ガラスの靴よりスニーカー   作:きまぐれアップル

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時系列はアニメ13話の数日後です。


卯月「打ち上げです♪」

 こんにちは。島村卯月です。

 桜咲く春の季節にシンデレラプロジェクトのメンバーに抜擢されて早4か月。とうとう私たちはサマーフェスという大きな舞台で仲間たちとファンの方々とで一つの物語を完成させることができました。

 あの時の感動は今でも胸に熱く残り、これからのアイドル生活が楽しみで楽しみでしかたなくなってしまいます。

 

 そして今日はそのサマーフェスの打ち上げということでシンデレラプロジェクトのみんなとともにごはんを食べることとなりました。場所はかな子ちゃんがすごくおすすめと言っていたお好み焼き屋さんです。何でもお店の人が焼くのではなくて自分で焼くことができるのだとか。みんなで楽しくお好み焼きを焼くと考えるとちょっとしたパーティみたいでワクワクしてしまいますね。えへへ。

 

 

 

 お店に着いた私たちはさっそく予約した席に座ります。さすがにシンデレラプロジェクトのメンバー14人全員が同じテーブルに入ることはできなかったので三つのテーブルに分かれることになりました。私と同じテーブルなのは正面にいる美波さんと隣にいるみくちゃんです。凸レーションズの三人がお仕事でちょっと遅れるそうなので、あとからきらりちゃんか莉嘉ちゃん、みりあちゃんの誰かがこの卓に入るでしょう。

 

 しばらくすると店員さんが三人分のグラスを持って来てくれました。もし大人だったらこれはビールっていうことになるんでしょうが、未成年である私たちはもちろんジュースです。

 

「それじゃあみんな、グラスは持ったかしら?」

 

 私の正面にいる美波さんが他のテーブルの様子を見渡します。どこのテーブルもすでに各々が頼んだ飲み物が届いているみたいでした。

 美波さんは他のテーブルに響き、だけど他のお客さんやお店の人の迷惑にならないような大きさで声をあげます。

 

「先日のサマーフェスお疲れさまでした。最初こそは息がなかなか合わなかったけど、みんなが一生懸命努力した結果、無事フェスを成功させることができました。あの時頑張ったレッスンも、あの舞台に立ったも、みんなにとって大切な経験に、そして思い出になると思います」

 

 美波さんの言葉に思わず私はしみじみしてしまいます。必死になった合宿もトラブルがたくさん起こったフェスもその時はすごく大変なものでしたが、それを乗り越えた今はあの時のことが輝かしいばかりの出来事として心の奥底にしまわれています。あの経験があったからこそ、今の私たちがこうして笑顔で過ごすことができているのです。

 

「美波さんちょっと堅いぞぉ! お祝いの席なんだからもっと盛り上がっていこうよ!」

「うふふ、そうだったわね、未央ちゃん。じゃあまだまだこれから大変なことはいっぱいあると思うけれども、今日のところはあの日の成功を祝ってとことん打ち上げましょう! 乾杯!」

 

「「「乾杯!」」」

 

 同じテーブルの美波さんとみくちゃんとグラスを重ね、私はオレンジジュースをごくごくと飲みます。こうしてみんなと乾杯するとついつい心の底から楽しくなってしまいます。おかげでグラスに入っていたオレンジジュースはもう半分もありませんでした。

 だけど心配はありません。ここは2時間の間、飲み物も食べ物も頼み放題というお店なのです。プロジェクトのみんなは少食な子もいればたくさん食べる子もいるのでこれはとても嬉しいことです。かな子ちゃんは本当にいいお店を選んでくれました。かな子ちゃんはここらへんに住んでいるということなのですが、もしかしてよくこのお店に来ていたんでしょうか?

 

「卯月ちゃんとみくちゃん、何か食べたいものはある?」

 

 ふと、正面の美波ちゃんが私たちにメニューを渡してくれました。私とみくちゃんはそれを受け取り、二人で見ます。

 けれど正直な話、実は私こういったお好み焼きお店に来るのが初めてで何を頼めばいいかわからず緊張しています。メニューには豚玉とかねぎ玉、モチチーズとか書いてあったのですが、これはトッピングなのでしょうか? どれをどう注文するべきなのかちょっと怖いです。そもそも私お好み焼き焼いたことないですし失敗しちゃったらどうしよう……。

 

「わ、私はお二人にお任せしちゃいます!」

「じゃあみくも美波ちゃんにお任せするよ」

「それじゃあ、このデラックス焼きを注文しちゃうね」

 

 美波さんは注文を任されても全く嫌な顔せず、店員さんを呼んでテキパキと注文を済ませてしまいました。やっぱり美波さんは大学生ということもあって、こういったお店にはよく行っているのでしょうか。もしかして私が遅れているだけなのでしょうか……。

 

「けれどこういったお店に来るの本当に久しぶりだなぁ」

 

 するとみくちゃんがわくわくしたような顔で言いました。

 

「そういえばみくちゃんって大阪出身なんだよね? やっぱりお好み焼き屋さんっていっぱいあるの?」

「もちろんだよ、卯月ちゃん。家族でもよく行くし、そもそもおうちでもプレート出して焼いてたにゃ。けど寮じゃプレートないからこっち来てからあんまり作ってないけどね」

 

 おうちでも焼いていただなんてみくちゃんすごいです……。

 私は簡単なお菓子くらいしか作ったことないから少し危機感を覚えてしまいます。

 

 そしてそうこうしているうちに店員さんが材料を持ってきました。私はそれを見て思わずびっくりしてしまいます。なぜなら材料が生地のほかにお肉や卵、麺、キャベツというふうに別々で持ってこられたからです。

 やばい、どうしよう……。私、お好み焼きなんか作ったことないからどうやっていいか分からないよぉ……。

 

「どうしたの、卯月ちゃん? 具合の悪そうな顔をして」

 

 思い悩んでいると美波さんが声をかけてくれました。

 

「あ、あの……、実は……」

 

 お好み焼きが焼けないと告白するのは恥ずかしいことですが、背に腹は代えられません。失敗するよりかはという気持ちで私は二人に打ち明けました。

 

「そうだったの、卯月ちゃん? でも大丈夫よ。私の大学の友達も大学入って初めてお好み焼き作ったって子いるんだから問題ないわ」

「そうなんですか?」

「ええ。そうだわ、じゃあまず私が焼いて見せるから卯月ちゃん真似してね。大丈夫、簡単だから」

 

 そういって美波さんは優しく微笑んでくれました。

 

「ふっふーん。みくは大阪代表として美波ちゃんのお手並み拝見といきますかにゃ」

「あらあらそれは怖いわね」

 

 美波ちゃんはうふふと笑って、まずは鉄板に油を敷きました。そしてお好み焼きの生地を持つとそれを丸を描いて鉄板に乗せ、薄く焼いていきます。

 

「まず生地はこうして何も入れないで薄く焼いていくの。そうして焼けて来たら次は麺とキャベツを乗せます」

 

 そして美波さんは生地の上に麺とこれでもかというほどの大量のキャベツを載せました。

 

「み、美波さん、キャベツ山盛りになるほど乗せましたが大丈夫なんですか?」

「ふふ、大丈夫よ。むしろこれが肝心なのよ」

 

 美波さんはそのまま山盛りなキャベツの上にお肉を乗せた後、残った生地、テーブルにあった鰹節を少々かけてお好み焼きを豪快にひっくり返しました。美波さんの手腕は惚れ惚れするくらいかっこいいものでした。

 

「ひっくり返したら今度は盛り上がったキャベツを小さくする感じでヘラを押し付けます」

 

 ジューッという香ばしい音が鳴ります。この音にはさすがに食欲が掻き立てられてしまいます。

 そして美波さんがお好み焼きを押し付けてしばらく、盛り上がっていたお好み焼きは普段食べているくらいのサイズの厚さにまで縮んでいきました。

 

「最後は卵。卵はすぐ火が通っちゃうから焦がさないように注意してね」

 

 美波さんは卵を鉄板の上に割り、ヘラで黄身を潰しました。そしてちょっと固まってきた頃合いで卵の上にお好み焼きを乗せました。

 

「そしてこれで最後ね。よっと!」

 

 美波さんは綺麗な手付きでお好み焼きを再度ひっくり返しました。一番上に来ている卵がいい具合に半熟でおいしそうな匂いがプンプンします。

 美波さんはそのままソース、青のりをトッピングし、三人分に切り分けてくれました。

 

「わぁ、すごくおいしそうです!」

「ふふっ、召し上がれ♪」

 

 お好み焼きを小皿に取り、一口食べてみます。

 するとこの香ばしい匂いに(たが)わない美味しさが味覚を刺激しました。中に入っているキャベツはしっとりとしていて生地の味、お肉の味を吸収していましたし、様々な具材が階層上になっているのはまるでうまみの詰まったミルフィーユのようでした。

 

「美波さん、とっても美味しいです!」

「ありがとう、卯月ちゃん。そう言ってくれて嬉しいわ」

 

 屋台などでお好み焼きをよく食べていましたが、それらとは別物の美味しさでした。こうしたちょっとした料理でも美味しく作れるだなんてさすがとしか言いようがありません。やっぱり美波さんは私たちシンデレラプロジェクトの頼れるリーダーです。

 

「みくちゃん美味しいね! あれ、みくちゃん……?」

 

 しかしみくちゃんの方を見ると何だか少し首をかしげていました。どうしたんでしょうか? 

 

「ねぇ美波ちゃん」

「何? みくちゃん」

「これってお好み焼き? 広島焼きの間違いじゃない?」

「……はっ?」

 

 あれ、今美波さんから美波さんらしくない声が漏れたような……。

 それにしてもこれが広島焼きというのはどういうことなんでしょう? 確かに私が知っているお好み焼きとはちょっと違っていたようには思えましたが。

 

「み、みくちゃん。これは紛れもなくお好み焼きよ。だいたい広島焼きっていうのは生地の厚いお好み焼きもどきのことを言うのであってこれとは全然別物よ」

「そうなのかにゃ? まぁ、どっちにしてもこれはお好み焼きとしては亜流だにゃ」

「あ、亜流っ!?」

「そうにゃあ。本場のお好み焼きはこんなんじゃないにゃ。卯月ちゃん、今度は私が本物のお好み焼きを作ってあげるね」

「う、うん……」

 

 むっとしている美波さんにかまわず、みくちゃんは店員さんを呼んで新しいお好み焼きを頼みました。

 

「まず生地だけど、お好み焼きはお野菜とか混ぜて厚く作るものなの」

 

 みくちゃんは店員さんが持ってきた生地にキャベツを入れてかき混ぜました。美波さんのに比べると入れられたキャベツは少なく、バランスよく生地と混ざり合っています。

 そしてみくちゃんはできた生地を鉄板の上に乗せ、厚めに焼いていきます。

 

「そしたらお肉を乗せてひっくり返すよ。ほいにゃ♪」

 

 みくちゃんは上手にお好み焼きをひっくり返しました。焼き目は綺麗に仕上がっていて、片面だけでも美味しそうです。作っているみくちゃんもどことなく楽しそうでした。

 

「みくちゃん、ヘラでお好み焼きを押さえなくていいの?」

「それをやったらダメだよ、卯月ちゃん。せっかくふわっと焼いてるのを潰しちゃうし、味が逃げちゃうにゃん」

 

 そうしてみくちゃんは最後の締めにマヨネーズとソース、そして青のりと鰹節をかけました。

 

「完成にゃ。ほら、美味しいうちに食べて食べて♪」

 

 私は促されるままみくちゃんの作ったお好み焼きを食べました。生地が厚くふんわりしている分、ボリューミーに感じられましたがソースの味と絡まってとっても美味しいです。

 どちらかというと美波さんのお好み焼きよりもこっちの方が普段食べているお好み焼きに近い感じです。もちろん、美波さんのもそれはそれで美味しかったですが。

 

「みくちゃん、とっても美味しいです!」

「でしょでしょ! これが本物のお好み焼きにゃ。美波ちゃんもどう? 美味しいでしょ?」

 

 美波さんの方を見るとみくちゃんの焼いたお好み焼きに一口手をつけてじっと眺めていました。

 

「ええ、そうね。確かに美味しかったわ。でも生地を焼いてひっくり返すだけだなんて、見た目もそうだけど何だかホットケーキみたいね」

「ほ、ホットケーキ!? 美波ちゃん何てことを言うにゃ!?」

 

 美波さん!?

 確かに美波さんのお好み焼きをみくちゃんが否定しましたが、まさか美波さんが言い返してくるなんて……。よっぽど頭に来ていたんでしょうか。こんなこと言う美波さんなんて初めて見ました……。

 

「そんなこと言ったら美波ちゃんのだってあんな薄っぺらい生地、お好み焼きじゃなくてクレープにゃ! あれだったら焼きそばの上にキャベツをたくさん乗っけて食べるのと変わらないよ!」

「何ですって!?」

 

 あわわっ。喧嘩は駄目ですよ二人とも……。

 うう、こんなになった二人を見るの初めてで間に入れないです……。それに怖いです……。

 

 私は何とか打開するべく他のテーブルに助けを求めようと見渡します。

 凛ちゃんのいるテーブルは……。駄目です。蘭子ちゃんと李衣菜ちゃん、アーニャちゃんと一緒にとってもとってもクールなお話(蒼くてロックでロシアンな厨二談合)をしていて声をかけづらいです。

 未央ちゃんのいるテーブルは……。こっちも駄目でした。なぜか向こうはフードファイトをしているようで、かな子ちゃん以外の三人の小皿には大量のお好み焼きが積まれていました。不用意に声をかけたら巻き添えを喰らいそうでした。

 

 どうしたら……。どうしたらこの状況を……。

 

 

 

 

「じゃじゃーん! リカの登場だよ☆ みんな楽しくやってるー?」

 

 するとそこに莉嘉ちゃんがやってきてくれました!

 凸レーションズのお仕事が終わり合流してきたようです。

 本音を言えばきらりちゃんかみりあちゃんが来てくれた方が安心だったのですが、さすがにこの二人も莉嘉ちゃんの前でみっともなく口論なんてできないでしょう。

 これで少しは落ち着いてくれれば――

 

「何々ー、お好み焼き焼いてるのー? 何か辛気臭くない??」

「「あっ?」」

 

 り、莉嘉ちゃん!?

 どうしてそんな地雷を踏み抜くようなことを!!

 おかげで美波ちゃんもみくちゃんもとても怖い目つきになってしまっています。

 

「莉嘉ちゃん。それ、どういう意味かにゃ?」

「だってぇー、今時の女の子って言ったらやっぱもんじゃっしょ☆」

 

 莉嘉ちゃんは凄みを利かせている美波さんとみくちゃんに動じず、店員さんを呼んで桜えびのもんじゃ焼きを頼みました。

 

「美波さんはもんじゃ食べたことあるー?」

「……いえ、ないわよ」

「ならアタシがお姉ちゃん直伝のすっごく美味しいもんじゃ食べさせてあげる!」

 

 莉嘉ちゃんは無邪気な笑みを隣にいる美波さんに振り撒きました。しかし当然のように美波さんは口元は笑っていても目はまったく笑っていません。

 

 そして店員さんが具材を持ってきます。ボウルにはたくさんのキャベツと桜えび、そして出汁っぽい液体が入っていました。

 実を言うと私ももんじゃ焼きを食べるのは初めてです。なのでどんなものなのかわくわくしている気持ちもあります。もちろん、こんな雰囲気じゃなかったらなおよかったのですが。

 

「じゃあ作るよー☆」

 

 そうして莉嘉ちゃんはボウルに入っていたキャベツやエビといった具材を鉄板に乗せました。しかし具材が浸かっていた汁は使わないようです。

 

「まずはキャベツを細かく刻んでいくよー☆」

 

 莉嘉ちゃんはそう言って二本のヘラを持って具材を炒め、そしてヘラの先でキャベツをカッカッカッカッと刻み始めました。ジュージューと焼ける音と小気味よく刻むヘラの音を聞いているととても楽しい気分になります。ついつい私もやってみたく感じちゃいます。

 そして莉嘉ちゃんは刻み終わると具材でドーナツの形を作りました。

 

「いい感じにできたら土手を作りまーす。そしてこの真ん中に汁を流していくよ。土手から汁が流れないように注意してね☆」

 

 莉嘉ちゃんの流した汁はドーナツ状の具材の中心に溜まりました。そろそろ完成なのかいい匂いが私の鼻を刺激します。

 

「そろそろかな?」

 

 汁を流してしばらく、莉嘉ちゃんはヘラを使って汁と具材を混ぜ始めました。最初は汁が溢れちゃうんじゃないかと思いましたが、少し水分が抜けたのか美味しそう具合に具材に絡まりました。莉嘉ちゃんはそのタイミングを計っていたみたいです。

 

「もんじゃ焼き完成だよー☆ じゃあみんなこれ使って食べてね」

 

 莉嘉ちゃんが渡してきたのは店員さんがもんじゃ焼きと一緒に持ってきた小さなヘラでした。

 莉嘉ちゃんはそれを使ってもんじゃ焼きを切って自分の前に持っていき、そしてもんじゃ焼きを鉄板に押さえつけることでヘラにくっつけてそのままそれを口に運びました。

 

「美味しぃ~! みんなも早く早く」

 

 私も見様見真似でもんじゃ焼きを食べてみます。

 

「莉嘉ちゃん、すごく美味しいです!」

「でしょでしょ?」

 

 正直どんな味がするのか全くの未知数でしたが、お汁の味がしっかり染みわたっていますしごはんのおこげみたいな食感がたまらなく素晴らしいです。何より作っているのを見ているだけでも楽しい気分になれます。

 

 

 

 さて、問題はここから何ですが……。

 

「ねぇねぇ、どう? 美波さん。超美味しいでしょ~☆」

「……そうね、思ったよりは美味しかったわ」

 

 思ったより、は?

 

「でも正直これくらいだったら普通にお好み焼きの方が美味しいよ、莉嘉ちゃん。何ていうか駄菓子屋さんでも食べられそうな味だわ、これ」

「……えっ?」

「そうだにゃ。それにちまちまとヘラで食べるとかあまり食べた気がしないし」

「みくちゃんまで!?」

 

 ううっ……、やっぱり勃発してしまいました。

 

「二人ともそんなこと言ってるけど、もんじゃは間違いなく流行なんだから! それが分からないなんて二人とも遅れてるよ!」

「莉嘉ちゃん、アイドルたるもの流行には敏感にならないといけないけど、流行に振り回されちゃいけないよ。何事も正しいことを見極めることが大事なのにゃ」

「でもそんなこと言ったら大阪の厚いお好み焼きしか認めないみくちゃんにも言えるんじゃないかな? そういう固定概念よくないと思うな、私は」

 

 どうして……、どうしてこんなことになってしまったんでしょうか。

 私たちはあの日の成功とこれからの眩しく輝く未来を祝するために集まったはずです。

 

「そもそも美波ちゃんの広島風はお高くとまってるにゃ。今回はお店が良かったけど卵も麺も用意してくれるところなんてないにゃ! こういったところじゃ普通大阪風を作るものなの!」

「こうしてみんなで作って食べるところだったら楽しさも必要よ、みくちゃん。ただ具を乗せてひっくり返すんじゃ面白味なんてないんじゃない?」

「楽しさだったらもんじゃが一番じゃん! 結局二人とももんじゃを認めたくないだけじゃん!」

 

 なのにちょっとしたことで口喧嘩しちゃうなんて。

 私はこんなこと望んでいません。本当だったらみんなであの時の思い出を楽しく話したり、これからのアイドル生活をどうしていきたいか語り合ったりしたかった……。

 

「だいたいみくちゃんは語尾に『にゃ』つけて猫耳カチューシャつけてるけど、性格は真面目で几帳面って全然真逆じゃない!」

「そうだそうだー! 猫キャラ目指すなら魚くらい食べろー! 李衣菜ちゃんが一緒にお寿司屋さんいけないって愚痴ってたぞー!」

「にゃっ!? それは関係ないでしょ!? そんなこと言ったら美波ちゃんだって『あんまり水着は気が乗らない』とか言っている癖にプロジェクトメンバーで一番グラビア撮影多いじゃん! ただのむっつり脱ぎたがりじゃん!」

 

 それなのにこんなの……。こんなのってないよ……。

 

 

 

 

 

「いい加減にしてください!!」

 

 

 

「う、卯月ちゃん……?」

「せっかく……、せっかく今日はメンバー全員が集まって楽しい時間を過ごせるんです。なのにこんなことで喧嘩して終わっちゃうなんて……、あんまりですよぉ……」

 

 私はみんなと一緒に笑っていたかった。言い争ったり喧嘩なんかせず、ただ笑顔でいたかったんです。

 

「……そうよね。ごめんなさい卯月ちゃん。それにみくちゃん、莉嘉ちゃん。私ちょっと頭に血がのぼってたみたい」

「……みくも悪かったにゃ。ごめんなさい」

「ごめんね、みんな。アタシも言いすぎちゃった」

「みなさん……」

 

 するとふとみくちゃんが私におしぼりを渡してきました。

 

「卯月ちゃん、顔拭いて。せっかくの可愛い顔が台無しだよ」

「えっ?」

 

 私は自分の顔に手を当てます。どうやら気が付かないうちに泣いてしまっていたようです。

 こんなことで泣いてしまうなんて少し恥ずかしいですね。えへへ。

 

「でも良かったです。みんな仲直りしてくれて。じゃあさっそく仕切り直しということで新しく何か頼みましょう。みくちゃん!」

「任されたにゃ、卯月ちゃん!」

 

 どんよりとしていた雰囲気が一転、一気に明るくなりました。このまま喧嘩別れしちゃったらどうしようかと思いましたが本当によかったです。

 やっぱり私はギスギスしているみんなよりも、こうして明るく笑顔なみんなのことが大好きです。

 

 

 

 これから私たちには様々な困難が待ち受けているでしょう。そのなかにはあきらめたくなるほどつらい出来事もあるかもしれません。

 けれども私たちにはこうして支えてくれて、一緒に笑ってくれる仲間がいます。だから私たちはどんな障害でも乗り越えられるに違いありません。そう、きっと――。

 

 

 

「それじゃあこの焼きうどんをお願いするにゃ」

「ふふっ、美味しそうね」

「わーい、アタシ焼きうどん大好きだよ☆」

 

 どうやら注文も決まったみたいですね。

 ……しかし焼きうどんですか。

 

「実を言うと私、あまり焼きうどん好きじゃないんですよね。麺が太い分、味染みないですし食べにくいですし……。普通に麺を焼くなら焼きそばで十分じゃないですか?」

 

「「「はっ?」」」

 

 

 あっ……。

 




各Pの皆さま大変すみませんでした(特にかな子P

それと本編に出てきた食べ物はどれも美味しく魅力的なものです。ですので誤解なきよう。
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