one-piece ~Sibling~   作:ゆんあ

2 / 13
2.ルフィとあたし

「マキノねぇね! 酒屋のおじさんが裏にお酒の樽を置いてくって!」

「あら、アイちゃん。報告ありがとうっ! ご褒美にオヤツ出してあげるね」

「わぁい! あいがとうっ!」

 

 フーシャ村の村長のじじちゃんのお世話になって、あたしは3才になって、あたしの名前はアイと言うらしい。

 ……んだけど、自分の名前にどうも引っ掛かりがある。それに何か大事なことなことも忘れている気もする。

 忘れていることもあるだろうけど、きちんとそれでも覚えてることもある。

 

 ――あたしには双子の兄のエースがいる。

 

 それに自分が赤ちゃんで、喋れない時もみんなが言ってることは理解はしてた。

 それにエースとは別々に暮らしてて、喋れなくて聞けなかったことがやっと聞けるようになった。

 

「ねぇね? エースって知ってる?」

 

 背が低くて座るのも大変なカウンターの椅子によじ登りながら、今日こそはと思いマキノ姉ちゃんに聞く。

 

「エース? 知らないわね、新しいお友達?」

 

 本当に知らないのか、ねぇねの顔色をジっと見つめるけど、変わる様子はない。

 村長のじじちゃんに聞いてもはぐらかされて、教えてくれないからねぇねは何か知ってると思って聞いてみたけど、やっぱり知らなそう。

 

「そっかぁ……知らないのかぁ」

「アイちゃんのお友達じゃないの?」

「うん。多分、にぃに」

「そう……え? にぃにって、お兄ちゃん?!」

 

 やっぱり驚いてるってことは知らないのか。

 ってことは、あたしのエース以外の家族のことを、ねぇねに聞いてもきっとわからない。

 

「……ふぅ」

 

 驚いてるねぇねを横目に、ぼーっと考えてると何故か外が慌ただしい。

 

「ちょっと待て、ガープ!」

「わっははは! またーん!」

 

 じじちゃんと、じぃじの声がしたと思ったらバーンと勢いよく店のドアが開く。

 

「おお、アイも居たか。ほら、弟を連れて来てやったぞ!」

「わわっ!!」

 

 ほれ、と言われてじぃじが連れて来た赤ちゃんを投げるように渡されて、思わず落としそうになる。

 

 いや、じぃじ……3才になったばっかのあたしに、赤ちゃんを投げるってそんなに腕力ないよ? 落としたらどうすんのよ。

 

 しかも、弟って……何? あたしの母さんと父さんはまだ居るってこと? いくらなんだって、あたしとエースを産んだ時に母さんは死んだはずだから、母さんが生きてることはまずありえない。

 

 顔も名前も知らないけど……じゃあ、父さんの?

 

「そいつの名前はルフィじゃ、アイ可愛がってやれよ! わしは行く所があるから、後は任せたぞ村長!」

「おい、ガープ!」

 

 あたしも何が起こったのかわからず、ルフィを抱いたままじぃじを追い掛けるように外に出ると、じぃじがピタリと止まる。

 

「お前はまだ山には行ってはならん。その子を頼んだぞぉ?」

 

 わっはははは! と笑いながら、山の方に向かっててしまった。

 

「まったく勝手なやつじゃ……」

 

 うん。あたしも、じじちゃんと同じでそう思うよ。

 

 ――弟……か。

 

 

 ◆◇◆◇

 

 

 ルフィとあたしが姉弟になって数年が経ったある日。

 

「カナヅチは海賊にとって、致命的だぜ!!」

 

 ぎゃははははっ! とマキノ姉ちゃんの店で賑やかに笑ってるのは、最近この村を拠点のなんだかやってる、赤髪海賊団の人達だ。

 

 その船長のシャンクスとルフィが何やら言い合ってる。

 

「あんた、バカね。そんな変な気合いじゃなくて、泳ぎの練習で気合いを見せなさいよ!」

 

 その言い合いにあたしも混じって、何を思ったかナイフで自分の目の下にキズを作ったルフィのキズのあるとこをペシッと叩く。

 

「いってぇぇ! アイ何すんだよ!!」

「何って、叩いたのよ。そんなことで痛いって騒いでるならまだまだガキね」

「なんだよ! シャンクスもアイもおれのことをガキガキって! おれはガキじゃない!」

「まぁ、怒るな。ジュースでも飲め」

「うわ! ありがとう!」

 

 ……シャンクスとルフィのやり取りを見て、素直にジュースを受け取ってるルフィ。

 何処がガキじゃないんだか。と思いながら溜息をつくと、シャンクス達も同じことを思ってたみたいで大爆笑している。

 

「ねぇ、シャンクス? ルフィのことは相手しなくていいからね……」

「お、アイは随分と、大人びたこと言うんだな」

「そりゃ、あたしだってもう10才だし。しっかりと、ルフィを監視してないと」

 

 ジッとシャンクスの顔を見る。

 

「だって、今のとこあたしの家族はルフィしかいないし」

「今のとこ? なんの話だ?」

 

 この人があたしの家族のことを知ってるわけがない……か。

 

「はぁ……」

「なんだよ、いっちょ前に大人に隠し事かぁー? あははははは」

「あたしまでガキ扱いしないで下さい」

 

 へいへいと笑ってるシャンクスを横目に、ルフィを見ると何やら果物をそのまま丸かじりしようとしてる。

 

「こら! ルフィ、はしたないでしょ! 切ってあげるから待ちなさいよ!」

「えー。別にいいんだけど……」

「よくないっ!」

 

 うるさいなぁっと言いながら渋々、あたしにその果物を渡すルフィ。

 それにしても、珍しい形の果物だなと思いながらカウンターに回り包丁を借りてそれを切る。

 

「はい、切ったよ」

「アイも食うか?」

「…………」

 

 初めて見たからその果物を実は、自分も少し食べてみたいと思ってたが、一応は姉の立場からして食べたいとは少し言いにくい。

 

「なんだ、アイも食いたかったのか! ほら!」

 

 グイッとルフィにフォークを向けられて、あんたがそこまで言うんなら! 風に渋々フォークを受け取るふりをする。

 

「うげ……まじぃ」

「まじぃ?」

 

 ルフィが食べ物を不味いと言うのは珍しい。

 切った時は別に腐ってるとか思わなかったけど、腐ってたのかな?

 

 端っこを少しだけ、かじってみる。

 

「わわ! なにこれっ」

「だろう? なんだよ、これー」

「きっと腐ってたのよ。捨てよっ」

 

 また素直にそれを渡してくれるルフィ。

 食べ物を素直に渡すってことは、やっぱりそれだけ美味しくなかったのだろう。

 

 それを裏に捨てに行って戻ると、なんだかさっきとは違う騒がしさがする。

 店の中に入ってはいけない気がして、裏口の扉の陰で様子を見ようとすると何かが割れる音がした。

 

 ――バリィィン!

 

 慌てて店の中に入ろうとすると、何故か濡れているシャンクスと目が合って『来るなと』言ってるように見える。

 

 何か割ったなら、掃除しないといけないんだけど……と思いつつ店を見渡すと、海賊団の人達と他にも人が増えてる。

 

 あの人たち……何っ? それにシャンクスが濡れてるのって、あの人がシャンクスに何かした?

 だったら、あたしより先にルフィを安全な場所に連れて来ないと……!

 

 何か武器になるものを探しに裏に戻って、店に走って戻ると後の祭りだったみたいで、店中に笑い声が響いてる。

 

「……な、なんだったの?」

「あっははは! なんでもねぇよ! 派手にお頭がやられただけだ!」

 

 派手にやられて、なんで笑ってるんだ? と思ってたら、ルフィが大声を上げた。

 

「いくらあいつらが、大勢で強そうでも……あんなことされて笑ってるなんて、男じゃないぞ!! 海賊じゃないっ!!」

 

 あんなことって、あぁ……シャンクスが濡れてるのって、あいつらが何かしたんだ。

 それにしても、海賊じゃないって……海賊って言ってるんだから、とりあえずはこの人達だって海賊でしょうに。

 

「おい、待てよルフィ……」

「しるか! もう知らん! 弱虫がうつる!!」

 

 シャンクスがその場から立ち去ろうとする、ルフィの腕をつかんだ時に衝撃が走った。

 

「っ!!??」

 

 海賊団の皆は、酒を吹き出して声にならないくらいに驚いている。

 

「手が伸びた……!!」

 

 そ、そりゃあ、あたしも驚いた。

 えぇ、もちろん……なんて言いますか、ルフィの腕がビヨーンと伸びた。

 人間って腕とか伸びるんだっけ?!

 

「ない! 敵船から奪ったゴムゴムの味がない! ルフィもしかして、ここにあった果物食ったんじゃ……」

「……うん! まずかったけど、アイに切ってもらって一緒に食った!」

「い、一緒にだとぉっ?!」

 

 ルフィに視線が集まってたと思ったら、今度はあたしに視線が集まる。

 

「ま、まさかな。ルフィがあぁなったんだから、アイまでってことはないよな?」

「え?! な、なにっ?!」

 

 そう言って、あたしの頬を引っ張っぱるシャンクス。

 

「いたいっ!」

「あ、アイは大丈夫みたいだ……」

 

 何が大丈夫かはよくわからないけど、普通に痛かったよ!

 そんなあたしを無視して、ルフィに向き替えるとシャンクスがいっきに言葉を発した。

 

「ゴムゴムの味はな、食えば全身ゴム人間!! そして一生泳げない体になっちまうんだ!! バカ野郎ーー!!」

「えーーーーっ!! うそーーーー!!」

 

 一生泳げないって……なんか、よくわからないけど、あたしじゃなくてよかったかも? どうせルフィ泳げないんだし。

 

 あ、でも、それじゃあ……じぃじが言ってる海兵にも、ルフィが言ってる海賊にもなれないのか。

 どーすんだろ? ま、いっか。

 こんなおバカが海兵でも、海賊でもどっちでも人に迷惑かけそうだし。

 

 

 ◆◇◆◇

 

「おじさーん! 魚下さい!」

「おっちゃん! おれも持つからおれにも魚くれ!」

 

 村長のじじちゃんに頼まれて、今日はルフィと市場に買い物に来た。

 

「お、アイちゃんにルフィか! わりぃな、なんかまだ漁船が戻って来てないみたいで魚ないんだよ」

「魚がねぇ?! 魚買ってかないと、おれら飯抜きか?!」

 

 抜きってことはないけど、遅くなるのは確かだよね。

 

「もう、おれ腹減った……」

「アイちゃん、ちょっと漁港に様子を見に行ってくんないかい?」

「あ、はい。別にいいですよ」

「えー、おれ腹減って動きたくねぇ……」

「……はぁ。じゃあ、マキノ姉ちゃんのとこで待ってれば? あたし行って来るから」

「わかった!」

 

 そう言って魚屋のおじさんにゴム人間になったことを、からかわれてから走ってマキノ姉ちゃんの店に走って行くルフィ。

 

「走る元気は、残ってんじゃない」

「あっははは! まだまだ、あいつも子供だ。アイちゃん宜しく頼むよ?」

「はい! じゃあ、行ってきます!」

 

 あたしはルフィが走って行った方向と逆にある、海岸の方に向かった。

 

「あれー? 漁船が一台も止まってないなぁ……なんでだろ?」

 

 どうしようかな……ルフィはマキノ姉ちゃんの所に行ったから、きっと何か食べさせてもらってるから、ルフィのお腹の心配はしなくてよさそう。

 

「あっ」

 

 同じ年くらいの男の子が釣りをしてる人を見える。

 どうせ、暇だし話し相手にでもなってもらおうかと、声を掛けてみる。

 

「ねぇ、釣れてる?」

「……ん」

 

 あたしの顔をチラッと見て、バケツに視線を送る男の子。

 そのバケツの中には魚は……一匹もいない。

 

「ここって、釣れるの?」

「さぁ?」

 

 それと言って会話が続くわけでもなく、そこで会話が途切れて何もすることがなく男の子を観察する。

 この男の子が着てる服ってば高そうだけど、随分と汚れてる。だけど、汚れてるのを見なけば村の子が着るような服装じゃない。

 

「ねぇ、村の子じゃないよね?」

「まぁ。そんで、なんか用?」

「別に用があるわけじゃないんだけど、漁船が帰って来なくて暇だから相手してもらおうかと」

「ふーん。だったら、漁船……まだ帰って来ないと思うぜ。あれ見ろよ」

 

 男の子が指す方向を見ると、海賊船がここから離れた海岸で積荷を下してるのが遠目でなんとなく見える。

 

「あ、あれ、シャンクスの船だ」

「海賊船がここから離れないと、漁船も入れないんじゃないか?」

 

 シャンクスたちだったら、大丈夫だと思うけど普通に考えたら戻って来られないのか。

 だから最近、魚屋の仕入れが遅い時があるんだ。

 

 そこでまた会話が途切れる。

 

「ねぇ、釣れないのに面白い?」

 

 会話が途切れても、あたしはすることないしとりあえずもう一度話しかけてみる。

 めんどくさそうにしてても、その男の子はあたしの疑問には返ことを返してくれた。

 

「今日は釣れないのわかってんの。あそこ」

「釣れないの分かってて釣りしてんの……?」

 

 とりあえず、また男の子が指す方を見る。

 

「あ、近海の主だ……」

「だから、今日は釣れないの」

 

 なんか、変な男の子。

 

「海王類もいるし、海賊も居るのになんでここから離れないの?」

「そっくりそのまま、お前にその台詞返す」

 

 ……ま、まぁ。

 そうなるよね、普通は。

 

 別に海賊はシャンクスだし、海王類はこの浅瀬の方には来ないから大丈夫だと思ってるから、あたしはここに居るんだけど。

 

「おれ、そこまで世間知らずじゃねぇよ」

「え、君もあの海賊と知り合いなの?」

「君もって、おれは知らねぇよ。ただ、あいつらの船ここ数か月よく見るけど、ここら辺ではなんもして来てないだろ」

 

 別にシャンクスたちのことを知ってたわけじゃないのか、まぁあたしも時々はお土産もらったりするけど、金魚のフンしてるのはルフィだし。

 

「わー! 離せっ! このくそ野郎! 一発……百発殴らせろ!!」

「うるせぇ、少し黙れ!」

「殴られても、痛くねぇっ!!」

 

 どこからか、子供と大人の言い争いの声がする。

 

「あいつらは……ヤバいな。お前こっちに来い!」

「え?! ちょっと?!」

 

 男の子に腕を引っ張られて岩陰に隠れる。

 

「あのガキは何やらかしたんだ?」

「ガキって……あ! ルフィ!」

 

 岩陰から覗くとルフィがこの間、シャンクスにお酒を引っかけた男に抱きかかえられて小舟に乗る所だった。

 

「なんだよ、知り合いかよ」

「知り合いも何も……弟だよ!」

「はぁっ? なんで、弟と山賊が一緒に居るような事態になってんだよ」

「あれ山賊なの?! そんなの、あたしが聞きたい!」

 

 どうしよう、どうしよう! このままじゃあ、ルフィが何処かに連れてかれちゃう!

 なんとかしないと……って言っても、あたしの力で何が出来る? でも、このままでもだめだから時間稼ぎくらいなら……!

 

「あたし、助けに行って来る!!」

「お、おい、海王類もいるんだぞ?! ちょっと待てって――」

 

 男の子の制止を無視して、あたしは海に飛び込んだ……!

 

 

 ――えっ?!

 

 海に飛び込んだと同時に体の力が抜ける。

 

 なんで?! 体が浮かないの?! 足と手をいくらばたつかせても、体は水面に上がらない。

 

 ヤバい、息……水飲んだ――!! そう思った瞬間、急に息が出来るようになった。

 

「お、お前……! 泳げないくせに飛び込むなよ!」

「泳げないわけないでしょっ?!」

「普通に溺れてただろ!」

 

 確かに、男の子の言ってることも一理ある。

 

 何故か今、泳げなくて溺れそうになった所を男の子に助けられたから顔が水面に上がってる。

 だけど、溺れちゃったけど、あたしが泳げないわけがない。

 

「ルフィを助けないと……!」

「おい、暴れるな! それに、もう大丈夫そうだし!」

 

 あたしが助けなきゃ、誰が助ける……って、シャンクス?

 

「えっ?!」

「あっ……」

 

 あたしと男の子は同時に声を上げた――。

 

 

 

 ◆◇◆◇

 

「弟助かったんだし、あれは、お前のせいじゃないだろ?」

「…………」

「お、おい。とりあえず、送ってってやるから動けよ」

 

 さっきの光景を見てから、あたしは何も話したくなくなっていた。

 それを心配してくれてるのか、さっきとは逆に男の子が話し掛けてくれてる。

 

「おいって!」

「マキノ姉ちゃんの店に行く……」

「お、おう?」

 

 あたしの腕を引っ張り上げて立たせてくれる男の子。

 マキノ姉ちゃんの店とだけ、伝えたけど村の子じゃないこの子に言って通じたかは不明だけど……そんなことを考えてる余裕はあたしにはなかった。

 

 だって、ルフィを助けるのにシャンクスの片方の腕が――。

 

「お前が言ってる店って、本当にここでいいのか?」

「…………えっ?! な、なにこれ!」

 

 男の子に声を掛けられて顔を上げると、お店がほぼ崩壊してるのが目に映った。

 

 

「お、アイちゃん! 一丁前に男連れかぁ? ん? なんで濡れてんだ? おい、ボーズどういうことだ?」

「おれじゃねぇよ! 勝手にこいつが、溺れたんだよ!」

 

 ガタンとお店の中からシャンクスの海賊団の人が出て来て、あたしが濡れてることに驚いて男の子を睨むように見た。

 

「アイちゃんが溺れた? そりゃないだろー。なぁ、アイちゃん?」

「溺れたから、おれがこいつ助けてやったんだろ! おれも濡れてるの見ろよ!」

 

 返ことする気力もなく俯く。

 

「じゃあ、なんでいつもと様子が違うんだ?」

「それは……おれにもわかんねぇけどよぉ……」

 

 こうやって優しくしてくれてるけど、この人達だって海賊だ。

 だからきっと何するかわからない……お頭のシャンクスの腕がルフィのせいで無くなったって聞いたら、ルフィはどうなるんだろ。

 あたしがきちんと泳げてさえいれば、シャンクスの腕がなくなるなんてことはなかったかもしれない。

 

「ご、ごめんなさいっ! すいませんでしたっ! あたしのせいだから、ルフィには何もしないで下さい!」

「うわっ! アイちゃん、何? ルフィ? なんで泣くの謝るの?」

「しゃ、しゃんくっすの腕……あたしのせいだから、あたしがなんでもするからっ!」

 

 シャンクスの腕のことを言うと、あたしがここに来たことに気付いてゾロゾロと外に出て来た他の船員達も、驚いたのかその場がシーンと静まり返った。

 

 止め方なんか知らない、涙が勝手にポロポロと落ちて来て、泣き落としみたいで嫌だけどルフィに何もしないって言ってくれるまであたしは、謝り続けることしか出来ない。

 

「なんで、お頭の腕のことをアイちゃんが知ってんだ? おい、ボーズお前も知ってんのか?」

「お頭って人は知らないけど、さっきこいつの弟助けるのに海王類に腕食いちぎられた男なら知ってる」

「近くにいたのか、お前ら」

「あぁ、まぁ……」

 

 会話が途切れて、またその場がシーンと静まった。

 

「とりあえず、ボーズは関係ないんだよな? アイちゃん送ってくれてありがとな! 今日は帰れ!」

「おい、お前……大丈夫なのか?」

 

 この男の子は本当に関係ない。

 無言で頷くと、男の子は心配してくれてるのかチラッとあたしのことを見て黙ってその場を離れて行った――。

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告