仮面ライダーLYRICAL A’s to StrikerS   作:(MINA)

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第七話 「揺らぐ炎を見つめて……」

燃え尽きる様子がなく炎が舞っている臨海第8空港。

レックスランダーを降車したAゼロノスとプロキオンはシュライクイマジンが作った穴を睨んでいた。

プロキオンの言うように、飛行能力を有しているのならば空を足場にしている可能性は十分にある。

それからレイジングハート・エクセリオンを天井に構えている高町なのはを見る。

『上方の安全を確認』

レイジングハート・エクセリオンが紅い珠部分を明滅させながら発する。

(安全な場所に狙いをつけて、穴を開けるつもりだね……)

Aゼロノスはおおよその見当を想像する。

なのはが助けた少女---スバル・ナカジマは現在なのはが張った桜色のバリアの中に包まれていた。

レイジングハート・エクセリオンを振り下ろすと、なのはの足元に桜色のミッド式の魔法陣が展開されていく。

『ファイアリングロック、解除します』

「一撃で地上まで抜くよ」

『オーライ。ロードカートリッジ』

レイジングハート・エクセリオンは主の命に従い、行動を開始する。

ヘッド付近のスライドカバーがガシュンガシュンと音を立てて空になった薬莢を二個排出する。

レイジングハート・エクセリオンの全体が桜色に輝き、ヘッド付近に三枚の桜色の翼が展開されていた。

名残として、桜色の羽が付近を舞っていた。

『バスターサーチ』

レイジングハート・エクセリオンの先端に三つの桜色の環状魔法陣が出現し、中央に桜色の魔力球が構築されていた。

キュイィィィィンという今にも発射しそうな音を出して。

「ディバィィィィン……」

なのはが鋭く狙いをつけて睨む。

 

「バスタァァァァァ!!」

 

声と同時に桜色の魔力球は一筋の光線となって一直線に発射された。

ズドォォォォンという音を立てて、あらゆる障害物を撃ち抜いていった。

「すごいです……」

プロキオンがその威力に目をパチパチさせながら呟いていた。

空港を爆煙がたちこめた。

「さ、行くよ。しっかり掴まっててね」

なのはがバリアを解いてスバルを抱きかかえて先程開けた穴から飛び立とうとしていた。

「待って!」

Aゼロノスがなのはを止めた。

「え?」

なのはは何故止められたのかわからないようだ。

「空から行く気?」

Aゼロノスが訊ねる。

「え、はい。そうですけど……」

なのはは自分の判断は間違っていないと思っているが、他人に訊ねられると自信が揺らぐ。

「だったら君が開けた穴だけど、僕達が先に行かせてもらっていい?」

「え?」

「誤解がないように言っておくけど、我が身可愛さでそんな事を言っているわけじゃないよ」

Aゼロノスはなのはが一瞬だが『失望』に近い視線を向けていたのを見抜いており、訂正する。

「あのイマジンが待ち構えている可能性があるって事です」

プロキオンが付け足した。

「あ、ああ。そうだったんですか……」

なのはは安堵の息を漏らしていた。

 

「僕達が先に行かせてもらっていい?」

とAゼロノスが発した時、なのはは何故か『失望』や『愕然』という言葉が脳裏に過ぎった。

自分が知っている仮面ライダー---電王やゼロノスはそのような事を言わなかったからだ。

災害時に自身の命を優先する事は間違ってはいない。

Aゼロノスの発言を否定する権利はある意味では誰にもないのだ。

だがその言葉は待ち伏せをしていると思われるイマジンに対しての策のようなものだった。

つまり自己保身の為に言ったものではない。

その事に気付いた時、なのは自身何故か安堵の息を漏らしていた。

(何でだろ……。この人とはまだこれで二度目なのに、何でかそういう事をする人じゃないって思っちゃうんだよね。だからショック受けてたのかな……)

会って二度目のはずなのに、不思議とそのように思ってしまう。

「それで、えと……」

「ANOTHERゼロノス。好きなように呼んでいいよ」

「Aゼロノスさん。具体的にどうするつもりなんですか?私が知ってる限りではその……仮面ライダーには飛行能力はないはずじゃ……」

なのはが知る限り、電王にはあるが、ゼロノスには単体で飛行することはできないと記憶している。

目の前にいる仮面ライダーが『ゼロノス』ならば飛行能力を有していないと推測している。

「大丈夫ですよ♪僕達にはあるんです♪」

プロキオンが胸を張って言う。

「ふえ?」

「あの二人にない力が僕達にはある。逆にあの人達にある力が僕にはなかったりするけどね」

どちらが優れているというような事をAゼロノスは言うつもりはないらしい。

Aゼロノスはチェンジレバーを右にスライドさせて、ゼロノスベルトのクロスディスクからゼロノスカードを抜き取って裏返してからもう一度、クロスディスクにアプセットする。

「プロキオン!」

「はい!」

バイオリンが奏でるミュージックフォーンが鳴る。

『シリウスフォーム』

ゼロノスベルトの電子音声が発する。

プロキオンがフリーエネルギー体となって、Aゼロノスの中に入り込む。

上半身に、白色がメインで裾に青色のポイントカラーがされている袖のないプロキオンクロークが出現する。

両肩には三本の爪のような飾りが施され、両下腕にはプロキオンが用いていた武器であるプロキオンクローが装着されている。

電仮面にはミサイルの弾頭部分がAゼロノスのデンレールを無視して、中央に走り出して停止すると回転しながら六芒星状に展開して電仮面となるSゼロノスとなった。

「それじゃ、僕の後に付いてきてください」

Sゼロノスは言うと同時に、なのはが開けた穴に向かって跳躍した。

「はい!」

 

プロキオンクロークは仮面ライダーゼロノス・ベガフォームのデネブローブとは違う能力がある。

それが飛行能力だ。

そのため、プロキオンクロークは飛行時は平時とは違って若干裾が長くなっている。

(いる?)

上昇しながら、深層意識の中にいるユーノ・スクライアはSゼロノスに訊ねる。

「いますね……」

(読みどおり、か……)

予測が当たっても嬉しくも何ともない。

「イマジンを足止めさせる為に先に行きます!」

Sゼロノスは飛行速度を上げる。

先程なのはが放ったディバインバスター・エクステンションの際に生じた爆煙を突っ切る。

「やああああああああああ!!」

Sゼロノスが更に速度を上げながら、空で待ち伏せているシュライクイマジンに狙いをつけてそのまま顔面に左肘撃ちを食らわせた。

「ぶはぁっ!」

シュライクイマジンは奇襲攻撃をまともに食らって、仰け反る。

「テメェ!!」

攻撃を食らって引き下がってくれるほど、シュライクイマジンはお人好しではないらしく両手にはフリーエネルギーで構築された剣を出現させていた。

Sゼロノスも、両手のプロキオンクローを構える。

 

「レッツゴー・バトル、です!!」

 

告げると同時にSゼロノスから切り出した。

 

なのははスバルを抱きかかえたまま、夜空を飛行していた。

二人を背景に夜空の星々は輝いており、まるで宝石のようだとスバルは思った。

「こちら教導隊01。エントランスホール内の要救助者、女の子一名をを救出しました」

なのはが結果を報告していた。

『ありがとうございます。さすがは航空魔導師のエースオブエースですね!』

なのはの通信相手が若干興奮気味になっていた。

「西側の救護隊に引き渡した後、すぐに救助活動を続行しますね」

『お願いします!』

なのはは今後の活動を告げると、通信が切れた。

スバルを救助隊に引渡し、救助活動を続行したのはそれから五分後の事である。

 

 

ゲンヤ・ナカジマ、八神はやて、リィンは口をポカンと開けて跳び越えたレックスランダーを見送ってから正気に戻った。

「ナカジマ三佐」

はやてがゲンヤを呼ぶ。

「俺、今度はアレに買い換えるかな……。アレならどんなヘボが運転しても死なねぇだろうしなぁ」

はやての言葉が耳に入っていないのかゲンヤはレックスランダーを思い出しているのだろう。妙な事を口走っていた。

「ナカジマ三佐!」

「お、おお。悪い」

はやては先程よりも大きめの声をあげ、ようやくゲンヤは我に返った。

「今から空に行って消火の手伝いを……」

『はやてちゃん。指示のあった女の子を無事救出。名前はスバル・ナカジマ。さっき無事に救護隊に渡したんだけどお姉ちゃんがまだ中にいるんだって……』

はやての側にモニターが出現して、なのはが結果と今後を報告していた。

「了解。私もすぐに空に上がるよ」

『了解。あと空港付近の空に上がるなら気をつけてね。今Aゼロノスさんとイマジンが交戦中だから』

モニターは閉じられた。

「イマジンって……。この状況でかよ……」

ゲンヤでなくても露骨に嫌な表情になるものだ。

イマジン一体を倒すのにどれだけの兵力が必要になるかを知っているからだ。

しかも、用いたとしても勝てる可能性が極めて少ないというのが現実である。

「それであの青い装甲車が突っ込んだってワケやな……」

青い装甲車の搭乗者はAゼロノスだと、はやては確信を持った。

「ナカジマって……」

リィンは聞き覚えがあるために、記憶を呼び起こそうとする。

「ウチの娘だ。二人で部隊に遊びに来る予定だった……」

「………。ではナカジマ三佐。後の指揮をお願いします」

はやてはゲンヤの心中を察しながら毅然とした態度を取り、敬礼をしてからゲンヤに後の指揮を任せる事にした。

「リィンしっかりな。説明が終わったら後で私と上で合流や」

「はいです!」

最後にはやてはリィンに指示を送ると、その場を駆け出した。

駆け出しながら身体全身が輝き、制服姿から騎士甲冑姿へと切り替わる。

左足を強く踏み込んで跳躍すると、背中の黒い翼を羽ばたかせて空へと飛翔した。

 

 

臨海空港の別エリアではというと、三人の一般市民が青色でドーム状の近代ベルカ式の防御魔法に包まれながらも、咳き込んでいた。

そのエリアに一直線に金色の魔力砲が走り、壁に大きな穴を開ける。

爆煙が立ち、その原因を起こした張本人が出てくる。

フェイト・T・ハラオウンだ。

「管理局です!」

フェイトは周囲を見回しながら要救助者を捜す。

「ここです!」

防御魔法に包まれている三人の内の一人がフェイトの姿を確認すると、呼びかける。

耳に入ると、そばまで駆け寄る。

「もう大丈夫ですから」

『ディフェンサープラス』

バルディッシュ・アサルトを向けて金色のドーム状の防御魔法を展開する。

しゃがんで要救助者と同じ目線になる。

「すぐに安全な場所までお連れします」

「ああ、あの……」

「はい……」

「魔導師の女の子がこのバリアを張ってくれて、それから妹を捜しにいくって言ってあっちに……」

一般市民はフェイトにまだ救助者がいることを教え、その女の子が向かった先を指差していた。

その先は炎の壁が出来上がっていた。

轟々と燃えている。

「わかりました。皆さんをお送りしたら、すぐに捜しに行きます……」

フェイトはまず眼前の要救助者の救助に専念する事にした。

 

中央に大きな空間ができているフロアに一人の少女が満身創痍の状態ながらもゆっくりと進んでいた。

「スバルぅ。どこぉ!?」

ドォォォォンと向かいの位置から爆発が起きても、少女は前へと進んでいた。

「返事してぇ。お姉ちゃんがすぐに助けに行くから……」

少女はヨロヨロになりながらも、妹の身を案じていた。

か弱い妹だから。

繊細だから。

自分は『姉』として守らなければならないのだ。

両膝を引きずり、左手は手すりを握ったままゆっくりと歩き出す。

 

フェイトは要救助者の少女がいると思われるエリアまで走っていた。

爆発が起こるが、爆煙を抜けてひたすら走る。

下を見ると、そこには一人の少女がゆっくりと前に進んでいた。

彼女が先に救助した一般市民が言っていた少女なのだと確信した。

「そこの子、じっとしてて!今助けに行くから!!」

少女は自分の声に反応して、こちらを見る。

その直後に少女がいるフロアの床に亀裂が走り出して、砕けた。

「わ、ひゃああああああああああ!!」

少女が悲鳴を上げながら、瓦礫と共に落下していく。

『ソニックムーブ』

バルディッシュ・アサルトが告げた直後にフェイトは一筋の金色の光となって落下していく少女へと向かっていった。

瓦礫が最下層に落下して、煙を立てる。

煙の中から一筋の金色の光が、上に昇っていく。

少女を抱きかかえたフェイトだ。

「ごめんね。遅くなって。もう大丈夫だよ」

フェイトは少女に優しく語りかける。

それから比較的落盤がなさそうな場所を選んでそのまま移動を始めた。

「妹さん。名前は?どっちに行ったかとかわかる?」

フェイトは少女の妹の名と所在を訊ねる。

「エントランスホールのところではぐれてしまって、名前はスバル・ナカジマ。十一歳です」

フェイトは少女の喋り方が災害に見舞われながらもしっかりしている事に内心驚いていた。

大抵なら慌てふためていたり、最悪の場合はまともに会話も成立しない時もあるからだ。

『こちら通信本部。スバル・ナカジマ十一歳の女の子を既に救出されています。救出者は高町教導官です。怪我もありません』

モニターが出現して、なのはがスバルを助けている所が映し出されてすぐに消えた。

「スバル……。よかった……」

心のつかえが消えたのか少女は安堵の声を漏らす。

「了解。こちらは今お姉さんを保護。名前は?」

「ギンガ。ギンガ・ナカジマ。陸士候補生十三歳です」

少女---ギンガは自身の名と処遇を明確にした。

「候補生か……。未来の同僚だ」

フェイトは笑みを浮かべて、新たな『仲間』ができた事に喜ぶ。

「きょ、恐縮です……」

ギンガは嬉しさと緊張で堅い返事しか出来なかった。

フェイトの飛行速度が上がった。

 

 

一台の中継車が内部からケーブルを出していた。

車内にはゲンヤとリィンがいてモニターを睨んでいた。

「補給は?」

「あと十八分で液体補給車が七台到着します。首都航空部隊も一時間以内には主力出動の予定だそうです!」

「遅ぇな。要救助者は?」

ゲンヤは助けの遅さに毒づきながらも現状を把握しようとする事を怠らない。

「二十名ほど……。魔導師の皆さんが頑張っていますから……。なんとか……」

リィンが真剣な表情でモニターを睨みながら告げる。

「最悪の事態は回避できそうか……」

「はいです」

「よし。おチビの空曹さんももういいぞ。自分の上司のところに合流してやんな」

ゲンヤがネクタイを緩めながら、リィンにはやての所に行くように促す。

「いえ。もう少し情報を整理して指揮系統を調整してからにします」

リィンはゲンヤの申し出をやんわりと断った。

「そうかい。ま、助かるがな」

ネクタイを緩め終えると、感謝の言葉を述べる。

 

はやては現在、空に佇んでいた。

足元には円型の魔法陣で構築された白いベルカ式の魔法陣が展開されている。

右手には専用の非人格型アームドデバイス---シュベルトクロイツ。

左手には専用の魔導書型ストレージデバイス---夜天の書。

夜天の書を開いて、はやては魔法を繰り出そうとしていた。

「ほの白き雪の王。銀の翼とて眼下の大地を白銀に染めよ!」

はやての頭上に白いキューブが出現する。

「八神一尉。指定ブロック避難完了です。お願いします!」

局員の一人がはやてに告げる。

意識を今やるべきことの為に集中する心構えを取る為に両目を閉じていたはやては両目を開く。

「了解!来よ、氷結の息吹……」

シュベルトクロイツを天に掲げる。

宙に出現しているキューブがそのばで高回転する。

 

「アーテム・デス・アイセス!!」

 

振り下ろしたシュベルトクロイツのヘッド中心部が輝きだす。

四つの白いキューブが白い流星となって、空港へと飛んでいく。

全てが落下すると、まるで染色するかのように紅く染まっていた空港全土がみるみるうちに青く染まっていく。

その変化に生じる速度は速く、あっという間だった。

地道に消火作業をするのが馬鹿らしくなってくると思わせるものだった。

「おし!」

振り下ろしたシュベルトクロイツを持ち上げながら、はやては上手く言った事に喜ぶ。

「すっげぇ……」

「これがオーバーSランク魔導師の力……」

はやての近くにいた局員二人が感想を述べながら、バリアジャケットに付着している雪を払い落とす。

「巻き添えごめんなぁ。私一人やとどうも調整が下手で……」

はやては二人の局員に謝罪をしながら、夜天の書をパタンと閉じた。

無数の光がこちらに向かっているのがはやての視界に入った。

首都航空部隊の魔導師達だ。

 

中継車の中で首都航空部隊が駆けつけたことを知ったゲンヤは安堵と呆れが混じった息を吐いた。

「ふぅ……。やっと来たか……」

「はい♪」

リィンは純粋に喜んでいる。

「だがまだ油断はできねぇ。もうちっと情報整理を頼んでいいか?」

「了解です♪」

ゲンヤの依頼にリィンは快諾した。

「あとおチビの空曹さん」

「何ですか?」

「お前さんはあの青い仮面ライダーを知ってるのかい?」

ゲンヤは事態が少しマシになったのを機に気になっていた事を訊ねる事にした。

「前に一度だけ会った事があるだけです。名前はANOTHERゼロノスというそうです」

リィンは知っている情報を打ち明ける。

「アナザー?てことは過去にもゼロノスがいたって事か?」

『アナザー』と名がついている以上、過去に『ゼロノス』そのものがいたという事になる。

『ゼロノス』の存在があるからこそ『ANOTHERゼロノス』と名付けられるのだから。

「リィンは見た事も会った事もないですけど、『仮面ライダーゼロノス』という人がいたそうです」

「お前さんも知らねぇってのかい?」

「はいです。リィンが生まれる前の事ですから……」

ゼロノスがここで戦っていたのは今から六年前の事だ。それよりも後で誕生したリィンは、はやてやヴォルケンリッターの証言でしか知らない。

「どっちにしろ仮面ライダーの存在で一悶着起きそうな気がするってのは俺の思い過ごしじゃねぇだろうなぁ」

ゲンヤは時空管理局のトップ連中がAゼロノスをどのようにして捉えるかを気にしていた。

『味方』として受け入れた場合、確実に支配下に置こうとするだろう。対等な『協力』関係をもとうとはしない。

大組織にとって個人と対等な協力関係を結ぶ事は屈辱でしかないからだ。

『敵』として認識した場合、出現した直後にイマジンと交戦していようがお構いなしに排除する可能性も十分にありえる。

正攻法に挑んでも敗北するのは管理局側なのだから。

ゲンヤはモニターに映し出されているSゼロノスとシュライクイマジンの戦闘を見ていた。

 

 

プロキオンクローとフリーエネルギーの剣がぶつかり合って火花を飛び散らせていた。

単純な力技ならSゼロノスに分があるのだが、シュライクイマジンは口調に反してテクニカルな戦闘スタイルをしていた。

「オラオラオラァ!最初の勢いはどうしたぁ!!」

シュライクイマジンの双剣が交互にしかし、生き物のように両腕を動かしている。

右から左から斜め上から斜め下から。

距離をとる為に後方へと退がるSゼロノス。

(僕達にとっては厄介なタイプだね……)

「大丈夫です。チャランポランに見えてもあのイマジンの剣の軌道にはパターンがあります」

深層意識のユーノに対して、Sゼロノスは突破口を見出したかのような口調をしている。

プロキオンは近接戦闘に特化したイマジンであり、性格は子供だが戦闘センスは極めて高くユーノと契約した影響もあるのか理詰めで戦闘を解析しようとする部分もある。

「ん?」

(あれは……首都航空部隊)

Sゼロノスはこちらに向かってくる魔導師達を見る。

ユーノにしてみればありがたいどころか邪魔者が増えただけでしかない。

シュライクイマジンがなのはに狙いをつけたのは『ただそこにいたから』というものだろう。

シュライクイマジンの目的はあくまで『窃盗』であり、人を襲うのは失敗した『憂さ晴らし』のようなものだからだ。

こちらに来ようとしている魔導師達はシュライクイマジンにとっては鴨がネギを背負ってきたようなものである。

(僕達にとっては護る対象が増えただけだよ……)

「どうします?」

(場所変えするか、即座に倒すかどっちかしかないね……)

「なら、即倒します!!」

Sゼロノスは両腕をクロスさせて構える。

プロキオンクローがキラリと光ったかのように見えた。

一直線にシュライクイマジンとの間合いを詰めると同時に、右拳を一直線に繰り出す。

正確には拳ではなくプロキオンクローであるが。

今までの速度とは違い、シュライクイマジンは避ける事ができずに双剣で受け止める。

ギリギリギリと音が鳴り、そのまま続いて空いた左腕を振り上げて双剣に狙いをつけて繰り出す。

「くっ!テメェ遊んでやがったな!!」

力負けしている事を理解したシュライクイマジンは力を出し惜しみしていたと思われるSゼロノスを睨みつける。

「僕、そんな事してませんよ!」

出し惜しみする余裕はなかったというのは本当だ。

ただ、今までは力任せに振り回していただけで現在は相手の動きをよく見て繰り出すというスタイルに切り替わったのだ。

もちろん、このスタイルチェンジも最初からあったわけではない。

この戦いで身についたものだ。

両腕が塞がったのを機にSゼロノスはつかさず、右下段回し蹴りを放つ。

太股に一発、そのままふくらはぎにも一発と計二発繰り出してから右足を引き戻す。

そのまま左下段回し蹴りを繰り出して、右同様に計二発繰り出してから引っ込める。

蹴りを食らうたびにシュライクイマジンは苦悶の表情を浮かべている。

効いているという証明だ。

これが陸地なら確実に膝を地に着けているのだが、ここは空中でそのような醜態を晒す事はないのがシュライクイマジンにとっての救いになるだろう。

Sゼロノスの一撃は力+速度で威力は十分な破壊力がある。

常人ならば確実に足の骨が折れているといってもいいだろう。

折れない事はイマジンの耐久力によるものだろう。

そのままぶつけいていた両腕を引っ込めてから、その場で両脚を浮かせてシュライクイマジンの顔面に狙いをつけて一直線に両脚で放つ。

速くて重い一撃を。

「べっ!!」

ドロップキックを食らったシュライクイマジンは後方へと飛ぶ。

「逃がさないです!!」

Sゼロノスは場が空である利点を生かして、クルリとバック転をしてから先程より低い位置に足場を変えてから、シュライクイマジンへと向っていく。

「うりゃああああああ!!」

間合いを詰めたら、両手で右足を掴んでそのまま背負い投げをするようにして、シュライクイマジンを救出活動がまだ行われている臨海空港に狙いをつけて投げ飛ばした。

双翼を用いて、ホバリングに持ち込むこともできない。

ドコォンという破壊音が鳴り響き、瓦礫と化した床や天井の材質の一部が粉塵となって煙のように空を舞っていた。

Sゼロノスも両脚を空港に着ける。

瓦礫を押しのけてシュライクイマジンが双剣を構える。

Sゼロノスは構えずにそのまま駆け出す。

構えを取ったシュライクイマジンも駆け出す。

Sゼロノスとシュライクイマジンが同時に跳躍して、空中でプロキオンクローと剣がぶつかる。

「はあっ!!」

左腕を引っ込めて、すぐに別の場所へと攻撃を繰り出すSゼロノス。

狙いは右脇腹。

「ぐはぁ!!」

プロキオンクローが刺さっていることを自覚して声を上げたのを機に、シュライクイマジンはバランスを崩す。

「りゃああっ!!」

さらに追い討ちとして右腕を引っ込めてすぐに一直線に顔面に狙いをつけて放つ。

今度は盾として使っていた双剣も破壊されて、直撃した。

三本編成のプロキオンクローの内の二本がシュライクイマジンの目に刺さっていた。

「ぎゃあああああああ!!」

両手で潰された両目を押さえており、両脚は視界がなくなった事と先程のダメージが抜けていないためフラフラだった。

「終わり、ですね」

(うん)

Sゼロノスの発言にユーノも頷く。

両腕を大きく広げる。

そして、そのまま駆け出しながら広げていた両腕を徐々に収めていく。

「はあああっ!!」

Sゼロノスの姿が一瞬だが、見えなくなった。

テレポーテーションのような超能力を使ったのではない。

ただ単純に速いのだ。

『目では見えない速さ』を駆使しただけなのだ。

Sゼロノスが姿が見えるとシュライクイマジンの後ろに移動しており、両腕も広げていた状態から×字になっていた。

シュライクイマジンの身体に大きな×の傷痕が浮かび上がっていた。

その傷痕が発生源となり、身体の崩壊が始まる。

「ぐ、ぐあおおおおおお!!」

悲鳴を上げながら、シュライクイマジンの肉体が爆発してやがて爆煙が立った。

臨海空港の屋上にいたので飛び降りる。

着地して前を向くとそこにはなのは、フェイト、はやて、リィン、ゲンヤがいた。

Sゼロノスはゼロノスベルトのチェンジレバーを右にスライドしてゼロノスカードを抜き取って裏返してから再びアプセットした。

Sゼロノスが輝き、Aゼロノスとプロキオンに分離した。

「イマジンは?倒したんですか?」

「もちろん。それが僕達の役目だからね」

なのはの問いにAゼロノスが答える。

空港の壁とガラスウィンドウを壊す音が聞こえてくる。

レックスランダーが自動運転で走ってきたのだ。

「その車。お前さんのかい?大量生産してるんなら俺にも分けてほしいんだがなぁ」

ゲンヤが冗談半分本気半分で打診してみる。

「ナカジマ三佐!?」

はやてはゲンヤの打診に目を丸くする。

それはなのは、フェイト、リィンも同じだった。

「あの車一台ありゃどこいっても安心だぞ。火災現場に放置されてたのに傷どころか熱で溶けた部分も見あたらねぇ。こいつがありゃ救済活動も随分と楽になるぜ」

「最大乗員数は何人なんですか?」

「二人。それ以上はシートがないから乗れない」

フェイトの質問にAゼロノスは丁寧に答える。

レックスランダーの製造元などを訊かれるとまずいが、このくらいなら大丈夫だ。

「質問です。これってスポーツカーなんですか?」

はやてが挙手して質問してきた。

「多分違うと思う」

Aゼロノスは腕を組んで首をかしげながら曖昧に答える。

「質問は終わり?だったら僕達は帰るよ」

レックスランダーのキャノピーが開く。

プロキオンが先に乗り込む。

「待ってください!最後に、これだけは聞いておきたいんです!」

乗り込もうとするAゼロノスをなのはが呼び止めた。

Aゼロノスはなのはの前に立つ。

 

「貴方もやっぱりその……ゼロノスカードで『記憶』を代償にしてるんですか?」

 

なのはの両目には『そうであってほしくない』『できれば違うといってほしい』というような想いがこもっていた。

(なのは……)

彼女がどのようにしてそのように質問をしてきたのかはわからない。

Aゼロノスは拳を震わせていた。

覚悟はしていた。

この姿で会えば必ずこのような事を訊ねてくるのは想定していたからだ。

だがそれはあくまで『イメージ』でしかない。

そして現実が『イメージ』通りにならない事も知っている。

 

「君の言うとおりだよ。僕もゼロノス同様に記憶を代価にしている」

 

なのはが何かを言おうとしたが、先にAゼロノスは背を向けてレックスランダーに乗り込んだ。

エンジン音が鳴り、レックスランダーの車輪が回転し始めた。

乱入した時と違い、道ができているのでそのまま走り出す事が可能だ。

「……行こう」

Aゼロノスはアクセルの役割を果たすレバーを前に倒す。

レックスランダーが走り出した。

 

 

夜空が星々が輝いていた。

テントを張っていた次元世界に戻ったユーノとプロキオンは毛布に身をくるみながら、目の前で焚いている炎を眺めていた。

ゆらゆらと炎が揺れる。

先程のミッドチルダでの炎とは違う。

『優しさ』のようなものがあった。

マグカップに入っている酒を軽く飲む。

スクライアの部族にいた頃からアルコールを飲んだ経験はあるので平気だ。

プロキオンがマグカップに入っているオレンジジュースを飲む。

「………」

ユーノは炎の向こうに立っている慰霊碑と二つの墓を一瞥してから炎に目を向けた。

 

遡る事新暦0067年。




次回予告

    新暦0067年。一つの悲劇が起き、歯車が回り始めた。


    第八話 「0067年の悲劇」
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