騒がしく、慌ただしく、人はバタバタと倒れ、キズだらけになり血を流してる人たちが沢山いる。
「うわああああああああああああああっ――!!」
聞こえてきた叫び声は……悲しみ? そんな簡単な一言で、表せる声ではない気がする。
「なんとかしねぇと! あいつら、もう……エースを処刑する気なんだ!!」
エース? 処刑? その言葉が耳に入り、胸が締め付けられる。
エースって誰? エースって人はなんで処刑されなきゃいけないの?
助けなきゃ! あたしも行かなきゃ! ルフィだけには任せてはいけない……!!
知らないはずの名前が、急に自然と頭に浮かび上がる。
ルフィ? それにエース。知らないはずの名前だけど、モヤモヤとした気持ちだけが何故か膨れ上がる。
何かをしようと身体を動かそうとしても、何故かあたしの身体は動かない。
この戦場であたしは、ケガをしてしまったのだろうか?
そんなことを考えていると、ふとガタイの良い老人が目に入る。知らないはずの人の名前と顔が、何故か一致した。
じぃじとルフィ? そうか、じぃじは海軍だもん。
海賊のエースを助けるには、ルフィも海賊だから海軍のじぃじとぶつからないといけない。
じぃじ……ゴメン。2人ともじぃじの事を文句言いつつも、本当は大好きなの知ってるでしょ?
だけど、エースはあたしのたった1人の肉親――そうだ、双子の兄のエースを助けたい。
「エースーーーー!!」
声も出ない、動けないあたしの代わりに、ルフィがエースの手をとった。
良かった!! ……本当に良かった? エースは、助かった?
――――ルフィの叫び声が聞こえた瞬間、あたしの記憶はここでプチッと途切れた。
◆◇◆◇
「お、起きたか?」
「っ?!」
人の声がしてあたしは飛び起きた。
ここは……どこ? あたしは、何をしてたんだっけ――?
「エース! エースとルフィはどこっ?!」
「なんじゃ、まだ寝ぼけておるのか?」
人の声で起きた事を忘れてたあたしは、その人を睨もうと声のする方を見たが、人の気配は感じるが声の主はいない。
「はっははは! お主には、ワシはまだ見えんよ」
「見えない……?」
「そう。これから生まれるのだからのぅ」
戦場で負傷して……何故かここに居る。
死んだと言われるなら、まだわかるけど……生まれる?
「さっきのは夢じゃ――まぁ、正しくは、お主がいない世界での出来事じゃ」
「あたしが居ない……?」
「そうじゃ、ちぃとだけ手違いでのぅ。お主があの世界へ生まれんくなって、しまったからに……今から時間を巻き戻すんじゃ」
声の主が言ってる事がよくわからない。
「わからないって顔じゃのぅ。まぁいい、生まれればなんとかなるわい。そろそろ時間じゃ! いい人生を!」
「どういう事?! ちょっ……っ」
その瞬間、あたしの意識はまた遠のいた――。
◆◇◆◇
「うぎゃああ、おんぎゃあああっ」
もう、うっさいなぁ! 人が寝てるのに、わざわざ泣いて起こさないでよ! もぅっ!
隣で泣いてる、兄のエースを睨もうと身体を向けようとするが動かない。
あれ? なんで、動かない?
そんな事を考えてると、ふと自分の小さい手が目に入る。
あぁ、そうか自分も赤ちゃんだった。
エースと双子なのに、あたしが赤ちゃんじゃないわけがないよね。
ん? あたしってば赤ちゃん? えーっと……なんで、赤ちゃん? まぁ、人だから人生は赤ちゃんから始まるのは当たり前なんだろうけど、赤ちゃん? 何か大切なことを忘れてる気がするけど、こんなにはっきり赤ちゃんって状況判断出来るの?!
だったら、なんでギャンギャンとエースは泣いてるの? はぁ……もう、この静かな部屋で何をそんなに泣く必要があるの? いい加減泣き止めばいいのに。
「おうおう、泣いとる泣いとる」
この声はじぃじだ。
ん? 待てよ。なんで、横で泣いてるエースもそうだけど、初めて聞く声なのにじぃじってわかったんだ?
「お前は女の子だからのぅ……どうしたもんか」
泣いてるエースを無視して、あたしを抱き上げるじぃじ。
「とりあえず、アンだけは村長の所に連れて行くかのぅ」
村長? ってフーシャ村の村長のことかな? って「アンだけは」という事は、エースとあたしは別々にするということ? 嫌だよ。あたしは、エースと離れたくない。
「おぉ……妹の方が泣くなんて珍しいのぉ。おー、よしよし!」
あたしは言葉を話せない……のか。
文句を言おうとしたら「おぎぁ」と、自分の口から甲高い泣き声が漏れる。
――なんじゃ? アンは生まれてないはずの時間の、エースの記憶もあるのか。まぁ、いいか、お詫びじゃ。大きくなるにつれ、思い出さなくなるじゃろ。ほっほっほっ!
頭に急に響い来た声に「えっ?! 何それ?!」と驚くも、言葉が喋れないあたしは、そのままじぃじに抱かれて村長の所に連れてかれた。