントで武器システムの設定にかかります』

ウィィィンというどこか切れのある音へと変更されていく。

「そういえばユノさんはレックスランダーの武器ってどのくらい知ってるんですか?」

退屈になってきたので、プロキオンは隣に座っているAゼロノスに訊ねる。

「殆ど知らないなぁ。何せ走らせたことはあるけど、武器を使う場に出くわした事なんてないからね」

レックスランダーは今回が初使用というわけではない。

何度も使用した事があるが、レックスランダーの装甲は威力のない魔法では傷一つどころか汚れ一つつけることも出来ない。

威力のある魔法でも、搭載されているAMF発生器を用いれば無効にする事が出来る。

防御に関しては恐らく現存する兵器の中では間違いなくトップクラスだろう。

そのため相手が自滅してくれているので、こちらが攻撃に転ずる必要もなかったわけだ。

『コンプリート。レックスランダー発進まであと二十秒』

レックスランダーの後輪がコロコロと回転して後方へと下がっていく。

ガチャンと音が鳴り、マガジンの後扉が開いてレックスランダーの車体が乗っかるとスロープのように伸びて、地面スレスレに留まる。

『レックスランダー発進。よい運転を』

レックスランダーを支えていた後扉が外れて、収納されていく。

ボゥンとバウンドして前輪後輪含めて計八個のタイヤ(前輪が二個、後輪が左右に二個ずつ)が道路に付着する。

「レックスランダー。発進!!」

ギュルルルルという音を鳴らしながら、レックスランダーが目的地へと走り出した。

 

 

臨海第8空港の輸送物仕分け室からシュライクイマジンが身体に纏わりついている煤を叩いていた。

「まったくお宝は手に入れねーわ。ちょっと扱い間違ったら爆発しちまうわ踏んだり蹴ったりだぜ」

この空港の火災原因を作ったのは紛れもなく、このイマジンである。

『危険物扱い』というラベルが貼られていた木箱を乱暴に扱った直後に起きたものだ。

シュライクイマジンとしては契約者との契約を叶えられなかったのは不本意だが、そこまで真剣なものではなかった。

契約者が欲深な上に人《イマジン》使いの荒い人物なので、契約者とは利害だけの関係でしかないと言い切れる。

「契約者《あいつ》の所に戻っても、ネチネチ言いやがるだけだしなぁ。ストレス発散でもするか」

シュライクイマジンはそう言って、仕分け室を出た。

辺り一面は炎に包まれているのだが、イマジンである彼には何の問題もなかった。

 

 

はやては一台の中継車とも思われる車輌の上に乗っかって、モニターを展開させて陣頭指揮を取っていた。

「二〇三。四〇五。東側に展開してください!魔導師陣は防壁張って燃料タンクの防御を!」

表情は深刻なままで緊張が解けていないところからすると、それだけ状況が最悪な方向へと向かっているという事になる。

(事態が全然よくならへん。私が考えてるよりもずっと火の広がりが速い!!)

内心では焦りたいところなのだが、そんな事をしても好転しないというのは経験上、はやてが一番知っていることだった。

「はやてちゃん。駄目です!まるっきり人手が足りないですよぉ!」

背後からリィンが降りてきて、弱音が混じった事実を告げてきた。

「せやけど首都からの航空支援部隊が来るまで持ちこたえるしかないんよ。がんばろ!」

リィンの事実に焦りが募るばかりだが、はやてはリィンを励ます。

空港を呑み込まんとする炎を、はやては負けじと睨んでいた。

 

空港に一筋の金色の光が向かっていた。

バリアジャケットを纏ったフェイトである。

『航空魔導師本局〇二《ゼロツー》。応答願います』

「こちら本局〇二、T《テスタロッサ》・ハラオウンです」

フェイトが非常回線の相手に応対した。

『八番ゲート付近に要救助者の反応がありますが局員が進めないんです。お願いできますか?』

(局員が進めない?障害物?あるいは炎の広がりが凄まじいから?)

フェイトはそのような状況に追い込まれた原因を考えるが、中断する。

「八番ゲート……、バルディッシュ!」

右手に握られている相棒に視線を向ける。

『ルート検索終了。二分以内に到着します』

短くバルディッシュ・アサルトが告げた。

「すぐに向かいます!」

目的地がはっきりとわかると、フェイトは更に加速した。

金色の光が音速を超える音を鳴らした。

 

臨海第8空港に向かってレックスランダーが駆けていた。

『目標地点まで到着時間は今から十分後です』

AIが計算した時間を告げてくれた。

右手にアクセルレバーを握っているAゼロノスは正面に映るモニターを見ながら、左手で巧みに操縦桿を操っていた。

「短縮ルートは?」

『交通状況を鑑みて、ルート短縮は危険です。人身事故を起こす確率は三十パーセントです』

「三十!?それって高いですよ!?」

Aゼロノスではなく、プロキオンがその数字に驚く。

「アフターバーナーを使えるポイントは?」

レックスランダーには一時的に『跳躍』という追加効果をもたらす加速機能がある。

それが背部に設置されているアフターバーナーである。

『今から三百メートル先のポイントで三回用いる事ができます。臨海第8空港付近で一回出来ます』

「それだけわかれば充分!!」

アクセルレバーを勢いよく前に傾ける。

レックスランダーが前を走っている車をどんどん抜いていく。

まるで進路がわかっているかのようにすいすいと進んでいた。

実際モニターに映っている進路方向はレックスランダーが導き出した理想的なラインが表示されている。

アフターバーナーの使用ポイントに到達すると、別のモニターにどのように使用すれば最適かという図が映し出されていた。

ハイウェイを跨いで下っていくという方法だ。

しかもアフターバーナーの使用ポイントは下った道路で使うのではなく、次のポイントに向かうまでの宙で使用する事になっている。

モニターはアフターバーナーの使用するタイミングが数値で表されていた。

ゼロ表示がされた時に使用すればいいという事になっているのだろう。

「凄い賢いね。君」

「本当です。管理局のコンピューターよりも優れてると思いますよ」

『恐縮です』

AゼロノスとプロキオンがレックスランダーのAIを褒め称えた。

アクセルレバーのカバーを開くと、ボタンがある。

そして押す。

その直後、凄まじいGが一人と一体に襲い掛かりレックスランダーが跳躍した。

 

「そのまま南へ!」

はやては展開されているモニターを見ながら、指示を出していた。

「はやてちゃん!防衛部隊の指揮官が到着です!」

リィンが浮かべあがりながら、告げる。

「すまんな。遅くなった」

はやてが乗っている中継車に一人の中年男性が駆け寄ってきた。

中年男性がその場で停まると、はやては中継車から飛び降りた。

「いえ。陸士部隊で研修中の本局特別捜査官、八神はやて一等陸尉です。臨時で応援部隊の指揮を任されてます」

はやては敬礼をしながら、略式な挨拶をする。

「陸上警備隊第一〇八部隊のゲンヤ・ナカジマ三佐だ」

中年男性---ゲンヤ・ナカジマも返すようにして敬礼する。

「ナカジマ三佐。部隊指揮をお願いしてもよろしいでしょうか?」

「ああ。お前さんも魔導師か?」

はやてが掌に乗せている物を見て、ゲンヤは納得した。

「広域型なんです。空から消火の手伝いを……」

「はやてちゃん!大変です!!」

リィンが両手をバタバタしていた。

「どうしたん?リィン。そないに慌てて」

「今入った情報なんですけど、一台の車がメチャクチャな事をしてるんですよっ!」

「「メチャクチャな事?」」

はやてとゲンヤが声を合わせて、リィンの発言に首を傾げる。

「飛び上がって道路を跨いでるんです!」

「愉快犯でしょうか?」

「それにしちゃ命懸けだ。車体にショックがかかりすぎる。下手すりゃ確実に死ぬぜ」

リィンの言葉に、はやてとゲンヤは考え込む。

「しかもその車はこっちに向かってきてるんですよ!」

「「え?」」

リィンのとどめとなる証言に、はやてとゲンヤはまたも声を合わせてしまった。

 

レックスランダーは跳躍を終えた臨海第8空港の車線へと辿り着いた。

車体はグワングワンと揺れる。

「凄いです。アレだけの事をしてるのに全然何ともないなんて……」

揺れながらも怪我一つしていない事にプロキオンはレックスランダーの高性能ぶりに舌を巻くしかない。

『車体確認開始します。走行の負担となる損傷はありません』

AIが告げると、モニターにレックスランダーの全体図が映し出される。

『目標地点まで七百メートル。アフターバーナー点火ポイントを数字で表示します』

Aゼロノスはニュートラルにしていたアクセルレバーを前傾させた。

ギュウウゥンという音を唸らせながら、レックスランダーは駆けた。

距離にして三百メートルくらいになる。

Aゼロノスはアクセルレバーのカバーを開く。

『点火ポイントに到達しました。ボタンを押してください。これより、跳躍までのカウントダウンを開始します』

ボォンという火を噴いて、レックスランダーは更に加速した。

 

火災現場の中を、スバル・ナカジマは一人涙を流しながらとぼとぼと歩いていた。

右腕が折れた天使像の下を出口を捜しながら歩いていた。

「お父さぁん。お姉ちゃぁん」

嗚咽を漏らしながらも、肉親を捜す。

だが返事が帰ってくるはずもない。

この近辺にはいないのだから。

ゴゴゴゴと地鳴りが響き、爆風が生じた。

「ああっ!!」

憔悴しているスバルは抗うすべなく、吹き飛ばされた。

ゴロゴロと転がって仰向けになって倒れる。

「痛いよぉ。熱いよぉ。こんなのやだよぉ。帰りたいよぉ」

今心底思っている本音を打ち明けても、そのコメントに対して返答はなかった。

スバルの後にいる片腕の天使像の台座に亀裂が走り始めていた。

「助けて……。誰か助けて……」

四つんばいになったままでスバルは助けを求める。

亀裂に限界が生じて天使像が前のめりに、スバルに向かっていった。

ゆっくりとしかし、確実に向かってきている。

スバルが振り向いた時、天使像が彼女には悪魔に見えた。

両目を閉じて、『死』を覚悟した時だ。

しかし天使像は倒れなかった。

桜色の数本の輪が巻かれていた。

『指定空間内の物体をその場に固定する』機能を持つ魔法『レストリクトロック』だ。

 

「はあ……はあはあ……。よかった。間に合った……。助けに来たよ」

 

魔法を発動させたのは右手をかざして白いバリアジャケットを纏ったなのはだった。

 

なのははスバルの側まで駆け寄って、彼女と同じ目線になる。

そして、右手を彼女の左肩に置く。

「よく頑張ったね。偉いよ」

労いの言葉を送る。

「もう大丈夫だからね。安全なところまで一直線だから」

なのはは天井を睨んでいた。

脱出路を作るつもりだ。

『マスター。こちらにイマジンが近づいてきています。距離にして三十メートル』

レイジングハート・エクセリオンの報告は、なのはに動揺をスバルに恐怖を与えるには充分なものだった。

『二十メートル』

なのははスバルを庇うようにして、前に出てレイジングハート・エクセリオンを構える。

『十メートル』

(イマジンの視界を奪って、この場から離れる!)

なのはは即席のプランを立てて実行しようとする。

 

「そこの車!停まりなさい!!」

「ここは立ち入り禁止だ!!早く帰りなさいって聞いてるのか!?」

というような守衛達の声がはやて、リィン、ゲンヤの三人の耳に入った。

「何だよ。騒がしいな……」

「車って言ってへんかった?」

「言ってたです」

三人が守衛達の言葉内容に疑問を感じた。

だが、その疑問は即座に解決した。

三人の頭上が突如暗くなったのだ。

三人は上を見上げると、一台の車輌が宙を舞っていた。

「「「………」」」

三人は顔を動かしながら、車輌---レックスランダーを目で追う。

ズシャンという音を鳴らしてバウンドしてから、空港内へと向かっていった。

窓ガラスや柱を壊れていく音が響く。

「アレはお前さんの知り合いか?」

ゲンヤの質問にはやてとリィンはこれ以上振れば首が取れるのではないかというくらいに速く横に振った。

 

「魔導師といかにも弱そうなガキ発見かぁ」

シュライクイマジンが入った直後、なのはは即席のプランを実行しようと考えたが中断していた。

(さっき考えたプランは私一人なら使えるけど、この子が一緒じゃ危険が大きすぎる……)

天井に穴を開けていれば使えるが、退路が断たれているに等しい現状では何の意味もない。

自分一人なら対処方法はあるが、要救助者を抱えている状態ではその対処方法も全て使用不可となる。

「さあてとストレス発散させてもらうぜぇ!!」

シュライクイマジンが首を鳴らしながら、こちらへと歩み寄る。

なのはは構えを解かずに、スバルの前に立つ。

(この子だけでも何とかしないと……)

シュライクイマジンを睨むことでしか抵抗できないというもどかしさを感じながら。

「「?」」

「何だ。この音」

二人と一体の耳に何か聞き覚えのない音が近づいてくる。

グシャとかベキッとかガシャンという音を立てながら。

その音はどんどんと近くなっていく。

ギュウウウウンという音までが聞こえ始めていた。

その音がハッキリと耳に入る頃になると、

「ぶべぇっ!!」

シュライクイマジンが音の発信源に轢かれて、外へと飛ばされた。

音の発信源---レックスランダーが全身を一度揺らしてから停車する。

キャノピーが開いて、搭乗者である一人と一体が降車する。

「ちょうどいい。外まで吹っ飛んだか……」

「待ち伏せするつもりでしょうか?」

「どっちにしろ倒すさ」

Aゼロノスとプロキオンだ。

「貴方達は……」

意図したものではないが、なのははそのような台詞が口から出てしまった。

 

「これで二度目だね。縁があるのかな」

 

Aゼロノスは目の合ったなのはに向けてそのように返した。




次回予告


第七話 「揺らぐ炎を見つめて」
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